目指せテンバガー!(1)~今期大幅増益予想のグロース株
投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実
2023/05/17
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証グロース市場・スタンダード市場の中小型株を中心に、好業績が期待される銘柄や、投資家の皆様が気になる話題についてわかりやすくお伝えします。
新興株ウィークリー
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大型株に比べグロース市場銘柄の出遅れが目立つ展開
5/9(火)~5/16(火)の東京株式市場では、日経平均株価が2.1%、TOPIXが1.4%それぞれ上昇しました。対して、東証グロース市場指数は2.0%下落しました。
NISA(少額投資非課税制度)拡充、東証によるPBR1倍割れ銘柄への対策要請、ウォーレン・バフェット氏による日本株買い増し意向示唆等、東京株式市場の変化を期待させる材料が増えています。さらにインバウンド需要が急速に回復しており、インフレや景気減速に対する懸念が広がる欧米市場に対する相対的優位性も高まっています。それらを反映し、5月第1週まで外国人投資家は、日本株を6週連続で買い越しています。
しかし、外国人買いの効果は、東証グロース市場銘柄には顕在化していないようにみられます。図表1に一目瞭然となっているように、足元の東京株式市場では、日経平均株価が上昇基調であるのに対し、東証グロース市場指数は下落基調となっています。割安株買いの対象になりにくいことが逆風となっていると想定されます。また、東証の主力株の決算発表は多くが、先週前半までで終えていますが、東証グロース市場では5/12(金)や5/15(月)の発表も多かったです。さすがに、決算発表日またぎを回避したい動きが強まった可能性があります。
東証グロース市場の時価総額上位銘柄の中では、引き続きVTuberプロダクションを運営するカバー(5253)の堅調が目立ちました。4/27(木)に23.3期業績予想の上方修正を発表し、株価はいったん上昇局面となりました。しかし、決算発表での業績予想公表を控え、5/12(金)には大幅反落となっていました。しかし、同日の取引終了後に発表された24.3期業績予想で、前期比36%増の大幅営業増益予想が示され、それを好感する形で5/15(月)・5/16(火)ともに続伸となりました。
前述したように、5/12(金)や5/15(月)を中心に決算発表の銘柄が多く、時価総額100億円超の幅広い銘柄の中での値上がり率上位についても、例外なく、決算発表内容が好感された銘柄が上位となりました。医療情報サイトを運営するGENOVA(9341)は5/12(金)に本決算を発表し、23.3期の64%営業増益、24.3期の27%営業増益予想を発表。株価は5/15(月)と5/16(火)だけで前週末比48%上昇しました。
図表1 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移
図表2 主な東証グロース市場指数構成銘柄の値動き
図表3 5/9(火)~16(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄
目指せテンバガー!(1)~今期大幅増益予想のグロース株
東京株式市場では、5/15(月)をもって決算発表がほぼ一巡しました。
決算発表シーズンの最中においては、投資家は発表数字に瞬時に反応することを求められます。発表数字はアナリストコンセンサスとの比較が、同コンセンサスがなければ、会社予想との比較が重要と考えられます。また、今期業績予想の評価も投資判断の重要な要素になるとみられます。
ただ、決算発表シーズンが終わり、決算発表の対象となってきた上場企業の新しい、または修正された業績データが出揃うことで、銘柄間の比較もこれまでよりは容易となります。特に、投資家が関心を有するのは、企業の将来の収益見通しであり、銘柄間の優劣であると考えられます。
一般的に、企業の予想増益率が高いことは、投資家の高い評価につながりやすいと考えられます。
そこで、今回の「新興株ウィークリー」では、東証グロース銘柄を対象に、大幅増益銘柄の抽出を試みるべく、スクリーニングを行なってみました。
スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)東証グロース市場に上場
(2)時価総額100億円超
(3)決算期末が3月、6月、9月、または12月
(4)5/15(月)までに2023.1-3月期の決算発表が終了
(5)2023.1-3期の営業利益が前年同期比で20%超の増益
(6)今期の予想営業増益率が20%超の増益
(7)5/12(金)まで過去20日間の1営業日当たり平均出来高が2万株超
図表4の銘柄は、上記(1)~(7)の条件をすべて満たしており、(6)の予想営業増益率(前期比)が高い順に掲載されています。(5)の条件を満たし、足元の業績も好調な銘柄であることから、その分、(6)で示された業績の達成に向け「勢い」をもっている銘柄であると考えられます。
図表4 今期大幅増益予想のグロース株
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名 | 株価(5/16) | 23.1-3期営業増益率 | 今期予想営業増益率 |
9229 | 9229 | 9229 | 9229 | サンウェルズ(3) | 2,982 | 57.9% | 105.5% |
7061 | 7061 | 7061 | 7061 | 日本ホスピスホールディングス(12) | 3,315 | 233.6% | 56.4% |
3496 | 3496 | 3496 | 3496 | アズーム(9) | 3,486 | 29.7% | 42.3% |
6030 | 6030 | 6030 | 6030 | アドベンチャー(6) | 9,790 | 84.2% | 37.0% |
4051 | 4051 | 4051 | 4051 | GMOフィナンシャルゲート(9) | 11,160 | 120.6% | 37.7% |
4498 | 4498 | 4498 | 4498 | サイバートラスト(3) | 2,906 | 28.4% | 32.9% |
4377 | 4377 | 4377 | 4377 | ワンキャリア(12) | 4,320 | 129.1% | 31.5% |
2986 | 2986 | 2986 | 2986 | LAホールディングス(12) | 3,615 | 107.5% | 30.1% |
4071 | 4071 | 4071 | 4071 | プラスアルファ・コンサルティング(9) | 3,035 | 53.8% | 27.6% |
- ※各社株価データ、会社公表データをもとに、SBI証券が作成。
- ※銘柄名右横のカッコ内に記載された数字は決算月。
- ※今期予想営業増益率は会社予想ベース。
- ※「今期」の対象について、3月決算企業は24.3期、6月決算企業は23.6期、9月決算企業は23.9期、12月決算企業は23.12期となります。
- ※プラスアルファ・コンサルティング(4071)について、23.1-3期営業増益率(連結)は、前年同期(非連結)との比較、今期予想増益率は23.9期(連結)と22.9期(非連結)の比較。
以下、図表4に掲載した銘柄について、詳細をコメントします。
■サンウェルズ(9229)~パーキンソン病に特化した介護施設を運営。成長余地約46倍、業績急拡大で最高益更新中
パーキンソン病に特化した介護施設「PDハウス」を運営する会社です。2020年度末時点で患者数は約14.2万人と推定されており、高齢化の進展に伴い患者数も増加傾向にあります。また、他疾病と比べ、リハビリと専門医の治療がより効果的である点に着目。世間のニーズと合致したことで、施設数及び業績が右肩上がりです。専門的介護事業であるため、収益源に以下の特徴を有します*。
23.3期は売上高137億円(前期比62%増)、営業利益14億円(同192%増)と従来予想を上回っての着地となりました。計画通りに年度累計で8施設を開設し、既存施設の稼働率も95%以上と高水準を維持した形です。人件費や光熱費の高騰がコスト増になりましたが、施設運営での業績好調が相殺しました。今期(24.3期)は9施設を開設予定で、業績は売上高190億円(同38%増)、営業利益29億円(同105%増)と成長が続く見通しです。決算と同時に発表された中計では、25.3期と26.3期でも今期予想と同程度に売上高を伸ばしながら、営業利益率を伸ばす見通しを示しています。実績ベースでも、同社の営業利益率は年々改善傾向です。同社運営施設の対象と推定される重症患者数は、約4.8万人であり、23.3期末時点の床数で単純計算すると、約46倍の成長余地を残している状態です。
【*介護事業の特徴!~収益源~】
介護事業会社では、日本の手厚い社会保障制度が安定的な収益源として下支えている。主な収入源は介護保険、健康保険及び障害福祉サービスによる保険報酬等の社会保障であり、報酬のうちサービス利用者の自己負担金が占める割合は1~3割程度。さらに同社の場合、パーキンソン病患者は医療保険や傷害保険のサービス対象者に該当するため、介護保険のみサービス対象となる利用者を受け入れている一般的な介護事業者に比べ、月額単価は約2~3倍となる。ただ、社会保障制度については、各制度3年または6年ごと等、定期的な見直しが行われているため制度改定には注意する必要がある。
■日本ホスピスホールディングス(7061)~末期がん患者向けの在宅ホスピスを運営。過去最高益更新予定、業績は下期偏重気味
末期がん患者向けの在宅ホスピスを運営する企業です。前項の介護事業の特徴*の通り、収益が安定的という特徴を有しています。同社運営施設では、24時間対応の手厚い看護ケア体制が整っており、自宅さながらの質の高い自由な生活を送れるという点が人気のポイントです。今期(23.12期)は9施設が新規開設する予定となっています。
今期1Q(1-3月期)では、2施設を新規開設。1Q業績は売上高22億円(前年度期比38%増)、営業利益3.2億円(同223%増)と大きく営業増益となりました。進捗率は、1Q時点で25%を下回っていましたが、会社側は想定通りとしています。なお、同社は前期(22.12期)も下期偏重の業績推移でした。
さらに、業績の復調が予想される要因として今期の施設新規開設の計画でも、2Q▹1、3Q▹2、4Q▹4と最終四半期に偏重気味であることがあります。同社では、運営施設で実際に働くホスピスチームの体制が整った後、開設という流れになります。そのため、人件等のコストが先行しており、期中では利益を圧縮される局面が想定される点にはご留意下さい。
■アズーム(3496)~月極駐車場ビジネス。インターネット経由での需要増を背景に、業績急拡大
月極駐車場ビジネスを展開する企業です。オーナーから一括で空き区画や土地を借り上げ、同社経由で利用希望者に貸し出す仕組みです。オーナーにとっては、駐車場利用者の有無にかかわらず安定した収入を得られる上、契約等の煩雑な事務作業が不要になるというメリットが挙げられます。同社にとっては、月極はコインパーキングとは異なり、ストック型の安定的な賃貸収入(全体の94%、22.9期)を得られるという強みがあります。そのため、収益は下期にかけて次第に増える傾向があります。
今期(23.9期)中間決算では、売上高38億円(前年同期比27%増)、営業利益は5.9億円(同40%増)と上期の会社予想を上振れた形です。さらに、2Q単体の売上高、各利益項目は過去最高を更新しました。従来の店舗型の不動産会社を経由していた月極利用者が、同社が運営するポータルサイトに流入していることが、成長の背景にあります。特に、パンデミック発生以降、インターネット経由での需要が強まり同社業績も拡大中で今期も最高業績を更新する見込みです。
■アドベンチャー(6030)~「skyticket」を運営。海外需要の回復に期待
「skyticket」という格安航空券予約サイトの運営を行っています。OTA(Online Travel Agent)=インターネット上のみでサービスを展開する旅行会社です。収益構造は主に成果報酬型で、予約成約に対して航空会社やレンタカー会社等のクライアントから手数料を受け取ります。現在の主な収益源は航空券予約ですが、ツアーやレンタカー、ホテル等に成長余地を見込みながらサービス範囲の拡大をしており、最終的には低価格商品の総合予約プラットフォームを目指しています。
今期3Q決算(22.7-23.3期)では、売上高149億円(前年同期比149億円増)、営業利益24億円(同72%増)と過去最高業績を通期ベースで達成する見込みです。コロナ前の業績回復は前期(22.6期)に急激な勢いで成し遂げた反動や業績予想の上方修正がなかったため、株価の反応は限定的でした。次回の決算発表は本決算にあたります。そこでは、今期から本格回復の動きを見せる海外需要の1動向が注視されると予想します。また、値がさ株になりつつあるので、株式分割の実施発表があれば、もう一段高にも期待ができそうです。
■GMOフィナンシャルゲート(4051)~経済正常化がさらなる追い風。通期業績予想を上方修正
GMOペイメントゲートウェイ(3769)の子会社(22.9期・持株比率57%)です。クレジットカード、デビットカード、電子マネー、ポイントなどによる対面型決済を行う決済端末および決済処理サービスを提供しています。売上構成比(22.10-23.3期)は決済端末販売による「イニシャル」が最も大きい71%、システム利用料として決済事業者や加盟店から月額固定で受け取る「ストック」 が7%、決済処理件数に応じた処理料としての「フィー」が15%、決済処理金額に応じて発生する「スプレッド」 7%となっています。
5/11(木)に発表された23.9期上半期(22.10-23.3期)決算では、売上高が72億円(前期比62.6%増)、営業利益が6.3億円(同71.4%増)と大幅増収増益となりました。経済活動正常化やインバウンド需要の回復を受け、同社決済プラットフォーム利用加盟店において、決済取扱件数・金額とも増えました。これを受け会社側は、23.9期の予想売上高を124億円→136億円(前期比32%増)、営業利益を9.3億円→10.2億円(同37%増)に上方修正しました。
■サイバートラスト(4498)~デジタル社会の信頼性を高め、増収・増益が継続中
ネット上の認証やセキュリティに関連した業務を行う企業で、ソフトバンクの子会社であるSBテクノロジー(4726)が58%の株式を保有(22.9末)しています。売上構成比(23.3期)で最大は「認証・セキュリティサービス」(57.5%)で、日本初かつ国内最長20年の運用実績を持つ商用電子認証局としてパブリック証明サービスを提供しています。
テレワークの定着や、脱ハンコ化の流れ、オンライン化、非対面化等、DX推進の流れが加速し、セキュリティニーズは高まっており、同社事業には追い風が強まっています。前期は1~3Q累計営業利益は6.6億円(前年同期比17%増)でしたが、4Qのみでは3.9億円(同28.4%増)と、年度末にきて増益率が加速する兆しをみせています。24.3期の会社予想営業利益は14億円(前期比32.9%増)ですが、各四半期で前4Q並みの営業利益を確保できれば達成できる計算です。
■ワンキャリア(4377)~就職に必要なデータを同社サイト1カ所で取得可能。取引法人数が前年同期比で81%も拡大
企業の採用活動や人事のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する「キャリアデータプラットフォーム」を運営しています。従来、求職者は就職や転職に必要な情報を、いくつものサイトを参照して獲得してきました。対して、同社のサービスでは就職に必要な情報を、同社サイト1カ所から獲得可能な点が強みです。同社は契約企業から、初期費用や月額料金、説明会やタイアップ記事作成等によるオプションサービスなどの対価等を受け取っています。
22.12期までの過去4年、同社は売上高が年平均(CAGR)58%、営業利益が同44%の高い成長が続いてきました。そうした中、23.12期・第1四半期(5/15決算発表)も売上高8.2億円(同61%増)、営業利益1.1億円(同129%増)と業績拡大ペースが加速気味です。法人取引累計社数が2,024社(前年同期比81%増)、累計会員数137万人(同27%増)と重要業績評価指標(KPI)も順調に伸びています。
■LAホールディングス(2986)~高めの予想配当利回りと低い予想PERが魅力?
新築不動産販売(23.12期1Q売上構成比44%)、再生不動産販売(同50%)、不動産賃貸(同5%)を展開。5/11(木)に発表の23.12期1Q決算では、売上高44.8億円(前年同期比128%増)、営業利益3.7億円(同107%増)と増収増益となりました。再生不動産販売部門が、1戸当たり1億円以上の「プレミアム・リノベーション」シリーズの販売が好調に推移し、前年同期比213%増とけん引役になりました。
23.12期は売上高300億円(前期比64%増)、営業利益55億円(同30%増)が会社予想です。すでに発表された中期経営計画では25.12期に売上高400億円、営業利益64億円を目指しています。2023.12期は中間0円、期末に210円、通期210円の配当が会社計画です。5/15(月)の株価3,635円に対する予想配当利回りは5.8%と高水準です。今後も配当性向30%をメドに利益配分を想定しています。また、予想EPS586.79円に対し、5/15時点の予想PERは6.2倍と低めです。
■プラスアルファ・コンサルティング(4071)~AI(人工知能)等を活用した人材活用ソリューションを中心に成長
爆発的に増える情報(ビッグデータ)を、マイニング、自然言語処理、AI(人工知能)等のテクノロジーを駆使して見える化し、様々なサービスを提供しています。最大セグメントは人材活用ソリューションである「タレントパレット」(23.9期上半期売上構成比67%)で、社員のスキル、適正、評価、アンケート、採用等の情報を見える化し、人材活用に生かしています。他には、顧客ニーズを見える化する「見える化エンジン」(同17%)、顧客情報・履歴等を見える化する「カスタマーリンクス」(同16%)を展開しています。
23.9期上半期(連結)の売上高は51億円、営業利益は17億円でした。非連結決算であった前年同期と正確な比較はできませんが、単純計算では売上高が38%増、営業利益が31%増でした。「タレントパレット」事業は主力事業であり、売上高営業利益率も47.8%(同上半期)と高いですが、売上高が前年同期比39%増、営業利益は同37%増とけん引役となりました。また、顧客数が同43.5%増となる一方、解約率は低下しており、業績の持続的成長が期待できる状態です。23.9期は売上高106億円(前期比34%増)、営業利益34億円(同27%増)が会社目標ですが、順調な進捗と言えそうです。
5/15(月)の決算発表を受け、5/16(火)の株価は5.8%高と前向きな反応を示しています。当面は年初来高値3,225円(3/8)の回復が目標になりそうです。
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