セル・イン・メイは怖くない!?でも注意点もあり?

セル・イン・メイは怖くない!?でも注意点もあり?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/05/02

日経平均、年初来高値の更新続く!企業決算に加え、円安の追い風吹く

4月第4週(4/24~28)の日経平均は、前週末比292円7銭高(+1.0%)と週足ベースで続伸しました。米国市場においても、主要3株価指数がいずれも+0.9%と堅調でした。

同期間は日米両市場で1-3月期の決算発表シーズンの最中であり、好決算銘柄が両市場ともに株高を牽引した形です。図表7・日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(4/24~5/1)、図表8 ・同下落率上位(4/24~5/1)でもほとんどが決算発表内容の善し悪しに反応した銘柄の顔ぶれが並びました。

好調な株価推移となった一方、ファースト・リパブリック・バンク(以下、FRC)を巡る金融不安が上値抑制要因となった格好です。同行は週初4/24(月)に決算発表を実施し、預金残高の大幅減が明らかとなりました。地銀への懸念が再燃し、米銀行株のみならず、日本の銀行株へも売りが波及しました。週後半には、複数のメディアから公的管理下に置かれる可能性と、買収の可能性が伝わり世界的な金融株安へと繋がった形です。

東京市場は、5月第1週も好調なスタート。5/1(月)は昨年8月以来となる29,000円を突破し、5/2(火)も年初来高値を更新しています。好調な企業決算に加え、円安が再び進行したことで、海外勢から割安感が生じたもようです。4/28(金)、植田氏が新たな日銀総裁となって初となる金融政策決定会合の結果が発表され、金融緩和政策の維持が示されました。円は主要通貨に対し全面安となり、特に対ユーロでは2008年以来の安値水準となっています。

また、5/1(月)の東京市場大引け後(米国市場の寄り前)に、FRCが公的管理下に置かれ、同行の預金及び資産は米最大手のJPモルガン(JPM)が取得すると正式に発表されました。市場では発表を受け、短期的な銀行破綻連鎖に対する不安は一旦取り除かれたが、後退への懸念は残存し続けると指摘する声が複数あります。

5/3(水)に結果発表予定のFOMCでは年内利下げ開始の有無に関し、注視されています。(0.25%利上げの実施に関しては、ほとんど市場で織り込まれているため材料とはならないでしょう。)景気後退に関しての懸念は完全に払しょくされていない中、FRBのハト派的態度が見受けられれば、連休明けの東京市場にとっても、かなりのポジティブ材料として期待されます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(4/24~5/1)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(4/24~5/1)

セル・イン・メイは怖くない!?でも注意点もあり?

2023年も5月に入りました。米国相場となりますが、5月相場には「セル・イン・メイ(5月に株を売れ!)」という、なんとなく不吉な格言があります。毎年、この時期になると「5月に(グローバルの)株価が大幅下落するのでは?」と警戒するような動きが見られます。

ただ、実はこの格言ですが、正確には・・・
Sell in May, and go away. Don't come back until St Leger's day.
(5月に株を売って市場から去れ、そしてセントレジャーデーまで戻ってくるな)と言います。
セントレジャーとは、英国競馬の3歳馬クラシック3冠レースの最終戦で9月第2週に行われるレースです(日本のクラシック3冠レースの菊花賞は同レースを範に設立されたそうです)。ここで意味するところは、5月にいったん株を売り抜けて投資をお休みし、9月頃に投資を再開しましょう、という意味となります。

図表9は2010年以降、S&P500指数の年間の値動きを平均化したグラフです。こちらを見ると、1月から4月にかけて株価は堅調に推移しています。この背景の1つには、2月から5月にかけて、納税者が前年に払い過ぎた税金の還付を受け取り、その一部で株式投資を行っていることが挙げられます。しかし、5月に入り還付金が終了すると、株高の動きも一段落することになります。その後、夏場(7月から8月)は、機関投資家が長期休暇に入るため株式の取引量が減少する傾向あり(図表10)、夏枯れ相場の中で株式市場の値動きが鈍くなるため投資に不向きな時期となります。そしてセントレジャーが開催される9月頃になると、取引が正常化するため、改めて投資を始めるタイミングということになります。

図表9 S&P500の平均株価推移(週足ベース)

  • ※BloombergをもとにSBI証券が作成

図表10 S&P500の平均出来高(月間ベース

  • ※BloombergをもとにSBI証券が作成


つまりセル・イン・メイの本当の意味は、「5月相場は大きく下落する」と思い込んでいる一部市場参加者の認識とは、少し(大分?)意味合いが異なります。とは言え、過去を振り返ると多かれ少なかれ5月から秋ごろまでの株価パフォーマンスが悪化した年もあるため、その年を確認してみます。(図表11)

2010年
2008年のリーマン・ショック後、FRBはサブプライム問題から波及した金融危機に対応するため、2008年11月より量的緩和第1弾(QE1)を開始。2010年6月にQE1が終了すると、株式市場は軟調に推移しました。同年8月、米アイオワ州ジャクソンホールにおいて、バーナンキFRB議長が量的緩和第2弾(QE2)の実施を示唆する発言を行うと、株式市場は徐々にリスク選好が強まりました。

2011年
2011年6月にQE2は終了しましたが、その前から株式市場は軟調に推移していました。一方、欧州ではギリシャ財政の悪化に端を発した財政問題が、ポルトガルやイタリア、スペインなどの重債務国に波及。欧州の債務問題がグローバルでリスク回避の動きを強めることになりました。

2019年
米国政策金利(FFレート誘導目標)は、2015年12月に実質ゼロ金利(0-0.25%)が解除され、2018年12月に2.25-2.50%へ引き上げられました。利上げが進んだ一方で米国では景気減速が鮮明となり株価も軟調に推移しました。そうした中、FRBが2019年7月に利下げへ転換すると、株式市場は持ち直し始めました。

これら3つの年は、金融緩和の終了や、金融引き締めから緩和へ転じるなど、金融政策の方向性に変化が生じた時期に相当します。今年は、一部の市場参加者は、昨年以来の利上げが最終局面にあり、年内に利下げへ転換するとの見方をもつなど、金融政策の転換時期になる可能性があります。その場合、5月以降の株価が弱含む可能性に注意する必要があると考えられます。

図表11 2010年、2011年、2019年のS&P500株価指数推移(週足)

  • ※BloombergをもとにSBI証券が作成

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