日経平均の「3万円超え」をけん引するのは内需?外需?

日経平均の「3万円超え」をけん引するのは内需?外需?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/05/16

日経平均は3万円目前!TOPIXは約33年ぶり高値水準、海外勢の買いが続く

5月第2週(5/8-12)の日経平均は続伸し、前週に続き年初来高値を更新。前週末比230円35銭高(+0.8%)となり、ついに30,000円の大台が意識される水準を回復してきました。同期間の米国市場は、S&P500が▲0.5%、ナスダックが+0.4%と、日本株優位となった期間でした。

債務上限問題や地銀を巡る懸念から軟調な株価推移が続く米国市場をしり目に、東京株式市場では好決算銘柄がけん引する形での上昇が続き、5月第3週も好調なスタートです。5/15(月)は続伸し、16(火)も主要株価指数は軒並み上昇ではじまっています。日経平均株価はパンデミック後の大規模金融緩和で株高となって以降、およそ1年半ぶりの高値水準、TOPIXはバブル崩壊直後の1990/8/6以来約33年ぶりの高値水準までの上昇です。

日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(図表7、5/8~15)と日経平均株価採用銘柄の下落率上位(図表8、5/8~15)は、前週に続き、期中に決算発表を行った銘柄です。上昇率上位では、決算発表と同時に、自社株買いや自社株買いの取得枠設定を発表した銘柄が多数ありました。東証のPBR1倍割れ企業への改善要請等から株主還元意向の強化を打ち出す企業が増えた形で、首位の日本精工 (6471)や2位の丸井グループ (8252)などが該当します。また、6位のニチレイ (2871)は増配の実施を発表したことが好感された模様です。下落率上位では、決算発表直前に業績見通しを下方修正を行ったNTN (6472)の他、従来の業績予想に未達であった銘柄や赤字拡大となった銘柄が多い顔ぶれです。

米欧株式市場が金融システムへの懸念を強め、米債務上限問題の解決が6月以降の長期化が見込まれる中、円安による割安感や企業業績の好調で、東京株式市場では海外勢からの資金流入が続いています。JPXの投資部門別取引状況では、4月の3兆円超に続き、5/1-2でも約4600億円と5週連続で海外勢の買い越しとなりました。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(5/8~15)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(5/8~15)

日経平均の「3万円超え」をけん引する銘柄のは内需?外需?

日経平均は5月15日に2万9,626円と、昨年8月17日に付けた高値(2万9,222円)を上回り、21年9月28日以来の3万円台回復が視野に入ってきました。

日経平均の上昇を支える大きな買い手となっているのが外国人投資家の存在です。先月、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が日本株への追加投資を検討していることが話題となりましたが、日本株に投資妙味を感じている外国人投資家はバフェット氏だけでない模様です(詳細は『バフェット効果で注目されるまさか!の投資テーマとは?』をご参考ください)。投資部門別売買動向によると、外国人投資家による日本株売買は4月以降、5週連続で買い越しが続いており、息の長い買い主体になることが期待されます。

また、今年の日本株相場で大きな投資テーマとなっているのがインバウンドを含めた個人消費であり、百貨店など内需株の一角に息の長い買いが入っています。内需株物色の背景には、新型コロナの水際対策が緩和されたこによる訪日外国人旅行者の増加、国内のコロナ対策が緩和されたことによる経済正常化の動き、大手企業を中心とする賃上げなどが挙げられます。

こうした内需株に対する業績改善への期待は不変ですが、株価についてはこれまでの上昇により割安感が薄れた銘柄も少なくありません。日経平均が3万円を回復して上値を目指すためには、物色の広がりが必要と考えられます。

図表9 日経平均と投資部門別売買(外国人投資家)

  • ※日本取引所グループ(JPX)などよりSBI証券作成


そこで本稿では、マクロ経済の視点から外需株について考察します。

まず、図表10は貿易の稼ぎやすさを示した交易条件(=輸出物価指数/輸入物価指数)の推移を示したグラフです。交易条件は2021年頃から22年終盤にかけて急激に悪化しました。この間、円相場において急ピッチな円安と、商品市況の上昇により輸入物価が大きく上昇し、同じく円安による輸出競争力の向上(輸出物価の上昇)を大きく上回ったことが背景にあります。しかし、23年に入ると、商品市況の上昇と円安が一服したことで交易条件は改善に転じました。現状、円相場は歴史的な円安水準を維持していることから、今後は輸出競争力向上による交易条件の改善が続くと見られます。このことは外需株にとって追い風になるでしょう。

もっとも、米国経済の不透明感が根強い中で外需株に手を出し難いという見方があるのも確かなことだと思います。ただ、米国以外の国・地域では比較的に景気に対する不透明感が緩和傾向にあります。例えば、中国ではコロナ禍によるロックダウンが解除されたことにより、個人消費主導で緩やかながら経済再稼働に向けて動いていると見られます。ちなみに5/16に発表された中国4月小売売上高は前年同月比+18.4%と、前年がロックダウンにより大きく落ち込んだ反動があるとは言え二桁の伸びを達成しました。日本株としても、これまでの内需株物色に加え中国関連の外需株などへ物色が広がれば、日経平均3万円台から上値を追う展開を期待できそうです。

図表10 交易条件指数の推移

  • (注)交易条件指数=輸出物価指数/輸入物価指数 で算出
  • ※BloombergをもとにSBI証券が作成

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