NISA活用も?割安(低PBR)・高配当利回り予想の16銘柄
投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実
2023/09/06
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証グロース市場・スタンダード市場の中小型株を中心に、好業績が期待される銘柄や、投資家の皆様が気になる話題についてわかりやすくお伝えします。
新興株ウィークリー
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NISA活用も?割安(低PBR)・高配当利回り予想の16銘柄
8月の東京株式市場では、TOPIXが+0.4%、日経平均が▲1.7%とまちまちの展開でした。米国の景気・企業業績が想定していた以上に粘り強く、インフレ懸念がくすぶり続けたことから米10年国債は前月末の3.95%から当月末は4.10%まで上昇。金利上昇傾向を受け、グロース株には向かい風、バリュー株には追い風が吹きました。
ちなみに、市場別のPBR(9/4時点・日経計算)をみると、東証スタンダード市場1.0倍、東証グロース市場3.87倍です。PBRの高低でグロースとバリューを区別するならば、東証スタンダード市場はバリュー株、東証グロース市場がグロース株的な色彩が強くなっています。8月相場では東証スタンダード市場指数が+1.0%、東証グロース市場指数が▲2.1%となりましたが、金利上昇に対する強弱で明暗が分かれた形です。
ただ、9月に入っても東証スタンダード指数は買い優勢となっています。根強いバリュー株買いの動きに加え、9月に中間配当を予定している銘柄もあり、配当取りを狙った買いが増えている可能性もあります。市場別の予想配当利回り(9/4時点)をみると、東証プライム市場2.16%、東証スタンダード市場2.17%、東証グロース市場0.44%となっています。東証スタンダード市場は、配当面での魅力も強そうです。
そこで、今回の「新興株ウィークリー」では、東証スタンダード市場の銘柄から予想配当利回りが高く、低PBR銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行なってみました。条件は以下の通りです。
(1)東証スタンダード市場に上場
(2)9/4(月)まで20営業日の1日当たり平均出来高が2万株以上
(3)PBR1倍未満
(4)会社予想配当利回りが4%以上
(5)直近四半期(3ヵ月)の営業損益が黒字
図表の銘柄は、(1)~(5)のすべての条件を満たしており、(5)の年間予想配当利回りが高い順です。前述したように、東証スタンダード市場の平均予想配当利回りは2.17%(9/4時点)であり、これを大きく上回る抽出銘柄は「高配当利回り」が予想されている銘柄とみなして良いでしょう。
なお予想配当利回りは、年間の配当をすべて受け取ったと仮定した場合の利回りで、「税込み」での表記になっています。個人投資家の場合原則、配当金に対しては、20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)の税金が課されることになります。ただ、この配当課税を受けないで済む方法があります。それがNISA(少額投資非課税制度)の活用です。現行制度では年間120万円まで株式投資ができ、NISA口座で保有する金融資産から得られる配当や売却益が最大5年間非課税になる仕組みです。
※NISAで上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録する必要がありますので、十分ご注意ください。
ちなみに、2024年からは「新NISA」に移行します。「新NISA」のポイントは以下の通りです。
(1)非課税保有期間の無期限化
(2)口座開設期間の恒久化
(3)つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能
(4)年間投資枠の拡大・・・つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円、合計最大年間360万円までの投資が可能
(5)非課税保有限度額は全体で1,800万円(成長投資枠は1,200万円、枠の再利用が可能)
詳細は、SBI証券「NISA/つみたてNISA」サイトをご覧ください。
また、現行のNISA・つみたてNISAと新NISAは非課税枠が別枠になります。現行のNISA・つみたてNISAで非課税枠を使用している場合でも、新NISAでの非課税枠がその分減ってしまうことはありません。
したがって、仮に2023年にNISA120万円の年間非課税枠を全額使った場合でも、2024年は上記の(4)と(5)で示された非課税枠が新たに使えることになります。それにより、2024年からNISA・つみたてNISAを始めるよりも、より大きな非課税枠を享受できるできることになります。しかも、2023年にNISAを始めれば、特別な手続きなしで新NISAに移行することができます。配当を享受して中長期的に投資利回りの向上を目指す投資家であれば、NISAの活用は御一考の価値ありと考えられます。
【参考】 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移
【参考】 8/29(火)~9/5(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄
■図表 NISA活用も?割安(低PBR)・高配当利回り予想の16銘柄
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名 | 株価 (9/4・円) |
予想配当利回り | 会社予想今期1株配当 | 備考 |
3242 | 3242 | 3242 | 3242 | アーバネットコーポレーション(6) | 388 | 5.2% | 20.0 | マンションデベロッパー。需要の高い「東京」に特化。業績は下期偏重の傾向。投資用ワンルームマンションが好調。配当性向の目途は40% |
8835 | 8835 | 8835 | 8835 | 太平洋興発 | 778 | 5.0% | 39.0 | 石炭の輸入販売を主力に、不動産やシルバービジネス等を展開。4-6月期は、輸入販売数量減少が重しとなるも、他事業が下支え。配当性向の目途は60%以上 |
3449 | 3449 | 3449 | 3449 | テクノフレックス(12) | 1,110 | 4.9% | 54.0 | ガスや水道等に使用される「管継手」で国内トップ級シェア。原価上昇分の価格転嫁に難航。配当性向の目標は40%以上 |
7927 | 7927 | 7927 | 7927 | ★ムトー精工 | 1,697 | 4.7% | 79.0 | プラスチック部品メーカー。4-6月期はカメラ部品等での販売増の他、経費削減が寄与。配当性向の目標は40%程度。前期実績は66%超 |
1853 | 1853 | 1853 | 1853 | 森組 | 304 | 4.6% | 14.0 | 旭化成系ゼネコン。道路やトンネル等のインフラ整備で実績。公共・民間ともに建設投資堅調で、4-6月期は黒転。配当性向の基準は35%以上 |
9127 | 9127 | 9127 | 9127 | 玉井商船 | 1,772 | 4.5% | 80.0 | 内航・外航で海運業を展開。好業績と財務基盤の改善を背景に前期は大幅増益。今期計画は減益だが、配当金は維持される予定 |
2499 | 2499 | 2499 | 2499 | 日本和装ホールディングス(12) | 313 | 4.5% | 14.0 | きもの販売仲介。消費者マインドの回復は難航。Qごとに配当を実施。今期は40周年。記念配当1円が加わる他、特別記念優待で「500円分QUOカード」が贈呈予定 |
7940 | 7940 | 7940 | 7940 | ★ウェーブロックホールディングス | 673 | 4.5% | 30.0 | 複数素材の加工メーカー。国内初の合成繊維による防虫網を開発。4-6月期は値上げやコスト削減で前年比増益。通期計画は大幅最終減益だが、配当金は維持。配当性向の目安は35%以上 |
5280 | 5280 | 5280 | 5280 | ヨシコン | 1,166 | 4.4% | 51.0 | 静岡を中心とする不動産デベロッパー。不動産開発事業で大型物件の引渡しが先延ばしとなり、今期は大幅減益予想。13期連続増配を実施予定 |
6319 | 6319 | 6319 | 6319 | シンニッタン | 254 | 4.3% | 11.0 | 鋳造事業が主軸。自動車産業向けが売上高の66%で、残りは建設機械向け。原価高が業績の痛手。配当性向の目標は40%以上、下限は1株あたり10円 |
9856 | 9856 | 9856 | 9856 | ★ケーユーホールディングス | 1,239 | 4.3% | 53.0 | 輸入車正規ディーラーと国産車販売。国内の自動車販売業界は厳しい環境続く見通し。配当性向の目途は30%以上。直近2期の実績は50%近辺 |
8931 | 8931 | 8931 | 8931 | 和田興産(2) | 1,216 | 4.3% | 52.0 | 分譲マンション販売。京阪神が主要エリア。今期は減益だが、4-6月期時点の(純)利益の進捗率は50%弱。安定的な配当の継続が基本方針。3期連続増配予定 |
8230 | 8230 | 8230 | 8230 | ★はせがわ | 353 | 4.2% | 15.0 | お仏壇事業、屋内墓苑事業。お仏壇の小型化・簡素化のニーズ増が逆風。長期にわたる安定した配当が基本方針 |
7305 | 7305 | 7305 | 7305 | 新家工業 | 2,835 | 4.2% | 120.0 | 自転車用リムで創業も、現在は鋼管事業が主力。今期は減益予想だが、4-6月期が底堅く通期計画を修正。配当性向の目安は50%程度 |
7315 | 7315 | 7315 | 7315 | ★IJTT | 594 | 4.2% | 25.0 | いすゞグループの自動車部品メーカー。4-6月期は値上げやコスト改善活動が奏功し(営)利益が前年比増益。今期は5円の増配予定(20円→25円) |
3447 | 3447 | 3447 | 3447 | ★信和 | 787 | 4.1% | 32.0 | 建設現場の足場など。値上げ前の駆け込み需要の反動等で4-6月期は前年比減収減益。配当性向の目標は40%以上 |
- ※Bloombergデータ、会社公表データ、各種報道等をもとに、SBI証券が作成。
- ※銘柄名の右横カッコ内の数字は決算月で、無記載の銘柄は3月決算銘柄。
- ※★印の銘柄は9/27(水)を権利付最終日とし、中間配当の実施が予定されている3月決算銘柄です。
- ※配当政策等は企業により随時変更される場合があります。予想配当金額等のデータは企業発表の決算短信等でご確認ください。
一部掲載銘柄を詳細に解説!
■テクノフレックス(3449)~低PBR・高配当利回りを背景に半導体市場の回復を待つ?
★日足チャート(1年)
- ※データは9/6(日足) 10:50時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■金属加工技術を生かした継手事業が中心
金属加工技術を活用し、管継手(配管同士の接続部分)を製造する「継手事業」が主力事業で、売上高(前期)の62%を占めています。その他、金属加工技術の応用分野として「防災・工事事業」(同19%)、「自動車・ロボット事業」(同11%)、「介護事業」(同8%)等に展開しています。
「継手事業」では、半導体産業にも関連する事業を展開しています。すなわち、半導体製造に欠かせないクリーンルームに使う真空配管の製造・販売、プレハブ加工、設置工事等を行っています。また、「防災・工事事業」においては、法定以上のスプリンクラーを必要とする半導体工場向けに防災設備工事を行っています。
業績的に、23.12期はやや低調なスタートです。5/2(火)は減収・減益の1Q(23.1‐3期)決算を、6/15(木)には業績予想の下方修正を発表し、そのたびに株価は急落しました。半導体市場の在庫・調整はあらかじめ予想されていたものの、想定以上に回復が遅れていることが要因のようです。8/9(水)発表の2Q決算(23.1-6期)も売上高106億円(前年同期比3.2%減)、営業利益8.4億円(同44%減)と減収減益が継続中です。
■予想配当は堅持。半導体の回復に期待
半導体市場の調整は継続中であるものの、9/4(月)にWSTS(世界半導体市場統計)から発表された世界半導体出荷額では、全体の出荷額が前年同月比7.3%と、2ヵ月連続で1桁のマイナスにとどまりました。半導体市場の調整が進み、底入れが接近している可能性が考えられます。
同社は世界的な半導体メーカーTSMCの熊本進出に対応するため、人材の獲得に努めている模様です。TSMC工場のクリームルーム向けのビジネス展開が期待されます。また、最先端半導体の生産を狙うラピダスの半導体量産に対応すべく、北海道に事業拠点を設置すると発表しています。将来的には、こうした半導体工場向けのビジネスに期待感が持てそうです。
会社側は今期、6月末27円、12月末27円、年間で計54円の配当を計画しています。9/5(火)終値1,108円で計算される予想配当利回りは4.87%と高水準です。また、前期(22.12期)末の自己株式を除いた発行済み株式数で計算されたBPS(1株純資産1,237円)に対し、上記株価のPBRは0.9倍と計算されます。
足元の業績は決して良好ではありませんが、低PBRで高配当利回りが見込める銘柄であり、半導体市場の回復を期待して投資する考え方もありそうです。
■新家工業(7305)~現在は鋼管事業が主力。予想配当利回り4.2%もPBR0.5倍台
★日足チャート(1年)
- ※データは2023/9/6(日足)10:50時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■自転車用リムで創業。現在は鋼管事業が主力
1903年に創業され、日本で初めて自転車用リム(自転車の車輪の骨組み・創業時は木製)を生産。1957年に鋼管関連事業、1965年に不動産賃貸事業に進出しました。現在は鋼管事業が売上高(23.3期)の98%を占める主力事業です。
鋼管事業は2次加工メーカーとしての位置付けです。品目別にはおおむね鉄1:ステンレス2の割合です。高炉メーカーから商社経由で仕入れた鋼帯を加工し、加工業者等の顧客に販売(一部は商社経由)しています。
ロールフォーミングという生産方式が強みで、連続に設置されたロール金型により、鋼帯を順番に曲げ、良い溶接を得るために円形に成形することができます。プレス成型の製品に比べ、当社製品は複雑な形状を実現でき、長尺物の生産に有利、コストパフォーマンスが良い、品質が安定している等の競争力を有しています。
業績的には14.3期~21.3期の期間、営業利益は7億円台~21億円台の推移でした。株価(修正後)的には2007年4月に4,160円の高値を付けた後は、2018年1月につけた2,816円が高値でした。
その後、営業利益は22.3期33億円、23.3期46億円と以前よりステージが上がった水準となり、純利益ベースで過去最高益更新となっています。販売価格の引き上げや、鋼材市況の高止まり等が要因のようです。
■業績への不透明感は後退?予想配当利回り4.2%
2024.3期の会社見通しは慎重です。売上高は430億円(前期比7.4%減)、営業利益18億円(同61.1%減)の見通しです。内需の不透明感や、販売価格の天井感を織り込んだ形です。8/9(水)発表の1Q(23.4-6月期)決算では、売上高115億円(前年同期2.8%減)、営業利益6.2億円(同47.0%減)で、会社予想通り厳しい年度となる予兆が表れているようです。
ただ、販売価格自体は想定したほど悪くなかったようで、中間期の会社予想営業利益は7→10億円に上方修正されました。株価は8/10(木)には一時2,882円まで上昇し、2018年1月以来の高値水準を上回ってきました。足元業績への不透明感は後退してきたようです。
会社側は、本年5月に配当政策の基本方針を変更し、配当性向については50%を目途にするとしています。今期は中間配当は0円、期末配当120円を計画しています。予想配当120円に対し株価(9/5終値)2,832円で予想配当利回りは4.2%の計算です。また前期末純資産322億円に対し、時価総額は171億円前後であり、PBRは0.5倍を超える程度と割安感の強い状況です。
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