押し目を狙いたいAI関連銘柄は?
投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実
2023/09/13
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証グロース市場・スタンダード市場の中小型株を中心に、好業績が期待される銘柄や、投資家の皆様が気になる話題についてわかりやすくお伝えします。
新興株ウィークリー
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押し目を狙いたいAI関連銘柄は?
9月相場も半ばに差し掛かってきました。市場別の指数終値(9/12)を前月末終値と比較した騰落率は、東証プライム市場が+2.1%、東証スタンダード市場が+1.4%、東証グロース市場が-2.3%と、グロース市場の「一人負け」状態になっています。
同期間、米10年国債利回りは4.10%→4.28%に上昇しており、米金利上昇に対して警戒が続いています。さらに、読売新聞における植田日銀総裁の単独インタビュー(9/9付)で、同総裁がマイナス金利解除を検討し始めたと受け止められる発言をしたことから、国内金利も上昇傾向となりました。足元、金利上昇に弱いグロース株には逆風が吹き続けているとみられます。
こうした中、グロース系の銘柄が多いAI(人工知能)関連銘柄も、やや人気が離れる状況になっています。SBI証券のテーマ株投資ツールである「テーマキラー!」において、AI関連銘柄や生成AI関連銘柄に採用されている銘柄は、軟調な株価推移となったものも散見されました。日銀のマイナス金利解除を懸念する空気(国内の金利上昇懸念)は当面残るとみられ、AI関連銘柄への逆風も吹き続けるかもしれません。
ただ、こうした逆風はAI関連銘柄の投資チャンスを提供するかもしれません。AIの進歩は今後さらに加速し、世界経済に大きな変化をもたらすとみられ、AI関連銘柄の中には大きく成長する銘柄もでてきそうです。
そこで、今回の「新興株ウィークリー」では押し目買いの対象になり得るAI関連銘柄を抽出すべく、以下のようなスクリーニングを行なってみました。
(1)東証スタンダード市場または東証グロース市場に上場
(2)9/11(月)まで20営業日の1日当たり平均出来高が2万株以上
(3)時価総額1,000億円未満
(4)SBI証券Webサイトの銘柄検索ウィンドウに「人工知能」または「生成AI」「チャットボット」と入力した時に出力される銘柄であること、またはSBI証券のテーマ株投資ツールである「テーマキラー!」において「AI」または「生成AI」関連銘柄に扱われていること
(5)今期会社予想営業利益が増益予想
(6)直近の四半期営業利益が黒字転換、または四半期累計営業利益の進捗率が標準*以上
*「標準」は、たとえば第3四半期累計営業利益の場合、1年間の4分の3で75%が「標準」とする。第1四半期営業利益の場合、1年間の4分の1で25%。第2四半期累計営業利益の場合、1年間の2分の1で50%
図表の銘柄は、(1)~(6)のすべての条件を満たしており、掲載はコード番号順となっています。
【参考】 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移
【参考】 9/5(火)~12(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄
■図表 押し目を狙いたいAI関連銘柄は?
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名 | 株価 (9/12・円) |
今期会社予想営業増益率 | 備考 |
2354 | 2354 | 2354 | 2354 | YE DIGITAL | 691 | 20.9% | 安川電機(持株比率38%)から分離されて設立。ビジネスソリューションとIoTソリューションの2本柱。エンジニアリング系AIを展開。業績予想上方修正 |
3652 | 3652 | 3652 | 3652 | ディジタルメディアプロフェッショナル | 2,432 | 454.3% | ヤマハ発動機、レスターHDが大株主。精細画像の描画に必要なハードウェアIPやソフトウェアIPを開発し、半導体・最終製品メーカーに販売。AI向けも展開 |
3773 | 3773 | 3773 | 3773 | アドバンスト・メディア | 1,581 | 11.0% | 音声認識技術AmiVoice(アミボイス)を組み込んだソリューション開発やアプリケーション販売等。1Qは前期比 (営)13.6%増益 |
3993 | 3993 | 3993 | 3993 | PKSHA Technology | 2,816 | 8.6% | 日本のAI研究第一人者である東大松尾研究室で博士号を取った上野山氏が設立。AI研究・開発の成果を企業に還元し、DXや業務の高度化を実現 |
4258 | 4258 | 4258 | 4258 | 網屋 | 2,053 | 21.4% | 中小企業など顧客が抱えるサイバーセキュリティ上のすべての課題に応える。「内部不正AIパック」は、事前にセットすれば、AIが自動的に異常を検知 |
4414 | 4414 | 4414 | 4414 | フレクト | 3,725 | 114.3% | 企業のDXを支援。IoTやAIについて、実際につながる顧客体験として形にすることを重視。今期は(営)利益倍増を目指す |
4476 | 4476 | 4476 | 4476 | AI CROSS | 1,442 | 11.9% | AI等の先進テクノロジーや5Gシステムを活用し、コミュニケーションの次元を高め、業務効率化や、働き方の革新を支援。B2C事業者にSMS配信プラットフォームを提供 |
4736 | 4736 | 4736 | 4736 | 日本ラッド | 798 | 72.7% | エンタープライズソリューション(各種システム受託開発他)、IoTインテグレーションが2本柱。米AI Dynamics社と業務提携し、AI自動開発ツールのNeoPulse®を展開 |
5038 | 5038 | 5038 | 5038 | eWeLL | 3,875 | 26.9% | 訪問介護ステーション向けに業務支援SaaSを提供し、事務作業、情報共有、移動時間等の削減に寄与。AIを用い、患者の情報から看護計画を提案 |
5578 | 5578 | 5578 | 5578 | ARアドバンストテクノロジ | 2,440 | 28.4% | コンサルティング・要件定義から、基本・詳細設計、製造、各種テスト、システム移行、保守・運用まで総合的にサービス。AIを活用したサービスを多数提供 |
9558 | 9558 | 9558 | 9558 | ジャパニアス | 2,929 | 22.2% | IT、通信業界、ものづくり業界等を顧客に、オンサイト型(常駐型)および受託開発を提供。ソフトウェア、インフラ、メカトロニクス、エレクトロニクス、AI等が事業領域 |
- ※Bloombergデータ、会社公表データ、各種報道等をもとに、SBI証券が作成
- ※会社予想営業増益率は前期比
一部掲載銘柄を詳細に解説!
■YE DIGITAL(2354)~安川電機の情報処理部門が源流。製造業の経営強化に貢献
★週足チャート(3年)
- ※データは9/12(週足) 15:00時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■AI技術と製造現場の経験が融合
工場の自動化(FA)に取り組む安川電機(23.2末の持株比率は38%)の情報処理部門が源流で、1978年に分離独立しました。
ビジネスソリューション(23.2期売上構成比74%)では、世界水準のDX推進力をベースに、データの一元管理等により、企業の経営を強化しています。また、IoTソリューション(同26%)では、AIやデータ分析技術を用い、あらゆるビジネスの現場に良い変化をもたらそうとしています。
同社のAIは「Paradigm」と呼ばれ、AI技術と安川電機由来の製造現場における経験が融合したものです。装置の故障を予知したり、機器の異常を感知したり、製品の良/不良品を判定したり、熟練者のノウハウを継承することが可能です。このため、製造現場における労働不足の解消や、コスト削減、生産性向上、顧客満足度向上、従業員満足度向上、安全性向上等の効果を得ることが可能になっています。
なお、安川電機への売上比率が40%、富士通が12%と高めになっています(23.2期)。
■24.2期の予想営業利益を上方修正
6/27(火)発表の24.2期1Qは売上高44億円(前年同期比38%増)、営業利益1.7億円(前年同期は0.4億円赤字)と好調な出足でした。8/25(金)には通期業績見通しを上方修正し、会社予想営業利益は10億円から11億円に上方修正されました。
中期計画において24年度(25.2期)の営業利益は15億円(上方修正後営業利益に対し36%増)と予想されています。その実現に向けて重要な一歩になったとみられます。
株価は業績予想の上方修正を受け、8/28(月)に740円の年初来高値を付けました。Quickベースでの予想PERは17.9倍(9/12)ですが、24.2期の増益が見通せることに加え、ROEも17%あり、割高感はなさそうです。今後熟練労働者の不足等が問題になりそうな中で、同社のソリューションに対するニーズも高まりそうです。
■日本ラッド(4736)~大企業向けのシステムインテグレータ
★週足チャート(3年)
- ※データは2023/9/12(週足)15:00時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★四半期業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■大企業向けの老舗システムインテグレータ
創業50年超、老舗のシステムインテグレータです。主な顧客層として、大企業の法人、医療施設、警察などの公共施設を挙げています。
▹エンタープライズソリューション事業
【売上構成比63%、(営)利益構成比67%、23.3期】
ソフトウエアの受託開発とシステムコンサルがメインです。kintone (キントーン)* による業務アプリ開発や物流システム、電子図書館システム等の開発・構築を行っています。
*サイボウズが提供する法人用業務用アプリの作成クラウド
▹IoTインテグレーション事業
【売上構成比37%、(営)利益構成比33%、23.3期】
ハードウェアを起点としたシステム製品の開発販売、組込系システムの受託開発などを展開。大規模病院の医療情報システムや車載情報システム等を手掛けています。
また、AI関連事業としては、2018年に米AI Dynamics社(旧Dimensional Mechanics Inc.)とアジア・ソリューション&テクノロジーパートナーとして世界初の業務提携を発表。AI自動開発ツールのNeoPulse®を展開しています。
同ツールでは、AIを活用して業務効率化やコスト削減を実現するためのカスタムAIモデルが作成可能です。機械学習の専門知識はなくとも導入が可能で、産業や業務問わずどこでも作動する点が特徴です。従来AI技術者が行っていた作業をAIが自動化しており、「AI が AI を生む」ソリューションとしてリリースされています。他には、AI電話対応システム「トルテル」やTRIS社と共同展開のAI自動コード変換サービスなどがあります。
■株価上昇の余力あり?
業績の傾向は下期、中でも4Q(1-3月期)偏重型です【※左図参照】。対して、1Q(4-6月期)は最も利益が低水準であることがほとんどです。
今期1Q(23.4-6月期は)は売上高9.3億円(前年同期比25%増)、営業利益は0.8億円(前年同期は0.34億円の赤字)で通期計画に対する進捗率は53%と大幅増益を達成しました。株価も同決算発表後、大幅高となっています。
9/12(火)時点で株価は798円ですが、今期計画と同水準の業績だった17.3期と18.3期は1,000円付近に位置していました。直近3年で見た場合の価格帯別売買高のボリュームゾーンは900円~950円であり、さらなる上昇の余力を残しているとみられます。
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