23年に株価が上昇し、24年も上昇期待の中小型株12選
投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実
2023/12/20
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証グロース市場・スタンダード市場の中小型株を中心に、好業績が期待される銘柄や、投資家の皆様が気になる話題についてわかりやすくお伝えします。
新興株ウィークリー
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23年に株価が上昇し、24年も上昇期待の中小型株12選
師走相場も残すところ8営業日(12/20~12/29)となりました。東証グロース市場指数は11月に上昇した反動で、12月は下落傾向となっていましたが、ここにきて落ち着きを取り戻してきたようです。
12/13(水)まで実施されていたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、市場の注目点が、利下げをいつから開始するか、どれくらいのペースで利下げするのかに変わり、米金融引き締め局面の実質的な終了を印象付けました。12/19(火)まで実施の日銀金政策決定会合でも、YCC(長短金利操作)の廃止や、政策金利の引き上げが見送られました。
後者においては、米政策金利の引き下げ前に慌てて政策変更することは「不適切」と述べたことや、「チャレンジング」という言葉は「一段と気を引き締めて」という意味であったと解説されました。円安一服で輸入物価が低下し、来年にかけて物価上昇圧力が弱まる見込みであり、日銀が政策変更する可能性は当面後退したとみられます。
米国の金利低下基調、国内の金融緩和長期化を受け、東証グロース市場の投資環境は明るさを増してきたように見受けられます。一方、東証スタンダード市場には割安感の修正というテーマが追い風になりそうで、12月前半の調整も限定的でした。米国では、世界最大の小型株指数である「ラッセル2000」が11月・12月と上昇基調です。日本の中小型株市場についても、ここから来年にかけ、期待感が醸成されてきたように思われます。
そこで、今回の「新興株ウィークリー」では、2023年にそこそこ堅調に推移した銘柄の中から、2024年も活躍を見込める銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。
今回のスクリーニング条件は以下の通りです。
(1)東証スタンダード市場、または同グロース市場に上場
(2)年初来の株価上昇率(12/18時点)が25%以上、100%未満
(3)年初来の1営業日当たり平均出来高が5万株以上
(4)次の四半期決算発表が第1四半期となる8月、9月、10月決算銘柄を除く
(5)今期会社予想営業増益率が10%超
(6)四半期累計営業利益が以下のいずれかの条件を満たしていること
・前年同期比で黒字転換
・前年同期比で100%超の増益、かつ増益率が今期会社予想営業増益率を上回っている
(7)四半期累計営業利益の通期会社予想営業利益に対する進捗率が「標準」以上(脚注参照)
(8)時価総額(12/18時点)を今期会社予想営業利益で割った数字が20倍未満
図表の銘柄は、上記の条件をすべて満たしています。掲載は(2)の年初来株価上昇率の順になっています。
(2)において、年初来株価上昇率の下限を25%とした理由は、TOPIXの年初来上昇率22%(12/18時点)を目安にしたためです。また、上限を100%未満とした理由は、来年の反動安を警戒したためです。
【参考】 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移
【参考】 12/12(火)~19(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄
■図表 23年に株価が上昇し、24年も上昇期待の中小型株12選
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名 | 株価 (12/18・終値) |
年初来株価上昇率 | 営業利益進捗率 |
4231 | 4231 | 4231 | 4231 | タイガースポリマー | 800 | 99.0% | 60.9% |
7105 | 7105 | 7105 | 7105 | 三菱ロジスネクスト | 1,356 | 94.0% | 56.8% |
7455 | 7455 | 7455 | 7455 | パリミキホールディングス | 458 | 72.2% | 87.7% |
2687 | 2687 | 2687 | 2687 | シー・ヴイ・エス・ベイエリア(2) | 659 | 63.9% | 65.6% |
2435 | 2435 | 2435 | 2435 | シダー | 273 | 61.5% | 56.2% |
6557 | 6557 | 6557 | 6557 | AIAI グループ | 853 | 47.3% | 58.7% |
7287 | 7287 | 7287 | 7287 | 日本精機 | 1,137 | 44.7% | 74.9% |
3856 | 3856 | 3856 | 3856 | Abalance(6) | 3,515 | 43.5% | 29.6% |
4619 | 4619 | 4619 | 4619 | 日本特殊塗料 | 1,162 | 35.7% | 50.1% |
1712 | 1712 | 1712 | 1712 | ダイセキ環境ソリューション(2) | 1,079 | 30.9% | 68.2% |
8927 | 8927 | 8927 | 8927 | 明豊エンタープライズ(7) | 234 | 28.6% | 30.0% |
6292 | 6292 | 6292 | 6292 | カワタ | 1,039 | 26.2% | 51.9% |
- ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
- ※年初来株価騰落率は2023/12/18終値を、2022年末の終値と比較した騰落率。
- ※進捗率は四半期累計営業利益を通期会社計画営業利益で割った数値。「標準」は明豊エンタープライズおよびAbalanceのみ25%で、他の銘柄は50%。
- ※銘柄名右横カッコ内の数字は決算月で、数字のない銘柄は3月決算。
一部掲載銘柄を詳細に解説!
■三菱ロジネクスト(7105)~世界の物流シーンにソリューションを提供するグローバル企業
★日足チャート(6ヵ月)
- ※データは2023/12/20(日足)11:00時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■フォークリフトを中心に物流機器等を開発・製造・販売
トラックからの荷下ろし、積み込み、収納の他、荷物の運搬に幅広く使われるフォークリフトを開発、製造、販売しています。その他、クレーン、自動倉庫、ピッキングリフト等の製品、フォークリフト移動管理シシテム等のソリューションも提供しています。
三菱重工業(7011)が親会社(23.9末保有比率64.6%)です。単に資本関係にあるのみならず、三菱重工業の物流機器自動化・知能化ソリューションを活用しています。
23.3期の地域別売上構成比は、日本28.7%、米州48.1%、欧州16.8%、アジア・中国6.4%です。また営業利益(同期)の78.6%は海外というグローバル企業です。
業績は順調。24.3期2Q(累計)の売上高は3,437億円(前年同期比23%増)、営業利益は227億円(前年同期は9億円)でした。価格の適正化が増益分のうち185億円を占めました。価格適正化の上振れや円安が見込まれ、上記2Q決算発表時に、通期業績見通しを上方修正。売上高6,300億円→6,900億円(前期比12%増)、営業利益250億円→400億円(同171%増)と修正されました。
■「2024年問題」での活躍に期待
25.3期以降は、世界経済が減速傾向にあること、円安効果が薄まる可能性があることに注意です。
また、同社はこれまで、東証スタンダード市場の上場基準を流通株式比率の面(25%以上)で満たしていませんでしたが、本年6月に基準を満たしたことを発表しています。
三菱重工業との「親子上場」は引き続き話題になりそうです。
今期会社予想EPS(1株利益)215円68銭に対し、12/19終値1,387円で計算された予想PERは6.8倍です。フォークリフト大手である豊田自動織機(6201)の予想PERは15.9倍(12/19)に比べ、大きく見劣りしており、資本政策の見直しが課題視されるかもしれません。
物流分野での人手不足が深刻化する「2024年問題」では、その克服に貢献できる企業のひとつとして話題になりそうです。同社は、親会社の三菱重工の他、NTTデータG(9613)、島津製作所(7701)他と実証実験を展開。この10/1には、物流ソリューション事業を統括する組織を立ち上げました。物流分野は同社の本業分野だけに、活躍に期待したいところです。
■パリミキホールディングス(7455)~大規模なブランド改革に成功。「メガネ屋らしくないメガネ店」
★週足チャート(1年)
- ※データは2023/12/20(週足)11:00時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■「メガネ屋らしくないメガネ店」
国内637店舗、海外94店舗を運営する大手眼鏡屋です(23.3期)。2016年に澤田氏が主力ブランド「パリミキ」社長に就任後、大規模なブランド改革に成功。2022年4月、「株式会社三城」から「株式会社パリミキホールディングス」に社名を変更しました。
「お客さまお一人おひとりにお合わせする」が同社のDNAです。眼鏡や関連部品のラインナップの豊富さの他、地域ごとの特性を生かした店舗スタイルに大きな特徴があります。
渋谷や原宿などの都市では、エンタ―テインメント型店舗を運営。一見、カフェや雑貨店と見間違うレベルです。1950年代のアメリカンダイナーや、1800年代後半から1900年年代前半のパリをイメージしたスタイル等で、店内ではロック・ジャズが流れています。売上の半分以上がサングラスです( 日本のサングラス市場では、個店の平均売上が全体の3%程 @同社コメントより )。
郊外では、木材を使用したロッジ型店舗を運営。カフェを併設したり、子供用の滑り台を設置したりと幅広い世代が来店しやすいスタイルです。
海外事業では、社名の由来でもあるパリには1973年に出店。現在は、人口ボーナス期が予想される東南アジアを中心に注力しています。眼科専門病院とメガネ店の一体経営などに取り組んでいます。海外部門は全売上高(23.3期)の12%を占めており。長らく赤字が続いていましたが、額は大幅縮小傾向です。今期(24.3期)を目途に黒字化見込みでしたが、テナントオープン延期等でもうしばらく時間がかかりそうとのコメントが2Q決算発表時に公表されています。
■今期計画は大幅上方修正!IR活動も強化中
格安眼鏡店との競合が激しくなっていった上、コロナ禍も重なり16.3期~21.3期は7期連続で最終赤字でした。その後、店舗の大規模改革や不採算店舗の閉店、行動規制の撤廃等で業績は回復傾向です。前期(23.3期)は純利益5億円と黒字転換を成し遂げました。
2Q決算発表時、今期(24.3期)業績計画を以下の通り、大幅な上方修正を実施しています。
売上高 : 483億円 → 494億円
営業利益 : 10億円 → 18億円
経常利益 : 12億円 → 23億円
純利益 : 6億円 → 16億円
営業利益は、外出機会の増加やインバウンド需要の取り込みで、サングラスを中心に売上が好調でした。他の利益項目でも、大きな広告宣伝費の削減や為替差益の計上などが業績を押し上げました。
IR活動も強化しています。決算説明会は年に2回、会場開催または動画配信で行われ、決算説明資料と書き起こし記事の提供しています。また、個人投資家向けにも決算説明会と会社説明会を計5回ライブ配信(後ほどオンデマンド配信)するなど積極的な姿勢が窺い知れます。中計や資料の英文開示・公表やIRコンテンツの拡充・刷新などにも取り組みを実施中です。PBRはいまだ1倍を割れており、その解消に期待がかかります。
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