株高ムードに水を差すまさかの展開とは?

株高ムードに水を差すまさかの展開とは?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/12/12

日経平均は大幅続落。円高進行による向かい風が強い

12月第1週(12/4-8)末の日経平均は、前週末比1,123円65銭安(-3.36%)と週足ベースで大幅続落。

円高が東京市場の悪材料となった週でした。日銀の植田総裁の発言を受け、12/8(金)の朝方には、前日比5円以上の円高が進み、1ドル141円をつける場面もありました。一方で、米国ではFRB(連邦準備制度理事会)による来年からの利下げ開始観測が広がり米長期金利は3ヵ月ぶりの水準まで低下。日米金利差縮小への思惑から円高ドル安が進行し、輸送機器や機械などの外需株が下げを主導。
同期間、TOPIX業種別指数のワーストトップは鉱業でした。原油価格が世界的な景気先行き懸念等を背景に、12月第1週目までで週足ベースで7週続落しています。米債券利回り低下によるドル指数の下落も、原油安に影響を与えた(※)と考えられます。反面、電気・ガス、空運、陸運などの内需向けセクターはプラスで終えました。

※かつては、ドル指数と原油価格は逆相関の傾向がありましたが、近年は順相関の傾向が強まっています。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(12/1~8、図表7)の首位は、東京電力ホールディングス(9501)でした。
柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に向け、運転禁止解除の動きが報じられたことで思惑買いが入りました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(12/1~8、図表8)の首位は、医療従事者専用サイトを運営するエムスリー(2413)です。福利厚生代行のベネフィット・ワンのTOBを1株1,600円で実施中でしたが、これに対抗する形で第一生命が1株1,800円でTOB実施を発表。TOB合戦を巡り、財政負担が増加する等の懸念が広がりました。

期中の米国市場では、凪相場が続いた形です。週最終営業日の11月雇用統計の結果発表を睨む展開でした。7日(木)まで他に大きな動意材料の発生もなく、迎えた11月雇用統計は波乱なく通過。非農業者数雇用数は前月比19.9万人増(予想18.5万人増、前回値15万人増)で前回値・予想をともに上振れました。しかし、自動車メーカー従業員の職場復帰が非農業者数雇用数を3万人分押し上げると想定されていたため、特殊要因等の影響を除くと、「FRBによる金融政策見通しを揺るがす程のものではない」と市場では受け止められたもようです。安心感が広がり、8日(金)に主要3指数は続伸。週明けの11日(月)まで3日続伸となり、主要3指数は揃って年初来高値を更新しています。

米株高と円高一服を受け、週明け11日(月)の日経平均株価は483円高と大幅反発し、12日(火)も買い先行でスタートしました。この反発傾向は続くのでしょうか。

図表1 日経平均・NYダウの動き

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(12/1~12/8)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(12/1~12/8)

株高ムードに水を差すまさかの展開とは?

米国市場は12/11(月) にNYダウとS&P500、SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)が揃って年初来高値を更新。欧州市場でもドイツのDAX指数が連日で高値を更新し、Stoxx Europe600(汎欧州株指数)についても、高値を更新してきました。欧米市場がまさに年末ラリーの様相を呈しているのに対し、日経平均は年初来高値(33,753円)には少し届いていないものの、それでも今週に入り、しっかりとした値動きとなるなど、欧米の株高をキャッチアップする動きが見られます。

こうした株高を支えているのは、米国やユーロ圏、英国において金融緩和観測が強まっていることでしょう。前回のFOMC(連邦公開市場委員会、10/31~11/1開催)において、金融緩和的(ハト派的)なスタンスが示されて以降、米国の金利は低下へ転じました。そして、その後に発表された重要な経済指標において米国経済の減速、インフレの鈍化を示す指標が相次いだことで、金融緩和期待が高まって金利低下が進みました。現状、市場は米国金融政策については、既に利上げ局面が終了し、来年には積極的な利下げへ転じることで景気を下支えしていくとの見方が強まっています。

図表9 主要国・地域の10年国債利回り

実際、市場が予想するFFレート(図表10)を見ると、来年5月のFOMCから利下げが始まり、年末には5回(0.25%pt×5回)近くの利下げが織り込まれています。かなり積極的な利下げが織り込まれており、これについては流石に、期待が先行しすぎているとの見方があるようです。12/1にパウエルFRB議長は講演の中で、利下げ転換の議論をするのは「時期尚早だ」と述べ、市場で広がる早期利下げ期待をけん制しました。しかし、それでも尚、積極的な利下げ期待が根強く残っており、こうした期待を修正することは容易ではないのかもしれません。

そのような中で米国では12/12~13にFOMCが開催されます。これが今年最後の金融政策会合ということもあり、年末ラリーが継続するか否かを占う上でも重要なポイントとなりそうです。政策金利(FFレート誘導目標)については、市場で利上げの可能性がほとんど織り込まれていないことを考慮すると、据え置きとなりそうです。

一方、注目されるのはFOMCメンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)、および会合後に行われるパウエルFRB議長の記者会見の内容でしょう。ドットチャートについては、現状の政策金利(5.25-5.50%)から、来年末に向けて1回の利下げ(0.25%pt)が見込まれていますが、これが新たにどういった水準となるかがポイントになりそうです。

24年末のドットの引き下げ幅が小さいようだと、市場の過度な利下げ期待が揺り戻されることになりそうです。また、FOMC後に行われるパウエルFRB議長の記者会見では、改めて市場の利下げ期待をけん制する発言が行われるかもしれません。前述した12/1の講演に比べて、更に強い姿勢で市場の期待をけん制する可能性があります。

図表10 市場が予想する政策金利見通し(米国)

また、12/14(木)には、ユーロ圏でECB理事会、英国で金融政策委員会(MPC)が行われます。いずれも、米国に歩調を合わせて金融緩和期待が高まっています。特にユーロ圏では来年10月の会合までに4回強(0.25%pt×4回)の利下げが織り込まれています(図表11)。

ユーロ圏についても、現状の利下げ期待は行き過ぎとの見方があります。ラガルドECB総裁は、11/27(月)に欧州議会において、インフレは今後数カ月で再び上向く可能性が高い、とインフレへの警戒を堅持しています。また、ユーロ圏の金融政策は、インフレへのアレルギーが強いドイツなどを中心にタカ派色が強く、今回の理事会を通じて、ECBがタカ派姿勢を示すことで、市場の緩和期待の修正を図ることも想定されます。

このように、ユーロ圏や米国では、タカ派姿勢が示されることで市場へのけん制が予想される一方、市場の金融緩和期待も相当に根強いものを感じることが出来ます。したがって、金融当局者による市場へのけん制が失敗すれば、少なくとも欧米では年末に向けて、金利低下と株高を阻害する材料はなくなると考えられます。値がさ株など成長株(グロース株)の影響を受けやすい日経平均としては、金利低下と欧米株高が追い風となり、年初来高値の更新はもとより、34,000円の大台到達も視野に入ることでしょう。

ただし、逆にユーロ圏や米国の金融当局者による市場へのけん制が勝るようであれば、市場の緩和期待は大きく揺り戻されることが想定されます。その場合、低下基調にあった主要国の金利は上昇へ転じるため、年末ラリーが腰折れする可能性に注意する必要がありそうです。

図表11 市場が予想する政策金利見通し(ユーロ圏、英国)

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