決算発表が一巡へ!好決算発表の中小型株を探る《後編》

決算発表が一巡へ!好決算発表の中小型株を探る《後編》

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2024/02/21

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決算発表が一巡へ!好決算発表の中小型株を探る《後編》

東京株式市場の上昇基調が続いています。日経平均株価は2/13(火)~2/20(火)の期間も1.9%上昇。2/20(火)時点で、年初来の上昇率が14.6%に達しました。2/16(金)には、一時、過去最高値まで50円に迫る38,865円まで上昇しました。

東証グロース市場指数はようやく、日経平均株価をアウトパフォームする展開になりました。2/13(火)~2/20(火)に、東証グロース市場指数は5.5%上昇しました。2/16(金)・2/19(月)の上昇が大きくなっており、決算発表が2/14(水)までで一巡し、業績変動リスクが後退したことで、買いやすくなったことが一因とみられます。また、日経平均株価の最高値更新が視野に入ってきたことで、物色対象の変化をにらんだ投資家の買いが入った可能性もありそうです。

東証グロース市場指数はテクニカル的に、年初来形成されてきた三角保ち合いを上放れた形になっています。さらに、昨年11月の小天井を抜けてきたことで、ようやく本格的な上昇局面に入ってきた可能性が強そうです。また、東証スタンダード市場指数もジリ高形状が続いています。中小型株市場全般に、投資環境は改善してきたと言えそうです。

仮に、中小型株市場も全般的に強気局面に入ってきたとみなすならば、好決算銘柄が素直に買われる展開も期待できそうです。前回の「新興株ウィークリー」では、2/9(金)までに決算発表を終えた銘柄から好業績銘柄を抽出しご紹介しましたが、ご紹介した銘柄はおおむね、その後も堅調に推移しているようです。

今回の「新興株ウィークリー」は「好決算発表の中小型株を探る」の後編です。中小型株の決算発表が2/13(火)・2/14(水)に多く、分析対象銘柄が多かったため、前回より条件をやや厳しくしました。

(1)東証スタンダード市場、またはグロース市場上場銘柄

(2)2/19(月)までの20営業日で1日当たり平均出来高が2万株以上

(3)2/13(火)または2/14(水)に決算発表を実施

(4)3月決算銘柄(広義の金融は除く)

(5)直近四半期(23.10~12期)・・・前年同期比で50%超の営業増益、かつ最終黒字

(6)四半期累計(23.4~12期)・・・前年同期比で50%超の営業増益、かつ最終黒字

(7)通期業績予想が下方修正されていない

(8)24.3期の通期会社予想営業増益率が20%超

(9)信用規制銘柄に該当していない

図表の銘柄は上記の条件をすべて満たしています。掲載の順番は、(5)にある直近四半期の営業増益率が高い順となっています。

【参考】 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移

【参考】 2/13(火)~2/20(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

■図表 決算発表が一巡へ!好決算発表の中小型株を探る《後編》

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株価
(2/20・終値)
23.10~12期
営業増益率
四半期累計
営業増益率
4488 4488 4488 4488 AIinside 9,440 449.1% 87.6%
3979 3979 3979 3979 うるる 1,700 387.8% 1806.8%
3551 3551 3551 3551 ダイニック 754 328.9% 60.2%
4231 4231 4231 4231 タイガースポリマー 1,162 319.8% 4986.6%
3652 3652 3652 3652 ディジタルメディアプロフェッショナル 3,315 202.2% 黒転
4651 4651 4651 4651 サニックス 302 157.0% 117.7%
6226 6226 6226 6226 守谷輸送機工業 1,078 143.5% 249.0%
9268 9268 9268 9268 オプティマスグループ 3,725 125.4% 107.1%
7561 7561 7561 7561 ハークスレイ 894 120.4% 53.3%
2708 2708 2708 2708 久世 2,473 71.1% 208.9%
6637 6637 6637 6637 寺崎電気産業 2,305 65.9% 90.7%
7455 7455 7455 7455 パリミキホールディングス 427 50.2% 186.6%
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
  • ※四半期累計は、23.4~12期が対象

一部掲載銘柄を詳細に解説!

■AIinside(4488)~AIを用いた手書き文字認識、データ化サービス。AI関連株の一角

★週足チャート(5年)

  • ※データは2024/2/21 (週足)9:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■AIを用いた手書き文字認識、データ化サービス。市場シェアNo.1

2015年に人工知能の研究開発者が創業。翌、2016年には「NVIDIA Inception Program」のパートナー企業として認定されています。2019年、東証マザーズ市場(現グロース市場)に新規上場しました。

「DX Suite」という、あらゆる紙の書類を、誰でも簡単に、すぐにデータ化できるサービスが主力製品です。AIを活用することで、高精度な文字認識が可能となりました。

18.3期末時点で10社であった「DX Suite」の導入社数は、現在2,003社まで拡大。AI-OCR*市場でのシェアは、64%に上ります(同社資料より)。文字認識の精度の高さはもちろん、わかりやすい操作画面、あらゆる非定型帳票への対応、RPA(ロボットによる業務自動化)製品をはじめとした様々なシステムとの連携が可能な点などが人気の理由です。生産年齢人口が減少する一方、データ入力や書類の電子化などの非IT系BPO市場は今後も拡大が見込まれます。

*AI-OCR   …AI(人工知能)とOCR(光学文字認識)技術を組み合わせた技術。文字認識技術の精度の高さから、伝票・帳票等の入力作業の効率が大幅改善できる。

ノーコードでAIを作成できる「Any Data」、2023年にはあらゆる業務を汎用的に支援するAIエージェント「Heylix」のサービスを提供開始。「DX Suite」への依存から脱却を図るため、業容の拡大に取り組んでいます。

定期的な収益を得られるリカーリング型売上が全体の9割を占めています(23.3期)。

販売スタイルでは、パートナー施策を展開。自社営業に依らず、販売パートナー(大日本印刷、NTTデータ等)が代理店となるような形態です。

■AI関連株として株価再浮上!?

2019年の新規上場直後、株価は急騰。現在の株価から10倍超、96,000円をつける場面もありました。2021年、大口販売パートナーから契約を一部更新しないとの通知を受け、業績予想の大幅下方修正を実施。その後、堰を切ったように株価は急落。2年5ヵ月ほど1万円以下での推移が続いています。

AI相場が始まり、2023年後半から株価は再浮上を試す展開です。2/13(水)の24.3期3Q決算発表で、各利益項目の通期計画を大幅に上方修正し、株価が一段高しました。生産性・生産効率の改善、採用戦略の見直し等による費用の縮小が背景にあるもようです。

足元の株高では、AI関連株の一角として物色されてきた面もあります。そのため、米画像処理半導体エヌビディアの業績動向(決算発表は米国時間2/21)にも注意する必要がありそうです。

■うるる(3979)~労働力不足の克服に貢献。経常収益が拡大傾向

★日足チャート(6カ月)

  • ※データは2024/2/21 (日足)9:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■クラウドワーカーを利用しSaaSを提供

社名の由来は、かつて「エアーズロック」と呼ばれたオーストラリアの一枚岩「ウルル」です。「地球のヘソ」と呼ばれる世界の中心的存在になりたいという創業者の気持ちが込められています。

「CGS事業」では、クラウドワーカー(インターネットを通じて仕事を受注する人)を活用してSaaS(クラウドで提供されるソフトウェア)等を提供し、売上高の75%(23.3期)を占めています。

同事業のおよそ3分の2を占める入札情報速報サービス「NJSS(エヌジェス)」では、数百名のクラウドワーカーが約8,300の入札実施機関から情報を収集し、同社が入札・落札案件情報のデータベースを構築し、顧客の利用に供しています。

「NJSS(エヌジェス)」は、粗利率が91.7%(23.3期)と高いことや、サブスクリプション式の売上のため、解約率が低ければ売上高が次第に積み上がりやすいことが強みとなっています。原則、契約時に利用料金を前受け金として受領するため、フリーキャッシュフローへの貢献度も高い仕組みです。

その他「BPO事業」(23.3期の売上高構成比25%)では、クライアントのノンコア業務を受託し、クラウドワーカー等多様なリソースを利用し、ソリューションを提供しています。

■業績は拡大傾向

売上高は、16.3期以来8期連続で2桁成長を続け、特に直近3期は20%台の成長が続いています。

24.3期3Q(23.10~12期)は売上高14.7億円(前年同期比17%増)、営業利益3.3億円(同387%増)と増収増益を確保。CGS事業の順調な拡大で売上が増え、四半期ベースで過去最高の売上高を実現。中期計画に基づく投資抑制もあり、営業利益も四半期ベースで過去最高を記録しました。

SaaSからもたらされる売上高の貢献で、ARR(年間経常収益:毎年繰り返し得られると期待される売上)が24.3期3Q時点では42億円と前年同期比20%増えていることは心強い材料です。

24.3期3Q累計(23.4~12期)では売上高41億円(前年同期比17%増)、営業利益8.6億円(前年同期は0.45億円)と、やはり大幅増収増益を達成しています。24.3通期では、売上高60億円、営業利益13億円(前期は8百万円)が会社計画になっています。

なお、決算発表と同時に発表された月次情報(速報)では、月次経常収益が前年同期比17.8%増と拡大が続いています。

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