日経平均株価は4万円を超え、どこまで上昇するか?

日経平均株価は4万円を超え、どこまで上昇するか?

投資情報部 鈴木英之/栗本奈緒実

2024/02/20

日経平均は最高値に接近!エヌビディアの決算発表を待ち構える

2月第2週(2/12-16)の日経平均は、前週末比1,589円82銭高(+4.3%)となり週足ベースで3週続伸しました。

週内最終営業日の16日(金)の取引時間中には、38,865円をつけ90年1月以来の高値水準まで上昇。史上最高値の38,915円に間近に迫る展開となりました。同日、東証プライム市場の売買代金は6兆7,212億円と過去2番目まで膨らみ、盛り上がりを見せた格好です。英半導体設計のアーム(ARM)の決算発表に端を発した半導体関連株の上昇が前週から続いた他、堅調な企業業績や見通し、円安ドル高水準が維持されたことなどが押し上げ材料となりました。

同期間、米国市場はNYダウが▲0.1%、ハイテク株中心のナスダックが▲1.3%と軟調でした。期間中に発表された米1月消費者物価指数(CPI)と米1月生産者物価指数(PPI)では、インフレ圧力の根強さが示唆され、FRBによる早期利下げ開始期待が後退。16日(金)時点のFF金利先物市場では、3月FOMCでの政策金利据え置きを予想する確率が9割超にまで上りました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(2/9~2/16.図表7)の首位は楽天グループ(4755)でした。14日(水)に23.12期決算を発表。5期連続での最終赤字となったものの、携帯事業での損失額の縮小が好感されたもようです。他には、大手損保3社がランクイン。9日(金)の夜、昨年に業務改善命令が出された大手損保に対し、金融庁は政策保有株の売却を含めた業務改善計画の提出を要求をしたこと明らかとなりました。これに応じる形で、SOMPOホールディングス(8630)が政策保有株をゼロにする方針、東京海上HD(8766)もゼロ化の検討、MS&ADインシュアランスグループHD(8725)は売却ペースを速める旨を表明。ガバナンスの改善に対する期待感が高まりました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(2/9~2/16.図表8)の首位は、日本製紙(3863)でした。9日(金)の決算発表で、紙製品の需要減少を受け、24.3月期の業績見通しを下方修正したことが失望されました。その他も、決算内容が嫌気された銘柄が多数ランクインした格好です。

2月第3週(2/19‐22)の日経平均は小幅反落でスタート。週初の米国市場が休場で様子見気味となる中、現地時間21日(水)に半導体のエヌビディア(NVDA)が決算発表予定です。AI関連銘柄の代表格として、年初来の日米株高をけん引してきた同社の動向には注目が集まっています。ただ、既に高い期待感が募っており、これに応えるのは難しいのではという声も市場から聞こえてきます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(2/9~2/16)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(2/9~2/16)

日経平均株価は4万円を超え、どこまで上昇するか?

前項でも触れた通り、日経平均株価は2/16(金)に一時、過去最高値38,915円87銭(89年12月末)まであと約50円の水準まで上昇しました。2/16(金)終値時点で年初来上昇率は15%となっています。

(日経平均株価)=(日経平均予想EPS)×(同予想PER)

ここで、予想EPS(1株利益)は企業業績予想の良し悪し、予想PERは市場心理の強弱を示していると考えられます。日経平均株価の予想EPSは年初来4%の上昇、予想PERは10%の上昇であり、株価の上昇は予想PERの上昇が示唆している「市場心理の好転」がおもな要因となっています。

図表9は、日経平均株価と予想PERの関係を図にしたものです。日経平均株価の予想EPSは「コロナ禍」で一時急減しました。しかし、株価は予想EPSの急減を一時的なものとみなし、予想EPSの低下程には下がりませんでした。このため、予想PERは「コロナ禍」では20倍を超える「異常値」を示しました。しかし日経平均株価は、その他の期間、2023年半ば頃まではPER12倍から14倍前後の水準で推移してきました。

しかし、東証がPBR1倍割れ企業等に対策を要請(23年3月末)し、日本企業の資本政策が変化するとの期待が高まり、市場心理を示す予想PERは上昇に転じました。23年秋以降は予想PER16倍前後まで買われる場面もみられるようになりました。24年に入ると、新NISA(少額投資非課税制度)スタートによる資金流入観測等も加わり、外国人投資家の買い越し基調が強まり、予想PERが16倍を超える場面も出てきています。

そうした中、1月下旬~2月中旬に実施された23年10~12月期決算発表は、総じて好調な結果となりました。東証プライム市場銘柄の純利益は24.3通期、期初予想を3.5兆円上振れし、43.5兆円(前期比13%超)となる予想(日経報道)です。おおむね期初の日経平均採用銘柄の予想純利益を反映するとみられる昨年5/16時点の予想EPSは2,106円でしたが、2/16時点では2,365円と過去最高水準(週足ベース)まで上振れしています。

図表9にもある通り、緑色線で示した、予想PER12倍、14倍、16倍、18倍相当ラインも急上昇しています。このため、株価上昇の割に予想PERの上昇は限定的で、割高感が強まりにくくなっています。

単純比較はできませんが、日経平均株価が最高値を付けた89年末当時、上場企業の予想PERは60~70倍の高さまで買われていたとされます。その当時と比較すると、株価は企業業績の向上で十分説明が付く範囲内であるとみられます。

図表9 日経平均株価と予想PER12倍、14倍、16倍、18倍に相当する水準

上述したように今期予想EPS(1株利益)は2/16(金)時点で2,365円です。2/16(金)の日経平均株価前期実績PER18.2倍で割ると、

 38,487.24円÷18.2倍=2,114円

ですから、前期EPSの2,114円から今期予想EPS2,365円へは11%増益の計算になります。SBI証券が2/16(金)時点で、日経平均採用銘柄の純利益を計算(今期会社予想のない銘柄はBloombergコンセンサスを代用)すると、今期は前期比11%増益の予想であり整合性は取れているようです。

ちなみに、Bloombergコンセンサスでは日経平均採用銘柄の今期純利益は16%増益の予想であり、本決算で上方修正される余地が残っているようです。輸出企業で為替を保守的(現状より円高)にみている企業が多く、あと3ヵ月で極端な円高が進まなければ、日経平均の予想EPSも上振れる可能性が大きいと考えられます。

日経平均採用銘柄の来期予想純利益(Bloombergコンセンサス)は今期会社予想比で12%増、今期Bloombergコンセンサスとの比較で8%増と計算されます。来期10%増益は十分想定内であると言えそうです。

図表10は、2/16時点の予想EPSを基準とし、来期の予想増益率が、0%、5%、10%増益の場合、予想PERによって日経平均株価がどうなるのかをシミュレートしたものです。

例えば、来期5%増益で予想PERが現在とほぼ変わらない16倍であれば、日経平均株価は39,728円という計算です。上述したように10%増益が見込めるならば、予想PERが変わらず16倍でも41,616円です。少々楽観的かもしれませんが、10%増益で予想PER18倍ならば、日経平均は46,818円ものぞめます。

日経平均株価が過去最高値38,915円を超えて上昇するシナリオは、それ程無理を伴っていないと考えられます。

図表10 来期予想EPSと日経平均株価(シミュレーション)

図表11は、日経平均採用銘柄の来期予想純利益(Bloombergコンセンサス)が今期予想純利益(同)に対し、いくら増えると予想されているかを示しています。増える見込みの金額が大きい順に20銘柄を掲載しました。日経平均の予想増益率を大きく左右しやすい銘柄とお考え下さい。ある意味で、今後の株式市場のポイントになる銘柄と考えられます。

引き続き、半導体市況の強弱が、多くの会社に大きな影響を与えると考えられます。金融株や航空・宇宙関連の一部も上位に入っています。時価総額トップのトヨタ(7203)は意外にも、来期純利益は微減程度と市場では予想されており、ランクインしていません。また、ランキングトップのソフトバンクグループ(9984)の来期予想純利益は、大きく変動しやすいとみられ、その影響には注意が必要とみられます。

図表11 「来期増益」をけん引すると予想されている銘柄は?

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