本年最重要テーマ!?「2024年問題」に挑む中小型株

本年最重要テーマ!?「2024年問題」に挑む中小型株

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2024/02/07

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本年最重要テーマ!?「2024年問題」に挑む中小型株

米国では、主要テック株の決算発表や経済指標の底堅さ等が好感され、主要株価指標が高値圏の動きになっています。東京株式市場は、米国株の上昇に好影響を受けつつ、日経平均株価は36,000円を下値支持ラインとして値固めのような展開です。

物色面で投資家の関心は引き続き、大型株中心になっているようにみられます。企業改革を期待されている、あるいは高配当利回りを評価されている銘柄の多くが大型バリュー系の銘柄であり、中小型株はやや「蚊帳の外」です。米国で早期利下げ開始期待が後退し、金利上昇に弱いグロース株にやや逆風が強まっていることも影響していると想定されます。東証グロース市場指数は足元で一進一退の展開です。

ちなみに、現在決算発表が進行中ですが、東証スタンダード市場およびグロース市場上場の1千社以上が2/9(金)から2/14(水)の3営業日に発表が集中しています。中小型株は流動性が相対的に小さい分、業績発表の内容次第で、株価が大きく動くケースが多いです。そのため決算発表前は、様子見気分が強まる可能性がありそうです。

ただ、決算発表後は市場の話題や投資テーマに沿った物色がしやすくなってくるとみられます。「2024年問題」は、日本社会・経済が対応を迫られる最大の課題、投資テーマのひとつであるとみられます。

「2024年問題」は、「働き方改革」の一環として、本年4月以降、自動車運転業務の年間時間外労働の上限が960時間に制限されることで起こり得る様々な問題を指します。同政策により、輸送能力の減少等が予想されています。

経済産業省の「持続可能な物流の実現に向けた検討会(2023年8月 最終取りまとめ)によると、もし何の対策も施さなければ、輸送能力は2024年度に14.2%、2030年度に34.1%減少すると予想されています。また、営業用トラックの不足する輸送量は、同じ時期にそれぞれ4.0億トン、9.4億トンに達すると見込まれています。

輸送能力の減少により、輸送業者、荷主、消費者にそれぞれ以下のような問題点が発生する危険性が高まります。

★輸送業者・・・今まで通り輸送できない。人材が確保できない

★荷主‥・・・・必要な時に荷物を届けられない。輸送を業者に断られる場合も

★消費者・・・・宅配サービスの利便性低下。新鮮なものが手に入らない。

これらを克服するには、物流システムのDX、配送ルートの最適化、自動車・トラック以外の輸送手段への転換(モーダルシフト)等の対策が必要とみられます。

建設業界においても本年4月以降は原則、月45時間、年間360時間の時間外労働上限が適用されることになります。建設業界は運輸業界との関係も深いこともあり、やはり「2024年問題」は深刻な問題になりそうです。

そこで、今回の「新興株ウィークリー」では、2024年問題への対応に取り組む銘柄を抽出すべく、以下のスクリーングを行ってみました。

(1)東証スタンダード市場、またはグロース市場上場銘柄

(2)以下のいずれかに掲載され、「2024年問題」と関連性があるとみられること。

  ・「2024年問題」を特集したSBI証券の23年12月8日付「日本株投資戦略」に掲載された銘柄

  ・SBI証券のテーマ株投資ツール「テーマキラー!」に掲載

  ・SBI証券銘柄検索ウィンドウに「2024年問題」と入力して出力

(3)2/5(月)までの20営業日で1日当たり平均出来高が2万株以上

(4)直近四半期の営業損益が赤字ではない

(5)信用規制銘柄に該当していない

図表の銘柄は、上記(1)~(5)の条件をすべて満たしています。なお、掲載各社と2024年問題との関連性は、図表にて記載しています。

【参考】 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移

【参考】 1/30(火)~2/6(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

■図表 本年最重要テーマ!?「2024年問題」に挑む中小型株

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株価
(2/6・終値)
ポイント
2354 2354 2354 2354 YE DIGITAL 777 安川電機由来の製造現場の経験とAIが融合。倉庫実行システムで物流DXに展開
4371 4371 4371 4371 コアコンセプト・テクノロジー(2/13) 2,350 ITによるビジネス変革を総合的にサポート。大手建設業向けに開発実績
4391 4391 4391 4391 ロジザード(2/14) 1,855 クラウド在庫管理のリーディングカンパニー。2024年問題に関するウェビナーや資料公開等も積極的に行う
4492 4492 4492 4492 ゼネテック(2/14) 601 物流業・製造業向けに、生産性を向上させる3Dシミュレーションソフトウェアを展開
5254 5254 5254 5254 Arent(2/9) 4,955 建設業界のDXを推進するために顧客と共創でSaaSを開発
6319 6319 6319 6319 シンニッタン(2/13) 272 オーダーメイドで物流容器を作成。作業効率の向上や、コスト削減に効果あり
6540 6540 6540 6540 船場(2/14) 1,009 BIMに注力。建築物をコンピューター上の3D空間に構築し、企画・設計、施工、維持管理を一元的に管理し、2024年問題に対応
6551 6551 6551 6551 ツナググループ・ホールディングス(2/14) 864 小売・飲食等の採用をワンストップで代行。シーアールイー (3458)と共同で物流2024年問題に対応
7105 7105 7105 7105 三菱ロジスネクスト 1,534 島津製(7701)、NTTデータG(9613)と共同。物流2024年問題に対応し、荷役作業をIoTを用いて可視化。無人フォークリフトも
9029 9029 9029 9029 ヒガシトゥエンティワン 1,144 物流総合会社。関東・関西の中継地点として需要増が見込まれる、中部エリアに新規倉庫の建設を開始
9163 9163 9163 9163 ナレルグループ 3,345 建設ソリューション事業において、改正労働基準法(2024.4-)に先んじて対応
9171 9171 9171 9171 栗林商船(2/9) 1,026 内航船社。大型船や国内最大規模となる3,000台以上のトレーラーも保有し、海運一貫輸送サービスを展開
9325 9325 9325 9325 ファイズホールディングス 1,303 「配車プラットフォーム事業」や庫内運営機能である「オペレーションサービス」を提供。アマゾン・ジャパンとの連携に注目
9326 9326 9326 9326 関通 515 物流支援や代行サービス等を展開。倉庫管理システムの提供も
  • ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成
  • ※銘柄名右横()内は決算発表予定日。2/7(水)以降、2月中に決算発表を予定する銘柄のみ記載

一部掲載銘柄を詳細に解説!

■YE DIGITAL(2354)~製造現場の経験を生かせる強み

工場の自動化(FA)に取り組む安川電機(23.2末の持株比率は38%)の情報処理部門が源流です。同社のAI(人工知能)はAI技術と安川電機由来の製造現場における経験が融合したものです。装置の故障を予知、機器の異常を感知、製品の良/不良品を判定、熟練者のノウハウの継承等が可能です。

同社は倉庫実行システムも展開。トラック等の運転手は1運行で平均12時間26分拘束され、うち6時間43分は「運転」、約3時間は「荷役および荷待ち」で拘束されていますが、物流倉庫の効率化は、運転手の業務効率化に役立つと期待されます。

昨年12月に発表された24.2期3Q累計決算では、売上高148億円(前年同期比35%増)、営業利益12億円(同171%)といずれも過去最高を記録しました。ビジネスDXや物流DXの好調が見込まれ、会社側は24.2通期の計画を売上高183億円→190億円(前期比17%増)、営業利益12億円→13.5億円(同48%増)と上方修正しました。

■ゼネテック(4492)~生産性向上ソフトは世界の名立たる企業で導入。今期は過去最高業績を更新予定

組込開発*のリーディングカンパニー。メインの組込開発を行うデジタルソリューション事業の他、エンジニアリングソリューション事業を展開。製造業・物流業をの業務効率化を手助けする3Dシミュレーションソフト『Flex Sim』は、グローバル導入実績60,000超に上り、トヨタやアマゾン、アップルなどでも使用されています。2024年問題の解決に向け、同製品の物流向け用途開発の推進を中計目標として掲げています。今期(24.3期)は『Flex Sim』の売り上げ拡大なども寄与し、過去最高の売上高・営業利益を更新する見通しです。

*組込開発とは、電子機器に特定の機能を組み込むためのシステム開発を指します(例:スマートフォンのGPSやバッテリー管理、洗濯機の制御ユニット等)。

■ツナググループ・ホールディングス(6551)~「人手不足」の克服を目指し、企業の採用活動を幅広くサポート

大手企業を中心に、採用活動を支援する企業です。約15万事業所の採用を支援し、アルバイト・パートタイマーの就労支援を近年は年間約300万人行っています。人手不足下で採用に悩む小売・飲食等の企業に対し、コンサルタント、手法・求人媒体選定、応募受付、採用Webサイトの運営、店長研修、定着支援など採用成功までのサポートを実施。また、採用活動の効率化をもたらすDXサービスも提供しています。

昨年11月に発表された23.9期の本決算では、売上高150億円(前期比18%増)、営業利益4.4億円(同105%増)と大幅増収・増益にを達成。主力事業の採用代行や、DXサービスが伸長しました。インバウンド需要の回復で労働需給が広がったこと、物流業界への提案を進めたこと等でビジネスが拡大しました。営業利益を四半期(3ヵ月)別にみると3Q=1.31億円から4Qは0.56億円と減りましたが、成長追加投資0.76億円があり、実質的には増益を確保した格好です。

24.9期の会社計画では、売上高165億円(前期比10%増)、営業利益6.6億円(同49%増)と増収増益が続く見通しです。2019年に物流不動産のシーアールイー(3458)と合弁会社を設立。物流企業専門採用プラットフォームを展開し、物流業界の2024年問題への対応も本格化させています。

■ヒガシトゥエンティワン(9029)~ 22.3期以降、加速度的な業績拡大。新規センターを続々と開設

大阪発の総合物流会社です。物流事業やオフィス移転事業を大手企業から請け負っています。23年4月には新たに3つの大型の3PL*センターを開設。大手e-コマース社向け新規3PL業務の受託で、積極的に倉庫面積を拡大中です。2024年問題における長距離輸送問題への解決策の一つとして中部エリアに新規倉庫の建設を開始(25年2月に開設予定)。中部エリアは、関東・関西の中計地点としての需要が今後も見込まれています。業容の拡大と共に、今期(24.3期)は3期連続で売上高・各利益項目が2桁台で増収増益となる見通しです。

*3PL業務とは、荷主企業から物流業務を第三社が請け負う業態

■ファイズホールディングス(9325)~「アマゾン」の物流の一翼を担う黒子的存在

AZ-COM丸和ホールディングス(9090)の連結子会社(持株比率は23.9末時点で58.39%)です。ECサイト運営企業、メーカー、配送会社に対し、物流拠点における入荷から出荷に至るまでの作業プロセスを同社が包括的に管理し、あるいはコンサルティングしています。また、実運送や配車プラットフォームのサービスも行います。22.3期までは営業利益が5億円台止まりでしたが、23.3期には11億円台まで増えました。売上高が236億円(23.3期)と前期比で56億円増え(うち、アマゾンジャパン向けが43億円増)たことが背景にあります、増加分の多くが「アマゾンジャパン」向けで、同社への売上比率は55%に達しています。

24.3期3Qも売上高207億円(前年同期比14%増)、営業利益10.4億円(同14%増)と順調。今期会社計画の営業利益は14億円で、中計では26.3期に営業利益20億円の達成を目指しています。自社運営倉庫を拡大する一方、2024年問題への対応強化も進める方針です。「アマゾンジャパン」による2024年問題への対応と連動した成長に期待感がもてるでしょう。

■栗林商船(9171)~大型船で、トラックを荷物ごとまるごと運ぶ!モーダルシフトの本命。PBRは0.5倍台

明治27年(1894)創立、内航海運を中心とした老舗物流サービス企業。RORO船(ロールオン・ロールオフ船)と呼ばれる大型船や、国内最大規模となる3,000台以上のトレーラーも保有し、海運一貫輸送サービスを展開しています。RORO船は、貨物を積んだままのトラックやトレーラを運ぶことができます。豊富な海陸の物流資産を活かし、機動力とコスト競争力に優れているのが特徴です。モーダルシフト関連の大本命企業の一角です。業績への本格的な織り込みは来期(25.3期)以降になると想定されます。2022年終値から本年2/5(月)時点で株価2.2倍となりましたが、PBRは0.5倍台と依然として割安水準です。

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