円安局面は終了?日経平均の展開は?

円安局面は終了?日経平均の展開は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/05/07

日経平均は続伸。連休明け、企業決算いよいよ佳境を迎える

5月第1週(4/30-5/2)の日経平均は、前週末比301円31銭高(+0.79%)となり、週足べースで続伸。週初に米テック株の上昇を受け、主力半導体関連株に買いが入りました。その後は、GWの4連休や米4月雇用統計の発表を控え、方向感に乏しい展開が続いた格好です。また、企業決算が好感された銘柄が全体を押し上げた面もありました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(4/26~5/2・図表7)も首位のレーザーテック(6920)を筆頭に決算内容が好感された企業が多数でした。同社は4/30(火)の引け後に、23.7-24.3月期の決算を発表。生成AI向けの投資などが堅調に推移したことを背景に、純利益が前年同期比で約2倍となったことが好感されました。2位の住友商事は米ヘッジファンドでいわゆる「物言う株主」のエリオット・マネジメントが同社株を数百億円規模で取得したことが明らかとなっています。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(4/26~5/2・図表8)は、決算内容が冴えなかった銘柄が多い顔ぶれです。4位のLNGや発電プラントなどを手掛ける日揮ホールディングス(1963)は、海外事業での損失計上や円安・ドル高進行等を理由に、24.3期の予想純利益を80億円の赤字に下方修正しました(従来予想は306億円の黒字)。

同期間(4/29-5/3)の米国市場は、前週比でNYダウが+1.1%、ナスダックが+1.4%と好調でした。背景には、大きく以下3つ要因があったと想定されます。

① FOMC後の議長会見での発言が想定よりハト派寄りで、追加利上げに対し、否定的な見方を示した。ただし利下げ開始をするには、物価上昇ペースの鈍化を示す“更なる証拠”を確認する必要があるとも言及

② 企業決算が堅調であったこと。また、大手ハイテク企業によるAI関連投資の拡大方針も示された

③ 4月雇用統計で労働市況の逼迫一服が示唆されたこと。FRBによる年内利下げ開始観測が広がり、米長期金利が低下

①~③は、年初来からの株高から調整局面入りしていたハイテク株を中心に追い風となりました。

連休明けとなる5/7(火)の日経平均は、前場の引け時点で600円超高となる場面もあり、米国市場に連れ高した形です。また東京市場は、いよいよ1-3月期の決算発表シーズンが本格化し、動意材料に欠かない週となりそうです。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(4/26~5/2)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(4/26~5/2)

円安局面は終了?日経平均の展開は?

もともと日経平均を観る上で円相場の動きに注意を払う必要がありますが、最近は円相場が荒い値動きが続いていることもあり、より一層、円相場へ注目が高まっていると見られます。その円相場は、国内市場が休場だった4/29は、一時1ドル=160円台へ円安・ドル高が進みましたが、その後、政府による円買いと見られる動きにより155円台へ急激に揺り戻されました。また、米FOMC(連邦公開市場委員会)終了後の5/2早朝(日本時間)にも、再び円買いと見られる動きにより円相場は急激な円高・ドル安が進行しました。

神田財務官は、こうした円相場の急変動における為替介入の有無についてコメントしないとしています。しかし、同氏は「為替相場はファンダメンタルズに沿った安定推移が重要」とし、「過度な変動や無秩序な動きがあれば政府が適切に対応する」との旨を示しています。当面は為替介入への警戒感が円安・ドル高の動きを阻むかも知れません。

図表9  円相場(日足)

とは言え、市場では日米金利差の拡大観測に着目し、依然として円安・ドル高基調が続くとの見方が根強くあります。政府の為替介入は(円安の流れに対し)“焼け石に水“に過ぎないとのことなのですが、最近の為替マーケットを取り巻く環境に注目すると、円安の流れが変わり始めたと考えられるいくつかの材料が見え始めたように思えます。

その1つは、円安が続くとの見方の根幹でもある日米金利差の拡大が一服した可能性があることです。これまでの日米金利差の拡大は、主として米国の金融緩和観測が大きく後退したことによる米国金利の上昇によってもたらされてきました。米国ではインフレ指標の上振れなどを背景に年内の利下げ観測が後退し、一部ではFRBが再び利上げを行うとの見方すらも浮上していました。しかし、5/1開催のFOMCでパウエルFRB議長は「FOMCの次の行動が利上げになる可能性は低い」として、市場の行き過ぎたタカ派的な見方を強くけん制しました。

また、5/3発表の4月雇用統計では、雇用者数と平均時給の伸びがいずれも市場予想を下回り、経済成長への期待が後退しました。そうした中、米国長期金利は低下へ転じ、日米金利差についても拡大が一服しました。そもそも、日米金利差の拡大に着目した円相場(円売り・ドル買い)のトレードは、ヘッジファンドなどの短期筋が主との見方があります。こうした短期筋の相場観に対し、逆向きの動きが強まればポジションの解消が進む可能性が考えられます。

図表10 投機筋の円売りポジションは7週ぶりに縮小

また、中長期的な観点からも円安・ドル高の流れが変わりつつあることを示しています。輸出企業や輸入企業が行う為替取引である、実需のドル円の売買フローに注目してみましょう。図表11は財務省が発表している貿易統計(6ヵ月移動平均)です。同図表を見ると輸出金額は円安が進展したことを背景に回復基調を辿っています。そして貿易収支については依然として赤字基調が続いていますが、赤字縮小傾向にあります。いまだに貿易赤字が続いているのは、原油や天然ガスなどの価格高騰を背景に鉱物性燃料の輸入が高水準で続いているためです。つまり、原油価格の高騰が実需筋から見た円安の主因であり、原油価格の高騰の一因は地政学リスクが影響しています。中東情勢については依然として予断を許さない状況が続いていますが、最近はWTI原油先物価格が1バレル=90ドル近くから80ドル割れへ下落しており、原油価格が落ち着けば、円安効果による貿易黒字の改善で実需の円買いが活発になることが想定されます。

以上の点を考慮すると、意外かもしれませんが、円相場は短期的にも中長期的にも円安局面が一巡した可能性があります。今年の日経平均が上昇してきた要因の1つには円安進展が挙げられるため、この先に円高が進行した場合、短期的に見れば、日経平均にとっては輸出関連株を中心に重石となる可能性があります。もっとも、円相場の水準自体は歴史的に見れば円安圏で推移しており、輸出企業にとって追い風となる環境に変化はないと思われます。中長期的に見れば、急激な円高が進行しない限り、株式市場の重石にはならないと考えられます。

図表11 鉱物性燃料を除けば貿易収支は黒字拡大が続く

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