アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~米国の好決算銘柄:IBM、BSX、UHS、KO、LMT~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~米国の好決算銘柄:IBM、BSX、UHS、KO、LMT~

投資情報部 榮 聡

2024/07/29

先週はマグニフィセント7の決算が相場を支える要因になりうると期待していた市場に対して、テスラ、アルファベットの決算発表は市場の期待を満足させることができず、2週連続の下落となりました。今週の株価材料として、4-6月期決算発表、7月FOMC、7月雇用統計、などが注目されます。

今週は先週発表の好決算銘柄から、IBM(IBM)ボストンサイエンティフィック(BSX)ユニバーサル ヘルス サービシーズ B(UHS)コカ-コーラ(KO)ロッキード マーチン(LMT)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

一目均衡表の「雲の上限」が意識された形で反発となりました。ただ、中期的には調整しやすい地合いとみられ、相場の下値が固くなるのは「雲の下限」が位置する5,250ポイント近辺と想定されます。


※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
公益事業 1.5% 4.4% 6.1%
素材 1.4% 3.4% 1.3%
ヘルスケア 1.3% 2.7% 6.7%
金融 1.3% 5.5% 6.5%
資本財・サービス 1.1% 3.6% 2.2%
生活必需品 0.5% 2.6% 4.0%
不動産 0.5% 6.0% 10.6%
エネルギー -0.2% 0.9% -4.3%
S&P500 -0.8% 0.0% 6.7%
一般消費財・サービス -2.3% -1.0% 1.2%
情報技術 -2.4% -3.4% 13.6%
コミュニケーションサービス -3.8% -6.3% 3.0%
騰落率上位(5日) 騰落率
3M 22.4%
ブリストル マイヤーズ スクイブ 18.3%
チャーター・コミュニケーションズ 14.8%
サーモフィッシャーサイエンティフィック 13.6%
ダナハー 12.5%
騰落率下位(5日) 騰落率
フォード・モーター -20.0%
ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS) -11.3%
ゼネラル・モーターズ -8.7%
テスラ -8.1%
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ -7.6%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.8%、ナスダック指数は2.1%の下落、ダウ平均は0.7%の上昇でした。

7/22(月)、7/23(火)に5,550ポイント前後でもみ合いとなった後、7/24(水)は前日引け後に発表されたテスラ(TSLA)アルファベット A(GOOGL)の決算が失望されて相場下落のきっかけとなり、大幅な下落となりました。

テスラは市場予想以上に利益の落ち込みが大きく、アルファベットの決算自体は堅調だったものの、巨額のAI投資に対して収益貢献がまだ小さいとされ、半導体を中心とするAI関連銘柄の売りに波及しました。

一方、7/25(木)には4-6月期実質GDPが前期比年率+2.8%と市場予想の同+2.0%を上回って、米国経済のソフトランディングへの期待を高めて、市場の下支えになりました。7/26(金)には個人消費支出物価指数がインフレ沈静のトレンドを示し、テクノロジー株にも押し目買いが入り、反発に転じました。

業種指数では、これまで株価が出遅れていた分野が上昇、大手テクノロジー銘柄のウェートが大きい業種が大きく下落しました。個別銘柄では、スリーエム(MMM)がトップでした。7/26(金)に新CEOのブラウン氏による事業再建計画が好感されて23.0%上昇しました。同氏は同社の弱みを挙げて優先課題を明確にし、中でも最優先課題は新製品開発ペースを速め、新鮮味に欠ける製品ポートフォリオに活気を与えることだとしました。4-6月期決算は売上・EPSとも市場予想を上回り、通期利益見通しの下限を引き上げました。

今週の米国株式市場

S&P500指数は2週連続の下落となりました。直近の高値を付けた7/16(火)終値は予想PER20.5倍(2025年予想EPS基準で)まで上昇していたため、高値警戒があったとみられ、これが最近の相場調整の主因と考えられます。

今週は大手テクノロジーの決算で流れを変えることができるか注目されますが、基本的にはバリュエーションの高さを背景に調整しやすい地合いは続きそうです。

中期的に相場が底堅くなるのは、一目均衡表の「雲の下限」が位置する5,250ポイント辺りとみられます。今年末の目標株価をS&P500指数で5,540ポイント(2025年予想EPS277ポイント×予想PER20倍)として、年末までの期待リターンが約5%となる水準です。この辺では、機関投資家による腰の入った買いが期待されます。

今週の株価材料として、4-6月期決算発表、7月FOMC、7月雇用統計、などが注目されます。

4-6月期決算発表では、テクノロジー大手のマイクロソフト、メタ、アップル、アマゾンドットコムを含む、AMD、ファイザー、アームホールディングス、インテルなどが予定されています。大手テクノロジーの決算予想は図表3の通りで、アップルを除く3社はいずれも1-3月期の伸びから鈍化の予想です。市場予想を上回って相場の調整地合いを変えるものになるか注目されています。

S&P500指数採用企業の4-6月期決算は、7/26(金)までのところEPSが前年同期比9.8%増(発表済企業の実績と今後発表する企業の予想を混合)と好調です。

7/31(水)に結果が発表される7月FOMCでは、政策金利は据え置き見通しです。一方、9月FOMCでの政策金利引き下げ確率は100%に達しています。FOMC結果発表後の会見では、9月の利下げに対する期待をさらに強めるものになるか注目されます。

7月雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比17.8万人増の予想で、引き続きゆるやかな雇用市場の鈍化が示唆される見通しです。平均時給は前年比+3.7%と一段と伸びが低下する見通しです。

経済指標では上記のほか、7/30(火)にユーロ圏の4-6月期実質GDP(前年比+0.5%の予想、1-3月期は同+0.4%)、米国の7月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の100.4から99.5に悪化の予想)、7/31(水)に7月中国製造業PMI(前月の49.5から49.4に悪化の予想)、同非製造業PMI(前月の50.5から50.2に悪化の予想)、8/1(木)に米国の7月ISM製造業景気指数(前月の48.5から48.8に改善の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

図表3 大手テクノロジー銘柄の決算予想(今週発表予定銘柄)

銘柄名(コード) 4-6月期予想
増収率
(%)
4-6月期予想
増益率
(%)
1-3月期実績
増収率
(%)
1-3月期実績
増益率
(%)
マイクロソフト(MSFT) 14.9 9.4 17.0 20.0
メタ プラットフォームズ A(META) 19.7 59.2 27.3 114.1
アマゾン ドットコム(AMZN) 10.7 63.5 12.5 226.6
アップル(AAPL) 3.2 7.3 -4.3 0.7

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 好決算の主要銘柄(S&P500指数採用銘柄、7/12(金)~7/25(木)発表分)

銘柄(コード) 売上
予想比
(%)
EPS
予想比
(%)
売上
前年同期比
(%)
EPS
前年同期比
(%)
決算
発表日
RTX(RTX) 2.6 8.9 8.1 9.3 25日
ノースロップ グラマン(NOC) 1.9 7.1 6.7 19.1 25日
ベーカーヒューズ A(BKR) 4.8 16.2 13.1 46.2 25日
デッカーズ アウトドア(DECK) 2.2 29.8 22.1 87.6 25日
IBM(IBM) 1.1 10.7 1.9 11.5 24日
ボストン サイエンティフィック(BSX) 2.6 6.7 14.5 17.0 24日
ユニバーサル ヘルス サービシーズ B(UHS) 1.1 30.1 10.1 70.4 24日
サービスナウ(NOW) 0.6 9.3 22.2 32.1 24日
コカ-コーラ(KO) 4.5 4.3 2.9 7.7 23日
ロッキード マーチン(LMT) 6.2 10.3 8.6 5.7 23日
ムーディーズ(MCO) 5.7 7.7 21.6 42.6 23日
シンタス(CTAS) 0.2 5.3 8.2 19.8 18日
DR ホートン(DHI) 3.5 9.0 2.5 5.1 18日
インテューイティブ サージカル(ISRG) 1.9 15.7 14.5 25.4 18日
ジョンソン & ジョンソン(JNJ) 0.6 4.2 -12.1 0.7 17日
ユナイテッドヘルス グループ(UNH) -0.1 3.0 6.4 10.8 16日
モルガン スタンレー(MS) 5.2 10.4 11.6 46.8 16日
ゴールドマン サックス(GS) 2.8 3.1 16.8 179.9 15日
JPモルガン チェース(JPM) 1.6 2.9 20.3 0.7 12日

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(7/19)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートIBM(IBM)191.75ドル19.0

【人工知能(AI)事業の受注が急増】

・4-6月期決算では、売上・EPSとも市場予想を上回り、人工知能(AI)事業の受注が急増したことが明らかになりました。AIコンサルティングとソフトウェアの受注は2023年半ば以降20億ドルに達し、4月に開示した10億ドルの2倍に増えています。

・同社CEOはAI関連の受注の約4分の3はコンサルティングで、残りはソフトウェアだと説明し、時間の経過とともに、ソフトウェア収入のシェアは高まる公算が大きいと付け加えました。つまり、利益率が高まる見通しです。

買付チャートボストン サイエンティフィック(BSX)74.92ドル31.1

【幅広い製品が好調】

・医療機器メーカーで、非侵襲治療を軸に心臓カテーテル、冠動脈疾患治療、ペースメーカーに強みがあります。4-6月期決算は、循環器部門を中心に製品ポートフォリオ全体が好調で、通期ガイダンスをオーガニック売上成長率は前年比13.5~14.5%増、調整後EPSは2.38~2.42ドルへ引き上げました。

・脳卒中を防ぐための留置デバイス「WATCHMAN」、パルスフィールドアブレーション技術(PFA)を採用した心房細動治療製品が注目されています。

買付チャートユニバーサル ヘルス サービシーズ B(UHS)213.69ドル14.3

【大手病院運営グループ】

・大手病院運営グループで、救急医療やメンタルヘルスの医療施設運営が柱です。4-6月期決算は、来院が増えていることを背景に好調でした。特にパンデミック時に来院を控えていた高齢者が増えています。

・好調な業績を受けて通期の調整後EPSのガイダンスを13.0~14.0ドルから15.40~16.20ドルへ大幅に引き上げました。

買付チャートコカ-コーラ(KO)67.05ドル23.6

【値上げでも販売量キープ】

・4-6月期決算は市場予想を上回る増収増益が確保されました。商品の値上げを継続した一方、販売量が落ち込まなかったことが業績に寄与しました。販売量は2%増で、北米は不振だった一方、南米やアジア太平洋地域がけん引しました。

・年通期見通しは、買収や為替などの影響を除いた本業の売上高が前期比9~10%増(従来予想は8~9%増)、調整後1株当たり利益は5~6%増(同4~5%増)に引き上げました。海外市場での堅調な売れ行きを踏まえたものです。

買付チャートロッキード マーチン(LMT)524.80ドル19.8

【防衛関連全般に好調】

・米国最大の軍用機メーカーで、ステルス戦闘機F-22などを開発、F-35戦闘機が主力です。このほか、ミサイル防衛システム、軍事情報システム、人工衛星なども手掛けます。

・4-6月期の業績が予想を上回ったことを受けて、通期の業績見通しについて、売上を17.5億ドル、営業利益を1.75億ドル引き上げました。主力のF-35戦闘機は、4-6月期の納入が10機で、通期では75~100機の納入を見込んでいます。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
29(月)   マクドナルド
30(火) ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、速報値)
・S&PコアロジックCS住宅価格(5月)
・米求人労働異動調査(6月)
・コンファレンスボード消費者信頼感(7月)
マイクロソフトAMDファイザーP&G
ペイパルホールディングススターバックス、メルク
31(水) ・日本鉱工業生産(6月)
・中国製造業・非製造業PMI(7月)
・日銀政策金利
・米ADP雇用統計(7月)
・米中古住宅販売成約(6月)
・米FOMC政策金利
メタプラットフォームズアームホールディングス
アルトリアグループクラフトハインツ、ボーイング
マスターカード、クアルコム
8月
1(木)
・米新規失業保険申請件数(7月27日に終わる週)
・米ISM製造業景気指数(7月)
アップルアマゾンドットコムインテル
コインベースグローバル
マラソンデジタルホールディングス
マイクロストラテジー、ブッキングホールディングス
2(金) ・米雇用統計(7月)
・米製造業受注(6月)
エクソンモービルシェブロン
5(月) ・米ISM非製造業景気指数(7月)
・米シニアローンオフィサー調査
パランティアテクノロジーズ
6(火) ・米貿易統計(6月)
・3年国債入札
スーパーマイクロコンピューター
リビアンオートモーティブ、キャタピラー
7(水) ・中国貿易統計(7月)
・米消費者信用残高(6月)
・10年国債入札
ウォルトディズニー、ビヨンドミート
8(木) ・米新規失業保険申請件数(8月3日に終わる週)
・30年国債入札
イーライリリィユニティソフトウェア、エコペトロール(E)
9(金) ・中国生産者・消費者物価指数(7月) クリーンスパーク(E)

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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