アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~好決算のアマゾン、イーライリリィ、コカコーラほか~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~好決算のアマゾン、イーライリリィ、コカコーラほか~

投資情報部 榮 聡

2024/05/07

先週は4/30(火)の強い1-3月期雇用コスト指数で急落したものの、週末にかけて景気と雇用市場の鈍化を示す経済指標を受けて米長期金利が反落、株式相場は回復しました。今週の株価材料として、1-3月期決算発表、米10年国債利回り、中国貿易統計、などが注目されます。

今回は4/26(金)から5/1(水)に決算を発表したS&P500指数採用銘柄から、市場予想を上回る良好な実績をあげ、今後も注目されそうな銘柄として、アマゾン ドットコム(AMZN)イーライ リリィ(LLY)コカ-コーラ(KO)ストライカー(SYK)HCA ヘルスケア(HCA)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

強い1-3月期雇用コスト指数で急落したものの、4月雇用統計の非農業部門雇用者数など弱い景気・雇用指標を受けて回復しました。引き続き一目均衡表の「雲」の中でのもみ合いとなっています。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は4/29(月)終値~5/6(月)終値によります)

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
コミュニケーションサービス 2.9% -0.3% 7.8%
情報技術 2.6% 0.2% 4.4%
公益事業 2.4% 5.4% 13.7%
S&P500 1.3% -0.5% 4.6%
金融 0.7% -1.3% 5.7%
ヘルスケア 0.7% -1.4% -1.8%
一般消費財・サービス 0.6% 0.8% 3.7%
不動産 0.4% -3.7% -3.1%
資本財・サービス 0.4% -1.4% 6.9%
生活必需品 0.2% 2.2% 3.5%
素材 -0.2% -2.9% 9.2%
エネルギー -3.2% -4.9% 11.7%
騰落率上位(5日) 騰落率
ファイザー 9.8%
アムジェン 8.4%
メタ・プラットフォームズ 7.6%
クアルコム 7.5%
ネットフリックス 6.7%
騰落率下位(5日) 騰落率
スターバックス -17.5%
CVSヘルス -17.0%
クラフト・ハインツ -7.5%
コノコフィリップス -5.1%
テスラ -4.8%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.5%、ダウ平均は1.1%、ナスダック指数は1.4%の反発となりました。S&P500指数は2週連続の上昇です。

S&P500指数は4/19(金)に底入れして順調な相場回復となっていましたが、4/30(火)に急反落となりました。5月FOMCを控えて相場が神経質になっていたところに、4/30(火)に発表された1-3月期の雇用コスト指数が市場予想を上回る上昇となり(図表3)、2月ケースシラー住宅価格指数も市場予想を上回る上昇となったことがインフレの下がりにくさを示唆しました。

一方、5/1(水)の4月ISM製造業景気指数、3月求人数、5/3(金)の4月雇用統計、4月ISM非製造業景気指数などが景気と雇用の鈍化を示し、また、5/1(水)のFOMC記者会見ではパウエルFRB議長が、一部で言われている「利上げの可能性は低い」としたことから、週末にかけて4/30(火)の下落分を全て回復しました。

また、企業決算では、アップルの1-3月期はiPhoneの売上減少で前年同期比減収・減益ながら市場が怖れていたほどには悪くなく、5/3(金)に6%上昇して相場を押し上げました。

業種指数(5/6(月)までの過去5日)は、米10年国債利回りの低下を受けて大手テクノロジー株が上昇、これら銘柄の寄与が大きい「コミュニケーションサービス」「情報技術」などの上昇が大きくなっています。

個別株では上昇率トップのファイザー(PFE)は、1-3月期決算がコロナワクチンの減少で大幅減収減益ながら市場予想を上回り、通期利益見通しを引き上げました。上昇率2位のアムジェン(AMGN)は開発中の肥満治療薬「マリタイド」(月1回の注射により効果を目指す)の治験について、CEOが自信を示したことが好感されました。大幅下落のスターバックス(SBUX)は、1-3月期の既存店売上が前年同期比4%減で、アナリスト予想の同1.5%増を大幅に下回りました。北米が同3%減、中国が同11%減に加え、中東情勢にからむボイコットの影響もありました。

今週の米国株式

S&P500指数は4/19(金)の5,000ポイント割れを契機に機関投資家による押し目買いが入ったとみられ、回復基調です。今週も上値を試す展開と想定されます。ただし、一目均衡表の「雲」の上限がある5,180ポイン近辺では、一旦上値抵抗が想定されます。なお、5/6(月)は前週後半からの株価上昇の流れが継続して主要3指数とも上昇しました。

今週の株価材料として、1-3月期決算発表、米10年国債利回り、中国貿易統計、などが注目されます。

1-3月期決算の発表はピークを過ぎましたが、マクロ経済のイベントに重要なものが少ないため、引き続き注目を集めそうです。発表企業には、ウォルトディズニー、アームホールディングス、リビアンオートモーティブ、ウーバー、エアビーアンドビーなどが含まれます。

S&P500指数採用企業のEPSは、発表済み企業と今後発表する企業の混合で前年同期比5.0%増(5/3(金)時点、FactSet社集計)となっています。決算発表の序盤は好悪まちまちでしたが、先々週、先週にかけて徐々に事前予想を上回る企業が増えてきた印象で、企業業績は全体として予想を上回る好調と言えそうです。

米10年国債利回りは4月に入って上昇の勢いを強めて一時4.7%台に達しました。先週末にかけて4.4%台に低下しましたが、引き続き動向が注目されそうです。今週は3年国債、10年国債、30年国債の入札があり、利回りの落ち着きを確認する結果となるか注目されます。

5/9(木)に発表予定の中国4月貿易統計は、輸出が前年比+1.4%の予想(前月は同-7.5%)、輸入が同+4.6%の予想(前月は同-1.9%)です。中国経済の動向は、世界経済のリスク要因として気にされていますので、前月から伸び率が改善して懸念が和らぐようなら、相場にポジティブに効きそうです。

経済指標では上記のほか、5/10(金)に米国の5月ミシガン大学消費者信頼感(前月の77.2から76.2に悪化の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は4/26(金)から5/1(水)に決算を発表したS&P500指数採用銘柄から、市場予想を上回る良好な実績をあげ、今後も注目されそうな銘柄を図表4にリストアップしました。

ここから時価総額が大きいものを中心に、アマゾン ドットコム(AMZN)、イーライ リリィ(LLY)、コカ-コーラ(KO)、ストライカー(SYK)HCA ヘルスケア(HCA)を選んでご紹介いたします。

図表3 雇用コスト指数の推移

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 1-3月期決算の注目銘柄(S&P500指数構成銘柄対象、4/26(金)~5/1(水)発表分より、時価総額順)

銘柄(コード) 売上
予想比
(%)
EPS
予想比
(%)
売上
前年同期比
(%)
EPS
前年同期比
(%)
アマゾン ドットコム(AMZN) 0.5 41.7 12.5 226.6
イーライ リリィ(LLY) -1.8 5.9 26.0 59.3
コカ-コーラ(KO) 3.1 3.3 3.1 5.9
ストライカー(SYK) 3.0 6.4 9.7 16.8
モンダリーズ インターナショナル(MDLZ) 1.4 7.3 1.4 6.7
HCA ヘルスケア(HCA) 3.2 5.6 11.2 8.7
トレイン テクノロジー(TT) 5.5 17.8 15.0 37.6
ローパー テクノロジーズ(ROP) 1.7 1.6 14.4 13.1
センティーン(CNC) 10.6 8.9 3.9 7.1
ガーミン(GRMN) 10.9 40.6 20.4 39.2
レイドス ホールディングス(LDOS) 4.1 35.0 7.5 55.8
ドミノ ピザ(DPZ) 0.5 5.6 5.9 22.2
MGMリゾーツ インターナショナル(MGM) 3.5 19.7 13.2 68.2

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(5/6)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートアマゾン ドットコム(AMZN)188.70ドル35.3

【クラウドサービスが予想上回る好調】

・ 1-3月期の売上は市場予想並みだったものの、EPSは市場予想を大幅に上回りました。売上はオンライン販売が前年同期比+7.0%で市場予想を下回りましたが、クラウドサービスのAWS売上は前年同期比+17%で市場予想を上回りました。利益が予想を大きく上回ったのはAWSの貢献が大きくなっているほか、ジャシーCEOによるコスト削減と収益重視の改革が進んでいるとみられます。

・4-6月期の業績見通しは、売上が1,440~1,490億ドル、営業利益見通しは100~140億ドルで、いずれも中央値は市場予想を下回りました。ただ、同社のガイダンスは市場予想を下回ることが多いため、さほど気にされていないようです。

買付チャートイーライ リリィ(LLY)766.68ドル57.0

【通期売上見通しを上方修正】

・1-3月期の売上はマンジャロ、ゼップバウンド、ベージニオ、ジャディアンスなどが牽引、前年同期比26%増、EPSは同59%増と好調です。

・同社の糖尿病治療薬「マンジャロ」と肥満治療薬「ゼップバウンド」(両薬とも物質名は「チルセパチド」で同じものです)は需要が供給を上回って市場では品薄の状態が続いています。生産設備の能力が売上の制約要因になっていますが、設備増強の目途が立ったことで2024年12月期の売上ガイダンスを424~436億ドルへ、従来から20億ドルひきあげました。

買付チャートコカ-コーラ(KO)62.35ドル22.1

【通期売上ガイダンスを引き上げ】

・1-3月期業績は売上が前年同期比3%増で、為替変動の同6%ポイント減、事業売却の同2%ポイント減を調整したオーガニック売上成長は同11%増(内訳は販売数量が同2%減、販売価格が同13%増)で、市場予想の同6%増を大幅に上回りました。調整後EPSは同7%増と堅調です。

・販売価格の引き上げは、北米で7%、欧州・中東・アフリカや南米で22%などとしています。1-3月期の販売好調を受けて通期のオーガニック売上ガイダンスを前年比6~7%増から同8~9%増に引き上げています。

買付チャートストライカー(SYK)325.50ドル27.2

【医療機器の会社】

・整形外科など手術用機器と人工関節、骨接合材料などを提供する会社で隣接業種企業の積極的買収によって規模を拡大してきました。「ストライカー」は手術用電動のこぎりの代名詞となっています。

・1-3月期決算は増収増益で、市場予想も上回りました。部門売上はメドサージ&ニューロテクノロジー(手術機器など)が前年同期比11.5%増、整形外科学および脊椎が同7.5%増と幅広い分野が伸びています。2024年12月期について、売上のオーガニック成長は8.5~9.5%増、調整後EPSは11.85~12.05ドルを見込みます。

買付チャートHCA ヘルスケア(HCA)310.06ドル14.9

【世界最大の民間病院チェーン】 

・世界最大の民間病院チェーン。1986年創業、買収で事業を拡大してきました。フロリダなど米20州と英国で188の病院のほか約2,400ヵ所の手術センター、救急治療室などを運営します。

・1-3月期決算は増収増益で、市場予想も上回りました。主要係数は入院患者数が前年同期比6.2%増、救急治療室の利用者数が同7.2%増(以上は同施設ベースの比較)、入院患者の手術数が同1.7%増、外来患者の手術数が同2.1%減など、全体として堅調です。CEOは「2023年に観察されたわれわれのビジネスの良好なファンダメンタルズは2024年1-3月期にも継続した。」とコメントしています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
6(月) ・米シニア・ローン・オフィサー・サーベイ
・リッチモンド連銀バーキン総裁が講演
・NY連銀ウィリアムズ総裁の炉端談義
パランティアテクノロジーズ
7(火) ・ユーロ圏小売売上高(3月)
・3年国債入札
・ミネアポリス連銀カシュカリ総裁が炉端談義
ウォルトディズニーリヴィアンオートモーティブ
エコペトロル
8(水) ・10年国債入札
・クックFRB理事が講演
アームホールディングスビヨンドミート
9(木) ・中国貿易統計(4月)
・米新規失業保険申請件数(5月4日に終わる週)
・30年国債入札
ユニティソフトウェアマラソンデジタルホールディングス
クリーンスパーク
10(金) ・ミシガン大学消費者信頼感(5月、速報値)
・シカゴ連銀グールズビー総裁がQ&Aセッションに参加
 
11(土) ・中国生産者・消費者物価指数(4月)  
13(月) ・NY連銀1年インフレ期待(4月)  
14(火) ・日本工作機械受注(4月)
・ドイツZEW景気指数(5月)
・米生産者物価指数(4月)
ホームデポ
15(水) ・ユーロ圏実質GDP(1-3月期、改定値)
・ニューヨーク連銀製造業景気指数(5月)
・米消費者物価指数(4月)
・米小売売上高(4月)
・NAHB住宅市場指数(5月)
シスコシステムズ
16(木) ・日本実質GDP(1-3月期、改定値)
・米住宅着工・建設許可件数(4月)
・米フィラデルフィア連銀景気指数(5月)
・米新規失業保険申請件数(5月11日に終わる週)
・米鉱工業生産(4月)
ウォルマート、ディア
17(金) ・中国鉱工業生産・小売売上高(4月)  

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

新着記事(2024/05/07)

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。