50万円未満!高配当利回り期待の3月決算15銘柄

50万円未満!高配当利回り期待の3月決算15銘柄

投資情報部 鈴木 英之/栗本 奈緒実

2024/02/02

50万円未満!高配当利回り期待の3月決算銘柄

1月相場が終わりました。月間上昇率は、日経平均+8.4%、TOPIX+7.8%、高配当株50指数+11.2%、米国株(S&P500)+1.6%でした。米国株に対して日本株が大きくアウトパフォーマンスし、そのけん引役のひとつが配当利回りが高い、いわゆる「高配当株」でした。

日本株の上昇率が相対的に大きくなった背景には、「日本株が変わることへの期待」があるとみられます。東証がPBR1倍割れ企業等に改善策を求め、それに応えようとする企業が増えました。昨年末から1月末にかけ、日経平均のPBRは1.30倍から1.41倍へと上昇し、予想PERは同14.7倍から16.0倍へ向上(日経データ)しました。投資家が「日本株」をみる際の「強気度合い」が強まった形です。

上場企業のおもな対策としては、配当や自社株買い等の株主還元策の強化があげられます。このうち、配当については24.3期における上場企業の配当総額が過去最高の16兆円にのぼる見通しであることが報道(昨年12/24付・日本経済新聞)されました。NISA(少額投資非課税制度)の成長投資枠(年間最大240万円)では、譲渡益と配当が非課税になります。投資家にとっては、株価次第で変動する譲渡益に対し、配当は相対的に計算しやすいため、予想配当額の多い銘柄が人気になりやすいといえます。

※NISAを利用して、配当金を非課税で受け取るためには、配当金等の受取方式を「株式数比例配分方式」にする必要があります。

今回の「日本株投資戦略」は配当利回りにスポットを当てました。東証プライム市場の69%が3月決算銘柄です。2月に入り、3月の配当取りが意識され始める中、主力銘柄の中から高配当利回りを期待できる銘柄を抽出すべくスクリーニングを行ってみました。

(1)東証プライム市場に上場

(2)時価総額1,000億円以上

(3)3月決算銘柄

(4)EPS(1株利益)を予想するアナリストが3名以上

(5)市場予想EPSが過去4週間で横ばい以上

(6)証券を除く

(7)株価5,000円未満

(8)四半期累計純利益の前年同期比増減率が黒字転換、または通期(24.3期)会社予想純利益の前期比増減率以上

  ※「四半期累計」・・・決算発表終了銘柄は24.3期3Q累計、同未了銘柄は2Q累計

図表の銘柄はこれらのすべてを満たし、市場予想(Bloombergコンセンサス)配当利回りの高い順に並べたものです。掲載銘柄の予想配当利回り下限は3.3%ですが、それでも東証プライム市場の平均予想配当利回り2.1%を上回っており、「高配当利回り」が期待できる銘柄として表現できると考えています。

(5)や(8)については、業績予想の下方修正リスクが小さい銘柄を抽出することが目的の条件です。「四半期」累計純利益や通期(24.3期)会社予想純利益が減益の銘柄も含まれていますが、この条件を満たしている場合、下方修正リスクは相対的に小さくなると期待しています。

もっとも注意すべきことは、レポート作成時に3月決算銘柄の3Q決算発表が本格化していることです。銘柄名右横が無印の銘柄は決算発表が終了し、業績変動リスクが一旦後退していますが、それ以外はカッコ内の決算発表予定日を経て、業績・株価が変動するリスクが残ります。そうしたリスクの認識が複雑になるため、2/2(金)決算発表予定の銘柄は除きました。

「配当利回り」を尺度とする今回の投資戦略において、「決算発表日またぎ」で投資する必要性は小さいと思います。決算発表を経て、2Q累計増益率に対し、3Q累計増益率が落ち込まないこと、業績予想下方修正がないことを確認して後の投資判断でいいかもしれません。

あるいは、分散投資の活用も有効であると考えられます。今回の分析では、株価の上限を5,000円に抑えており、分散投資をしやすくしています。仮に図表の銘柄を予想配当利回りの高い順に10銘柄、単元株(100株)ずつ買付けても、売買金額合計は231万円弱で、新NISAの成長投資枠の年間限度額240万円未満となる計算です。

■図表 50万円未満!高配当利回り期待の3月決算銘柄

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名 終値(円)
【1/31】
24.3期市場予想配当利回り
5406 5406 5406 5406 神戸製鋼所(2/9) 2,057 4.4%
7762 7762 7762 7762 シチズン時計(2/13) 942 4.3%
7202 7202 7202 7202 いすゞ自動車(2/9) 2,032.5 4.3%
5401 5401 5401 5401 日本製鉄(2/7) 3,570 4.2%
4208 4208 4208 4208 UBE(2/5) 2,463.5 4.1%
7267 7267 7267 7267 本田技研工業(2/8) 1,675.5 3.9%
6301 6301 6301 6301 小松製作所 4,245 3.7%
9744 9744 9744 9744 メイテックグループホールディングス 2,935.5 3.7%
6113 6113 6113 6113 アマダ(2/8) 1,605 3.7%
5076 5076 5076 5076 インフロニア・ホールディングス(2/9) 1,547.5 3.5%
7181 7181 7181 7181 かんぽ生命保険(2/14) 2,774 3.4%
5911 5911 5911 5911 横河ブリッジホールディングス 2,869 3.3%
7201 7201 7201 7201 日産自動車(2/8) 588.4 3.3%
4202 4202 4202 4202 ダイセル(2/6) 1,453 3.3%
1721 1721 1721 1721 コムシスホールディングス(2/8) 3,236 3.3%
  • ※市場予想配当利回りは、今期予想EPSのBloombergコンセンサスをベースに計算されています。 ※銘柄名横の()内の数字は、10‐12月期決算発表未了銘柄の決算発表予定日です。「四半期累計」の対象は、2Q累計です。
  • ※銘柄名横無印の銘柄は、決算発表が終了しています。「四半期累計」の対象は、3Q累計です。

掲載銘柄を解説!

■神戸製鋼(5406) ~鉄鋼アルミの他、幅広く展開

「鉄鋼アルミ」が営業損益(24.3期)の半分弱を占める稼ぎ頭で、電力、機械、建設機械他を展開しています。2Q累計営業利益は、鉄鋼の採算改善等により、当初計画を上回る前年同期比366%増。24.3通期は前期比91%増の営業利益計画です。配当性向の目安は純利益の30%程度で、会社計画では1株年間90円配当を見込みます。


■シチズン時計(7762) ~世界的時計大手。為替差益等で予想純利益を上方修正。3期連続で増配実施予定

世界的に人気の時計大手です。売上高構成比(23.3期)では時計事業が約半分、精密さを活かした工作機械事業が29%、デバイス事業が15%他を占めています。今期(24.3期)は、想定以上の円安進行等で、為替差益が発生。上期決算発表と同時に純利益の上方修正を実施しました。配当性向の目安は50%で、今期は3期連続での増配実施予定です。


■いすゞ(7202)~世界に展開する商用車の大手企業

150ヵ国以上に事業展開し、海外売上高比率は7割弱です(23.3期)。トラック・バスを製造するほか、ピックアップにも注力。24.3期は厳しい市況で販売台数は下方修正も、価格対応、原価低減、資材費の落ち着き、円安等を背景に、2Q決算発表時に営業利益を上方修正しました。配当性向40%で今期は1株86円配当を計画。自社株買いは500億円を上限として実施中です。


■日本製鉄(5401)~収益力を強化し、巨額買収で世界3位の粗鋼生産企業に

世界で製造される鉄鋼製品の品種をほとんどカバーし、その用途はあらゆる分野にわたります。24.3期は実力ベースでの事業利益8,400億円(前期比14%増)と過去最高を計上する見通しです。昨年12月に、米鉄鋼大手USスチールを2兆円超で買収すると発表。通期では「1株150円以上」の配当実施を想定しています。


■UBE(5401)~化学、機械、セメントに展開。今期は1株100円配当の計画

化学事業(基礎化学品から先端分野の高機能品まで)、成形機械、薬品等に展開し、UBE三菱セメントを持分法対象事業としています。24.3期2Q累計業績は化学分野の不振を、セメントの値上げ効果等で補い、営業減益・最終黒字転換でした。中計では、DOE(株主資本配当率)2.5%、総還元性向30%(25.3期まで3年平均)が基本方針です。


■本田技研工業(7267)~四輪、二輪でグローバル展開

売上面では四輪(自動車)を主力に、二輪、金融サービスを展開。利益面では、23.3期に落ち込んだ四輪部門が、24.3期2Qにかけて回復傾向で、同四半期営業増益率は53%増、通期でも営業53%増益の計画です。配当性向は30%を目安にしています。昨年5月の決議で、2,000億円の自社株買いを実施済みです。


■小松製作所(6301)~好業績を維持。連結配当性向40%以上が方針

建設機械では米キャタピラーに続く世界2位のシェアを有し、産業機械等にも展開しています。1/30に、24.3期3Q(累計)決算を発表し、前年同期比10%の増収、同30%の営業増益を達成。円安や値上げの浸透が貢献しました。ただ、一部地域に減速感がみられると述べています。連結配当性向は40%以上とする方針です。


■メイテックホールディングス(9744)~技術者派遣大手。手厚い株主還元策

製造業を対象とした技術者派遣が中核事業です。デンソーやソニー半導体部門、三菱重工業等が主要派遣先で、上位10社向け売上高が23%(23.3期)を占めています。2/1に24.3期3Q(累計)決算を発表。大手製造業の次世代を見据えた技術開発投資追い風に、好業績を維持しました。総還元性向100%以内、うち配当性向50%以上が目安です。


■アマダ(6113) ~金属加工のグローバルメーカ。今期は業績好調で、配当も増額の見通し

金属加工機械のグローバルメーカー。1946年の創業以来、商社などを通さない直販体制を貫いています。今上期までの業績は堅調。円安進行やEV関連の加工需要が寄与し、決算発表と同時に業績・配当計画を上方修正しました。配当政策は連結配当性向50%を目安に、株主資本配当率(DOE)3%から4%程度で年間配当額を決定することが基本方針です。


■インフロニア・ホールディングス(5076)~準大手ゼネコン。今期から中間配当の実施を開始

総合インフラサービス企業を目指す、準大手のゼネコン。2021年、前田建設工業・前田道路・前田製作所が共同出資する形で設立されました。営業利益の構成比(23.3期)は土木45%、建築22%、利益率の高いインフラ運営が20%他です。今上期決算発表と同時に、通期の予想売上・各利益の上方修正を実施。工事の順調な進捗や土木事業での利益率の大幅改善などが寄与しました。また、今期(24.3期)から中間配当の実施を開始。配当性向の目安は30%です。


■かんぽ生命保険(7181)~日本最大級の生命保険会社、減配は行わない方針

郵政グループの一角で、日本最大級の生命保険会社です。自社株買いを含めて総還元性向は中計期間(22.3~26.3期)の平均で40~50%が目安。原則として減配は行わず増配を目指してゆく方針を掲げています。保有契約の減少等により、3期連続で減収となる見通しですが、配当は3期連続増配が実施される予定です。


■横河ブリッジホールディングス(5911)~今期から累進配当が基本方針に

インフラ整備に注力。売上高構成比(23.3期)は、橋梁事業が52%、エンジニアリング関連事業が45%を占めます。民間からの受注割合(同)は58%です。今期3Q累計で、各利益の通期目標に対する進捗率は80%程度を達成しています。株主還元意欲は高く、23.3期まで16年間非減配を継続し、内13回は増配を実施。なお、24.3期からは配当の基本方針が変更され、「安定した配当の継続」から「累進配当」になりました。配当性向の目安は30%以上です。


■日産自動車(7201)~円安を追い風に業績回復!配当金も無配から年間15円に

大手自動車メーカー。海外比率(23.3期)は生産台数で82%、販売台数で86%です。業績は、20.3期‐21.3期が連続最終赤字でした。しかし、22.3期に黒字転換して以降は、円安などの追い風も吹き順調に回復。21.3期は、無配でしたが今期は1株あたり年間15円の配当が実施される予定です。


■ダイセル(4202)~大手化学メーカー。自社株買い&消却も積極的

1919年創業、世界14カ国(海外売上高比率63%、23.3期)で事業を展開する大手化学メーカーです。主力製品の自動車エアバッグ用ガス発生装置は世界トップクラスのシェア。今期は2Q決算発表時、コストダウンや為替の影響等で各利益目標と予想配当の上方修正を実施。配当の基本方針では、1株あたり年間32円を下限とし、配当と機動的な自己株式取得を合わせた各年度の総還元性向40%以上が目標。自社株買いと自己株式の取得が昨年も実施した実績を有しています。


■コムシスホールディングス(1721)~通信設備工事大手。期中に自社株買いの上限を10億円分拡大

NTTグループ向けの通信設備工事やICT関連工事等を行う企業です。キャリア事業の減少をICTや太陽光などの成長事業がカバーしています。今期(24.3期)は総還性向70%を目安に、自社株買い50億円(昨年11月に上限40億円から拡大)、消却800万株が予定されており、積極的な利益還元姿勢を見せています。

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