アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~WWグレインジャー、エアープロダクツ アンド ケミカルズ、アメテックほか好決算銘柄~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~WWグレインジャー、エアープロダクツ アンド ケミカルズ、アメテックほか好決算銘柄~

投資情報部 榮 聡

2022/11/07

先週はFOMCの結果が12月FOMCでの利上げ幅縮小を期待する市場の期待に沿わず、また、企業業績への懸念が一段と高まったことから、反落となりました。今週の株価材料として、米中間選挙、米消費者物価指数、などが注目されます。

今回は先週の好決算銘柄から、WW グレインジャー(GWW)エアープロダクツ アンド ケミカルズ(APD)アメテック(AME)コノコフィリップス(COP)アリスタ ネットワークス(ANET) を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
エネルギー 2.4% 11.6% 25.8%
素材 0.9% 8.6% -2.2%
資本財・サービス 0.4% 11.6% -1.1%
公益事業 -0.6% 5.2% -9.7%
金融 -0.8% 9.7% 0.6%
ヘルスケア -1.6% 6.5% -0.5%
不動産 -1.8% 4.7% -17.2%
生活必需品 -1.8% 7.9% -3.4%
S&P500 -3.3% 3.6% -9.0%
一般消費財・サービス -5.8% -3.9% -17.7%
情報技術 -6.9% 0.1% -17.8%
コミュニケーションサービス -7.4% -7.3% -21.8%
騰落率上位(5日) 騰落率
ボーイング 11.2%
デュポン・ド・ヌムール 7.6%
サイモン・プロパティー・グループ 6.1%
CVSヘルス 5.7%
スターバックス 5.5%
騰落率下位(5日) 騰落率
セールスフォース -14.3%
ペイパル・ホールディングス -12.8%
アドビ -12.3%
アマゾン・ドット・コム -12.0%
ネットフリックス -11.8%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で3.3%、NYダウは1.4%、ナスダック指数は5.6%の下落となりました。11月FOMCの結果が市場の期待に沿わず、反落となりました。

11/1(火)は9月求人数が市場予想以上に増加、10月ISM製造業景気指数は前月から低下も予想を上回りました。「(経済の)Good newsは(株式市場の)bad news」の流れの中、相場の下落につながったとみられます。

11/2(水)はFOMCの結果発表を受けて大幅に下落しました。FOMC後の会見でパウエルFRB議長は、利上げペースの減速を示唆したものの時期は特定せず、また、政策金利の到達点が従来想定よりも高まる可能性があるとしました。12月FOMCでの利上げペース引き下げを期待していた市場から失望されました。

11/3(木)も前日からの流れが変わらず、米10年国債利回りが一時4.2%台をつけ、テクノロジー株の下落が大きくなりました。クアルコムの10-12月期売上ガイダンスが市場予想を大きく下回り、企業業績への懸念が大きくなりました。

11/4(金)は10月雇用統計の非農業部門雇用者数が市場予想の前月比20万人増を上回る同26.1万人増となりましたが、前月の値が同31.5万人に上方修正されたことで、雇用鈍化の形が維持されました。また、予想以上となっていたADP雇用統計で市場の織り込みが進んでいたとみられ、株式は反発となりました。

業種指数では、景気敏感でプラスのものがありました。一方、大幅な下落となった「コミュニケーションサービス」はアルファベット、メタプラットフォームズ、ネットフリックス、「情報技術」はアップル、マイクロソフト、「一般消費財・サービス」はアマゾンドットコム、テスラの寄与が大きくなっています。

個別銘柄では、ボーイング(BA)の上昇が目立ちました。11/2(水)にインベスターデーを開催、カルフーンCEOが「2020年台半ばまでに年100億ドルのフリーキャッシュフローの創出を見込んでいる」(2021年12月期は44億ドルの赤字)としたことが最悪期を脱するとの市場の期待につながったとみられます。

経済指標では、10月雇用統計の平均時給が前年比4.7%増と前月の同5.0%増から低下、インフレピークアウトの方向性を示すものとなりました。先週は雇用の数量面では市場予想を上回るものが多く出ましたが、鈍化の傾向は変わらず賃金面にも表れ始めていると言えそうです。

今週の米国株式市場

S&P500指数は、先週の動きから3,900ポイント前後での上値抵抗が強い一方、3,700ポイント近辺では押し目買いの動きが活発化することが示されたと言えるでしょう。当面、このレンジでのもみ合いとなる可能性が高そうです。

今週の株価材料として、米中間選挙、米消費者物価指数、などが注目されます。

11/8(火)に投票が行われる米国の中間選挙は、上院・下院とも共和党が優勢です。リアルクリアポリティクスの集計(米国11/6(日)時点)では、上院は共和党優勢48議席、民主党優勢44議席、接戦8議席、下院は共和党優勢227議席、民主党優勢174議席、接戦34議席となっています。

下院に比べて接戦となっている上院では、ペンシルベニア州、ジョージア州、アリゾナ州、ネバダ州、ワシントン州、ワイオミング州、コロラド州、ニューハンプシャー州などが接戦州として動向が注目されています。

ただ、バイデン政権が重視してきた法案は既に成立しており、債務上限問題以外に財政政策における重大な争点がないとみられることから、金融市場へのインパクトは限定的とみられているようです。

過去のデータでも、「年末年始は株価が上昇しやすい」というアノマリーについて、中間選挙は邪魔しないという結果が出ています。図表3は10月末から翌年1月末までの3ヵ月の株価騰落率を、1969年11月~2022年1月までについて平均を計算したものですが、中間選挙年の平均は全体の平均を上回って大幅な上昇となったケースが多いことがわかります。

消費者物価指数は11/10(木)に10月分が発表されます。パウエルFRB議長は12月FOMCでの利上げ幅縮小を示唆しなかったため、利上げ幅を縮小する時期については、これから出てくるデータが重要ということになり、その中でも最も重要な指標と言えるでしょう。

総合指数は前年比7.9%増へ前月の同8.2%増から4ヵ月連続で低下の予想です。食品・エネルギーを除くコア指数は、前年比6.5%増へ前月の同6.6%増から低下が予想されています。8月、9月と上昇が続いたコアが予想通りに低下となれば、インフレピークアウトに対する期待が高まると考えられます。

なお、7-9月期決算はS&P500指数採用銘柄の85%が発表を終わり、FactSet社の集計によるS&P500指数の予想EPS(発表済企業の結果と今後発表される企業の予想の混合によります)は前年同期比2.2%増の予想です(11/4(金)時点)。先週末と変わらずです。

経済指標では上記のほか、11/11(金)に11月ミシガン大学消費者信頼感(前月の59.9から59.5へ悪化の予想)、などの発表が予定されています。

企業イベントでは、パランティアテクノロジーズ、パイオニアナチュラルリソーシズ、アップスタートホールディングス、ユニティソフトウェア、コインベースグローバル、ウォルトディズニー、マルケタ、リビアンオートモーティブなどの決算発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回も7-9月期の好決算銘柄をご紹介いたします。

10/28(金)から11/3(木)に決算を発表したS&P500指数採用銘柄について、(1)7-9月期決算が売上・EPSとも市場予想を上回る、(2)7-9月期決算が前年同期比増収増益、(3)11/3(木)までの過去5日の株価上昇率がプラス、(4)時価総額300億ドル以上、の条件で抽出された銘柄を図表4にリストアップしています。

産業機器・サービス、エネルギー、公益事業などの銘柄が複数リストアップされています。ここからWWグレインジャー(GWW)、エアープロダクツ アンド ケミカルズ(APD)、アメテック(AME)、コノコフィリップス(COP)、アリスタ ネットワークス(ANET)を選んでご紹介いたします。

図表3 毎年10月末から翌年1月末までの3ヵ月のS&P500指数騰落率平均(1969年11月~2022年1月)

注:「中間選挙年平均」に2022年のデータは入っていません。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 先週の好決算銘柄(対象は10/28(金)~11/3(木)に決算を発表したS&P500指数採用銘柄)

事業分野 コード 銘柄名 7-9月期
売上
市場予想比
7-9月期
EPS
市場予想比
7-9月期
売上
前年同期比比
7-9月期
EPS
前年同期比
株価騰落
(5日)
(%)
産業資材販売 GWW WWグレンジャー 1.5 14.4 16.9 46.4 10.6
産業用ガス APD エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ 11.2 4.7 25.7 15.1 6.0
電子機器・電気機械装置 AME アメテック 2.2 7.3 7.7 15.1 5.7
石油生産 COP コノコフィリップス 17.8 4.7 86.1 103.4 5.7
空調・温度管理 TT トレイン・テクノロジーズ 5.7 7.1 17.5 26.1 5.4
電力 NEE ネクステラ・エナジー 12.0 6.5 53.8 13.3 3.6
総合エネルギー XOM エクソンモービル 8.7 14.3 51.9 181.7 3.3
電力 ED コンソリデーテッド・エジソン 15.8 11.7 15.3 15.6 2.7
ネットワーク機器 ANET アリスタネットワークス 12.0 21.4 57.2 68.9 2.6
天然ガスのインフラ WMB ウィリアムズ・カンパニーズ 5.1 9.3 22.1 41.2 2.0
総合エネルギー CVX シェブロン 9.6 12.6 49.1 87.8 1.8
農薬・種子 CTVA コルテバ 7.6 46.0 17.1 14.3 1.5
医薬品 LLY イーライリリー 0.2 2.6 2.5 2.1 1.5
動力制御システム PH パーカー・ハネフィン 7.0 14.9 12.5 11.3 0.9

注:米国時間で11/3(木)時点のデータです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

買付 チャート 銘柄 株価
(11/4)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートWW グレインジャー(GWW)593.64ドル19.5

【産業用資材販売の会社】

・工具など維持補修用の産業用資材販売で全米最大。200万点超の圧倒的な品揃えを誇り、グローバルに450万以上の顧客にサービスを提供しています。通販ウェブサイトZoroで販売を強化、日本では子会社のMonotaRoが通販サイトを運営しています。

・7-9月期の売上は前年同期比17%増(為替の影響を除いて同20%増)、EPSが同46%増と好調でした。大幅な増益は増収効果に加え、粗利率が前年同期比1.45%ポイント改善したことによります。粗利率の改善は、販売ミックスの改善と販売価格と仕入価格のマージンの一時的拡大によります。通期のEPSガイダンスを5%引き上げています。今後は景気鈍化の影響が想定されますが、維持補修の分野は相対的に影響を受けにくいと考えられるでしょう。

買付チャートエアープロダクツ アンド ケミカルズ(APD)276.0624.3

【産業用ガスの大手】

・産業ガスの分野で、リンデ、エアリキードに次ぐ3位の会社です。液化天然ガス設備で世界的です。脱炭素実現に向けて2026年稼働予定のブルー水素製造計画(ルイジアナ州)など複数のプロジェクトを推進しています。調整後EPSで年平均10%の安定成長を目指します。40年連続で増配を達成しており、配当貴族指数の構成銘柄です。

・7-9月期決算は、売上が前年同期比26%増、調整後EPS(ロシア事業分離に伴う特別損失などを除く)が同15%増と好調でした。売上増は数量が前年同期比9%増、価格が同8%増、エネルギーコストのパススルーが同15%増、為替が同6%減の内訳です。2023年9月期の調整後EPSガイダンスは、前年比9~12%増の11.20~11.50ドルです。

買付チャートアメテック(AME)135.25ドル23.4

【電子機器・電気機械装置メーカー】

・電子機器・電気機械装置メーカーです。航空宇宙、電力、産業用が柱で、計測、センシング、自動化に使われる機器を提供しています。各分野で競争力の高い製品群を擁し、2017年から平均で売上に対して約20%のフリーキャッシュフローを生み、企業買収に投入しています。「オペレーショナルエクセレンス」、「戦略的買収」、「グローバル&マーケット拡大」、「新製品」の4戦略で1株利益の2桁成長を狙います。1930年からニューヨーク市場に上場する老舗です。

・7-9月期業績は、売上が前年同期比8%増、EPSが同25%増と好調です。部門別の営業利益は、電子機器が前年同期比11%増、電気機械装置が同19%増と、ともに好調です。10-12月期のEPSは前年同期比6~7%増の1.45~1.47ドルを見込みます。

買付チャートコノコフィリップス(COP)132.32ドル10.2

【業績好調で株主還元を引き上げ】

・石油・天然ガスの探鉱・生産の上流部門に特化するエネルギー企業の大手です。原油価格が安い局面でパーミアン盆地で操業するコンチョ・リソーシズの買収を決めて2021年1月に完了、原油価格回復の恩恵を大きく受けています。カナダのオイルサンド資産を保有するエノバス・エナジー社の保有株式を2022年にかけて売却する方針で、株主還元の拡大が期待されています。

・7-9月期の純利益は原油価格の下落で4-6月期からは10%減となるも、前年同期比では94%増でした。販売価格が前年同期比46%増、生産量が同14%増加しました。業績好調を背景に四半期配当を0.51ドルへ11%引き上げ、新たに200億ドルの自社株買いを承認しています。

買付チャートアリスタ ネットワークス(ANET)131.07ドル25.1

【2023年も25%の売上成長へ】

・2004年に米国のカリフォルニア州で創業されたネットワーク機器メーカーで、主にデータセンター、仮想化・クラウドコンピューティング向けのイーサネットスイッチ製品を開発、販売しています。同社はデータセンターの100ギガビットスイッチでは市場のリーダーであり、400ギガビットスイッチへのアップグレードとキャンパス市場での拡大により、中期的に2桁の売上成長に回帰することを目指しています。

・7-9月期決算は、データセンター向けのネットワーク機器が伸びて売上は前年同期比57%増、EPSは同69%増と絶好調です。売上は4-6月期との比較でも12%伸びています。さらに11/3(木)に開催されたインベスターデーで、2023年12月期の売上目標を前年比25%増に相当する55億ドルとし、同16%増の市場予想を大幅に上回って好感されました。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エアープロダクツアンドケミカルズは2023年9月期、その他はいずれも2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
7(月) ・中国貿易統計(10月)
・COP27開催(エジプト、~11月18日)
・米消費者信用残高(9月)
パランティアテクノロジーズ
8(火) ・米中間選挙(対象は上院が約1/3議席、下院は全議席)
・NFIB中小企業楽観指数(10月)
ウォルトディズニーロイヤルティファーマ、デュポン
オキシデンタルペトロリアム
9(水) ・中国生産者・消費者物価指数(10月) ユニティソフトウェアリビアンオートモーティブ
ビヨンドミートマルケタ
10(木) 米消費者物価指数(10月)
・米新規失業保険申請件数(11月5日に終わる週)
ニオ
11(金) ・ミシガン大学消費者信頼感(11月、速報値)  
14(月) ・ユーロ圏鉱工業生産(9月)  
15(火) ・日本実質GDP(7-9月期、速報値)
・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(10月)
・ドイツZEW景気指数(11月)
・ユーロ圏実質GDP(7-9月期、速報値)
・米生産者物価指数(10月)
・ニューヨーク連銀製造業景気指数(11月)
ホームデポ、ウォルマート
16(水) ・日本機械受注(9月)
・米小売売上高(10月)
・米鉱工業生産(10月)
エヌビディア、シスコシステムズ、ターゲット、ロウズ
17(木) ・NAHB住宅市場指数(11月)
・EU27ヵ国新車登録台数(10月)
・米住宅着工・建設許可件数(10月)
・米新規失業保険申請件数(11月12日に終わる週)
アリババグループ、アプライドマテリアルズ
18(金) ・米中古住宅販売件数(10月)  

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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