アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~相場の上昇一服で光る52週高値更新銘柄、IBM、キャタピラーほか~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~相場の上昇一服で光る52週高値更新銘柄、IBM、キャタピラーほか~

投資情報部 榮 聡

2022/11/21

先週は金融当局者から、「ペースは鈍化するものの利上げを継続する」との発言が相次ぎ、引き締めサイクルの終了が近いとの期待が弱まって軟調な展開となりました。今週の株価材料として、FOMC議事要旨、金融当局者の発言、米年末商戦、などが注目されます。

今回は最近52週高値を更新した銘柄から、インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)キャタピラー(CAT)シェブロン(CVX)ギリアド サイエンシズ(GILD)マクドナルド(MCD)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

「雲」の上でのもみ合いとなっています。「雲」の上限が下値支持ラインとして機能するか注目されます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
生活必需品 1.7% 8.4% -2.5%
ヘルスケア 1.0% 6.2% 1.2%
公益事業 0.8% 8.3% -11.5%
コミュニケーションサービス -0.1% -1.9% -15.5%
資本財・サービス -0.2% 11.9% 0.5%
S&P500 -0.7% 5.7% -6.2%
情報技術 -0.9% 5.9% -10.9%
金融 -1.5% 9.7% 1.1%
素材 -1.6% 10.5% 1.0%
不動産 -1.8% 9.6% -14.7%
エネルギー -2.4% 4.8% 15.8%
一般消費財・サービス -3.1% -2.6% -16.9%
騰落率上位(5日) 騰落率
シスコシステムズ 6.7%
メルク 6.4%
ウォルマート 5.4%
バイオジェン 4.6%
ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J) 4.1%
騰落率下位(5日) 騰落率
キャピタル・ワン・ファイナンシャル -14.9%
テスラ -8.1%
ブラックロック -7.0%
ペイパル・ホールディングス -6.7%
アマゾン・ドット・コム -6.6%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.7%、NYダウは0.0%、ナスダック指数は0.4%の反落でした。

11/14(月)は金融当局者から、ペースは鈍化するものの利上げを継続するとの発言が相次ぎ、引き締めサイクルの終了が近いとの期待が弱まって反落しました。アマゾンが技術系などの職種で約1万人の人員削減を実施することが伝わりました。

11/15(火)は10月卸売物価指数が市場予想を上回る鈍化となって上昇しましたが、ロシアのミサイルがポーランドに着弾して死亡者が出たとの報道で上げ幅を縮めました(その後、ウクライナが発射した迎撃ミサイルであった可能性が出て、一時高まったNATO-ロシア間の緊張は緩和しています)。

11/16(水)は大手小売ターゲットのさえない業績見通しやマイクロン・テクノロジーの減産計画を受けて反落、11/17(木)は再び金融当局者の発言から利上げペース減速に対する期待がしぼんで下落となりました。11/18(金)もタカ派的なFRB高官の発言で相場は不安定となりましたが、ディフェンシブ株への買いがけん引してプラスで引けました。

業種指数では、先々週の相場上昇局面で劣後していた「生活必需品」「ヘルスケア」などが軟調な相場の中でプラスに浮上しました。テスラ、アマゾンドットコムの下落で「一般消費財・サービス」、原油価格の下落で「エネルギー」の下落が大きくなっています。個別銘柄では、シスコ システムズ(CSCO)の上昇が目立ちました。8-10月期決算で売上・EPSが市場予想を上回ったうえ、11-1月期の売上・EPSガイダンスも市場予想を上回りました。

経済指標では、10月生産者物価指数の総合指数が前年比8.0%増(前月は同8.4%増、予想は同8.3%増)、コア指数が同6.7%増(前月は同7.1%増、予想は同7.2%増)と、いずれも前月から市場予想を上回る低下となって好感されました。一方、10月小売売上高が前月比1.3%増と2022年2月以来の伸びとなり、市場予想の同1.0%増を上回りました。こちらは、FRBのタカ派姿勢を正当化する内容と言えるでしょう。

今週の米国株式市場

S&P500指数は、インフレピークアウトを織り込む中で来年初にかけて戻り基調となることが期待されます。先週は金融当局者からタカ派の発言が相次ぎましたが、市場の反応は比較的冷静であり、やはり基調は変わったと考えてよいのではないでしょうか。

なお、今週は11/24(木)がサンクスギビングデーで休場、11/25(金)が短縮取引(取引時間が3時間短くなります)のため、取引日数は3.5日になりますので、ご注意ください。

今週の株価材料として、FOMC議事要旨、金融当局者の発言、米年末商戦、などが注目されます。

今回公表されるFOMC議事要旨は、11月1日、2日開催分です。前回FOMC後の会見でパウエルFRB議長は、利上げペースの減速を示唆したものの時期は特定せず、また、政策金利の到達点が従来想定よりも高まる可能性があるとしました。

12月FOMCでの利上げペース引き下げを期待していた市場から失望されたという経緯があるため、警戒されているとみられます。また、今回はターミナルレート(政策金利の最高到達点)に関する手がかりも市場で注目されているようです。

株式市場は金融当局者の発言に引き続き敏感に反応しています。今週も11/22(火)に金融当局者のメスター氏、ジョージ氏、ブラード氏の発言機会があり、要注意です。

11/25(金)のブラックフライデーから米国の年末商戦が本格化します。全米小売業協会(NRF)は、11/17(木)にサンクスギビングデーからサイバーマンデーまでの買物客の人出を前年比8百万人増の166.3百万人と堅調の予想です。

一方、大手小売ターゲットは、先週の決算発表で「8-10月期の終盤にあらわれた売上・利益の軟化は11月も継続している」とコメントして、市場の警戒感を高めました。ただ、同社の場合はインフレ高進で裁量品消費(生活必需品消費に対する)を抑える消費者の動きが市場平均以上に強く出ている可能性には留意が必要でしょう。

経済指標では、11/23(水)に米国の10月耐久財受注(前月比0.4%増の予想)、米国の10月新築住宅販売件数(前月比5.5%減の予想)、などの発表が予定されています。

企業イベントでは、ズームビデオコミュニケーションズ、アナログデバイセズ、ディアなどの決算発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は市場全体が戻り一服となっているため、この中で最近52週高値を更新した銘柄をご紹介したします。米国市場がもみ合いを続ける中でもじり高となる可能性があるとみられます。

図表3に抽出された銘柄群から、最近に52週高値を更新した銘柄を中心に、予想EPSの修正動向も勘案し、インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)、キャタピラー(CAT)、シェブロン(CVX)、ギリアド サイエンシズ(GILD)、マクドナルド(MCD)を選んでご紹介いたします。

図表3 最近52週高値を更新した銘柄群(S&P100指数採用銘柄を対象)

コード 銘柄名 52週高値
更新日
予想EPS
修正率
(4週)
予想EPS
(今期)
(ドル)
予想EPS
(来期)
(ドル)
株価
(11/17)
(ドル)
予想
PER
(倍)
IBM IBM 11/17 -1.6 9.0 9.6 146.09 15.3
CAT キャタピラー 11/14 18.4 13.8 14.9 230.44 15.5
CVX シェブロン 11/14 4.0 19.1 16.9 184.09 10.6
GILD ギリアド・サイエンシズ 11/14 6.6 7.1 6.7 83.62 12.6
MET メットライフ 11/11 -5.3 7.1 8.3 74.89 9.4
MCD マクドナルド 11/10 1.4 9.9 10.4 273.36 27.0
MRK メルク 11/09 -6.5 7.4 7.5 102.31 14.8
BMY ブリストル マイヤーズ スクイブ 11/09 -2.5 7.6 8.0 77.16 9.6
LLY イーライリリー 11/09 -8.3 7.9 9.2 360.77 42.8
XOM エクソンモービル 11/08 5.7 13.7 11.1 113.06 9.8
AMGN アムジェン 11/08 -0.9 17.6 18.6 287.30 15.8
LMT ロッキード・マーチン 11/08 0.6 21.8 27.3 472.77 17.5

注:米国時間で11/17(木)時点のデータです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

買付 チャート 銘柄 株価
(11/18)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートインターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)147.64ドル15.4

【売上モメンタムの改善を示唆】

・同社は売上見通しについてこれまで「1桁台半ばの伸び」と説明していましたが、7-9月期決算で具体的な数字はあげなかったものの、これ以上の伸長を見込むとして好感されました。同社は昨年末に成長性の低い部門を切り離したことで売上成長の回復が期待されてきましたが、順調に推移しているとみられます。利益の回復は遅れていますが、売上の回復が続けばいずれついてくると期待されます。株価は52週高値だけでなく、ここ数年来の高値に近づきつつあり、クリアすれば上昇の勢いがつきそうです。

・7-9月期の売上は前年同期比6%増(為替の影響を除いて同15%増)、調整後EPSは同2%減、市場予想に対してはそれぞれ4%、0.1%上回りました。部門別の増収率は、ソフトウェアが同7%(為替の影響を除いて同14%増)、コンサルティングが同5%増(同じく同16%増)、インフラストラクチャーが同15%増(同じく同23%増)と、いずれも好調です。

買付チャートキャタピラー(CAT)231.4315.5

【需要は堅調】

・サプライチェーン問題、長期金利上昇、経済成長率の鈍化など向かい風は強いものの、7-9月期決算で示された最終需要の堅調、受注残の増加などを考えると2022年の二桁増益に続いて2023年も増益が可能と考えられます。

・7-9月期決算は、売上が前年同期比21%増、EPSが同49%増で、市場予想をそれぞれ2%、24%上回って好調でした。売上増は販売価格引き上げのほか、ディーラーの在庫引き上げに加えて最終需要も堅調で販売数量も伸びました。部門別売上は建設が前年同期比19%増、資源関連が同30%増、エネルギー&運輸が同22%増でした。受注残は前年同期比94億ドル、2022年6月末比でも16億ドルの増加となりました。

買付チャートシェブロン(CVX)182.99ドル10.8

【原油反落でも株価は高値圏】

・原油価格が夏場の高値から大きく下落しているにもかかわらず、エネルギー企業の株価が高値圏にあるのは、やや違和感があるかもしれません。このところ企業業績全体に不透明感が高まって下方修正が増えていることから、前年比大幅な増益で安定しているエネルギー企業の評価が見直されている可能性がありそうです。図表3にはエクソンモービルも入っており、経営が安定している総合エネルギーにはその傾向が強い可能性があります。

・7-9月期決算は、EPSが前年比88%増の大幅増益で、市場予想を上回りました。米国での生産量増加(同4%増)は主にメキシコ湾とパーミアン盆地が牽引しました。マイク・ワースCEOは「力強い決算となった。投資とエネルギー供給を増やしており、パーミアン盆地の生産が好調だった」と発言しています。なお、株主還元(配当と自社株買い)として65億ドルを実施しました。営業キャッシュフローとして153億ドル稼ぎ、今後も株主還元に期待できそうです。

買付チャートギリアド サイエンシズ(GILD)83.62ドル12.6

【新型コロナ向け薬を除くと増収】

・大手バイオテクノロジー企業です。かつて主力薬であったC型肝炎治療薬が伸びなくなり、HIV治療薬を育ててある程度カバーしましたが、2016年から業績は低調な状態が続いています。業績伸長への期待が低くなっている中、2022年7-9月期決算が市場予想を上回ったことを受けて株価が上昇しています。

・7-9月期の決算は、売上が前年同期比5%減、EPSが同28%減と低調でしたが、市場予想をそれぞれ15%、33%上回りました。通期の業績見通しも引き上げ、これによって市場の予想EPSも6%押し上げられました。7-9月期の売上は、新型コロナウイルス向けのベクルリー(ウイルスの体内での増殖を抑える薬)の売上を除くと、前年同期比11%増でした。HIV治療薬、セルセラピー、C型肝炎治療薬などの増加が寄与しており、持続的な売上回復に対する期待が芽生えているようです。

買付チャートマクドナルド(MCD)273.37ドル26.2

【歴史的にみて不況に強い】

・パンデミックからの業績回復が続いているうえ、インフレ環境の中で消費者が外食をダウントレード(安いものにシフト)する場合に、恩恵を受けやすいことも株価が堅調な要因とみられます。また、同社は数年前から行っている改装の効果やデジタルへの投資、宅配なども業績を押し上げる要因になっているとみられます。

・7-9月期は売上高と調整後EPSが市場予想を上回りました。世界全体の既存店売上高が、海外市場のけん引で前年同期比9.5%増と、堅調でした。マーケティングの強化とデジタル経由の注文拡大が寄与しました。デジタル経由の売上高は同社のトップ6市場で全体の1/3以上を占めるようになりました。米国市場もデジタル経由に加え、値上げや朝食の回復が寄与し、既存店売上高が同6.1%増となり、市場予想を上回りました。 

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
21(月) ・シカゴ連銀全米活動指数(10月) ズームビデオコミュニケーションズ
22(火) ・ユーロ圏消費者信頼感(11月) アナログデバイセズ
23(水) ・S&Pグローバルユーロ圏製造業PMI(11月)
・米耐久財受注(10月)
・米新規失業保険申請件数(11月19日に終わる週)
・S&Pグローバル米国製造業PMI(11月)
・ミシガン大学消費者信頼感(11月、確報値)
・米新築住宅販売件数(10月)
・FOMC議事要旨(11月1日、2日開催分)
ディア
24(木) ・米国休場(サンクスギビングデー)
・auじぶん銀行日本製造業PMI(11月)
・ドイツIFO企業景況感(11月)
 
25(金) ・ブラックフライデー  
28(月)    
29(火) ・ユーロ圏景況感(11月)
・S&Pコアロジックケースシラー住宅価格(9月)
・米コンファレンスボード消費者信頼感(11月)
クラウドストライクホールディングス
30(水) ・日本鉱工業生産(10月)
・中国製造業・非製造業PMI(11月)
・米ADP雇用統計(11月)
・米実質GDP(7-9月期、速報値)

・米中古住宅販売制約(10月)
・米求人労働異動調査(10月)
・米地区連銀経済報告(ベージュブック)
セールスフォースドットコム
12月
1(木)
・財新中国製造業PMI(11月)
・米チャレンジャー人員削減数(11月)
・米個人所得・個人支出(10月)
・米個人消費支出物価指数(10月)
・米新規失業保険申請件数(11月26日に終わる週)
・ISM製造業景気指数(11月)
アルタビューティ、ダラーゼネラル
2(金) 米雇用統計(11月)  

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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