アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~2023年の注目銘柄:年前半は最近の好調銘柄が持続する!?~

投資情報部 榮 聡
2022/12/26
先週は12月コンファレンスボード消費者信頼感指数が改善したことやナイキ、フェデックスの決算が好感されて、先々週からのリスク回避の動きが和らいでもみ合いに転じました。今週の株価材料として、S&P500指数がテクニカ的に重要な分岐点にあること、ファンダメンタルズ面での株価材料が枯れること、「節税売り」の影響低下による需給改善、などが注目されます。
今回は来年前半に株価好調が期待できる銘柄として、インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)、ネットフリックス(NFLX)、メルク(MRK)、イーライ リリィ(LLY)、スターバックス(SBUX)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

先々週の下落から先週はもみ合いに転じたように見えます。ファンダメンタルズの株価材料が枯れる中、「雲」の上限に沿った上昇となるか注目されます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
エネルギー | 4.4% | -4.7% | 26.4% |
公益事業 | 1.4% | 0.6% | 1.4% |
金融 | 1.4% | -5.6% | 11.4% |
生活必需品 | 1.0% | -1.2% | 8.5% |
ヘルスケア | 0.8% | -0.4% | 12.1% |
資本財・サービス | 0.8% | -2.6% | 17.4% |
不動産 | 0.0% | -3.8% | 2.1% |
素材 | -0.1% | -4.2% | 16.9% |
S&P500 | -0.2% | -4.5% | 5.2% |
コミュニケーションサービス | -0.4% | -5.1% | -3.3% |
情報技術 | -2.0% | -6.6% | 0.9% |
一般消費財・サービス | -3.1% | -8.9% | -12.2% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ナイキ | 9.7% |
チャーター・コミュニケーションズ | 9.5% |
シュルンベルジェ | 7.3% |
コノコフィリップス | 6.0% |
ゼネラル・エレクトリック(GE) | 5.3% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
テスラ | -18.0% |
エヌビディア | -8.2% |
ゼネラル・モーターズ(GM) | -6.4% |
フォード・モーター | -6.3% |
クアルコム | -3.2% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.2%の下落、NYダウは0.9%の上昇、ナスダック指数は1.9%の下落とまちまちでした。
12/19(月)はFRBによる金融引き締めがリセッションを招くとの懸念による先々週からのリスク回避が続いて続落、12/20(火)も日銀による長期金利の許容変動幅拡大がサプライズとなり下落して始まりましたが、相場水準を意識した押し目買いが入ったとみられ、S&P500指数は5営業日ぶりに小幅反発して引けました。米10年国債利回りは3.6%台後半に上昇しました。
12/21(水)は消費者信頼感指数が前月から大幅に改善、インフレ期待が低下したことが好感され、また、ナイキ、フェデックスの決算が支援材料となって株価は上昇しました。ナイキは北米市場の需要が好調で、フェデックスは9月に撤回した業績見通しを提示したことが好感されました。
12/22(木)は、7-9月期実質GDPの確報値が消費の堅調を受けて前期比年率3.2%増に上方改定されたことが金融引き締めの長期化懸念につながるとして続落、半導体メモリーのマイクロンテクノロジーによる厳しい市場見通しからテクノロジー株の下げが大きくなりました。12/23(金)は発表された経済指標が穏便な結果となって上昇しました。
業種指数では、WTI原油先物価格が来年のロシアの供給減が意識されて上昇が続いて「エネルギー」が大幅上昇となったほか、ディフェンシブ業種優位の傾向がみられます。個別では、9-11月期決算で北米市場の好調や在庫のピークアウト見込みが好感されたナイキ B(NKE)が上昇、EV需要の鈍化が懸念されているテスラ(TSLA)が大幅続落となりました。一方、テスラは2023年から適用が始まるEV税額控除拡大の恩恵が期待されています。
経済指標では住宅関連指標の発表が集中しましたが、11月住宅建設許可件数が前月比11.2%減(市場予想は同2.4%減)と下振れ、11月新築住宅販売件数は同5.8%増(市場予想は同5.1%減)と上振れとまちまちの結果でした。住宅ローン金利のピークアウトを受けて、これまでのように悪化一途ではなくなりつつあるようです。12月のNAHB住宅指数は前月の33から31に低下しましたが、前月からの低下幅は過去6ヵ月で最も小さくなっています。
今週の米国株式市場
S&P500指数は、インフレピークアウトを織り込む中で来年初にかけて戻り基調となることが期待されます。
来年1月半ばにかけて株式市場にインパクトを与えうるイベントとして、12/23(金)には23年度(2022年10月~2023年9月)の歳出法案が成立して当面政府閉鎖となる事態は回避されたほか、2023年に入って1/5(木)~8(日)のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)、1/6(金)の12月雇用統計(雇用市場の堅調は今度はポジティブに反応か)、1/12(木)の12月消費者物価指数(コア指数が3ヵ月連続で伸びが低下か)などが注目されます。
今週の株価材料として、S&P500指数がテクニカル的に重要な分岐点にあること、ファンダメンタルズ面での株価材料が枯れること、「節税売り」の影響低下による需給改善、などが注目されます。
S&P500指数は、10月13日安値(3,491.58ポイント)から12月13日高値(4,100.9ポイント)にかけて上昇した約600ポイントのほぼ仲値に位置しています。一目均衡表では相場が変化しやすいとされる「雲」の“ねじれ”に差し掛かっており、年末年始のラリーが実現するか、分かれ目にあるとみられます。
相場全体に影響を与えうる経済指標や企業決算が、来年1/4(水)のISM製造業景気指数、FOMC議事要旨までなくなることから、株式需給の影響が大きくなると考えられます。
年末にかけて「節税売り」は先週までに出たとみられ、今週以降来年初にかけて株式需給は改善すると期待されます。上記のようにファンダメンタルズの材料が枯れる時期でもあるため、需給要因で株価が動きやすくなると考えられます。
経済指標では、米国の10月ケースシラー住宅価格(前年比8.0%増の予想、前月は同10.4%増)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は今年最後の「アメリカNOW! 今週の5銘柄」になるため、来年の注目銘柄を選定しました。
来年の米国株市場については、年前半は経済成長率の鈍化、企業業績の伸び率低下が想定されるため、相場はもみ合いないし、今年の安値は割らないとみられますが、若干の下振れの可能性もあるとみています。最初の関門は、10-12月期決算が発表される1月下旬と想定されます。
一方、年前半に政策金利引き上げによる成長鈍化の程度を確認できた場合は、その後は2024年に向けての景気回復を織り込む相場になると想定され、年後半については株式相場も回復に向かうと想定されます。
以上のような想定から、年前半と後半で物色される銘柄は変化するとみています。当面の注目銘柄としては、景気悪化の影響を受けにくい銘柄、景気が悪化しても個別要因で業績モメンタムが良いと考えられる銘柄が良いでしょう。7-9月期決算の発表以降、ここ2ヵ月で注目銘柄にあげてきた銘柄から、インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)、ネットフリックス(NFLX)、メルク(MRK)、イーライ リリィ(LLY)、スターバックス(SBUX)を選んで来年の注目銘柄といたします。
図表3 米国の四半期GDPの成長率見通し(Bloomberg集計のコンセンサス予想)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (12/23) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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買付 | インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM) | 141.65ドル | 14.8 | 【売上モメンタムの改善を示唆】 ・同社は売上見通しについてこれまで「1桁台半ばの伸び」と説明していましたが、7-9月期決算で具体的な数字はあげなかったものの、これ以上の伸長を見込むとして好感されました。同社は昨年末に成長性の低い部門を切り離したことで売上成長の回復が期待されてきましたが、順調に推移しているとみられます。利益の回復は遅れていますが、売上の回復が続けばいずれついてくると期待されます。 ・7-9月期の売上は前年同期比6%増(為替の影響を除いて同15%増)、調整後EPSは同2%減、市場予想に対してはそれぞれ4%、0.1%上回りました。部門別の増収率は、ソフトウェアが同7%(為替の影響を除いて同14%増)、コンサルティングが同5%増(同じく同16%増)、インフラストラクチャーが同15%増(同じく同23%増)と、いずれも好調です。 | |
買付 | ネットフリックス(NFLX) | 294.97ドル | 26.7 | 【広告付きプランの導入に注目】 ・11/3(木)に米国や日本を含む主要10ヵ国で導入された広告付きプランの導入効果が注目されています。同社の広告主向け説明資料では、同プランによる視聴者数(加入契約当たり複数人が視聴できるため、加入者数よりも多いと考えられます)は、2022年末に4.4百万人(うち米国が1.3百万人)、2023年7-9月期に40百万人(うち米国が13.3百万人)に達する計画です。ただ、導入当初は広告視聴が計画に達していないとの観測もあり、今後の動向に注目です。 ・7-9月期の加入者純増が241万人で100万人の会社ガイダンスを大きく上回り、10-12月期のガイダンスも450万人と4-6月期の98万人減から回復傾向が続くことが示唆されました。加入者純増が1-3月期、4-6月期と2四半期連続でマイナスとなって「中期的な成長力を失ったのではないか」、との懸念が後退したとみられます。7-9月期の売上は前年同期比6%増、EPSは同3%減、市場予想に対してはそれぞれ1%、46%上回りました。 | |
買付 | メルク(MRK) | 111.86ドル | 15.0 | 【主力のがん治療薬「キイトルーダ」が伸びる】 ・売上世界4位の製薬会社です。がん、循環器系疾患、糖尿病、肝炎・感染症の医薬品・ワクチンを手掛けます。がん治療薬の「キイトルーダ」が主力薬で、2021年12月期の売上が171億ドル、売上構成比は35%です。糖尿病治療薬「ジャヌビア/ジャヌメット」、子宮頚がん予防ワクチン「ガーダシル/ガーダシル9」なども売上貢献が大きい製品です。2017年にアニマルヘルスの事業を買収して拡大に注力しています。 ・2022年12月期は主力薬「キイトルーダ」に加えて、新型コロナの経口治療薬「ラゲブリオ」(一般名:モルヌピラビル)も売上拡大に貢献します。一方、2023年12月期は新型コロナ治療薬の減少の影響もあり、全体も減収となる見込みです。しかし、主力の「キイトルーダ」は、適応拡大が続くことで、2022年12月期の209億ドルから、2023年12月期に241億ドル、2024年12月期267億ドルと順調に拡大して、利益拡大をけん引する見込みです。 | |
買付 | イーライ リリィ(LLY) | 367.90ドル | 43.1 | 【肥満治療薬の開発が注目されている】 ・製薬業界で世界大手の一角。第3相臨床試験以上の開発薬が30種類あり、パイプラインが充実していることから、大手医薬品メーカーの中でも特に高い成長が期待されています。パイプラインの中で注目されているのは、糖尿病薬と肥満治療薬の「チルゼパチド」、アルツハイマー治療薬「ドナネマブ」、皮膚炎治療薬「レブリキズマブ」などです。特に肥満治療薬としての「チルゼパチド」は、被験者の体重が21%減少したとする第3相臨床試験の結果を4月に発表、10月にはFDAの優先審査の資格を獲得して、市場の注目が高まっています。 ・7-9月期は、売上が前年同期比2%増、調整後EPSが同12%増で、市場予想を上回り、4-6月期決算が市場予想を下回ったことで高まった不透明感をかなり払拭しました。売上は数量が前年同期比14%増と伸びた一方、価格が同7%減、ドル高による目減りが同4%減となっています。通期ガイダンスは、売上・EPSとも引き下げられましたが、主にドル高の影響によるものです。 | |
買付 | スターバックス(SBUX) | 98.27ドル | 28.8 | 【中国事業の回復に期待】 ・同社業績の足を引っ張っている中国事業では、「ゼロコロナ政策」に緩和の兆しが出ていることから、2023年9月期には改善が期待されます。7-9月期の中国の既存店売上は前年同期比16%減でした。10-12月期も前年同期比マイナスが見込まれますが、通期では徐々に改善となる期待があります。 ・7-9月期決算は、グローバルの既存店売上が前年同期比7%増(客単価の上昇が8%ポイント貢献)と市場予想の同4.1%増を大きく上回りました。米国の既存店売上は同11%増と伸び、経営陣は店舗改装の効果が表れているとコメントしています。売上は前年同期比3%増、調整後EPSが同18%減で、いずれも市場予想を上回りました。売上については、今年度は13週間、前年同期は14週間での比較ですが、前年度も13週間に揃えた比較では同11%増でした。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、スターバックスは2023年9月期、その他は2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
26(月) | ・米国市場休場(クリスマスデーの振替) | |
27(火) | ・中国工業企業利益(11月) ・S&Pコアロジックケースシラー住宅価格(10月) |
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28(水) | ・日銀金融政策決定会合の主な意見 ・日本鉱工業生産(11月) |
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29(木) | ・米中古住宅販売成約(11月) ・米新規失業保険申請件数(12月24日に終わる週) |
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30(金) | ||
31(土) | ・中国製造業・非製造業PMI(12月) | |
2(月) | ・米国市場休場(ニューイヤーズデーの振替) ・財新中国製造業PMI(12月) |
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3(火) | ||
4(水) | ・米ISM製造業景気指数(12月) ・米求人労働異動調査(11月) ・FOMC議事要旨(12月13日、14日開催分) |
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5(木) | ・米チャレンジャー人員削減数(12月) ・米ADP雇用統計(12月) ・米貿易統計(11月) |
・CES(コンシューマーエレクトロニクスショー) (ラスベガス、8日まで) ・コナグラブランズ、ラムウェストンホールディングス ウォルグリーンブーツアライアンス |
6(金) | ・ユーロ圏小売売上高(11月) ・ユーロ圏景況感(12月) ・米雇用統計(12月) ・米ISM非製造業景気指数(12月) ・米製造業受注(11月) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
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