アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~業績モメンタム加速が見込まれているボーイング、IBM、GEほか~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~業績モメンタム加速が見込まれているボーイング、IBM、GEほか~

投資情報部 榮 聡

2023/01/16

先週は1/6(金)に発表された雇用統計、ISM非製造業景気指数を受けた株価上昇の流れが継続、さらに消費者物価が市場予想通りに鈍化したことから、株式は大幅な上昇となりました。今週の株価材料として、10-12月期決算発表、中国の経済指標、米国の住宅指標、などが注目されます。

今回は四半期決算の業績モメンタム加速が予想されている銘柄から、ボーイング(BA)インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)US バンコープ(USB)ゼネラル エレクトリック(GE)スターバックス(SBUX)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

タイミングは想定よりも後ずれしましたが、「年末年始のラリー」が来たと言ってよいでしょう。一方、GAFAMやテスラの決算発表が始まる来週以降には市場の警戒が高まりそうです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
一般消費財・サービス 5.8% 4.5% 2.2%
情報技術 4.6% 2.5% 11.3%
不動産 4.4% 6.3% 17.6%
素材 4.3% 6.5% 23.2%
コミュニケーションサービス 4.1% 7.4% 6.6%
S&P500 2.7% 3.8% 11.6%
エネルギー 2.7% 7.8% 11.8%
金融 2.0% 7.6% 16.7%
資本財・サービス 1.5% 4.9% 21.0%
公益事業 0.5% 1.9% 15.0%
ヘルスケア -0.2% 0.2% 9.6%
生活必需品 -1.5% 0.4% 11.1%
騰落率上位(5日) 騰落率
アマゾン・ドット・コム 14.0%
エヌビディア 13.7%
ゼネラル・エレクトリック(GE) 11.5%
サーモフィッシャーサイエンティフィック 9.1%
ダナハー 8.4%
騰落率下位(5日) 騰落率
アッウ゛ィ -7.8%
ファイザー -6.0%
ロッキード・マーチン -4.9%
ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J) -3.8%
レイセオン・テクノロジーズ -3.7%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で2.7%、NYダウは2.0%、ナスダック指数は4.8%のそれぞれ大幅な上昇でした。

1/6(金)に発表された12月雇用統計は雇用と賃金インフレの鈍化を示したうえに、ISM非製造業景気指数が50以下に急低下してサービス業のインフレ沈静化の方向も示唆して、同日株式は大幅に上昇、先週もこの流れが継続しました。

1/10(火)には寄り前に伝わったパウエルFRB議長発言にタカ派の要素がなかったことで安心感が広がり、また、1/11(水)にはボストン地区連銀のコリンズ総裁が次回FOMCでの利上げ幅は0.25%ポイントになる可能性があるとしたことが好感されました。1/12(木)の12月消費者物価指数は、総合指数、コア指数とも市場予想通り前年比の伸びが前月から低下して株式は続伸、次回FOMCでの利上げ幅は0.50%ポイントではなく0.25%ポイントとの見方が強まりました。

1/13(金)は大手銀行の決算発表で貸倒引当金の積み増しが嫌気されて市場は下げて始まりましたが、その後ミシガン大学消費者信頼感指数で1年先のインフレ期待が低下していることが好感されて、主要3指数ともプラスで引けました。

同日10-12月期の決算を発表したJPモルガンチェース、バンクオブアメリカ、ウェルズファーゴは調整後EPSが市場予想を上回る一方、シティグループ は予想に届きませんでした。しかし、4社とも株価は上昇して引けました。

業種指数では、インフレ低下を示す指標と長期金利の頭打ち観測から、予想PERの高い銘柄を含む「一般消費財・サービス」「情報技術」の上昇が大きくなりました。。一方、典型的なディフェンシブ業種である、生活必需品とヘルスケアはマイナスでした。個別では、予想PERの水準が高いアマゾンドットコム(AMZN)エヌビディア(NVDA)の上昇が大きくなりました。今期予想のEPSを基準とした予想PERは、それぞれ36.6倍、39.3倍です。

経済指標では、12月消費者物価指数が総合指数は前月の前年比7.1%増から同6.5%増へ、コア指数は前月の同6.0%増から同5.7%増へ、いずれもインフレの沈静化を示しました。ただし、サービスは前月の同6.8%増から同7.0%増へ、その中で比重の高い住居費は同7.1%増から同7.5%増へ上昇し、インフレが鈍化しつつも、高止まりする可能性を示唆して、一定の警戒感を残したと言えるでしょう。

今週の米国株式市場

米国市場では、10-12月期決算の発表を控えて企業業績見通しが下方修正されることへの警戒が高まっています。一方、インフレピークアウトを織り込む動きが続いているため、これは相場を支える要因になると期待されます。

今週の株価材料として、10-12月期決算発表、中国の経済指標、米国の住宅指標、などが注目されます。

先週末のJPモルガンチェース、バンクオブアメリカなど大手銀行から10-12月期の決算発表が始まりました。今週はゴールドマンサックス、モルガンスタンレー、ユナイテッドエアラインズ、P&G、ネットフリックス、シュルンベルジェなどの決算が予定されています。決算に対する市場の警戒が高まっていたため、当初は悪くてもさほど反応しない可能性もありそうです。正念場は、GAFAMやテスラの発表が集中する来週以降と考えられます。

世界経済が鈍化する中、「ゼロコロナ政策」の見直しによって改善の可能性がある中国経済への注目が高まっています。1/17(火)に中国の10-12月期実質GDP(前年比1.6%増の予想、前期は同3.9%増)、中国の12月鉱工業生産(前年比0.1%増の予想、前月は同2.2%増)、同小売売上高(前年比9.0%減の予想、前月は同5.9%減)などが発表されます。

また、今週は米国の住宅指標の発表が集中しています。足もとの事業環境は非常に悪いものの、住宅ローン金利が昨年10月にピークアウトしているため、今後は改善する可能性があります。1/18(水)に1月NAHB住宅市場指数(前月と同じ31の予想)、1/19(木)に12月住宅着工件数(前月比4.9%減の予想)、同住宅建設許可件数(前月比1.4%増の予想)、1/20(金)に12月中古住宅販売件数(前月比3.4%減の予想)、などの発表が予定されています。

経済指標では上記のほか、1/18(水)に米国の12月小売売上高(前月比0.9%減の予想)、米国の12月生産者物価指数(総合指数は前年比6.8%増の予想、前月は同7.4%増、コア指数は前年比5.5%増の予想、前月は同6.2%増)、などの発表が予定されています。 

今週の5銘柄

今回は10-12月期決算発表に着目し、前回の7-9月期決算実績から10-12月期決算予想に向けて、売上およびEPSの前年同期比伸び率が高まっている銘柄をご紹介いたします。

スクリーニングの対象は大型株からなるS&P100指数採用銘柄としました。売上については、前年同期比伸び率が2%ポイント以上、EPSについては同じく5%ポイント以上高まると予想されている銘柄を図表3に抽出しました。

ここからボーイング(BA)、インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)、US バンコープ(USB)、ゼネラル エレクトリック(GE)、スターバックス(SBUX)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表3 今回の四半期決算で業績モメンタム改善が見込まれている銘柄(S&P100指数採用銘柄対象)

コード 銘柄名 前四半期
実績増収率
(%)
A
前四半期
実績増益率
(%)
B
今四半期
予想増収率
(%)
C
今四半期
予想増益率
(%)
D
増収率
改善幅
(%ポイント)
C-A
増益率
改善幅
(%ポイント)
D-B
BA ボーイング 4.4 赤字拡大 33.0 黒字転換 28.6 改善
IBM IBM -19.9 -28.2 -3.0 6.4 16.9 34.6
USB USバンコープ 7.4 -10.8 16.2 -1.9 8.8 8.9
GE ゼネラル・エレクトリック(GE) 0.1 -38.6 5.6 40.4 5.5 79.0
SBUX スターバックス 3.3 -19.0 8.6 6.4 5.4 25.4
LOW ロウズ 2.5 19.8 6.8 24.8 4.3 5.1
CL コルゲート・パルモリーブ 0.9 -8.6 3.6 -2.9 2.6 5.7
F フォード・モーター 12.0 -41.2 14.6 15.1 2.6 56.3

注:データは1/12(木)時点です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

買付 チャート 銘柄 株価
(1/13)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートボーイング(BA)214.13ドル77.3

【民間航空機部門が回復中】

・同社の売上は「737MAX」が墜落事故を起こす前の2018年12月期の1,011億ドルから2022年12月期は666億ドルに低下、4年連続の赤字となる見込みです。「737MAX」は様々な問題を経て、現在は回復途上にあることから、業績のモメンタムが改善しつつあります。2023年12月期の売上は前年比21%増の807億ドル、純利益は22億ドルの黒字が予想されています。防衛・宇宙・セキュリティ部門の売上はここ4年間は横ばい圏が続いていますが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、市場の拡大が期待されています。

・7-9月期の業績は、民間航空機部門の売上が前年同期比40%増と回復して全体の売上は同4%増となったものの、防衛・宇宙・セキュリティ部門が固定価格で受注した空中給油機KC-46Aなど複数の案件で部品調達コストの上昇や開発費用が嵩んで大幅な赤字に陥りました。防衛・宇宙・セキュリティ部門の収益はリスクとなるものの、民間航空機部門は大型の受注が相次いでおり、また、世界的に海外渡航が回復しつつあることから、回復が継続すると期待されます。

買付チャートインターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)145.89ドル15.2

【売上モメンタムの改善を示唆】

・同社は売上見通しについてこれまで「1桁台半ばの伸び」と説明していましたが、7-9月期決算で具体的な数字はあげなかったものの、これ以上の伸長を見込むとして好感されました(事業分離の影響を除いたベース)。同社は昨年末に成長性の低い部門を切り離したことで売上成長の回復が期待されてきましたが、順調に推移しているとみられます。利益の回復は遅れていますが、売上の回復が続けばいずれついてくると期待されます。

・7-9月期の売上は前年同期比6%増(為替の影響を除いて同15%増)、調整後EPSは同2%減、市場予想に対してはそれぞれ4%、0.1%上回りました。部門別の増収率は、ソフトウェアが同7%増(為替の影響を除いて同14%増)、コンサルティングが同5%増(同じく同16%増)、インフラストラクチャーが同15%増(同じく同23%増)と、いずれも好調です。尚、図表3の売上の前年同期比は事業を切り離したキンドリルの影響を含むベースとなっています。

買付チャートUS バンコープ(USB)47.33ドル9.4

【全米4位のリテールを中心とした銀行】

・ミネソタ州ミネアポリス本拠の全米第4位の商業銀行です。リテール・法人向け金融・資産運用・決済業務などを提供、中西部・西部の26州に2,200店舗超を展開します。バークシャーハサウェイの株式ポートフォリオの組み入れ第9位で5.5%を占める銘柄でもあります(2022年6月末)。三菱UFJフィナンシャル・グループから米西海岸を中心に展開する商業銀行ユニオンバンクを2022年12月に買収しています。

・7-9月期決算は非金利収入が前年同期比3%減となったものの、純金利収入が同11%増と拡大して純収益は同5%増と堅調でした。純利益は同18%増で、信用コストの反動やユニオンバンクの買収に伴う関連費用の計上の影響で前年同期比減益となっていた4-6月期から改善しました。貸出金の平均残高は商業ローン、住宅ローンがけん引して前年同期比13%増え、長期金利の上昇を受けて貸出金の利ざやは2.53%から2.83%に拡大しています。

買付チャートゼネラル エレクトリック(GE)80.20ドル18.3

【分社化が進行中】

・2021年11月にヘルスケア、電力、航空の3事業別に分社化する計画を発表して、現在執行中です。医療機器のGEヘルスケアテクノロジーズ(GEHC)は、年初から株式上場が始まっており、再生可能エネルギー、電力設備、デジタル事業を統合し、航空機エンジンのGEアビエーションが残る見込みです。同社は2017年以来業績不振に苦しんできましたが、コングロマリットであることをやめて、それぞれの分野で競争力を高めようとしています。2023年12月期は、売上が前年比9%増、EPSは同74%増に回復する予想です。

・7-9月期は受注が前年同期比9%減(オーガニックには同7%減)、売上が同3%増(オーガニックには同7%増)、調整後EPSは同34%減でした。受注は再生可能エネルギー、利益は再生可能エネルギーと電力が足を引っ張っています。航空機エンジンは、6%増収、52%増益と回復モメンタムが高まっています。2022年12月期の売上見通し(オーガニックベース)を維持しました。

買付チャートスターバックス(SBUX)107.23ドル31.4

【中国事業の回復に期待】

・同社業績の足を引っ張っている中国事業では、「ゼロコロナ政策」に緩和の兆しが出ていることから、2023年9月期には改善が期待されます。7-9月期の中国の既存店売上は前年同期比16%減でした。10-12月期も前年同期比マイナスが見込まれますが、通期では徐々に改善となる期待があります。

・7-9月期決算は、グローバルの既存店売上が前年同期比7%増(客単価の上昇が8%ポイント貢献)と市場予想の同4.1%増を大きく上回りました。米国の既存店売上は同11%増と伸び、経営陣は店舗改装の効果が表れているとコメントしています。売上は前年同期比3%増、調整後EPSが同18%減で、いずれも市場予想を上回りました。売上については、今年度は13週間、前年同期は14週間での比較ですが、前年度も13週間に揃えた比較では同11%増でした。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、スターバックスは2023年9月期、その他は2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
16(月) ・米国市場休場(マーチンルーサーキングジュニアデー)
・世界経済フォーラム年次総会(スイス・ダボス、20日まで)
・日本工作機械受注(12月)
 
17(火) ・中国実質GDP(10-12月期)
・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(12月)
・ドイツZEW景気指数(1月)
・米ニューヨーク連銀製造業景気指数(1月)
ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー
ユナイテッドエアラインズ
18(水) ・日銀政策金利
・日本機械受注(11月)
・EU27ヵ国新車登録台数(12月)
・米小売売上高(12月)
・米生産者物価指数(12月)

・米鉱工業生産(12月)
・米NAHB住宅市場指数(1月)
・米地区連銀経済報告(ベージュブック)
・ダラス地区連銀ローガン総裁講演(オースチン)
 
19(木) ・ボストン地区連銀コリンズ総裁講演
・ニューヨーク地区連銀ウィリアムズ総裁講演
・米住宅着工・建設許可件数(12月)

・米新規失業保険申請件数(1月14日に終わる週)
・フィラデルフィア連銀景製造業景気指数(1月)
プロクター&ギャンブルネットフリックス
20(金) ・FRBウォラー理事講演
・米中古住宅販売件数(12月)
シュルンベルジェ
23(月)    
24(火) ・auじぶん銀行日本製造業PMI(1月)
・S&Pグローバルユーロ圏製造業PMI(1月)
・S&Pグローバル米国製造業PMI(1月)
マイクロソフトジョンソン&ジョンソン
25(水) ・ドイツIFO企業景況感(1月) IBMテスラボーイングサービスナウ
26(木) ・シカゴ連銀全米活動指数(12月)
・米実質GDP(10-12月期、速報値)
・米耐久財受注(12月)

・米新規失業保険申請件数(1月21日に終わる週)
・米新築住宅販売件数(12月)
インテルビザ、マスターカード、ダウ
シャーウィンウィリアムズ
27(金) ・米個人所得・個人支出(12月)
・米個人消費支出物価指数(12月)
・米中古住宅販売成約(12月)
・ミシガン大学消費者信頼感(1月、確報値)
アルトリアグループシェブロン、アメリカンエキスプレス

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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