アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~相場の押し目で狙う好決算銘柄、ネットフリックス、テスラほか~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~相場の押し目で狙う好決算銘柄、ネットフリックス、テスラほか~

投資情報部 榮 聡

2023/02/27

先週はFRBによる政策金利の「Higher for Longer」(より高く、高い時期がより長く)を織り込む形で米10年国債利回りの上昇基調が続き、S&P500指数はもみ合いのレンジを下放れました。今週の株価材料として、中国の2月PMI、米国のISM景気指数、小売企業の11-1月期決算、などが注目されます。

今回は10-12月期と11-1月期決算の発表を受けて市場が好感した銘柄から、ネットフリックス(NFLX)テスラ(TSLA)アメリカン エキスプレス(AXP)シスコ システムズ(CSCO)エヌビディア(NVDA)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数のローソク足(日足、6ヵ月)

50、100、200日移動平均線が集まる3,900~4,000ポイントは、一旦下値支持帯として期待できそうです。一目均衡表でも、薄くはあるものの「雲」が3,930~3,940ポイントに位置します。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(5日は2/16(木)終値から2/24(金)終値によります)

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
生活必需品 -0.1% -0.4% -4.6%
素材 -1.1% -2.7% -1.2%
ヘルスケア -1.8% -3.4% -6.3%
公益事業 -1.8% -3.7% -6.0%
金融 -1.9% -1.8% -1.2%
資本財・サービス -2.1% -1.0% -0.9%
S&P500 -2.9% -2.5% -1.4%
エネルギー -3.5% -7.9% -7.9%
情報技術 -3.9% -0.6% 1.8%
不動産 -4.2% -5.6% -1.4%
一般消費財・サービス -4.4% -2.9% 0.9%
コミュニケーションサービス -4.8% -5.7% 2.6%
騰落率上位(5日) 騰落率
エヌビディア 5.8%
メルク 3.2%
アッウ゛ィ 2.1%
ロッキード・マーチン 1.9%
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G) 1.5%
騰落率下位(5日) 騰落率
アドビ -12.2%
インテル -10.9%
ネットフリックス -9.6%
ゼネラル・モーターズ(GM) -9.1%
フォード・モーター -8.0%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で2.7%、NYダウは3.0%、ナスダック指数は3.3%の下落でした。NYダウは年初来でマイナスに転じています。

先週の米国株式市場は景気の「ノーランディング」の可能性、政策金利の「Higher for Longer」(より高く、高い時期がより長く)を織り込む形で米10年国債利回りの上昇基調が続き、S&P500指数はもみ合いのレンジを下放れました。

景気指標については、強弱が入り混じっています。大手小売りウォルマート、ホームデポの決算では売上見通しが市場予想を下回り、10-12月期実質GDPの改定値でも個人消費が速報値から下方修正された一方、2月のS&PグローバルPMIが製造業、非製造業とも市場予想を上回りました。インフレ指標では、1月個人消費支出物価指数が2/14(火)の1月消費者物価指数に続いて市場予想を上回り、インフレの沈静化が遅れることを示唆しました。

業種指数では、相場がレンジを下放れたことから、「生活必需品」「ヘルスケア」などのディフェンシブ業種が上位で、成長株の寄与が大きい業種の下落が大きくなっています。個別銘柄ではアドビ(ADBE)が下落トップでした。米司法省が同社によるフィグマ社買収を阻止するための反トラスト法訴訟を準備していると伝わって2/24(金)に7.6%下げました。フィグマ社は、Webブラウザ上でデザインをリアルタイムで共同編集できるツールを提供する会社で、買収できた場合にアドビの「クリエイティブ・クラウド」部門の拡大を加速すると期待されています。

経済指標では、1月の個人消費支出物価指数で総合指数が前年比5.4%増、コア指数が同4.7%増と、それぞれの前月の同5.3%増、同4.6%増を上回り、市場予想を大きく上回りました。

今週の米国株式市場

年前半の米国市場については、バリュエーションに割安感がないため持続的な株価上昇は難しく、景気減速の程度が確認できるまではレンジ相場になりやすいと見ています。

そのような見方からすれば、相場が高いところでは売り、十分な押し目を入れたところでは買うという投資行動が有効で、買いのチャンスとなる時期が近づいている可能性がありそうです。

今週の株価材料として、中国の2月PMI、米国のISM景気指数、米小売企業の11-1月期決算、などが注目されます。

中国が「ゼロコロナ政策」を解除して、その効果が本格的に反映されるとみられる2月の経済指標の発表が今週のPMIから始まります。3/1(水)に発表予定の2月製造業PMIは前月の50.1から50.7に、同非製造業PMIは前月の54.4から54.8に改善の予想です。

3/6(月)の貿易統計、3/14(火)の鉱工業生産、小売売上高と続きます。世界経済が減速する中で、中国経済がどの程度の下支えとなるか注目されます。

米国のISM景気指数は製造業が50割れ、非製造業は50以上の状況が続く見通しです。パンデミックからの反動によるモノへの需要減退とサービス需要が強い状況が併存しています。景気は鈍化しているのに、インフレ圧力が強い現状の背景になっているため、引き続き動向が注目されます。

今週もターゲット、ダラーツリー、ロウズ、コストコホールセール、ベストバイなど小売企業の11-1月期決算の発表が続きます。先週はウォルマート、ホームデポの業績見通しが慎重で、相場にマイナスに寄与したため、引き続き注視が必要でしょう。

経済指標では上記のほか、2/27(月)に米国の1月耐久財受注(前月比4.0%減の予想)、2/28(火)に米国の2月コンファレンスボード消費者信頼感(108.5に改善の予想、前月は107.1)、3/1(水)に米国の2月ISM製造業景気指数(48.0に改善予想、前月は47.4)、3/3(金)に米国の2月ISM非製造業景気指数(54.5に悪化の予想、前月は55.2)、などの発表が予定されています。

企業イベントでは、オキシデンタルペトロリアム、リビアンオートモーティブ、バタフライネットワークス、ターゲット、ブラジル石油公社、セールスフォース、ダラーツリー、コストコホールセール、ブロードコム、ベストバイなどの決算発表が予定されています。また、3/1(水)開催のテスラのインベスターデーが注目されます。

今週の5銘柄

今回は10-12月期と11-1月期決算の発表を受けて市場が好感した銘柄から、ネットフリックス(NFLX)、テスラ(TSLA)、アメリカン エキスプレス(AXP)、シスコ システムズ(CSCO)、エヌビディア(NVDA)を選んでご紹介いたします。

S&P500指数は2/2(木)につけた年初来高値4,195.44ポイントから2/24(金)終値3,970.04ポイントまで5.4%の下落となっています。テクニカルには3,900ポイントから4,000ポイントの間に50日、100日、200日移動平均線が位置していることから、一旦下値抵抗が期待されます。押し目で買いを検討してよいタイミングと考えられます。

今週の注目銘柄

買付 チャート 銘柄 株価
(2/24)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートネットフリックス(NFLX)317.15ドル25.7

【新興国で料金を引き下げた】

・長期金利上昇による高PER株の売りに加えて、同社独自の要因として新興国での料金引き下げが嫌気されて週間で8.9%の下落となりました。加入者数が少なく、比較的所得が低い東南アジア、中米、東欧など100以上の国・地域で加入料金を20%~60%引き下げたことが広報のコメントで確認されています。加入者数が少ない国で加入を刺激する施策と考えられ、中長期には必ずしもマイナスとは限らないと考えられます。

・10-12月期の決算では、加入者数純増が766万人と回復基調にあることが確認されました(加入者純増のガイダンスは発表されなくなっています)。1-3月期の業績はドル高の影響を受けて売上が前年同期比4%増、営業利益は同18%減と引き続き低調なガイダンスとなっています。一方、昨年11月に導入した主要市場での広告付プランの効果によって売上が上振れる可能性が注目されます。

買付チャートテスラ(TSLA)196.88ドル49.3

【マスクEOが需要に自信を示す】

・10-12月期決算は売上・EPSは市場予想を上回ったものの、自動車事業の粗利率とフリーキャッシュフローは予想を下回って、好悪まちまちでした。一方、マスクCEOは決算説明会で「投資家は需要に対する疑問を抱いているが、懸念を払拭したい。1月現在では過去最高水準の引合い、生産能力の2倍のオーダーがある。」「年初の値下げは当社の製品を求める一般顧客に手の届く価格にする必要性を踏まえたものでもある。」と発言して好感されました。

・2022年は、130万台を上回る出荷台数と営業利益率は前年比17%を達成しました。今後複数年にわたり年平均50%の成長を目指す従来計画に沿う形で増産を進め、2023年は約180万台の納車を見込みます。ピックアップトラック「サイバートラック」の組み立てをテキサス州オースティンの工場で年内に開始する計画です。3/1(水)に開催されるインベスターデーが注目されます。

買付チャートアメリカン エキスプレス(AXP)174.25ドル15.7

【市場予想を上回る業績見通し】

・2023年12月期の業績見通しを売上が前年比15~17%増、EPSは同12~16%増相当の11.00~11.40ドルとしました。2022年の新規カード獲得が12.5百万件に達し、顧客の利用頻度、顧客保持とも好調、かつ、プレミアム顧客が多いことを背景に信用指標も堅調と、事業モメンタムが強いことが背景にあるとみられます。

・10-12月決算はカード利用額が前年同期比12%増と好調で、売上はカード利用増に加えて金利収入の増加を受けて前年同期比17%増と拡大しました。一方、顧客サービスなどの費用が嵩んだことに加え、信用コストでは前年同期がプラスとなっていた反動もありEPSは同5%減となりました。ただ、一時要因による減益とみられます。事業の基調は堅調で、会社は1株当たり配当を0.52ドルから0.60ドルへ15%引き上げる意向です。

買付チャートシスコ システムズ(CSCO)48.48ドル12.9

【需要堅調の中、サプライチェーン問題が改善】

・ネットワーク通信機器大手。11-1月期決算は売上・EPSとも市場予想を上回り、2-4月期の売上ガイダンスは前年同期比11~13%増と、同5.8%増の市場予想を軽々と上回りました。底堅い需要がある中、サプライチェーンの問題が改善したことで売上が加速しているとみられます。需要については、景気の影響が懸念されますが、拡大し続ける通信量に対応するために、ネットワーク機器の現代化やアップグレードの需要が強いようです。

・11-1月期の売上は前年同期比7%増、調整後EPSは同5%増と堅調でした。売上の約5割を占める「セキュアー、アジャイルネットワーク」の売上が前年同期比14%増、前四半期の同12%増からも加速して全体をけん引しています。ソフトウェアの売上も同10%増と堅調です。2023年7月期の売上ガイダンスは前年比4.5~6.5%増から同9~10.5%増に、調整後EPSは3.51~3.58ドルから3.73~3.78ドルに引き上げています。

買付チャートエヌビディア(NVDA)232.86ドル52.4

【生成AIの利用の広がりに期待】

・11-1月期決算は売上が前年同期比21%減、EPSが同33%減となりましたが、同46%減となったゲーム向けの落ち込みが予想より小さく、市場予想を上回りました。前四半期比では売上が2%増、調整後EPSが同52%増でした。2-4月期の売上ガイダンスは65億ドル±2%で中央値は前年同期比22%減ながら、前四半期比では2期連続の増収で、業績底入れを確認する形です。

・市場で注目を集めているのが、「生成AI」の利用の広がりの可能性です。チャットボット「ChatGPT」の優秀さが明らかになることで、生成AIの利用の広がりが期待されています。同社はAI計算に使われるGPUコンピュータの市場を支配していることから、恩恵が非常に大きくなる可能性があります。ファンCEOは、「AIは、あらゆる産業で広く利用されるようになる“変曲点”にある」として、市場の期待を追認しました。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、シスコシステムズが2023年7月期、エヌビディアが2024年1月期、その他はいずれも2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
27(月) ・ユーロ圏景況感(2月)
・米耐久財受注(1月)
・米中古住宅販売成約(1月)
・ジェファーソンFRB理事がインフレについて講演
・ワールドモバイルコングレス(バルセロナ、27日~2日)
オキシデンタルペトロリアム
28(火) ・日本鉱工業生産(1月)
・米S&PコアロジックCS住宅価格(12月)
・米コンファレンスボード消費者信頼感(2月)
・シカゴ連銀のグールズビー総裁が講演
リビアンオートモーティブバタフライネットワークス
ターゲット、ファーストソーラー、HP
3月
1(水)
・中国製造業・非製造業PMI(2月)
・米自動車販売台数(2月、2日までに発表)
・米ISM製造業景気指数(2月)
・ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が討論に参加
テスラのインベスターデー
ブラジル石油公社
、セールスフォース、ダラーツリー、ロウズ
2(木) ・ユーロ圏消費者物価指数(2月)
・米新規失業保険申請件数(2月24日に終わる週)
・ウォラーFRB理事が経済見通しに関して議論
コストコホールセール、ブロードコム、ベストバイ
3(金) ・米ISM非製造業景気指数(2月)
・ローガンFRB理事がイベントで開会の辞
・アトランタ連銀のボスティック総裁が人種間不平等の討議に参加
・ボウマンFRB理事がパネルディスカッションに参加
 
6(月) ・ユーロ圏小売売上高(1月)
・米製造業受注(1月)
 
7(火) ・中国貿易統計(2月)
・米消費者信用残高(1月)
クラウドストライクホールディングス
8(水) ・ユーロ圏実質GDP(10-12月期、確報値)
・米ADP雇用統計(2月)
・米求人労働異動調査(1月)
 
9(木) ・日本実質GDP(10-12月期、確報値)
・中国生産者・消費者物価指数(2月)
・日本工作機械受注(2月)
・米チャレンジャー人員削減数(2月)
・米新規失業保険申請件数(3月3日に終わる週)
・米家計純資産(10-12月期)
アルタビューティ
10(金) ・日銀政策金利
・米雇用統計(2月)
オラクル

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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