アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~「質への逃避」が起こっているなら、この銘柄が買われるはず!?~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~「質への逃避」が起こっているなら、この銘柄が買われるはず!?~

投資情報部 榮 聡

2023/04/03

先週は銀行破綻に対する懸念が後退する一方、反発していた米10年国債利回りが頭打ちとなったことから、週後半に大幅上昇となりました。今週の株価材料として、3月雇用統計、銀行破綻の行方、大手テクノロジー株への物色、などが注目されます。

今回は株式市場で「質への逃避」が起こる場合に買われやすいと考えられる、エヌビディア(NVDA)アドビ(ADBE)ビザA(V)ブッキング ホールディングス(BKNG)メタ プラットフォームズ A(META)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

3/31(金)に2月個人消費支出物価指数が市場予想を下回ったことを受けて「雲」の上限を一気に上抜けました。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
エネルギー 6.2% -4.4% -2.0%
一般消費財・サービス 5.6% 2.5% 16.5%
不動産 5.2% -3.5% 0.7%
素材 4.9% -4.5% 3.9%
資本財・サービス 4.4% -2.1% 2.8%
金融 3.7% -10.3% -6.4%
S&P500 3.5% 1.6% 7.5%
情報技術 3.4% 8.1% 22.7%
公益事業 3.1% 2.7% -4.0%
生活必需品 2.5% 3.3% 0.4%
ヘルスケア 1.8% 0.5% -4.4%
コミュニケーションサービス 1.5% 7.6% 18.5%
騰落率上位(5日) 騰落率
インテル 11.3%
シュルンベルジェ 10.2%
フォード・モーター 9.5%
テスラ 9.0%
ゼネラル・モーターズ(GM) 8.8%
騰落率下位(5日) 騰落率
アルファベット -1.6%
ユナイテッドヘルス・グループ -0.7%
ロッキード・マーチン -0.4%
コストコホールセール 0.3%
アッヴィ 0.9%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で3.5%、NYダウは3.2%、ナスダック指数は3.4%の上昇でした。

銀行破綻に対する懸念が後退する一方、反発していた米10年国債利回りが頭打ちとなったことから、週後半に大幅上昇となりました。

3/27(月)にファースト・シチズン・バンクシェアーズによるシリコンバレーバンクの買収が決まり、シグネチャーバンク以降に破綻事例が出ていないことから、銀行破綻に対する懸念が後退、不安定な動きが続いていたKBW銀行株指数も週間で4.2%の上昇となりました。

また、反発の動きとなっていた米10年国債利回りが3/29(水)に頭打ちとなって、利食いに押されていた大手テクノロジー株への買いが復調したこと、マイクロンテクノロジーの決算発表で、先行きの事業環境好転の可能性が示唆されて半導体株に波及したこともプラスに作用しました。

注目されたバーFRB副議長(金融監督担当)の議会証言では、シリコンバレーバンクの破綻について、経営陣の失敗に加え、金融当局の規制、監督の失敗も率直に認めたことも金融不安の後退に作用したとみられます。また、複数の金融当局者が追加利上げの必要性を訴えましたが、株式市場に目立った影響はありませんでした。

業種指数では、原油価格上昇を受けた「エネルギー」、テスラなど自動車株の上昇が寄与した「一般消費財・サービス」、銀行破綻後に売り込まれていたところから反発となった「不動産」が5%を超える上昇でした。

個別銘柄ではインテル(INTC)がトップでした。アナリスト向けにデータセンターおよびAI事業に関するウェビナーを開催、高効率コアを採用した次世代Xeon「Sierra Forest(開発コード名)」を、市場予想より早い2024年上半期に提供する予定として好感されました。サーバー向けCPUでのシェア低下に歯止めがかかることが期待されています。


経済指標では、3/31(金)に発表された2月消費支出物価指数が、総合指数は前月の前年比5.3%増から同5.0%増へ、前月の同4.7%増から横ばいが予想されていたコア指数も同4.6%増に低下して、インフレ沈静化のトレンドを確認しました。米10年国債利回りの低下に寄与したとみられます。

今週の米国株式市場

年前半の米国市場については、バリュエーションに割安感がないため持続的な株価上昇は難しく、景気減速の程度が確認できるまではレンジ相場になりやすいと見ています。相場が高いところでは売り、十分な押し目を入れたところでは買うという投資行動が有効と考えられます。

S&P500指数の3/31(金)終値は、今期予想EPS(219.4ポイント)基準で18.7倍に相当します。ここ1ヵ月で米10年国債利回りは3.9%台から3.4%台へ大きく低下して、より高いバリュエーションが許容されると考えられますが、パンデミックのときと金融環境が異なるため20倍を超えることはないと考えておくべきでしょう。株価上昇の勢いは徐々に低下すると想定されます。

今週の株価材料として、3月雇用統計、銀行破綻の行方、大手テクノロジー株への物色、などが注目されるでしょう。

4/7(金)に発表される3月雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比24.0万人増と、1月の同50.4万人増、2月の同31.1万人増から低下の予想です。銀行破綻の影響があらわれる可能性が意識されているとみられます。また、平均時給は前年比4.3%増と2月の同4.6%増から低下の予想です。いずれも米10年国債利回りを抑える方向に働くと考えられ、株式にはポジティブとなりやすいでしょう。

なお、4/7(金)の米国株式市場はグッドフライデーの祝日のため休場(債券市場は短縮取引)ですが、連邦レベルの祝日ではないため、雇用統計は米労働省から発表されます。

銀行破綻の行方については、先週は懸念が後退しましたが、引き続き警戒しておく必要はあるでしょう。3/31(金)に公表されたFRBによる銀行統計では、国内銀行の預金流出は3/8(水)から3/15(水)にかけての1,293億ドルに対して3/15(水)から3/22(水)にかけては840億ドルと鈍化しています。国内小銀行の預金は59億ドルの流入となって安定化の兆しが見られる一方、国内大銀行からは897億ドルの流出となっています。

このところ大手テクノロジー株への物色が目立っていますが、長期金利が抑制される間は続くと考えて良さそうです。ただ、10-12月期決算は多くの銘柄が低調であったため、1-3月期決算の発表(4月中旬~)が近づくにつれて警戒感が高まる可能性には注意が必要でしょう。

経済指標では上記のほか、米国の3月ISM製造業景気指数(前月の47.7から47.5に悪化の予想)、4/5(水)に米国の3月ADP雇用統計(前月比21.0万人増の予想)、米国の3月ISM非製造業景気指数(前月の55.1から54.3に悪化の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は財務体質、収益性ともに良好な質の高い大型銘柄をご紹介いたします。

前回の当レポートで、年初来ナスダック指数がS&P500指数に対してアウトパフォームしている3つの理由の一つとして、「銀行の信用不安が「質への逃避」(flight to quality)の機運を生んでいる可能性」をあげました。

本当にそのようなことが起こっている、あるいは、そのような要因が重要になりつつあるのなら、そういう性質を保有している銘柄を確認してみようということです。

会社の「質」を計る尺度として、(1)純有利子負債(Net Debt)がマイナス(つまり、実質的に無借金)、(2)今期の予想ROA(総資産利益率)が10%以上の条件を設定して、S&P100指数採用銘柄を対象にスクリーニングを行いました。

図表3に抽出された銘柄から、過去3ヵ月の予想EPSの修正動向も勘案して、エヌビディア(NVDA)、アドビ(ADBE)、ビザA(V)、 ブッキング ホールディングス(BKNG)、メタ プラットフォームズ A(META)を選んで紹介いたします。

図表3 財務体質、収益性ともに良好な主要銘柄(S&P100指数採用銘柄対象)

コード 銘柄名 純有利子負債
(億ドル)
EBITDA
(億ドル)
予想ROA
(%)
EPS
修正率
(3ヵ月)
AAPL アップル -543 1252.9 27.3 -3.9
NVDA エヌビディア -13 59.6 22.5 3.1
ADBE アドビ -15 69.6 21.4 1.1
V ビザ -10 200.2 20.2 2.4
BKNG ブッキング・ホールディングス -20 55.5 19.2 6.0
MSFT マイクロソフト -215 997.6 18.3 -2.6
GOOGL アルファベット -838 945.1 17.0 -4.4
ACN アクセンチュア -30 120.8 14.8 0.2
META メタ・プラットフォームズ -135 394.9 14.1 19.5
CSCO シスコシステムズ -121 160.3 13.0 5.9
TSLA テスラ -164 174.0 12.5 -25.2

注:3/29(水)のデータによります。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

買付 チャート 銘柄 株価
(3/31)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートエヌビディア(NVDA)277.77ドル62.1

【生成AIの利用の広がりに期待】

・チャットボット「ChatGPT」の優秀さが明らかになることで、世の中に新たなものを生み出すことができる生成AIの利用の広がりが期待されています。同社はAI計算に使われるGPUコンピュータの市場を支配していることから、恩恵が非常に大きくなる可能性があります。ファンCEOは開発者向け年次会議「GTC」において、「AIは、あらゆる産業で広く利用されるようになる“変曲点”にある」として、市場の期待を追認しました。

・11-1月期決算は売上が前年同期比21%減、EPSが同33%減となりましたが、同46%減となったゲーム向けの落ち込みが予想より小さく、市場予想を上回りました。前四半期比では売上が2%増、調整後EPSが同52%増でした。2-4月期の売上ガイダンスは65億ドル±2%で中央値は前年同期比22%減ながら、前四半期比では2期連続の増収で、業績底入れを確認する形です。

買付チャートADBE385.37ドル24.9

【DX進展に欠かせない会社】

・ソフトウェアの世界的大手です。画像編集の「Photoshop」、グラフィックデザインの「Illustrator」等のクリエイター向けサービスや、総合PDFソリューションの「Adobe Acrobat」など世界標準のサービスを多数擁します。2010年代に突入後、切り売り型から定量課金制のクラウド型サービスへ転換して業績を拡大、サブスクリプション収入は売上高全体の93%を占めています(22.11期)。2023年3月、商用利用に特化した画像生成AI、「Adobe Firefly」のベータ版を初公開しました。

・12-2月期決算は、売上高が前年同期比9.2%増、EPSが3.80ドルといずれも市場予想を上振れ好調でした。クリエイティブクラウドでの高成長が、ドキュメントクラウドでの伸び率鈍化を相殺した形です。営業利益率はマーケティングや研究開発の費用がかさみ、同2.3%ポイントの低下となりました。ガイダンスでは1Q決算の好調を背景に、通期予想EPSを上方修正しました。また、CEOはフィグマ社買収に関し、2023年末までの完了に向け、順調に進んでいると述べています。

買付チャートビザ A(V)225.46ドル26.6

【世界的な旅行回復の恩恵を受ける】

・2022年9月期の営業利益率は64%に達し、また、今回確認したところでは実質的に無借金と、財務体質、収益性ともに米国でトップクラスの会社と考えられます。業績は旅行が世界的にパンデミック後のリベンジ消費の対象になっていることから、同社はその恩恵を受けて回復基調です。

・10-12月期決算では、増収増益、かつ、市場予想を上回る好決算となりました。カード利用額(為替変動の影響除外)が前年同期比で7%増で、このうちクロスボーダー取引額(同)は22%増と旅行の回復がけん引した形です。米国の個人消費はインフレ高進の影響とパンデミック時に積みあがった貯蓄がなくなることで、減速傾向が想定されますが、世界的な旅行需要の回復が継続することによるクロスボーダー取引の回復がある程度カバーすると期待されます。

買付チャートブッキング ホールディングス(BKNG)2652.41ドル20.5

【旅行需要の回復が順調】

・ホテル予約の大手で宿泊世界首位、傘下に旅行比較サイトのカヤック、レストラン予約のオープンテーブルを擁し、欧州を中心とした米国外売上が87%を占めます(2022年12月期)。同社は高いブランド認知と欧州でのホテルの品揃えの幅広さにより、旅行のリベンジ消費を高い確度で獲得できる立場にあります。民泊市場への進出や、航空券予約、アトラクション予約、決済サービスへの展開によるホテル予約客へのクロスセルによって長期的な売上成長が期待されます。

・旅行需要の回復が順調で、10-12月期決算は売上が前年同期比36%増(為替変動の影響を除いて同49%増)、調整後EPSが同56%増と伸び、市場予想を上回りました。旅行予約は同44%増の27.3億ドルで、市場予想の25.6億ドルを上回りました。同社の売上はユーロ建が多いため、ユーロの対ドル相場回復は収益の押し上げ要因となります。

買付チャートメタ プラットフォームズ A(META)211.94ドル17.3

【コスト削減、投資抑制を打ち出す】

・10-12月期決算発表で、コスト削減、投資抑制の方向を明確に打ち出したことから業績見通し・目標株価とも上方修正されました。また、売上の伸びは低水準が続くと考えられますが、「Reels」(「Instagram」の短尺動画機能)「WhatsApp」などの寄与が高まりつつあることから、安定性は増すと期待されます。

・10-12月期の売上は前年同期比4%減ですが、ドル高の影響を除くと同2%増でした。オフィスの集約や約1.1万人のレイオフなどのリストラ費用を含む営業費用が同22%増となったため、純利益は同55%減に落ち込みました。ファミリー・デイリー・アクティブ・ピープル(各種サービスのユーザー数合計)は、29.6億人で前年同期比5%増と堅調でした。2023年12月期の費用見通しは、従来予想の940~1000億ドルから890~950億ドルへ、資本的支出は従来予想の340~370億ドルから300~330億ドルへレンジが引き下げられました。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディアが2024年1月期、アドビが2023年11月期、ビザが2023年9月期、その他は2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
4月
3(月)
・日銀短観(1-3月期)
・財新中国製造業PMI(3月)
・米ISM製造業景気指数(3月)
・ワーズ米自動車販売台数(3月、4日までに発表)
 
4(火) ・米製造業受注(2月)
・米求人労働異動調査(2月)
・クリーブランド連銀メスター総裁の講演
 
5(水) ・米ADP雇用統計(3月)
・米貿易統計(2月)
・米ISM非製造業景気指数(3月)
 
6(木) ・セントルイス連銀ブラード総裁の講演
・米チャレンジャー人員削減数(3月)
・米新規失業保険申請件数(4月1日に終わる週)
ラムウェストンホールディングス、コンステレーションブランズ
7(金) ・米国株式市場休場(グッドフライデー)
・米雇用統計(3月)
 
8(土) ・黒田日銀総裁の任期満了  
10(月) ・米消費者信用残高(2月)  
11(火) ・中国生産者・消費者物価指数(3月)
・日本工作機械受注(3月)
・ユーロ圏小売売上高(2月)
・米NFIB中小企業楽観指数(3月)
 
12(水) ・日本機械受注(2月)
・米消費者物価指数(3月)
・米FOMC議事要旨
 
13(木) ・中国貿易統計(3月)
・ユーロ圏鉱工業生産(2月)
・米生産者物価指数(3月)
・米新規失業保険申請件数(4月8日に終わる週)
 
14(金) ・米小売売上高(3月)
・米鉱工業生産(3月)
・米ミシガン大学消費者マインド(4月、速報値)
 

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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