今年度活躍し、来期も「テンバガー」目指すグロース株は?

今年度活躍し、来期も「テンバガー」目指すグロース株は?

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2023/03/29

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金融不安が後退し反発

3/20(月)~3/28(火)の東京株式市場では、日経平均株価が2.1%、東証グロース市場指数が1.3%それぞれ反発しました。金融不安の後退を背景に、3/22(水)の日経平均は前営業日比で520円高し、その後は小幅続落・小幅続伸となりました。東証グロース市場指数も、ほぼそれに沿った動きとなりました。

3/20(月)~3/28(火)の東証グロース市場時価総額上位銘柄では、前回に続き、VTuberのマネジメントを行うANYCOLOR(5032)の上昇が目立ちました。3/15(水)に今期業績予想の上方修正、および東証プライム市場への指定替えを申請したと発表し、反転のキッカケをつかみました。3/27(月)に同じVTuber関連のカバー(5253)新規上場というスケジュールもあり、相乗効果を期待する買いも入ったようです。

東証グロース市場の時価総額トップであるビジョナル(4194)は反発傾向となりました。前回(3/14~20)は、3/16(木)に発表された第2四半期(22/11~23/1期)の営業利益が前年同期比36%増にとどまったうえ、市場予想を下回り、大きく下落していました。今回(3/20~3/28)は、一部証券会社が投資判断最上位で調査を開始したこともあり、押し目買いが入りました。

図表1 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移

図表2 主な東証グロース市場指数構成銘柄の値動き

図表3 3/20(月)~28(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

今年度活躍し、来期も「テンバガー」目指すグロース株は?

東証がプライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つに区分され、再スタートを切ったのが昨年4/4(月)で、間もなくそれから1年が経とうとしています。各市場の指数はすべて、昨年4/1(金)の終値を1,000とし、本年3/28(火)時点で、東証プライム市場指数1,011.87、スタンダード市場指数1,042.07、グロース市場指数953.66となっており、グロース市場の出遅れが目立つ状況となっています。

2022年以降、インフレ懸念を背景に世界的な金融引き締め局面となり、金利上昇に弱いグロース市場銘柄が下がりやすい環境となったことが響きました。2023年も、グロース市場は上値の重い状況が続いています。しかし、足元で米長期金利がピークアウトの兆しをみせており、グロース市場が相対的に弱い状況は一巡するかもしれません。

そうした中、今回の新興株ウィークリーでは、売上高、営業利益ともに急成長中で、今期もその勢いが持続しており、それが評価され、グロース市場で株価が上昇している銘柄を抽出してみました。

(1)東証グロース市場に上場

(2)時価総額100億円超1,000億円未満

(3)前期の売上高、営業利益がともに20%超増加

(4)今期会社予想売上高、および営業利益がともに20%超の増加

(5)直近四半期累計の売上高、営業利益がともに前年同期比で20%超の増加

  ※直近決算が本決算の場合は、前期(通期)売上高、営業利益を直近四半期売上高、営業利益とします。

(6)直近四半期累計の前年同期比営業増益率が(4)の予想営業増益率を超えていること

(7)過去20営業日(3/24時点)の1営業日当たり平均出来高が5万株超

(8)信用規制が実施されていないこと

図表4の銘柄は上記(1)~(8)の条件をすべて満たし、昨年3月末以降から本年の3/27(月)までの株価上昇率が大きい順となっています。増収・増益率で高い実績があるのみならず、当面もそうした高い成長が続きそうなことは、「テンバガー」に象徴される大幅値上がり株になるための必要条件と言えるかもしれません。

図表4 今年度活躍し、来期も「テンバガー」目指すグロース株は?

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株価(3/27) 株価騰落率(22.3末比) 今期会社予想営業増益率 四半期営業増益率
現買信買 チャート 追加 9219 ギックス 2,413 112.6% 109.9% 1047.1%
現買信買 チャート 追加 4417 グローバルセキュリティエキスパート 5,380 108.5% 59.3% 64.0%
現買信買 チャート 追加 7061 日本ホスピスホールディングス 3,415 90.6% 56.4% 60.4%
現買信買 チャート 追加 7352 Branding Engineer 845 75.7% 29.9% 140.0%
現買信買 チャート 追加 2986 LAホールディングス 3,790 54.0% 30.1% 31.4%
現買信買 チャート 追加 3498 霞ヶ関キャピタル 3,910 42.9% 49.4% 黒転
現買信買 チャート 追加 4051 GMOフィナンシャルゲート 10,060 29.6% 25.6% 34.5%
現買信買 チャート 追加 7373 アイドマ・ホールディングス 4,040 27.4% 23.8% 83.4%
現買信買 チャート 追加 9218 メンタルヘルステクノロジーズ 1,121 19.3% 35.2% 167.5%
現買信買 チャート 追加 4371 コアコンセプト・テクノロジー 3,325 15.1% 41.5% 105.1%
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  • ※Bloombergデータをもとに、SBI証券が作成。



以下、図表4に掲載した銘柄の一部について、コメントします。

■ギックス (9219)~データを活かしたコンサルやツールサービス。売上高の年平均成長率は4割以上!

★日足チャート(1年)

※データは2023/3/28(日足) 15:00 時点。
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■データ分析を活かしたコンサル、ツールサービスを提供

データを活かしたコンサルティングやツールサービス等の提供をする会社です。

具体的な提供サービスを1つ紹介すると、「マイグル」という顧客選択型スタンプラリーがあります。AI(人工知能)がリコメンドする形で、利用者自身が施設やサービスを選択しながら最適かつ独自のスタンプシートの作成が可能です。そのため、企業にとっては参加者(=顧客)の達成率向上が見込まれるというメリットが生まれます。同サービスは、JR西日本(9021)やBIPROGY(8056、旧・日本ユニシス)など大手企業にも多数導入されています。

当社はデータインフォームドという思考態度を推奨し、啓蒙しています。「データ“も”用いて、論理的に物事を考え、合理的な判断をしてゆこう」という考え方です。あくまでも、データを人間の判断材料の一つとして活用することを想定しています。

データインフォームド市場の規模は、2022年:2.9兆円~4.8兆円から2025年:11.9兆円~13.4兆円に拡大すると考えられています(会社資料より)。

■年平均成長率47%!営業利益は前期比2倍以上が見込まれる

前項で述べたデータインフォームド需要の高まりから、当社業績の推移は非常に堅調です。売上高の年平均成長率(CAGR)は、17.6期以降、今期(23.6期)予想を含め47%と高水準となっています。

今期は既存の大手顧客で取引が拡大し、営業利益は2億円と前期比で2倍以上となる見込みです。2Q決算時点で、通期予想に対する営業利益の進捗率も既に94%であり、業績が予想を上振れる可能性は大きそうです。

通期予想を上方修正しなかった理由は、中長期的な事業成長を見据え、研究開発に一定上のリソースを割いているためです。当社は足元の業績拡大にリソースを集中することを避けています。来期(24.6期)以降も年平均成長率40%以上を継続的に保つことを重視した経営戦略となります。

コロナによる行動規制の緩和や、インバウンド需要の回復は冒頭でご紹介した顧客選択型スタンプラリー「マイグル」等にとって追い風となり得そうです。そこに、デジタルインフォームド需要の高まりが加わることで、3Q(4/28発表予定)以降も好業績が期待されます。市場でも期待感が膨らむ形で、株価は3/24(金)に上場来高値を付けています。

■グローバルセキュリティエキスパート(4417)~サイバーセキュリティ分野の教育事業に強みをもち、急成長中

★日足チャート(1年)

※データは2023/3/28(日足) 15:00 時点。
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■中小企業向け教育事業に強み

ビジネスブレイン太田昭和(持株比率65.6%)の他、兼松エレクトロニクス(同9.1%)、野村総合研究所(同3.2%)等が大株主です(22.9期)。

部門別売上(カッコ内は売上総利益率)構成比(22.3期)と業務内容は以下の通りです。
(1)コンサルティング事業・・・27.4%(22.3%)
      →コンサルティング、脆弱性診断サービス
(2)教育事業・・・18.5%(29.2%)→中小企業向けにセキュリティ訓練サービス、セキュリティ教育講座
(3)セキュリティソリューション事業・・・27.1%(23.8%)→ITインフラ構築等、外資系・グローバル企業向け
(4)ITソリューション事業・・・27.0%(24.7%)→セキュリティ製品の導入、運用サービス

日本のサイバーセキュリティ人材の多くは、大手サイバーセキュリティ企業に所属しています。一般企業ではサイバーセキュリティ業務を外部に委託することが多く、社内にセキュリティ人材を育成することは難しいです。また、サイバーセキュリティ会社の供給力の問題もあり、特に中小企業はサイバーセキュリティの対策を講じる相談先がいないのが現実です。

同社は、これまで培ってきたサイバーセキュリティの知見を社会に還元し、日本全国の中堅・中小企業のサイバーセキュリティ能力を引き上げることを目標としています。それを形にしたのが、同社の教育事業であり、自社または米社が開発したサイバーセキュリティ関連トレーニングサービス、資格認定試験サービスを提供。売上総利益率は49.2%と、他の部門(売上総利益率は20%台後半)より高い、同社の稼ぎ頭となっています。

■大幅増収・増益を継続中

業績は順調に拡大。売上高は18.3期の12億円を起点に22.3期の43億円まで年率37%ペースで増加しました。経常利益は同期間で0.1億円の赤字から4.1億円の黒字へと立ち上がっています。

23.3期第3四半期累計の売上高は40億円(前年同期比29.1%増)、営業利益5.65億円(同64.0%増)、経常利益5.65億円(同72.8%増)と、大幅な増収増益を維持。

23.3期通期では、売上高54億円(前期比23%増)、営業利益7億円(同59.3%増)と成長が続く見通し(会社予想)です。

昨年から本年に至るまで、マルウェア感染やハッキングなど、世の中ではインシデントが多発する「有事」の状況で、緊急対応やソリューション提供、教育のニーズが高まっているようです。

中期計画では25.3期に売上高84億円、営業利益15.1億円を目指しています。

■GMOフィナンシャルゲート(4051)~小売業のキャッシュレス化を推進し、成長

★日足チャート(1年)

※データは2023/3/28(日足) 15:00時点。
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■決済端末の販売・情報処理サービスを提供

当社は、GMOインターネットグループ(9449)の中で決済部門を担うGMOペイメントゲートウェイ(3769)の子会社(持株比率57.06%)です(22.9期)。クレジットカード、デビットカード、電子マネー、ポイントなどによる対面型決済を行う決済端末や決済処理サービスの提供を手掛けています。

あらゆる業務、業態のキャッシュレス化を支援するキャッシュレスプラットフォーマーとして消費者と事業者にとって安心、安全で経済合理性が高い決済サービスを行っています。決済デバイスから決済センター、入金業務までをワンストップでの提供が可能です。入金業務の多様化、事業環境の変化、ニーズに対応して順次サービスを拡張しています。さらに、ポイント決済やQRコード決済、ウォレット決済などをコアビジネスとする複数企業との提携を推進しています。

売上構成比(23.9期・第1四半期)は、

(1)決済端末販売による「イニシャル」 67.9%
(2)システム利用料として決済事業者や加盟店から月額固定で受け取る「ストック」 8.0%
(3)決済処理件数に応じた処理料としての「フィー」 15.9%
(4)決済処理金額に応じて発生する「スプレッド」 8.2%

となっています。

■逆風下でも増収・増益

2022.9期は、第2四半期および第4四半期に、上半期を中心に、COVID-19の感染拡大があり、上記(2)~(4)の収益が逆風にさらされました。

しかし同時に経済再開に向けた動きも強まり、加盟店全体の決済取扱高は回復基調となりました。キャッシュレス決済の普及が感染症拡大の防止に有効との見方もあり、ストック型売上高の伸長にもつながりました。

結局、この期は売上高102億円(前期比45%増)、営業利益7.4億円(同25.7%増)と好調を持続しました。続く2023.9期第1四半期は、売上高が前年同期比52.6%増、営業利益が同34.5%増と成長が加速す状況となっています。

同社がKPI(重要業績評価指標)として公表している端末稼働台数は前年同期比45.1%増、決済処理金額は同76.0%増、決済処理件数は同62.4%増と急成長。営業利益の通期計画に対する進捗率は30.3%と順調です。

市場(Quickコンセンサス)では22.9期から26.9期の4年間で、年平均16%程度の増収率、同25%程度の営業増益率を予想しています。

株価は3/27(月)時点で、22.3末比29.6%の上昇率となっています。ただ、21.11に付けた最高値からは実質48%程度下げた水準にとどまっています。

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