「金融相場」接近!?で底入れ・反発期待の主力株は?

「金融相場」接近!?で底入れ・反発期待の主力株は?

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2023/03/24

「金融相場」接近!?で底入れ・反発期待の主力株は?

米国では3/22(水)、金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が発表され、政策金利(上限)が4.75%から5.00%に0.25%引き上げられました。昨年、FRB(米連邦準備制度理事会)が2年ぶりにゼロ金利解除(利上げ)を決意したFOMCを起点に、9会合連続の利上げとなりました。FRBは引き続き、インフレ抑制を重視する意向のようです。

FRBがインフレ抑制の姿勢を示し、市場が金利上昇継続を予想するならば、米国の市場金利は上昇するのが普通です。しかし、今回の利上げを経て、3/22(水)の米10年国債利回りは前日比0.16%低下して3.44%に、2年国債利回りは同0.23%低下して3.93%になりました。ちなみに、10年国債利回りは3/2(木)の当面のピーク4.06%からすでに0.61%低下、2年国債利回りは3/8(水)の5.06%から1.13%も利回りが低下しています。

10年国債利回り等、米市中金利はピークアウトし、今後低下に向かう可能性が出てきたようです。直近でも、FRBによる政策金利引き上げにもかかわらず、市中金利が大幅に低下しています。

その理由として、
・米金融不安は、すでに米国の金融引き締めが十分な効果を発揮し始めたことを示していると考えられること。
・日本時間3/24(金)現在、次回(5/3)のFOMCで政策金利「据え置き」の確率が66%に達してきたこと。
等が考えられます。

仮に、米市中金利低下が本格化してきた場合、グローバルな株式相場は「金融相場」(金利低下を背景とした上昇局面)に突入し、東京株式市場では物色の主役が変わってくる可能性が大きいと思われます。

図表1は、米10年国債利回りと、「バリュー株/グロース株」の動きを示したものです。ここで後者は、数字が大きいほど、バリュー株がグロース株に対して相対的に優位であることを示しています。2021年末に1.5%台であった米10年国債利回りは、2022年10月に4.24%まで上昇し、その後高水準でのもみ合いに転じてきました。これに連動し、2022年以降、バリュー株がグロース株に対し、相対的に有利な状況が続いてきました。

図表2では、バリュー株(TOPIXバリュー株)とグロース株(TOPIXグロース株)の推移をみたものです。2021年末終値に対して、足元の3/22(水)終値はバリュー株8%上昇、グロース株10%下落と対照的でした。しかし、米市中金利が低下に転じれば、これとは逆にグロース株が上昇してきても不思議ではありません。

ちなみに、TOPIXグロース株は基本的には連結PBRの高い銘柄です。それに基づき、今後底入れ・上昇が期待できる主力グロース株を抽出すべく以下のスクリーニングを行ないました。

(1)TOPIX構成銘柄であること
(2)PBR(Bloombergベース)が2倍を超えていること(TOPIX構成銘柄の21%)
(3)2021年末以降2023/3/22(水)まで、株価下落率が10%より大きいこと
(4)時価総額に浮動株比率(Bloombergベース)を掛けた金額が1兆円超

図表3の銘柄は上記のすべての条件を満たしています。掲載の順番は(4)の金額が大きい銘柄です。この数字が大きいと、機関投資家がグロース株のポートフォリオを構築する際に、重視される可能性が大きくなるとみられます。

図表1 2022年以降、米長期金利が上昇し、バリュー株がグロース株に比べて優位に

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。チャートは週終値ベース。最新データは2023/3/20
  • ※バリュー/グロースはTOPIXバリュー株指数を同グロース株指数で割った数値で、バリュー株のグロース株に対する相対的な強さを示しています。

図表2 2022年以降、バリュー株は上昇したものの、グロース株は下落

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。チャートは週終値ベース。最新データは2023/3/20
  • ※バリュー株は、TOPIXバリュー株指数を、グロース株は同グロース株指数を示しています。

図表3 「金融相場」接近!?で底入れ・反発期待の主力株は?

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名 株価(3/22) 21年末比 PBR(倍) 時価総額×浮動株比率
6758 6758 6758 6758 ソニーグループ 11,730 -19.0% 2.19 13,460,572
6861 6861 6861 6861 キーエンス 62,760 -13.2% 6.35 11,746,321
8035 8035 8035 8035 東京エレクトロン 48,370 -27.0% 5.26 7,219,935
6367 6367 6367 6367 ダイキン工業 23,000 -11.8% 3.12 6,104,772
7741 7741 7741 7741 HOYA 14,040 -17.9% 6.24 4,921,319
6098 6098 6098 6098 リクルートホールディングス 3,493 -49.9% 3.51 4,873,175
6981 6981 6981 6981 村田製作所 7,877 -14.0% 2.12 4,826,096
6273 6273 6273 6273 SMC 69,100 -10.9% 2.69 4,201,720
7733 7733 7733 7733 オリンパス 2,267.5 -14.4% 4.74 2,714,667
4543 4543 4543 4543 テルモ 3,610 -25.7% 2.50 2,494,150
4452 4452 4452 4452 花王 5,100 -15.3% 2.45 2,343,026
4519 4519 4519 4519 中外製薬 3,324 -11.0% 3.86 2,117,836
7309 7309 7309 7309 シマノ 21,630 -29.5% 2.64 1,713,035
6920 6920 6920 6920 レーザーテック 21,920 -37.9% 24.89 1,704,288
6645 6645 6645 6645 オムロン 7,528 -34.3% 2.08 1,402,755
2413 2413 2413 2413 エムスリー 3,391 -41.5% 7.97 1,384,574
6869 6869 6869 6869 シスメックス 8,631 -44.5% 4.82 1,314,312
4307 4307 4307 4307 野村総合研究所 3,015 -38.9% 4.61 1,200,937
7701 7701 7701 7701 島津製作所 4,180 -13.9% 3.02 1,180,640
8697 8697 8697 8697 日本取引所グループ 2,029.5 -19.4% 3.43 1,056,682
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

以下、一部の掲載銘柄について、ポイントをご紹介します。

ソニーグループ(6758)~営業利益1兆円を実現。25.3期以降増益率加速も

★週足チャート(3年)

  • ※データは2023/3/24(週足) 10:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • ※上場来高値15,725円は、上図の2022/1/3ではなく正しくは2022/1/4です。

★通期業績推移

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■電子機器を祖業に業容を拡大


電子機器を祖業とし、その後ゲーム事業や音楽、映画、金融等に拡大してきました。トヨタ(7203)、キーエンス(6861)に次ぐ、東証の時価総額第3位の企業です。

22.3期の売上構成比(カッコ内は営業利益構成)は以下の通りです。

・G&NS(ゲーム&ネットワークサービス)・・・27.6%(28.8%)→ゲーム機器・ソフト他
・音楽・・・11.3%(17.5%)
・映画・・・12.5%(18.1%)
・ET&S(エンタテインメント・テクノロジー&サービス)
・・・23.6%(17.7%)→テレビ、デジカメ、AV他
・I&SS(イメージング&センシング・ソリューション)・・・10.8%(12.9%)
・金融・・・15.5%(12.5%)

このうち、G&NSは現在、高機能ゲーム機プレイステーション5や、それに関するゲームソフト、ネットワークサービス等を展開しています。また、I&SSはスマホ等のカメラ機能で使われる半導体センサを展開し、世界でトップシェアを占めています。

■2025.3期以降増益に転換~新たな成長戦略も


ソニーグループの営業利益は22.3期に創業来初めて1兆円台に乗せましたが、株価も2022年1月に上場来高値を付けました。

しかし、23.3期は営業利益は1兆円の大台を維持しながらも、前期比では微減益の会社見通しで、株価もそれを織り込むように、冴えない動きが続いています。2022年以降、米10年国債利回りが上昇に転じ、グロース株とみられる同社株に逆風が強まったことも、株価低迷の一因とみられます。

稼ぎ頭であるG&NSは、供給問題をおおむね克服したとみられ、24.3期、25.3期に営業増益となる可能性が強くなってきたようです。ただ、減価償却費や在庫の増加を背景に、I&SSが増益に転じるのは25.3期に後ずれする可能性も指摘されます。

SBI証券企業調査部ではソニーグループ(6758)を調査対象としています。3/22(水)付レポートでは、目標株価を13,550円から13,770円へ微調整し、投資判断は「買い」を継続しています。

同部では23.3期営業利益1%減益、24.3期1.7%減益の後、25.3期に11.5%増益に転じる予想です。市場コンセンサスでは24.3期に若干の増益予想であり、いずれにせよ、短期的な業績見通しが株価材料になる可能性は、それほど大きくないかもしれません。

こうした中、十時(ととき)副社長兼CFOが4月から新社長兼COOに就く予定です。「成長にこだわる。事業ポートフォリオを最適な形にしていく」としており、新たな成長戦略の発表が期待されます。

ダイキン工業(6367)~世界No.1空調メーカー。売上高3兆円突破

★週足チャート(3年)

  • ※データは2023/3/24(週足) 10:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■世界No.1の総合空調メーカー

空調機器事業の売上高で世界No.1を誇る企業です。

同社は、空気のスペシャリスト集団と称されています。冷媒から機器開発、製造・販売、アフタービスまでを自社で担っている世界で唯一の企業です。

各国や地域ごとの異なるニーズに対応可能で、世界各地に100以上の生産拠点を有します。170カ国以上で製品を販売し、海外売上高比率は79%と日本企業の中でも高水準です(22.3期)。

海外の地域別売上高比率は、米国27%、欧州18%、中国15%、アジア・オセアニア14%、その他6%です(同)。

特に、最大市場である北米を強化地域としています。直近では3/22(水)に、米国でデータセンター空調関連の2社を300億円強で買収したと報じられ、話題となりました。

主力の空調機器事業(売上構成比91%)の他に、化学事業(同7%)も展開しており、フッ素化学の分野でも世界大手です(22.3期)。


■過去最高売上高3兆9,000億円、営業利益3,720億円の過去最高水準を今期更新予定

今期(23.3期)は、売上高3兆9,000億円(前期比26%増)、営業利益3,720億円(同18%増)と過去最高を更新予定です。中計の最終年度である2025年度売上高目標の約3兆6,000億円を上回る規模となります。

直近の今期3Q(10-12月)決算でも、累計で過去最高の業績を達成。為替差益を除しても増収増益となりました。中国でのゼロコロナ政策が痛手となる中、米国や欧州、アジアでの戦略的売価施策(値上げ)や販売好調が寄与した形です。

同社は今期、好調な進捗率を背景に、2Q、3Q決算発表時、2回連続での業績予想の上方修正となりました。

2023年に入り、米10年債利回りが低下したのを受け同社株も反発局面となりました。その後は、金融システムを巡る懸念から株式市場全体の下落に連れ安し、現在は一服した状態です。

次回の通期(4Q)決算発表に関しては、3Q決算で重しとなった中国での需要回復も行動規制緩和から見込まれています。中計で掲げた目標業績も更新予定であるため、新たな目標数値や戦略が提示されることにも期待できるでしょう。

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