アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~史上最高値接近の金価格!!関連銘柄をご紹介~

投資情報部 榮 聡
2023/04/10
先週は発表された企業景況感、雇用関連指標の多くが市場予想を大きく下回り、米国景気の減速が強く意識されて、株式はピークアウトの形となりました。今週の株価材料として、消費者・生産者物価指数、FOMC議事要旨(3月21日、22日開催分)、1-3月期決算発表のはじまり、などが注目されます。
今回は史上最高値への接近が意識される金の関連銘柄から、SPDR ゴールド シェア(GLD)、ヴァンエック 金鉱株ETF(GDX)、Direxion デイリー金鉱株 ブル2倍 ETF(NUGT)、ニューモント(NEM)、バリック ゴールド(GOLD)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

景気指標の悪化を受けてピークアウトの形です。「雲」の上に出ているので、「雲」が下値支持帯になると期待されます。
※Bloombergを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は3/30(木)終値~4/6(木)終値によります。)
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
コミュニケーションサービス | 4.5% | 10.9% | 18.6% |
ヘルスケア | 4.2% | 5.4% | -1.6% |
公益事業 | 3.9% | 7.3% | -1.7% |
エネルギー | 3.7% | 0.1% | -2.7% |
生活必需品 | 1.7% | 4.9% | -0.7% |
不動産 | 1.4% | -1.4% | -2.2% |
S&P500 | 1.3% | 3.0% | 5.4% |
金融 | 0.5% | -8.7% | -9.7% |
情報技術 | 0.3% | 7.6% | 19.8% |
素材 | 0.3% | -2.2% | -1.0% |
一般消費財・サービス | -0.4% | 1.6% | 9.9% |
資本財・サービス | -2.1% | -3.9% | -3.1% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ユナイテッドヘルス・グループ | 9.1% |
イーライリリー | 8.1% |
ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J) | 7.6% |
アルファベット | 7.5% |
コノコフィリップス | 7.1% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
キャタピラー | -6.8% |
テスラ | -5.2% |
ゼネラル・モーターズ(GM) | -3.9% |
クアルコム | -3.5% |
テキサス・インスツルメンツ | -3.3% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.1%の下落、NYダウは0.6%の上昇、ナスダック指数は1.1%の下落でした。
4/3(月)はOPECプラスによる原油減産を受けてエネルギー株が大幅に上昇して全体をけん引して上昇となったものの、後述の通り今週発表された主要経済指標の多くが予想を下回り、景気後退が強く意識されて株式は軟調でした。
また、JPモルガンチェースのダイモンCEOが、4/4(火)に公表された年次メッセージで金融危機はまだ終了しておらず、影響は何年にもわたり継続するとの見方を示したことも株式相場にマイナスに寄与したとみられます。
一方、祝日による休場前の4/6(木)には、このところ利食いに押されていた大手テクノロジーに買いが入りました。グーグルが検索エンジンに人工知能を追加する計画が報じられてアルファベットの上昇が目立ちました。
4/7(金)に発表された3月雇用統計の非農業部門雇用者数は前月比23.6万人増と市場予想の同23.0万人増に対して堅調でした。FedWatchでは5月FOMCで0.25%の利上げとなる確率は68%まで上昇しています(日本時間4/10(月)午前10時)。
業種指数では、アルファベット、メタプラットフォームズの上昇が寄与したコミュニケーションサービスがトップで、全体的には経済指標の悪化で景気後退が意識され、ディフェンシブが大きく買われる一方、景気敏感が売られました。
個別銘柄ではユナイテッドヘルス グループ(UNH)がトップでした。医療保険の会社で、代表的なディフェンシブ銘柄として買われたとみられます。レイモンドジェームズのアナリストが、株価の重石となっていた政策の不透明要因は通過し、2023年の業績は堅調に拡大することをあげ、「中立」から「強い買い」に投資判断を2段階引き上げています。
経済指標では、3月ISM製造業景気指数(前月 47.7、当月46.3、予想 47.5)、2月JOLTs求人数(前月1,056万人、当月993万人、予想1,040万人)、3月ADP雇用統計(前月26.1万人増、当月14.5万人増、予想20.0万人増)、3月ISM非製造業景気指数(前月55.1、当月51.2、予想 54.5)、新規失業保険申請件数(前週24.6万人、当週22.8万人、予想20.0万人)といずれも景気悪化を示しました。
既発表の経済指標のみで経済成長率を予想するアトランタ連銀の「GDPNow」では、1-3月期の成長率予想は3/22(水)の3%台から4/5(水)には前期比年率1.5%増まで急低下しています。
今週の米国株式市場
年前半の米国市場については、バリュエーションに割安感がないため持続的な株価上昇は難しく、景気減速の程度が確認できるまではレンジ相場になりやすいと見ています。相場が高いところでは売り、十分な押し目を入れたところでは買うという投資行動が有効と考えられます。
先週は景気指標の悪化が目立ちましたが、銀行破綻による影響が一時的に強くあらわれている(銀行破綻がさらに深刻化しないことを前提としてですが)可能性もあり、基調はそこまで悪くない可能性があることも頭に入れておく必要がありそうです。今週のインフレ指標は相場を支える要因になりそうです。一方、決算発表に対しては警戒感が高まりやすいとみられ、全体としてはもみ合いとなる可能性が高そうです。
今週の株価材料として、消費者・生産者物価指数、FOMC議事要旨(3月21日、22日開催分)、1-3月期決算発表のはじまり、などが注目されるでしょう。
物価指標では、全体としてはインフレピークアウトのトレンドが示される見通しですが、消費者物価指数のコア指数が前月から上昇の予想となっており、サービス価格の下がりにくさが意識される見通しです。
4/12(水)に発表の3月消費者物価指数は、総合指数が前年比5.1%増の予想(前月は同6.0%増)、コア指数が前年比5.6%増の予想(前月は同5.5%増)、4/13(木)に発表される3月生産者物価指数は、総合指数が前年比3.0%増の予想(前月は同4.6%増)、コア指数は前年比3.5%増の予想(前月は同4.4%増)です。
FOMC議事要旨では、銀行破綻がさらに深刻化するリスクについて、また、銀行破綻による融資基準の引き締めが先行きの経済に与える影響について、FOMCメンバーがどのような見方をしているか注目されます。
1-3月期決算の発表が、4/13(木)のデルタ航空、ファーストリパブリックバンク(E)、4/14(金)のJPモルガンチェース、シティグループ、ウェルズファーゴ、ユナイテッドヘルスグループなどから始まります。S&P500指数採用企業の1-3月期EPSはFactSet社の集計で前年同期比6.6%減と引き続き低調が予想されています(3/31(金)時点)。
経済指標では上記のほか、4/14(金)に米国の3月小売売上高(前月比0.4%減の予想)、米国の4月ミシガン大学消費者信頼感(前月の62から61.9に悪化の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は景気減速への懸念が高まって株価が調整する中、史上最高値に接近している「金」の関連銘柄をご紹介いたします。金価格に影響を与える主な要因は下掲の4つと考えられますが、[1]~[3]は金価格にプラスに寄与、[4]は金価格にニュートラルとみられ、金価格は上昇しやすい環境にあると考えられます。
[1] 通貨代替需要・・・金は世界共通通貨としての側面があり、基軸通貨である米ドルの下落(上昇)は、金の価格上昇(下落)要因と考えられます。米景気減速を背景としたドルのピークアウトは金価格にプラスとなります。
[2] 米国金利動向・・・金は保有によって利息を生まないため、米ドル金利上昇は金の価格下落要因、米ドル金利低下は金価格の上昇要因です。米長期金利の低下は金価格にプラスです。
[3] インフレや地政学的リスク・・・インフレは沈静化のトレンドで、基本的に金価格にはマイナスですが、インフレの下がりにくさも意識されています。地政学的リスクが高まると、資産保全ニーズで金が買われる傾向にあり、比較的高い状態が続いているとみられるため、金価格の押し上げ要因と考えられます。
[4] 金の需要と供給・・・景気が減速すると宝飾やテクノロジーの需要は鈍化する可能性がありますが、このところ中央銀行による購入が増えており、相殺する可能性があります。
当社が取り扱う金関連商品から、SPDR ゴールド シェア(GLD)、ヴァンエック 金鉱株ETF(GDX)、Direxion デイリー金鉱株 ブル2倍 ETF(NUGT)、ニューモント(NEM)、バリック ゴールド(GOLD)を選んで紹介いたします。
図表3 金現物(1オンス当たり) 週足、5年

※当社WEBサイトを通じでSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (4/7) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | SPDR ゴールド シェア(GLD) | 186.49ドル | - | 【金地金価格に連動するETF】 金地金価格(ロンドン金値決め)に連動する運用成果(年率0.4%の信託報酬控除前)を目指すETFです。金の現物が100%組み入れられます。3月末の純資産は590億ドルに達し、金に投資する際の代表的な金融商品です。 | |
買付 | ヴァンエック 金鉱株ETF(GDX) | 34.43ドル | - | 【世界の金鉱株を組み入れたETF】 世界の金鉱株で構成される指数に連動を目指すETFです。4/5(水)時点の組み入れ銘柄数は48で、組み入れトップはニューモントの10%、2位はバリックゴールドの9%、3位はフランコネバダの8%、4位はアグニコイーグルマインズの7%、5位はウィートンプレシャスメタルズの6%です。 | |
買付 | Direxion デイリー 金鉱株 ブル2倍 ETF(NUGT) | 47.32ドル | - | 【金鉱株指数の2倍の値上がりを目指すETF】 ・金鉱株指数の価格変動に対してプラス2倍の変動(手数料および経費控除前)を目指すETFです。プラス2倍の変動とは、指数が1%上昇のときには同ETFは2%上昇、1%下落のときには2%下落することを意味します。ブルベアETFはお客さまの想定以上に値上がり、あるいは値下がりする可能性があり、予想と逆方向に相場が動いた場合には大きな損失を被るリスクがあります。対象指数は、世界の金鉱株に分散するNYSE Arcaゴールドマイナーズインデックスです。 ・注意点として、日々の値動きについてはプラス2倍が期待できるものの、中長期ではそのような成果は期待できないことがあげられます。金鉱株指数が値下がりすると考える場合には、指数の変動のマイナス2倍の変動を目指すDirexion デイリー 金鉱株 ベア2倍 ETF(DUST)があります。他の注意点は、本ページ下部に記載する「免責事項・注意事項」をご確認ください。 | |
買付 | ニューモント(NEM) | 52.05ドル | 24.9 | 【米国最大の産金会社】 ・米国最大、世界2位の産金会社で、銅の生産も手掛けます。米国内の主力鉱山のほか、オーストラリア、ガーナ、南米にも拠点を保有します。19年にカナダのゴールドコープを買収しています。足もとの業績はコスト上昇圧力に加え、2022年は採掘パフォーマンスも不振で、株価は低調となっています。一時は減配の可能性も懸念された状況ですが、このところの金価格上昇は大きな助けになると期待されます。 ・10-12期の金生産量は低水準だった7-9月期から改善して前年同期比1%増を確保しました。金の販売価格も前年同期比2%減を確保しましたが、金の生産コストは同15%増となって調整後EPSは同44%減と不振でした。2023年の生産量は2022年実績の5.96百万オンスに対して5.7~6.3百万オンス、金の生産コストは2022年実績の1オンス当たり1,211ドルに対して1,150~1,250ドルのガイダンスです。2022年1-3月期の平均販売価格は1オンス当たり1,892ドルでした。 | |
買付 | バリック ゴールド(GOLD) | 19.73ドル | 22.9 | 【世界最大のカナダの産金会社】 ・カナダの鉱業会社で、主力の金生産量は世界1位です。米国、カナダ、オーストラリア、ザンビア、チリなど15ヵ国で探鉱・採掘・生産を行います。海外の鉱山を買収して運営を軌道に載せるのは難度の高い仕事になりますが、同社は業界でもこれに巧みだと評価されています。低調な業績が続いていますが、足もとの金価格の上昇は助けになると期待されます。 ・2022年の業績は、金の平均販売価格が前年比横ばいとなる中、金の生産量が同7%減となり、原油価格などの生産コストが同19%も上昇したことを受けて、EPSは同79%も落ち込みました。2023年については、金の生産量は2022年実績の4.1百万オンスに対して4.2~4.6百万オンス、生産コストは2022年実績の1オンス当たり1,222ドルに対して1,170~1,250ドルを見込んでいます。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、ニューモント、バリックゴールドとも2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
10(月) | ・ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が討論に参加 ・米消費者信用残高(2月) |
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11(火) | ・中国生産者・消費者物価指数(3月) ・日本工作機械受注(3月) ・ユーロ圏小売売上高(2月) ・シカゴ連銀のグールズビー総裁が講演 ・ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が講演 ・米NFIB中小企業楽観指数(3月) ・IMFが世界経済見通し(WEO)を発表 |
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12(水) | ・日本機械受注(2月) ・G20財務相・中央銀行総裁会議(米ワシントン) ・リッチモンド連銀のバーキン総裁の講演 ・米消費者物価指数(3月) ・米FOMC議事要旨 |
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13(木) | ・中国貿易統計(3月) ・ユーロ圏鉱工業生産(2月) ・米生産者物価指数(3月) ・米新規失業保険申請件数(4月8日に終わる週) |
デルタ航空 |
14(金) | ・米小売売上高(3月) ・米鉱工業生産(3月) ・米ミシガン大学消費者マインド(4月、速報値) |
JPモルガンチェース、ユナイテッドヘルスグループ シティグループ、ウェルズファーゴ、ブラックロック |
17(月) | ・ニューヨーク連銀製造業景気指数(4月) ・NAHB住宅市場指数(4月) |
M&Tバンク |
18(火) | ・中国実質GDP(1-3月期) ・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(3月) ・中国調査失業率(3月) ・ドイツZEW景気期待指数(4月) ・米住宅着工・建設許可件数(3月) |
ネットフリックス、ジョンソン&ジョンソン、バンクオブアメリカ ゴールドマンサックス、ロッキードマーチン ユナイテッドエアラインズ |
19(水) | ・EU27ヵ国新車登録台数(3月) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック) |
IBM、テスラ、ASMLホールディングス モルガンスタンレー |
20(木) | ・米新規失業保険申請件数(4月15日に終わる週) ・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(4月) ・米中古住宅販売件数(3月) |
AT&T、台湾セミコンダクター、アメリカンエキスプレス フィリップモリスインターナショナル |
21(金) | ・S&Pグローバルユーロ圏製造業PMI(4月) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(4月) |
プロクター&ギャンブル、アメリカン航空、シュルンベルジェ |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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