アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~先週の注目決算、マイクロソフト、メタ、P&G、マクドナルド、ボストンサイエンティフィック~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~先週の注目決算、マイクロソフト、メタ、P&G、マクドナルド、ボストンサイエンティフィック~

投資情報部 榮 聡

2023/05/01

先週は金融不安の再燃で一時大きく下げる場面がありましたが、1-3月期GDPの個人消費が堅調であったことに加え、マイクロソフト、メタプラットフォームズの好決算がテクノロジー株への買いを誘い、週末にかけて相場は回復しました。今週の株価材料として、FOMC(米連邦公開市場委員会)、4月雇用統計、4月ISM製造業景気指数、などが注目されます。

今回は4/21(金)から4/27(木)にかけて発表された1-3月期決算から注目できる銘柄として、マイクロソフト(MSFT)メタ プラットフォームズ A(META)プロクター & ギャンブル(PG)マクドナルド(MCD)ボストン サイエンティフィック(BSX)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

「金融不安の揺さぶり」を乗り越え、相場の地合いは強い印象です。あと0.6%に迫った2月高値(4,195.4ポイント)を意識した動きが想定されます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
コミュニケーションサービス 3.8% 3.6% 7.5%
情報技術 2.4% 0.4% 9.2%
不動産 1.5% 0.8% -7.9%
生活必需品 1.1% 3.4% 3.9%
S&P500 0.9% 1.5% 1.2%
エネルギー 0.3% 3.2% -3.3%
一般消費財・サービス 0.2% -1.0% -2.2%
金融 -0.2% 3.0% -9.3%
素材 -0.2% -0.2% -5.6%
ヘルスケア -0.6% 3.0% -0.4%
資本財・サービス -0.6% -1.2% -2.5%
公益事業 -1.0% 1.8% -0.4%
騰落率上位(5日) 騰落率
メタ・プラットフォームズ 12.9%
チャーター・コミュニケーションズ 10.8%
コムキャスト 9.6%
モンデリーズ・インターナショナル 7.6%
マイクロソフト 7.5%
騰落率下位(5日) 騰落率
ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS) -7.9%
アッウ゛ィ -7.0%
ダナハー -6.3%
テキサス・インスツルメンツ -5.5%
ブリストル マイヤーズ スクイブ -5.3%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.9%、NYダウは0.9%、ナスダック指数は1.3%の上昇でした。

金融不安の再燃でS&P500指数は4/26(水)に前週末比2.0%安までありましたが、1-3月期GDPの個人消費が堅調であったことに加え、マイクロソフト、メタプラットフォームズの好決算がテクノロジー株への買いを誘い、週末にかけて相場は回復しました。

4/24(月)に1-3月期決算を発表したファーストリパブリックバンクは3月末の預金が2022年末比41%減と市場予想以上の減少となって、株価は4/25(火)に49%、4/26(水)に30%下落して金融不安を再燃させました。しかし、25万ドル以下の預金額の比率が20%と、破綻したシリコンバレーバンク、シグネチャーバンクに次いで低いことから、3月の銀行破綻後の株価下落が特に大きくなっており、破綻のリスクはかなり市場に織り込まれていたとみられます。

一方、1-3月期の企業決算は市場予想を上回るものが多くなっています。FactSet社の集計によるS&P500指数採用企業のEPS(発表済み企業の実績と今後発表される企業の予想の混合)は、4/21(金)時点の前年同期比6.2%減から4/28(金)には同3.7%減まで減益幅が縮小しています。

経済指標では、1-3月期の実質GDP(速報値)が前期比年率1.1%増と、市場予想の同1.9%増を下回り、10-12月期の同2.6%増から減速となりました。設備投資の減速、在庫投資の減少が成長率の低下に寄与しています。一方、個人消費は前期比年率3.7%増と10-12月期の同1.0%増を大きく上回ったことで、景気後退懸念の低下に寄与したと考えられます。

業種指数では、テクノロジー株への物色が活発化して「コミュニケーションサービス」「情報技術」が上昇率上位となりました。
個別株で上昇率上位のチャーター コミュニケーションズ A(CHTR)は、携帯電話の契約者数が市場予想を大きく上回ったこと、コムキャスト A(CMCSA)は、動画配信サービス「ピーコック」の加入数の増加や傘下のユニバーサル・ピクチャーズが手掛ける「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の世界的ヒットが好感されているようです。

今週の米国株式市場

年前半の米国市場については、バリュエーションに割安感がないため持続的な株価上昇は難しく、景気減速の程度が確認できるまではレンジ相場になりやすいと見ています。相場が高いところでは売り、十分な押し目を入れたところでは買うという投資行動が有効と考えられます。

先週の相場は「金融不安の揺さぶり」からも回復して、地合いは強いとの印象を市場参加者に与えたとみられます。今週はFOMCに波乱がなければ、一旦2月の高値を超える場面もありそうです。ただ、今後3ヵ月程度を見渡すと、相場下落の可能性も高いと思われるため、上昇した局面では売り目線で臨むのもよいかもしれません。

なお、週末にファースト リパブリック バンク(FRC)がFDIC(連邦預金保険公社)の管理下で破綻認定され、現在大手銀行による入札が行われています。同行が4/24(月)に発表した1-3月期決算から自力での存続が難しいことは十分にうかがわれ、また、4/28(金)終値は年初来97%下落していたことから、いずれ破綻処理されるのは市場に織り込まれていたと考えられます。

今週の株価材料として、FOMC(5/2(火)、5/3(水)開催)、4月雇用統計、4月ISM製造業景気指数、などが注目されます。

5月3日(水)にFOMCの結果が発表されます。「5月FOMCで0.25%ポイントの利上げ、6月FOMCでは据え置き」というのが現在のメインシナリオです。ここから乖離しなければ、株式相場にポジティブなイベントになると考えられます。

日本時間5/1(月)午前8時半時点の「FedWatch」では、0.25%ポイントの利上げ確率が83%、6月FOMCで政策金利の上限が5.25%(5月に0.25%の引き上げとなった場合には、6月に据え置きを意味する)となる確率は67%となっています。

5/5(金)に発表される4月雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比18.0万人増で、2月の同32.6万人、3月の同23.6万人から低下となる予想です。現在、株式市場では景気後退に対する意識が高まっているため、「Good news is good news」の反応パターンとなりそうです。平均時給は前年比4.2%増の予想で前月と変わらずの予想です。

先々週発表された製造業景気指数はNY連銀が改善、フィラデルフィア連銀が悪化、S&Pグローバルでは改善となって、統計によって前月比の動きがまちまちでした。製造業の景気トレンドが好悪どちらにあるのか決着をつけるものとなるか注目されます。5/1(月)に発表予定の米国の4月ISM製造業景気指数は前月の46.3から46.8に改善の予想です。なお、週末に発表された中国の4月製造業PMIは、前月の51.9から49.2へ予想外の50割れとなっています。

経済指標では上記のほか、5/2(火)に米国の3月製造業受注(前月比1.3%増の予想)、5/3(水)に米国の4月ISM非製造業景気指数(前月の51.2から51.8に改善の予想)、などの発表が予定されています。

企業イベントでは、5/4(木)にアップルのほか、アドバンストマイクロデバイセズ、ファイザー、スターバックス、コインベースグローバル、ブッキングホールディングス、バタフライネットワークス、ワーナーブラザーズディスカバリー、などの決算発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は4/21(金)から4/27(木)にかけて発表された1-3月期決算から、注目できる銘柄をピックアップしました。マイクロソフト(MSFT)、メタ プラットフォームズ A(META)、プロクター & ギャンブル(PG)、マクドナルド(MCD)、ボストン サイエンティフィック(BSX)を選んでご紹介いたします。

図表3 注目銘柄の1-3月期決算概要(4/21(金)~4/27(木)発表、S&P500指数採用銘柄)

銘柄名(コード) 売上
予想比
(%)
EPS
予想比
(%)
売上
前年同期比
(%)
EPS
前年同期比
(%)
マイクロソフト(MSFT) 3.6 9.6 7.1 10.4
メタ プラットフォームズ A(META) 3.5 9.7 2.6 -19.1
プロクター & ギャンブル(PG) 3.8 3.4 3.5 3.0
マクドナルド(MCD) 5.8 13.6 4.1 15.4
ボストン サイエンティフィック(BSX) 7.3 8.3 12.0 19.4

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

買付 チャート 銘柄 株価
(4/28)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートマイクロソフト(MSFT)10.96ドル307.3

【売上の伸びが改善】

・売上の伸び率が10-12月期の前年同期比2%増から同7%増に改善しました。堅調な法人需要を背景に「Office」や「Windows」OSなどの売上伸び率が改善しています。昨年7月、10月、今年1月と続いた決算発表後の業績見通し下方修正のトレンドを断ち切ることができたとみられます。中期的にはAI技術の導入の効果が期待されます。

・1-3月期の業績は、売上が前年同期比7%増、EPSが同10%増で市場予想も上回りました。部門別の売上は、プロダクティビティ&ビジネスプロセス(「Office」等ビジネスソフトウェアなど)が前年同期比11%増、インテリジェントクラウド(企業向けクラウドサービスなど)が同16%増、モアパーソナルコンピューティング(「Windows」OS、ゲーム、検索サービスなど)が同9%減でした。

買付チャートメタ プラットフォームズ A(META)13.44ドル240.3

【4四半期ぶりの増収】
 
・1-3月期は4四半期ぶりに増収となりました。4-6月期の売上見通しも市場予想を上回り、中央値は前年同期比7%増相当で売上成長率の改善が続く見通しです。2023年通期の総費用見通しは860~900億ドルとし、従来予想の860~920億ドルから上限を引き下げました。リアリティーラボ部門は赤字ながら、コスト抑制と売上高成長率の改善がうまくミックスしつつあり、見通しが明るくなってきました。

・10-12月期から1-3月期にかけて、売上は前年同期比1%減→同3%増、営業費用は同23%増→同10%増、営業利益は同38%減→同15%減と、売上の伸びが改善、費用の増加が鈍化して、利益の伸びが改善しています。マーク・ザッカーバーグCEOは「好調な四半期だった」とコメント、AIへの取り組みが良い結果を生んでいるとしました。

買付チャートプロクター & ギャンブル(PG)6.37ドル156.4

【販売数量が改善】

・1-3月期のオーガニック売上成長率は前年同期比7%増と、10-12月期の同5%増から改善しました。市場予想の同4%増を上回り、通期のガイダンスを従来の前年比4~5%増から同約6%増へ引き上げました。値上げの累積的影響で10-12月期に前年同期比6%減となっていた販売数量が1-3月期には同3%減に改善しました。分野別にはビューティやグルーミングの販売数量改善が大きく、経済再開の影響がうかがわれます。

・1-3月期の売上は前年同期比4%増、営業利益は同6%増でした。粗利率は前年同期から1.5%ポイント、為替の影響を除くベースで2.2%ポイント、改善しました。コスト増の影響を価格引き上げや生産性の向上で相殺して利益率の改善につなげています。部門別のオーガニック売上成長率は、5部門とも前年同期比6%増以上で、堅調さは幅広い分野にわたっています。

買付チャートマクドナルド(MCD)10.93ドル295.8

【既存店売上が12.6%増】 

・1-3月期のグローバル既存店売上は前年同期比12.6%増となり、市場予想の同8.2%増を大きく上回りました。メニュー価格を引き上げても来店客数が衰えず、CEOは「厳しい経営環境の中、マクドナルドブランドに対する顧客の需要は引き続き強い」とコメント、同社が進める成長戦略「Accelerating the Arches」に自信を示しました。

・1-3月期の業績は、売上が前年同期比4%増(為替の影響を除くベースで同8%増)、営業利益は同10%増(同じく同14%増)と堅調でした。GAAPベースのEPSは前年同期にロシア市場からの撤退費用が計上されていたため、同66%増(同じく同72%増)と高くなっています。既存店売上の伸びは、米国、海外、海外のライセンス市場が揃って12.6%伸びました。

買付チャートボストン サイエンティフィック(BSX)1.95ドル52.1

【待機的手術が回復】 

・医療機器の大手で、心臓カテーテル、内視鏡検査装置、冠動脈疾患向け装置、ペースメーカーなどを製造します。世界的にパンデミックが収まったことで、待機的手術(医療上の緊急事態を伴わない手術)が回復して予想以上の増収・増益となっています。このような動きは先週取り上げたインテューイティブサージカルでもご紹介した通りで、業界全体のトレンドとみられます。

・1-3月期の売上は前年同期比12%増となり、会社ガイダンスの同3~5%増を大きく上回りました。メドサージ部門の売上が同11%増、カーディオバスキュラー部門が同13%増と、売上の好調は幅広い分野に広がっています。一方、株価は決算発表前に報道された、血管内結石破砕術用の機器を扱うショックウェーブ メディカル(SWAV)の買収に対する警戒から乱高下しています。買収の有無がはっきりすれば、業績の回復を織り込む動きが期待されます。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、マイクロソフトとプロクター&ギャンブルが2024年6月期、その他は2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
5月
1(月)
・米ISM製造業景気指数(4月)
・財新中国製造業PMI(4月)
ズームインフォテクノロジーズ、アリスタネットワークス
2(火) ・米求人労働異動調査(3月)
・米製造業受注(3月)
・ワーズ自動車販売台数(4月、3日までに発表)
アドバンストマイクロデバイセズファイザースターバックス
マリオットインターナショナル
3(水) ・米FOMC政策金利
・ISM非製造業景気指数(4月)
クアルコム、エスティローダー
4(木) ・ECB主要政策金利
・チャレンジャー人員削減数(4月)
・新規失業保険申請件数(4月29日に終わる週)
アップルコインベースグローバル
ブッキングホールディングス
5(金) ・ユーロ圏小売売上高(3月)
・米雇用統計(4月)
・米消費者信用残高(3月)
ワーナーブラザーズディスカバリー
6(土)   ・バークシャーハサウェイの年次総会
8(月)   パランティアテクノロジーズペイパルホールディングス
9(火) ・米NFIB中小企業楽観指数(4月)
・中国貿易統計(4月)
リビアンオートモーティブオキシデンタルペトロリアム
10(水) ・米消費者物価指数(4月) ウォルトディズニーユニティソフトウェア
11(木) ・中国生産者・消費者物価指数(4月)
・米新規失業保険申請件数(5月6日に終わる週)
・米生産者物価指数(4月)
バタフライネットワークス、ブラジル石油公社
12(金) ・米輸入物価指数(4月)
・米ミシガン大学消費者信頼感(5月、速報値)
 

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

おすすめ記事(2023/05/01 更新)

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。