アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~先週の注目決算、スターバックス、マリオット、ライブネーション、マーチンマリエッタ、ソーラーエッジ~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~先週の注目決算、スターバックス、マリオット、ライブネーション、マーチンマリエッタ、ソーラーエッジ~

投資情報部 榮 聡

2023/05/08


先週は金融不安の再燃に加え、FOMCでは利上げ停止の確証が得られなかったことから、一時大幅な下落となりましたが、週末の強い雇用統計に救われました。今週の株価材料として、物価指標、債務上限の交渉、金融不安の行方、などが注目されます。

今回は4/28(金)から5/5(金)にかけて発表された1-3月期決算から注目できる銘柄として、スターバックス(SBUX)マリオット インターナショナル A(MAR)ライブ ネーション エンターテインメント(LYV)マーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM)ソーラーエッジ テクノロジー(SEDG)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

金融不安の再燃に加え、FOMCでは利上げ停止の確証が得られなかったことから、一時大幅な下落となりましたが、強い雇用統計に救われました。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
情報技術 0.6% 2.9% 7.7%
ヘルスケア 0.1% 0.2% 0.7%
公益事業 0.0% -0.5% 1.6%
一般消費財・サービス -0.3% 1.7% -2.4%
生活必需品 -0.4% 2.2% 4.8%
資本財・サービス -0.5% 1.7% -3.3%
S&P500 -0.8% 1.1% 0.0%
不動産 -0.8% 1.5% -8.8%
素材 -1.1% -0.2% -4.6%
コミュニケーションサービス -2.3% 0.6% 0.7%
金融 -2.6% 1.3% -11.8%
エネルギー -5.8% -7.0% -6.3%
騰落率上位(5日) 騰落率
イーライリリー 8.1%
クラフト・ハインツ 5.2%
バイオジェン 4.5%
テスラ 3.5%
エヌビディア 3.4%
騰落率下位(5日) 騰落率
メットライフ -10.9%
USバンコープ -10.3%
キャピタル・ワン・ファイナンシャル -9.5%
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス -8.7%
エクソンモービル -8.2%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.8%、NYダウは1.2%の下落、ナスダック指数は0.1%の上昇でした。

金融不安が再燃したことに加え、FOMCでは次回会合で利上げ停止となる確証が得られなかったことから、5/2(火)~5/4(木)にかけて3日続落となりました。一方、5/5(金)には強い4月雇用統計、市場予想を上回るアップルの好決算、また、地方銀行株は売られすぎとの見方も台頭して反発して週を終わりました。

ファーストリパブリックバンク(FRC)の破綻は、JPモルガンチェースによる資産取得により、一旦は落ち着いたかに見えました。しかし、預金保険の保護対象となる25万ドル以上の預金が小さく、預金者の「取り付け」に対して相対的に弱いと考えられるパックウエストバンコープ(PACW)やウエスタンアライアンスバンコープ(WAL)などの株価が急落して、金融不安が再燃しました。KBWナスダック銀行株指数は5/4(木)に前週末比13.4%安までありましたが、5/5(金)にはJPモルガンチェースのアナリストが地方銀行株は売られすぎとして、同7.4%安まで戻しました。

業種指数では、アップル、マイクロソフト、エヌビディアの上昇が寄与した「情報技術」、イーライリリィの上昇が寄与した「ヘルスケア」などがプラスを確保する一方、景気への懸念から原油価格が下落した「エネルギー」、金融不安が再燃した「金融」、幅広い銘柄が売られた「コミュニケーションサービス」の下落が大きくなっています。

個別株で上昇トップのイーライ リリィ(LLY)は、5/3(水)にアルツハイマー治療薬「ドナネマブ」の後期臨床試験で、認知機能の低下が35%抑えられたとの結果を発表して好感されました。同薬に加えて、糖尿病治療薬の「マンジャロ」(一般名はチルゼパチド)が肥満治療薬としても承認される期待もあり、同社の株価は4月下旬以降、上場来高値の更新が続いています。

経済指標では、4月雇用統計の非農業部門雇用者数が前月比25.3万人増と、市場予想の同18万人増を上回りました。景気減速が加速しているのではないかとの懸念が強まっていたため、市場に安心感をもたらしたとみられます。一方、3月の米求人数は959万人と、3ヵ月連続で減少、市場予想の978万人も下回り、雇用市場が中期的に沈静化しつつあることを示しました。

今週の米国株式市場

年前半の米国市場については、バリュエーションに割安感がないため持続的な株価上昇は難しく、景気減速の程度が確認できるまではレンジ相場になりやすいと見ています。相場が高いところでは売り、十分な押し目を入れたところでは買うという投資行動が有効と考えられます。

今週はもみ合いでしょうか。銀行破綻の余波、債務上限問題が意識されていることから、積極的な上値追いは難しいと考えられます。一方、S&P500指数の予想EPSの下方修正が止まっていることはポジティブです。2023年の予想EPSは、2022年6月21日の248.17ポイントから一貫して下方修正されてきましたが、足もとでは4/20(木)の217.06ポイントを底にやや上方修正(約2ポイント)となっています。

今週の株価材料として、物価指標、債務上限の交渉、金融不安の行方、などが注目されます。

5/10(水)に4月消費者物価指数、5/11(木)に4月生産者物価指数の発表が予定されています。消費者物価指数の総合指数は前月の前年比5.0%増から横ばい、コア指数は前月の同5.6%増から同5.5%増へ低下、生産者物価指数の総合指数は前月の前年比2.7%増から同2.5%増へ低下、コア指数は前月の同3.4%増から同3.3%増へ低下と予想されています。インフレピークアウトのトレンドを確認することで相場にポジティブなインパクトが期待されます。

米国の債務上限について、5/9(火)にバイデン大統領がマッカーシー下院議長ら共和党員と会談し、債務上限引き上げに関する交渉が行われます。マッカーシー下院議長は債務上限の引き上げとともに、歳出の削減を求める法案を提出していますが、バイデン大統領は歳出の削減はできないと発言しています。交渉の行方が注目されます。イエレン米財務長官は、6/1(木)までに債務上限の引き上げが行われないと、米国政府はデフォルトの可能性があると再三警告しています。

FRBが公表している米国内銀行の統計では、預金額は4/12(水)から4/26(水)にかけて2週連続で預金額の減少は止まっていますが、FRCの破綻を受けて消費者が再び預金を動かし始めるのではないかとの懸念が生まれています。これはマクロの統計で確認していく必要があります。

経済指標では上記のほか、5/9(火)に中国の貿易統計(輸出は前年比7.5%増の予想、前月は同14.8%増、輸入は前年比0.1%減の予想、前月は同1.4%減)、5/12(金)に米国の5月ミシガン大学消費者信頼感(前月の63.5から63.0に悪化の予想)、などの発表が予定されています。

企業イベントでは、パランティアテクノロジーズ、ペイパルホールディングス、リビアンオートモーティブ、オキシデンタルペトロリアム、ウォルトディズニー、ユニティソフトウェア、バタフライネットワークスなどの決算発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は4/28(金)から5/5(金)にかけて発表された1-3月期決算から、注目できる銘柄をピックアップしました。スターバックス(SBUX)マリオット インターナショナル A(MAR)ライブ ネーション エンターテインメント(LYV)マーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM)ソーラーエッジ テクノロジー(SEDG)を選んでご紹介いたします。

図表3 注目銘柄の1-3月期決算概要(4/28(金)~5/5(金)発表、S&P500指数採用銘柄)

銘柄名(コード) 売上
予想比
(%)
EPS
予想比
(%)
売上
前年同期比
(%)
EPS
前年同期比
(%)
スターバックス(SBUX) 3.5 13.7 14.2 25.4
マリオット インターナショナル A(MAR) 4.2 13.1 33.7 67.2
ライブ ネーション エンターテインメント(LYV) 38.4 47.3 73.5 赤字縮小
マーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM) 7.0 122.0 10.0 453.9
ソーラーエッジ テクノロジー(SEDG) 1.0 49.4 44.1 141.7

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

買付 チャート 銘柄 株価
(5/5)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートスターバックス(SBUX)107.21ドル31.3

【米中とも予想を上回る好調】

・1-3月期のグローバル既存店売上は前年同期比11%増と市場予想の同7.3%増を上回って好調でした。米国が同8.9%増の予想に対して同12%増、海外は同1.5%増の予想に対して同7%増、うち中国は同9.9%減の予想に対して同3%増と地域を跨いで広く好調でした。平均単価が同6%増、来店数が同4%増と、価格・数量とも伸びてポジティブです。

・1-3月期決算は、売上が前年同期比14%増、調整後営業利益率も前年同期の13.0%から14.3%に改善して、調整後EPSは同25%伸びました。2023年9月期の下半期は中国市場の回復モメンタムが強まると想定されることから、好調が持続すると期待されます。株価は決算を受けて下落していますが、決算前に上昇していた反動が含まれると見られ、利食いが一巡すれば戻りが期待できるとみられます。

買付チャートマリオット インターナショナル A(MAR)176.57ドル21.7

【世界的に旅行需要が回復】

・世界最大のホテルチェーンです。パンデミックの終息による世界的な旅行需要の回復の恩恵を受けて業績が回復基調にあります。同社はホテルの不動産を保有せず、ホテルの運営のみを受託したり、フランチャイズ契約で名前を貸したり運営のフォーマットを提供する、「アセットライト」のビジネスモデルを確立しています。このため、シクリカルな回復だけでなく、中期的な安定成長の面からも注目できる企業と考えられます。

・1-3月期の稼働客室当たりの収入(為替の影響を除くベース)は、全世界で前年同期比34.3%増、米国・カナダが同25.6%増、海外が同63.1%増でした。それぞれ通期のガイダンスは、10~13%増、6~9%増、22~25%増です。期末の開発案件は3,060物件、約50.2万室に上ります。

買付チャートライブ ネーション エンターテインメント(LYV)77.16ドル120.6

【ライブイベントに対する需要はかつてないほど強い】

・音楽イベントの企画・運営、チケット販売、タレント管理を行う世界最大級のライブエンターテインメント企業です。パンデミック前のデータですが、年間4万のショー、100以上のフェスティバルを運営、5億枚のチケットを販売します。「モノ消費からコト消費へ」のトレンドから中長期に恩恵を受ける企業として注目できます。

・1-3月期は同社が活動している市場がすべて完全に再開し、売上は前年同期比73%増、調整後営業利益は同53%増でした。パンデミック前の2019年1-3月期との比較でも、売上は80%増、調整後営業利益は2.8倍の水準に達しています。経営陣は「ライブイベントに対するファンの需要はかつてないほど強い」としており、夏場のハイシーズンに向けて業績の好調が期待されます。市場コンセンサスの予想EPSは、2023年12月が0.64ドル、2024年12月期は1.40ドルです。

買付チャートマーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM)397.66ドル25.2

【インフラ投資の需要に期待】

・砕石、砂利等の建設用骨材を供給する会社です。2022年から進めてきた価格引き上げの浸透によって市場予想を上回る増収・増益となっています。同業のバルカンマテリアルズも同社同様に増収・増益で市場予想を上回る決算を出しており、業界全体として好調と考えられます。

・需要環境に関しては、インフラ投資と非住宅建設需要によって当面の需要は堅調とみられ、また、バイデン政権によるインフラ投資法により砕石を多く使用するプロジェクトが活発化して骨材需要の堅調は今後数年継続すると見込んでいます。2023年12月期の売上は前年比15~19%増、建設骨材の数量は前年比2%減~2%増、平均価格は同13~15%増を見込みます。

買付チャートソーラーエッジ テクノロジー(SEDG)293.39ドル29.0

【太陽光発電需要が好調】

・イスラエル本社の太陽光発電関連機器の会社。家庭や商業施設の太陽光発電で使われるインバータ(直流電流を交流電流に変換する装置)、オプティマイザー(太陽光パネルの電圧最適化装置)、監視プラットフォームを提供します。インバータの売上では世界最大です(2022年10-12月期、IHSマークイット調査)。

・1-3月期は太陽光関連が順調に伸びて売上が944百万ドルで前年同期比44%増、前四半期比6%増、調整後EPSが2.90ドルで同2.4倍となり、売上・調整後EPSとも市場予想を上回りました。4-6月期の売上ガイダンスは970~1,010百万ドル(前年同期比33~39%増)で、市場予想を上回りました。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、スターバックスが2023年9月期、その他は2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
8(月) ・FRBのシニア・ローンオフィサー・サーベイ パランティアテクノロジーズペイパルホールディングス
9(火) ・中国貿易統計(4月)
・ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が講演

・米NFIB中小企業楽観指数(4月)
リビアンオートモーティブオキシデンタルペトロリアム
10(水) ・米消費者物価指数(4月) ウォルトディズニーユニティソフトウェア
11(木) ・中国生産者・消費者物価指数(4月)
・FRBのウォラー理事が講演
・米新規失業保険申請件数(5月6日に終わる週)
・米生産者物価指数(4月)
バタフライネットワークス、ブラジル石油公社
12(金) ・米輸入物価指数(4月)
・米ミシガン大学消費者信頼感(5月、速報値)
 
15(月) ・日本工作機械受注(4月)
・米ニューヨーク連銀製造業景気指数(5月)
 
16(火) ・中国鉱工業生産・小売売上高(4月)
・ドイツZEW景気指数(5月)
・ユーロ圏実質GDP(1-3月期、速報値)
・米小売売上高(4月)

・米鉱工業生産(4月)
・NAHB住宅市場指数(5月)
ホームデポ
17(水) ・日本実質GDP(1-3月期、速報値)
・EU27ヵ国新車登録台数(4月)
・米住宅着工・建設許可件数(4月)
アプライドマテリアルズ、シスコシステムズ、ターゲット
18(木) ・米新規失業保険申請件数(5月13日に終わる週)
・米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(5月)
・米中古住宅販売件数(4月)
ジムインテグレーテッドシッピング、ウォルマート
19(金)   ディア

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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