アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~生成AIの提携先としてエヌビディアに選ばれた企業~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~生成AIの提携先としてエヌビディアに選ばれた企業~

投資情報部 榮 聡

2023/06/12

先週はカナダ中銀によるサプライズの利上げで下落する場面がありましたが、翌日に新規失業保険申請件数が大幅に伸びて米10年国債利回りが反落して株式相場は回復、結果高値圏でのもみ合いとなりました。今週の株価材料として、5月の消費者物価指数と生産者物価指数、6月FOMC(米連邦公開市場委員会)、S&P500指数の52週高値更新なるか、などが注目されます。

今回はエヌビディアの2-4月期決算リリースでAI分野の提携先として言及された銘柄から、サービスナウ(NOW)デル テクノロジーズ C(DELL)オラクル(ORCL)マイクロソフト(MSFT)メドトロニック(MDT)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

S&P500指数は2022年8月16日の52週高値4,325.28ポイントまであと0.6%に迫っています。「一文新値は鬼より怖い」と言いますので、勢いよく更新できるか注目されます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
一般消費財・サービス 2.4% 9.0% 17.4%
公益事業 1.9% -4.1% 3.0%
エネルギー 1.7% 2.8% -1.3%
資本財・サービス 1.4% 3.8% 3.4%
金融 1.1% 3.8% 0.7%
不動産 0.7% -0.2% 2.6%
素材 0.5% 0.8% 0.9%
S&P500 0.4% 4.2% 11.3%
ヘルスケア -0.1% -1.5% 4.9%
コミュニケーションサービス -0.4% 5.0% 24.4%
生活必需品 -0.5% -5.1% 2.9%
情報技術 -0.7% 10.3% 23.8%
騰落率上位(5日) 騰落率
テスラ 14.2%
フォード・モーター 10.9%
ゼネラル・モーターズ(GM) 5.7%
ネットフリックス 4.9%
AT&T 4.9%
騰落率下位(5日) 騰落率
ターゲット -4.7%
クラフト・ハインツ -4.2%
デュポン・ド・ヌムール -3.7%
メタ・プラットフォームズ -2.8%
テキサス・インスツルメンツ -2.6%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.4%、NYダウは0.3%、ナスダック指数は0.1%の上昇でした。

S&P500指数は2022年8月16日に付けた52週高値に近づいていることから高値警戒もあるとみられ、高値圏でのもみ合いとなりました。6/7(水)までは、小型株指数のラッセル2000や資本財・サービス、素材など大型テクノロジー株主導の上昇で出遅れていたものが物色される動きが目立ちました。

6/7(水)にはカナダ中銀が3会合ぶりにサプライズの利上げを実施、カナダ中銀の動きはFRBに先行するとの経験則から、FRBも利上げするのではとの観測から債券利回りが上昇、大手テクノロジー株の利食いにつながりました。

一方、6/8(木)には新規失業保険申請件数が26.1万件と、市場予想の23.0万件を大きく上回りました。「Bad news is good news」 のロジックで、FRBの利上げの必要性が後退したと捉えられ、米10年国債利回りが反落。前日に売られたテクロジー株が反発しました。

アップルが発表したARヘッドセット(拡張現実ヘッドセット)の「ビジョンプロ」は、コントローラがなく目と指と声だけで周辺の空間にアプリを開いて操作する新規性の高いものでした。ただ、価格が3,499ドル(約49万円)~と高く、販売開始は2024年初めからということもあり、評価については様子見といったところでしょうか。

業種指数では、テスラなど自動車株がけん引した「一般消費財・サービス」のほか、S&P500指数が年初来高値を更新していることを背景に、「資本財・サービス」「金融」など出遅れ物色の動きも目立ちました。一方、これまで相場上昇をけん引していた「情報技術」には利食いが出ました。

個別銘柄では、6/6(火)に米財務省がEV促進税額控除の対象車種をアップデート、対象車種をもつテスラ(TSLA)フォード モーター(F)ゼネラル モーターズ(GM)が上昇しました。この3社はテスラの急速充電網の利用でも2024年から協力します。また、ネットフリックス(NFLX)は、米国でのアカウント共有に対する対応強化を受けて、新規加入者数が増加していることが確認されて好感されました。

今週の米国株式

先週の米国市場では、昨年10月13日の安値3,491.58ポイントから20%上昇にあたる4,190ポイントを超えた水準を保っていることから、新たな強気相場入りしたのではないかという見方が紹介されていました。バリューエーションの高さや景気減速を背景に相場の先行きに慎重な見方も根強いものの、市場参加者は従来よりも強気に傾きつつあるようです。

ゴールドマンサックスは6/9(金)、S&P500指数の年末目標株価を従来の4,000ポイントから4,500ポイントに引き上げています。一部の超大型株のみが主導していた年初来の上昇の幅が広がっていることを理由に挙げています。一方、モルガンスタンレーは、企業利益の下方修正を見込んで弱気を維持しており、市場でも見方は割れているようです。筆者は慎重な見方を維持しますが、過去1ヵ月の経緯を考慮して、S&P500指数で4,000ポイントを割り込むような深い押しはないと見方を変えます。

今週の株価材料として、5月の消費者物価指数と生産者物価指数、6月FOMC(米連邦公開市場委員会)、S&P500指数の52週高値更新なるか、などが注目されます。

6/13(火)に5月消費者物価指数、6/14(水)に同生産者物価指数が発表予定で、いずれもFOMCの結果発表前のため、結果に影響を与える可能性があります。

消費者物価指数の総合指数は前年比4.1%増の予想(前月は同4.9%増)、コア指数は同5.2%増の予想(前月は同5.5%増)、生産者物価指数の総合指数は前年比1.5%増の予想(前月は同2.3%増)、コア指数は同2.9%増の予想(前月は同3.2%増)と、いずれもインフレの低下を示すと予想されています。

6月FOMCについては据え置きか0.25%の利上げかでここ1ヵ月市場予想が大きく変化してきました。予想を元に構築されたポジションが溜まっているとみられ、株式市場へのインパクトが大きくなりやすいと考えられます。日本時間6/12(月)午前10時のFedWatchでは、6月が据え置きの確率が76%、0.25%引き上げの確率が24%となっています。

5月初めにはパウエルFRB議長が据え置きを示唆したため、据え置きの確率が90%を超えていました。しかし、その後に金融当局者のタカ派発言が続いたことから、一旦は利上げとなる確率が67%まで上昇、しかし、先週に発言した金融当局者は据え置きを示唆して、再び据え置きの確率が76%まで上昇しています。

7月FOMCまでの予想(日本時間6/12(月)午前10時)については、上限金利が5.50%(6月据え置きかつ7月0.25%、または、6月0.25%かつ7月据え置き)の確率が54%、同じく5.25%(6月、7月とも据え置き)の確率が33%、同じく5.75%(6月、7月とも0.25%)の確率が13%となっています。

S&P500指数の52週高値は、2022年8月16日の4,325.28ポイントです。6/9(金)終値の4,298.86ポイントは高値まで0.6%に迫っていますが、勢いよく更新できるか注目されます。

経済指標では上記のほか、6/15(木)に中国の5月鉱工業生産(前年比3.5%増の予想、前月は同5.6%増)、同小売売上高(前年比13.7%増の予想、前月は同18.4%増)、米国の5月小売売上高(前月比0.1%減の予想)、6/16(金)に米国の6月ミシガン大学消費者信頼感(前月の59.2から60.1に改善の予想)、などが発表予定です。

今週の5銘柄

今回はエヌビディアの2-4月期決算リリースで、データセンター分野のハイライトに言及されているAI関連銘柄をご紹介いたします。

以下、同リリースからの抜粋(順序はリリース通り)です。

・エヌビディアの「H100 Tensor Core GPU」をベースに新製品・サービスを提供するパートナーを拡大した。同パートナーには、アマゾン・ウェブ・サービス(アマゾンドットコム(AMZN))、グーグル・クラウド・サービス(アルファベット(GOOGL))、マイクロソフト・アジュール(マイクロソフト(MSFT))、オラクル・クラウド・インフラストラクチャ(オラクル(ORCL))を含む(銘柄名は著者の加筆です)。

・エンタープライズITにわたる生成AIを構築するためにサービスナウ(NOW)と提携した。

・医療機器向けのAIプラットフォームを構築するためにメドトロニック(MDT)との協業を発表した。

・企業による信頼できる生成AIアプリケーションの構築、展開をサポートするソリューションを提供する「プロジェクトヘリックス」をデル テクノロジーズ C(DELL)と立ち上げた。

・企業によるAIイニシアチブを加速できるよう、エヌビディアのエンタープライズソフトウェアをマイクロソフト(MSFT)のアジュール・マシーン・ラーニングに統合することを発表した。

これらの銘柄から、提携のインパクトが大きいと考えられるもの、また、提携に意外性のあるものを中心に5銘柄選んでいます。

図表3 エヌビディアの決算リリースで提携で言及された銘柄

銘柄名(コード) 株価
5/24
(ドル)
株価
6/9
(ドル)
騰落率
(%)
予想PER
(倍)
時価総額
(億ドル)
サービスナウ(NOW) 502.55 534.03 6.3 53.7 1,088
デル テクノロジーズ C(DELL) 45.91 47.61 3.7 8.6 347
オラクル(ORCL) 98.32 109.85 11.7 20.1 2,966
マイクロソフト(MSFT) 313.85 326.79 4.1 30.9 24,298
メドトロニック(MDT) 87.49 83.73 -4.3 16.6 1,114

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(6/9)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートサービスナウ(NOW)534.03ドル56.2

【同社事業はAIとの親和性が高い】

・5/17(水)に発表されたリリースで、生成AIの分野でエヌビディアと提携を結んだことが発表されています。サービスナウはエヌビディアのソフトウェア、サービス、インフラを使って、サービスナウのプラットフォームのデータを用いてトレーニングした大規模言語モデルを開発します。

・企業向けにワークフローをデジタル化するサービスを主力に、人事、法務、経理などのサービスをクラウド経由で提供する企業です。どのようなデジタル・トランスフォーメーションにおいても需要なパーツとなる、ワークフローオートメーションに対する需要拡大の恩恵を受ける会社で、クラウドソフトウェアの同業を上回る成長が期待されています。ワークフローの自動化サービスとAIとの親和性が高いと判断されて、エヌビディアに同分野の提携先として選ばれたとみられます。

買付チャートデル テクノロジーズ C(DELL)47.61ドル8.6

【生成AI利用のオンプレミスでの対応で提携】

・5/23(火)のリリースで、同社とエヌビディアが協力してオンプレミス(自社内のITシステム上で)で生成AIを利用する企業向けにインフラストラクチャとソフトウェアを提供する「プロジェクトヘリックス」を立ち上げることが発表されています。生成AIを利用したいが、どうしていいかわからない企業向けに包括的なサポートを行います。2023年7月から提供予定です。

・PC販売でレノボ、HPに次ぐ世界3位。2016年にEMCを買収して法人向けを強化、2021年には仮想化ソフトウェアのVMウェアを分離しました。PC、サーバー、ストレージ、ソフトウェアを包括的に提供します。2023年1月期の売上構成比は、クライアントソリューショングループ(PC販売)が57%、インフラストラクチャ・ソリューション・グループ(サーバー、ネットワーキング、ストレージ)が37%、その他事業が6%を占めます。

買付チャートオラクル(ORCL)109.85ドル19.8

【エヌビディアのH100を導入】

・3/22(水)のリリースで、同社の「オラクル・クラウド・インフラストラクチャ」(OCI)でエヌビディアのAIコンピューティングチップ「H100 Tensor Core GPU」の計算力を利用できることが発表されています。同リリースでオラクルは、OCIは複数の生成AIスタートアップや大企業から次世代AIモデルの構築にベストなプラットフォームと認められているとコメントしています。

・マイクロソフトに次ぐ世界第2位のソフトウェア企業で、法人向けデータベース管理システムのOracle Databaseは世界トップです。2022年5月期の売上構成比は、インフラストラクチャ・クラウドサービス&ライセンスサポートが41%、アプリケーション・クラウドサービス&ライセンスサポートが30%、クラウドライセンス&オンプレミスライセンスが14%、サービスが8%、ハードウェアシステムが7%となっています。6/12(月)引け後に3-5月期決算を発表予定です。

買付チャートマイクロソフト(MSFT)326.79ドル29.7

【アジュール・マシン・ラーニングに組み込まれる】

・5/23(火)のリリースで、エヌビディアの「AIエンタープライズ」(エヌビディアのAIプラットフォームのソフトウェア部分)をマイクロソフトの「アジュール・マシン・ラーニング」に組み込まれることが発表されました。これによって企業向けクラウドサービスのアジュールを利用する大企業が自社のAIイニシアチブを加速することができる見込です。

・マイクロソフトは、AIの関連度合いに関して、エヌビディアに次いで最も大きい企業の一つと考えられます。「ChatGPT」をネット検索サービス「Bing」に導入してシェア拡大を目指し、「ChatGPT」を開発したOpenAIにも出資していることが注目されます。また、同社の幅広いソフトウェアにAI技術を組み込んでいくことが期待されています。

買付チャートメドトロニック(MDT)83.73ドル16.6

【プラットフォームにエヌビディアのAI技術を組み込む】

・3/22(水)のリリースで、エヌビディアのAIテクノロジー「Holoscan」をコスモファーマシューティカルズが開発してメドトロニックのプラットフォームで提供する、「GI Genius」(インテリジェント内視鏡モジュール)に組み込むことが発表されました。最新のAIアプリケーションが臨床環境に導入されるのに役立ちます。

・医療機器メーカーの大手です。主に心疾患、糖尿病、脊椎疾患などの各種医療機器や手術支援システムを展開します。心臓ペースメーカーでは世界首位です。5/25(木)に発表された2-4月期決算で売上ガイダンスが弱かったことから株価は大幅な値下がりとなりましたが、ガイダンスは保守的となっている可能性があることが指摘されています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、サービスナウが2023年12月期、デルテクノロジーズが2024年1月期、オラクルが2024年5月期、マイクロソフトが2024年6月期、メドトロニックは2024年4月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
12(月) ・日本工作機械受注(5月) オラクル
13(火) ・独ZEW景気指数(6月)
・米NFIB中小企業楽観指数(5月)

・米消費者物価指数(5月)
 
14(水) ・ユーロ圏鉱工業生産(4月)
・米生産者物価指数(5月)
・米FOMC政策金利
 
15(木) ・中国鉱工業生産・小売売上高(5月)
・ECB主要政策金利
・米小売売上高(5月)
・米新規失業保険申請件数(6月10日に終わる週)
・米ニューヨーク連銀製造業景気指数(6月)
・米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(6月)

・米鉱工業生産(5月)
アドビ
16(金) ・日銀政策金利
・ミシガン大学消費者信頼感(6月)

・トリプルウィッチング
(株価指数先物・オプションの取引期限満了日)
クローガー
19(月) ・米国市場休場(ジューンティーンス)
・NAHB住宅市場指数(6月)
 
20(火) ・米住宅着工件数・建設許可件数(5月) フェデックス
21(水) ・EU27ヵ国新車登録台数(5月) レナー
22(木) ・シカゴ連銀全米活動指数(5月)
・米新規失業保険申請件数(6月17日に終わる週)
・米中古住宅販売件数(5月)
アクセンチュア
23(金) ・auじぶん銀行日本製造業PMI(6月)
・S&Pグローバル米国製造業PMI(6月)
カーニバル

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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