アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~エヌビディア、イーライリリィなど業績モメンタムが改善予想の銘柄~
投資情報部 榮 聡
2023/07/18
先週は雇用統計でピークアウトした米10年国債利回りが物価指標の発表を受けて低下を続け、株式相場は大幅続伸となりました。今週の株価材料として、4-6月期決算発表、6月小売売上高、6月住宅指標、などが注目されます。
今回は4-6月期に業績モメンタムの改善が見込まれている銘柄から、エヌビディア(NVDA)、イーライ リリィ(LLY)、メルク(MRK)、ゼネラル モーターズ(GM)、マクドナルド(MCD)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
先々週は強い経済指標で、先週はインフレ沈静でと、上昇基調が続いています。上昇過熱感を冷ましながらの上昇となっています。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は7/10(月)終値から7/17(月)終値によります。)
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
情報技術 | 4.2% | 3.5% | 21.4% |
コミュニケーションサービス | 3.6% | 2.0% | 13.6% |
一般消費財・サービス | 3.5% | 5.8% | 19.3% |
素材 | 2.6% | 2.4% | 2.3% |
S&P500 | 2.6% | 2.6% | 8.9% |
金融 | 2.5% | 3.4% | 4.0% |
公益事業 | 1.5% | -1.1% | -4.6% |
不動産 | 1.4% | 2.8% | 2.8% |
資本財・サービス | 1.2% | 3.8% | 8.3% |
生活必需品 | 0.9% | -0.1% | -1.6% |
ヘルスケア | 0.8% | -0.5% | -2.5% |
エネルギー | -0.3% | 0.9% | -6.0% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
エヌビディア | 10.1% |
ブッキング・ホールディングス | 8.1% |
テスラ | 7.7% |
セールスフォース | 7.1% |
アルファベット | 7.0% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
AT&T | -11.4% |
ベライゾン・コミュニケーションズ | -10.5% |
フォード・モーター | -6.5% |
オールステート | -4.1% |
メルク | -4.0% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間(7/14(金)に終わる1週間)で2.4%、NYダウは2.3%、ナスダック指数は3.3%の大幅続伸となりました。
7/7(金)の雇用統計を契機に4%台まで上昇していた米10年国債利回りがピークアウト。7/12(水)の消費者物価指数、7/13(木)の生産者物価指数とも前年比の上昇率が市場予想を下回って国債利回り低下が続き、株式相場を押し上げる要因となりました。一方、7/14(金)にはミシガン大学消費者信頼感(速報値)の1年先期待インフレ率が予想を上回って、米10年国債利回りが反発に転じています。
業種指数では、米10年国債利回りが反落基調となったことから、成長企業に対する物色が強まり、これら銘柄を多く含む「情報技術」「コミュニケーションサービス」「一般消費財・サービス」の上昇が大きくなっています。一方、「ヘルスケア」「生活必需品」などのディフェンシブが劣後しています。
個別銘柄では、通信サービスのAT&T(T)、ベライゾン コミュニケーションズ(VZ)が揃って大きく下落したのが目立っています。 ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が、7/10(月)に両社は有毒な鉛に覆われたケーブル網を全米に残していると報道したことが要因とみられます。この報道を受けて、いまのところ推定が難しい財務リスクを考慮して投資判断を引き下げるアナリストも出ています。
経済指標では、6月消費者物価指数が総合指数は前月の前年比4.0%増から同3.0%増(市場予想は同3.1%増)に低下、コア指数も前月の同5.3%増から同4.8%増(市場予想は同5.0%増)に低下しました。インフレ沈静化のトレンドを示して、株式にポジティブに作用しました。
今週の米国株式
S&P500指数は上昇過熱感を冷ましながら力強い上昇となっています。インフレの低下で長期金利が下がる一方、経済指標は堅調と、株価が上昇しやすい環境が背景と言えます。
一方、S&P500指数の予想PERは20倍を超え(7/17(月)は20.6倍)、なかなか説明がしづらい水準と考えられます。説明可能となるのは「AIの普及が今後の経済成長、業績成長を従来考えられていた水準から押し上げる」とのシナリオです。現在の上昇基調が持続可能かどうかについては、このシナリオの妥当性がポイントになるでしょう。
今週の株価材料として、4-6月期決算発表、6月小売売上高、6月住宅指標、などが注目されます。
4-6月期の決算発表は2週目に入ります。S&P500指数採用企業の4-6月期EPSは前年同期比7.1%減と低調となる見込みです。一方、先行きに関しては7-9月期が同0.1%増、10-12月期が同7.6%増と業績モメンタムは改善の方向が予想されています。実際にそのようなガイダンスが出てくるか注目されます。
個別では、7/18(火)のバンクオブアメリカ、7/19(水)のテスラ、IBM、7/20(木)のネットフリックス、台湾セミコンダクター、ジョンソン&ジョンソン、などが注目されます。
米小売売上高は4月の前月比0.4%増、5月の同0.3%増に続いて6月は同0.5%増が予想されています。市場の目線は、「個人消費はいつから鈍化が始まるのか?」であると見られるため、6月も消費は堅調が確認されると相場一段高の材料となり得るでしょう。
米国の住宅関連指標は5月分が大きく伸びたものが多く、6月分はその反動減が見込まれています。しかし、予想を上回るようなら、住宅関連への物色が強まる可能性があるでしょう。
経済指標では、7/18(火)に米国の6月小売売上高(前月比0.5%増の予想)、7/19(水)に米国の6月住宅着工件数(前月比9.3%減の予想、前月は同21.7%増)、同住宅建設許可件数(前月0.2%増の予想)、7/20(木)に米国の6月中古住宅販売件数(前月比2.2%減の予想)、などが発表の予定です。
今週の5銘柄
今回は4-6月期決算発表を迎えるにあたり、業績のモメンタムの加速が見込まれている銘柄をご紹介いたします。
業績モメンタムは、「4-6月期の売上・EPSの前年同期比伸び率 - 1-3月期の売上・EPSの前年同期比伸び率」で測ります。
S&P100指数採用銘柄について、売上のモメンタムが4%ポイント以上改善すると予想されている銘柄を図表3にリストアップしています。
ここから、過去3ヵ月の今期予想EPSの修正動向、目標株価からの乖離率なども勘案して、エヌビディア(NVDA)、イーライ リリィ(LLY)、メルク(MRK)、ゼネラル モーターズ(GM)、マクドナルド(MCD)を選んでご紹介いたします。
なお、業績モメンタムはM&A(事業買収や事業の切り離し)の動きによっても影響を受けますが、明らかに大規模なM&Aによってモメンタムが変化しているケース(AT&TやAIGなど)は除いています。
図表3 1-3月期から4-6月期に業績モメンタム改善が予想されている銘柄
コード | 銘柄名 | 売上 モメンタム 1-3月期⇒ 4-6月期 |
EPS モメンタム 1-3月期⇒ 4-6月期 |
売上 増加率 4-6月期 |
EPS 増加率 4-6月期 |
売上 増加率 1-3月期 |
EPS 増加率 1-3月期 |
EPS 修正率 (3ヵ月) (%) |
目標株価 乖離率 (%) |
NVDA | エヌビディア | 77.7 | 321.0 | 64.5 | 301.2 | -13.2 | -19.9 | 97.3 | 7.2 |
LLY | イーライリリー | 27.2 | 101.4 | 16.3 | 59.8 | -10.9 | -41.5 | 6.1 | 3.8 |
TSLA | テスラ | 20.0 | 28.1 | 44.4 | 7.3 | 24.4 | -20.8 | -8.2 | -15.8 |
INTC | インテル | 14.8 | - | -21.3 | 赤字転換 | -36.2 | 赤字転換 | -192.3 | -4.3 |
TMO | サーモフィッシャーサイエンティフィック | 9.6 | 29.3 | 0.2 | -1.3 | -9.4 | -30.6 | -3.0 | 17.8 |
BLK | ブラックロック | 8.0 | 31.1 | -1.7 | 14.4 | -9.7 | -16.7 | -0.1 | 10.1 |
MRK | メルク | 8.0 | 33.7 | -0.9 | -0.9 | -8.9 | -34.6 | 2.3 | 14.7 |
GM | ゼネラル・モーターズ(GM) | 7.0 | 51.1 | 18.1 | 56.8 | 11.1 | 5.7 | 14.0 | 18.7 |
GILD | ギリアド・サイエンシズ | 6.6 | 41.9 | 3.0 | 6.5 | -3.6 | -35.4 | -2.5 | 19.9 |
PM | フィリップ・モリス・インターナショナル | 6.6 | 11.0 | 11.2 | -0.5 | 4.6 | -11.5 | -7.3 | 12.3 |
MCD | マクドナルド | 5.1 | -7.1 | 9.2 | 8.2 | 4.1 | 15.4 | 3.8 | 7.0 |
META | メタ・プラットフォームズ | 5.0 | 37.2 | 7.6 | 18.1 | 2.6 | -19.1 | -6.4 | -4.8 |
CMCSA | コムキャスト | 4.6 | -10.8 | 0.4 | -3.9 | -4.3 | 7.0 | -0.2 | 10.1 |
ABT | アボットラボラトリーズ | 4.4 | 13.6 | -13.7 | -26.9 | -18.1 | -40.5 | -1.6 | 14.7 |
注:データは7/12(水)時点です。エヌビディアは2-4月期実績と5-7月期予想によります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (7/17) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | エヌビディア(NVDA) | 464.61ドル | 59.6 | 【生成AI向けコンピュータ需要が急増】 ・売上の前年同期比増加率は、2-4月期の13%減から5-7月期の78%増へ大幅な改善が見込まれています。生成AIのトレーニング用にGPUを使ったコンピュータ「H100」の需要が急増しているためです。 ・業界では同コンピュータの製造原価は売値(約4万ドル)の100分の1以下なのではないかと言われており、つまり、付加価値の大部分はエヌビディアが保有するAI計算向けソフトウェアに帰属する可能性があります。その場合は、売上急増は同社に特異な現象と考えられます。 | |
買付 | イーライ リリィ(LLY) | 447.14ドル | 51.5 | 【新世代の糖尿病治療薬が伸びる】 ・売上の前年同期比増加率は、1-3月期の11%減から4-6月期に16%増へ改善する予想です。1-3月期は新型コロナの抗体薬の減少が売上を押し下げており、これを除く伸びは10%増でした。 ・新世代の糖尿病治療薬が順調に伸びていることが表面化します。また、同薬は肥満治療に効果が高いことも実証されており、今年中に承認されると期待されています。直近の株価下落は、市場の物色が景気敏感株に物色が向かったことが主因とみられます。また、エーザイ/バイオジェンのアルツハイマー治療薬がFDAのフル承認を受けたことが影響している可能性もあります。 | |
買付 | メルク(MRK) | 105.57ドル | 15.1 | 【「キイトルーダ」が順調に伸びる】 ・売上の前年同期比増加率は、1-3月期の9%減から4-6月期に1%減に改善の見込みです。1-3月期の減収は新型コロナ治療薬「ラゲブリオ」の減少が主因で、これを除く売上の伸びは11%増でした。同社の成長をけん引するがん免疫治療薬「キイトルーダ」は前年同期比20%増、子宮頸がんワクチン「ガーダシル/ガーダシル9」は同35%増と順調です。 ・4-6月期は「ラゲブリオ」減収の影響が低下して増収率が改善する見込みです。それでも1%減収と伸びが低いのは、糖尿病治療薬がジェネリック発売の影響で減少するためです。ただ、これも影響は徐々に低下していく見込みです。 | |
買付 | ゼネラル モーターズ(GM) | 38.75ドル | 5.5 | 【サプライチェーン問題の緩和で販売が伸びる】 ・売上の前年同期比増加率は、1-3月期の11%増から4-6月期の18%増に改善する見通しです。米国の自動車販売は、サプライチェーン問題の緩和とともに提供できる車種の幅が広がり、4月、5月、6月とも年率換算1,500万台超えと好調です。同社もその恩恵を受けていると考えられます。 ・1-3月期の決算では、売上・EPSとも市場予想を上回り、通期の営業利益見通しを従来の105~125億ドルから110~130億ドルに引き上げています。 | |
買付 | マクドナルド(MCD) | 294.68ドル | 26.6 | 【米国でシェアが拡大】 ・売上の前年同期比増加率は、1-3月期の4%増から4-6月期の9%増に改善の見込みです。デジタル注文の広がりとバリュー商品の提供によって米国市場でシェア拡大が続いています。中国では制限要因の低下で改善基調が期待されます。 ・1-3月期決算は、既存店売上が米国、海外市場とも前年同期比13%増、売上は同4%増(為替の影響を除いて同8%増)、営業利益が同10%増、調整後EPSが同15%増と好調でした。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディアが2024年1月期、その他は2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
17(月) | ・中国実質GDP(4-6月期) ・中国鉱工業生産・小売売上高(6月) ・ニューヨーク連銀製造業景気指数(7月) |
|
18(火) | ・米小売売上高(6月) ・米鉱工業生産(6月) ・米NAHB住宅市場指数(7月) |
バンクオブアメリカ、モルガンスタンレー、ロッキードマーチン |
19(水) | ・EU27ヵ国新車登録台数(6月) ・米住宅着工件数・建設許可件数(6月) |
IBM、テスラ、ASMLホールディングス、ゴールドマンサックス |
20(木) | ・米新規失業保険申請件数(7月15日に終わる週) ・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(7月) ・米中古住宅販売件数(6月) |
ジョンソン&ジョンソン、ネットフリックス 台湾セミコンダクター、インチュイティブサージカル フィリップモリスインターナショナル、DRホートン、アメリカン航空 |
21(金) | アメリカンエキスプレス、シュルンベルジェ | |
24(月) | ・auじぶん銀行日本製造業PMI(7月) ・米シカゴ連銀全米活動指数(6月) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(7月) |
ドミノピザ |
25(火) | ・ドイツIFO企業景況感(7月) ・米S&Pコアロジック住宅価格(5月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感(7月) |
マイクロソフト、ビザ、3M、ベライゾンコミュニケーションズ バイオジェン、ゼネラルエレクトリック、ゼネラルモーターズ ムーディーズ、MSCI、ネクステラエナジー |
26(水) | ・米FOMC政策金利 ・米新築住宅販売件数(6月) |
アルファベット、メタプラットフォームズ、コカコーラ AT&T、ボーイング、ブリティッシュアメリカンタバコ サービスナウ、ラムリサーチ、ヒルトンワールドワイド |
27(木) | ・中国工業部門利益(6月) ・ECB主要政策金利 ・米実質GDP(4-6月期、速報値) ・米耐久財受注(6月) ・米新規失業保険申請件数(7月22日に終わる週) ・米中古住宅販売成約(6月) |
インテル、アッヴィ、マクドナルド |
28(金) | ・日銀政策金利 ・米個人所得・個人支出(6月) ・米個人消費支出物価指数(6月) ・米ミシガン大学消費者信頼感(7月) |
アマゾンドットコム、P&G、シェブロン、エクソンモービル |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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