アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~JPモルガン、ユナイテッドエアラインズ、J&Jほか決算で注目の銘柄~

投資情報部 榮 聡
2023/07/24
先週は米10年国債利回りの低下が一服したことを受けて、週後半にかけてS&P500指数は頭打ちとなりました。今週の株価材料として、4-6月期決算発表、FOMC(米連邦公開市場委員会)、4-6月期実質GDP(速報値)、などが注目されます。
今回は7/20(木)までに発表された4-6月期決算で好調と考えられるものから、JPモルガン チェース(JPM)、M&Tバンク(MTB)、チャールズシュワブ(SCHW)、ユナイテッド エアラインズ(UAL)、ジョンソン & ジョンソン(JNJ)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

米10年国債利回りの低下が一服したことを受けて頭打ちとなっています。今週はFOMCやテクノロジー大手の決算がありますので、波乱の展開となる可能性にも注意が必要でしょう。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
エネルギー | 3.5% | 8.4% | -2.8% |
ヘルスケア | 3.5% | 3.1% | 0.9% |
金融 | 3.0% | 7.6% | 6.4% |
公益事業 | 2.4% | 5.2% | -2.2% |
生活必需品 | 1.6% | 2.3% | -1.2% |
資本財・サービス | 0.9% | 6.0% | 8.6% |
S&P500 | 0.7% | 4.3% | 9.7% |
素材 | 0.6% | 5.0% | 3.1% |
情報技術 | -0.1% | 4.2% | 21.2% |
不動産 | -0.5% | 7.4% | 4.2% |
一般消費財・サービス | -2.3% | 3.1% | 16.5% |
コミュニケーションサービス | -3.0% | 0.3% | 13.0% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
バンク・オブ・アメリカ | 9.9% |
モルガン・スタンレー | 9.6% |
オールステート | 9.5% |
USバンコープ | 8.7% |
ゴールドマン・サックス・グループ | 7.9% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
テスラ | -7.6% |
フォード・モーター | -7.0% |
メタ・プラットフォームズ | -4.7% |
アメリカン・タワー | -4.7% |
アルファベット | -4.3% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.7%、NYダウは2.1%の上昇、ナスダック指数は0.6%の下落となりました。
週前半の7/19(水)までは米10年国債利回りの低下が続く中、経済指標は堅調で(予想を上回る7月ニューヨーク連銀製造業景気指数、3ヵ月連続でプラスの6月小売売上高)、AI関連の相場刺激材料(マイクロソフトの生成AI機能の提供、アップルの生成AI開発)も出て上昇が続きました。
一方、7/20(木)には前日引け後に決算を発表したテスラとネットフリックスが大幅に下落してテクノロジー株に波及したほか、新規失業保険申請件数が予想を下回ったことを受けて米10年国債利回りが上昇に転じたことから、反落となりました。7/21(金)も相場上昇をけん引してきた銘柄群に利食いが出て、高値警戒を反映した動きとなりました。
業種指数では、年初来の上昇率がマイナスないし数%以下と、S&P500指数の18%上昇に対して出遅れが著しい「エネルギー」「ヘルスケア」「金融」「公益事業」が上位となっています。大手テクノロジー銘柄の構成比が大きい、「コミュニケーションサービス」「一般消費財・サービス」が下落しました。
個別銘柄では、4-6月期決算を発表をしたテスラ(TSLA)の下落が大きくなりました。年初から数次にわたる値下げによって粗利率が低下、粗利率の低下はわかっていたことですが、市場予想も下回ったことが嫌気されたとみられます。4-6月期決算自体は、売上が前年同期比47%増、EPSが同20%増となって市場予想を上回っています。
経済指標では、6月小売売上高が前月比0.2%増と市場予想の同0.5%増を下回りました。ただ、4月の同0.4%増、5月の同0.5%増に続いて3ヵ月連続のプラスとなったことから、個人消費は引き続き堅調と捉えられました。
今週の米国株式
S&P500指数はもみ合いを放れ、力強い上昇となってきました。インフレの低下で長期金利が下がる一方、経済指標は堅調と、株価が上昇しやすい環境が背景と言えます。
一方、予想PERは、7/21(金)に20.8倍となかなか説明がしづらい水準と考えられます。説明可能となるのは「AIの普及が今後の経済成長、業績成長を従来考えられていた水準から押し上げる可能性がある」とのシナリオです。現在の上昇基調が持続可能かどうかは、このシナリオの妥当性を検討していく必要があるでしょう。
今週の株価材料として、4-6月期決算発表、FOMC(米連邦公開市場委員会)、4-6月期実質GDP(速報値)、などが注目されます。
4-6月期の決算発表は3週目で佳境を迎えます。マイクロソフト、アルファベット、メタプラットフォームズなどのテクノロジー大手が発表を予定しています。GAFAMのうち、アップルとアマゾンドットコムは8/3(木)と来週にずれています。
S&P500指数採用銘柄のEPS(既に発表された決算と今後発表される決算の混合)は、前年同期比9.0%減の予想です(FactSet社による集計)。先々週末から下方修正となっています。ネットフリックスやテスラの決算発表を受けてテクノロジー大手の業績予想が下方修正された可能性が考えられ、市場には警戒感があるとみられます。
FOMCでは、0.25%の利上げが確実と見込まれています。一方、FedWatchによると、本年末に7月の利上げで打ち止めとなる確率が65%、あと1回利上げとなる確率が24%(日本時間7/24(月)8:30)と見方がわかれています。金融当局者の多くがあと2回の利上げを主張しているのと乖離が生じていますので、引き続き相場へのインパクトが想定されるイベントと考えられます。
7/27(木)に発表される米国の4-6月期実質GDPは、1-3月期の前期比年率2.0%増から同1.8%増へ若干の成長率低下が予想されています。ただし、今年初めには急速な利上げを受けてもっと低下すると予想されていたため、想定外に強いとの印象となっています。
経済指標では上記のほか、7/25(火)に米国の7月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の109.7から112に改善の予想)、7/26(水)に米国の6月新築住宅販売件数(前月比5.0%減の予想、前月は同12.2%増)、7/27(木)に米国の6月耐久財受注(前月比1.0%増の予想)、7/28(金)に米国の6月個人消費支出物価指数(総合指数は前年比3.0%増の予想、前月は同3.8%増、コア指数は前年比4.2%増の予想、前月は同4.6%増)、などが発表の予定です。
今週の5銘柄
今回はこれまでに発表された4-6月期決算から、好調なものをご紹介いたします。
7/20(木)までに決算発表を行ったS&P500指数の採用銘柄から、売上・EPSとも市場予想を上回ったものを図表3にリストアップしています。
好調な銘柄のまとまりとしては、大手銀行、航空、ヘルスケア大手などがあげられます。これら銘柄から、決算を受けた株価の反応も勘案して、JPモルガン チェース(JPM)、M&Tバンク(MTB)、チャールズシュワブ(SCHW)、ユナイテッド エアラインズ(UAL)、ジョンソン & ジョンソン(JNJ)を選んでご紹介いたします。
図表3 実績が市場予想を上回った好決算銘柄(7/13(木)~7/20(木)に発表のS&P500指数採用銘柄が対象)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (7/21) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | JPモルガン チェース(JPM) | 154.95ドル | 9.9 | 【市場予想を大幅に上回る好決算】 4-6月期は市場予想を大幅に上回る増収増益でした。いずれの部門も市場予想を上回りましたが、特にコンシューマー&コミュニティバンキングとコマーシャルバンキングが予想を上回る決算に貢献しています。通期の業績に関しては純金利収入のガイダンスを4月の810億ドルから870億ドルに引き上げました。また、破綻したファーストリパブリックを買収した後も高い自己資本比率が維持されていることが確認されています。 | |
買付 | M&Tバンク(MTB) | 137.86ドル | 8.7 | 【地銀破綻の影響軽微】 ニューヨーク州バッファロー地盤の地方銀行で、2022年4月にピープル・ユナイテッド・ファイナンシャル買収完了して営業エリアを隣接地域に拡大しました。地方銀行の破綻を受けて株価は大きく売られましたが、4-6月期決算は好調を維持していることが確認されました。保守的なバランスシートと顧客との強い関係によって地銀破綻の影響は軽微となっています。 | |
買付 | チャールズシュワブ(SCHW) | 66.48ドル | 20.7 | 【地銀破綻の余波から回復中】 米国最大のネット証券です。地銀破綻の余波を受けて金利収入が減少したことで4-6月期は減収減益ですが、市場予想は上回りました。預金流出のピークは超えたと見られ、今後の改善が期待されます。資産運用および管理手数料は前年同期比12%増、顧客資産の新規獲得は520億ドルに達し、コア事業は健全な推移となっています。 | |
買付 | ユナイテッド エアラインズ(UAL) | 57.61ドル | 5.3 | 【航空業界全体が業績好調】 4-6月期の売上は前年同期比17%増、EPSは同3.5倍と業績回復が継続、市場予想を上回りました。同業大手のデルタ航空、アメリカン航空も市場予想を上回る決算を発表しています。業績好調を受けて通期のEPSガイダンスを10~12ドルから11~12ドルへ下限を引き上げています。また、バランスシートの改善も、計画を上回って進んでいます。 | |
買付 | ジョンソン & ジョンソン(JNJ) | 170.19ドル | 15.9 | 【医薬品、メドテックとも予想を上回る】 4-6月期実績は、売上・EPSとも市場予想を上回りました。部門売上は、医薬品、メドテック、切り離し予定の消費者向けとも予想を上回りました。業績の好調を受けて通期の調整後売上ガイダンスを、従来の前年比4.5~5.5%増から同6.0~7.0%増に引き上げています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
24(月) | ・auじぶん銀行日本製造業PMI(7月) ・米シカゴ連銀全米活動指数(6月) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(7月) |
ドミノピザ |
25(火) | ・ドイツIFO企業景況感(7月) ・米S&Pコアロジック住宅価格(5月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感(7月) |
マイクロソフト、アルファベット、ビザ、3M ベライゾンコミュニケーションズ、バイオジェン ゼネラルエレクトリック、ゼネラルモーターズ、ムーディーズ MSCI、ネクステラエナジー |
26(水) | ・米FOMC政策金利 ・米新築住宅販売件数(6月) |
メタプラットフォームズ、コカコーラ、AT&T、ボーイング ブリティッシュアメリカンタバコ、サービスナウ ラムリサーチ、ヒルトンワールドワイド |
27(木) | ・中国工業部門利益(6月) ・ECB主要政策金利 ・米実質GDP(4-6月期、速報値) ・米耐久財受注(6月) ・米新規失業保険申請件数(7月22日に終わる週) ・米中古住宅販売成約(6月) |
インテル、アッヴィ、マクドナルド |
28(金) | ・日銀政策金利 ・米個人所得・個人支出(6月) ・米個人消費支出物価指数(6月) ・米ミシガン大学消費者信頼感(7月、確報値) |
P&G、シェブロン、エクソンモービル |
31(月) | ・日本鉱工業生産(6月) ・中国製造業・非製造業PMI(7月) ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、速報値) |
ズームインフォテクノロジーズ |
8月 1(火) |
・米建設支出(6月) ・米求人労働異動調査(6月) ・米ISM製造業景気指数(7月) ・米自動車販売台数(7月、2日までに発表) |
AMD、アルトリアグループ、ファイザー、メルク、スターバックス |
2(水) | ・米ADP雇用統計(7月) | ユニティソフトウェア、オキシデンタルペトロリアム ペイパルホールディングス |
3(木) | ・米チャレンジャー人員削減数(7月) ・米新規失業保険申請件数(7月29日に終わる週) ・米製造業受注(6月) ・米ISM非製造業景気指数(7月) |
アップル、アマゾンドットコム、バタフライネットワーク ブラジル石油公社、ワーナーブラザーズディスカバリー |
4(金) | ・米雇用統計(7月) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
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