アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~アルファベット、メタ、ボーイング、インテルほか決算で注目の銘柄~

投資情報部 榮 聡
2023/07/31
先週は経済指標の改善、物流大手UPSの大規模スト回避、堅調なテクノロジー決算、無風のFOMCなどを背景に上値を試す展開となりました。今週の株価材料として、4-6月期決算発表、雇用統計、米国の企業景況感、などが注目されます。
今回は7/21(金)~7/27(木)に発表された4-6月期決算で好調と考えられるものから、アルファベット A(GOOGL)、メタ プラットフォームズ A(META)、ボーイング(BA)、インテル(INTC)、マイクロソフト(MSFT)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

7/27(木)には日銀のYCC(イールドカーブコントロール)政策が変更の可能性との報道で動揺する場面がありましたが、引き続き上値を試している段階と捉えられます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
コミュニケーションサービス | 6.9% | 6.8% | 16.3% |
素材 | 1.8% | 2.8% | 5.8% |
エネルギー | 1.7% | 5.2% | 0.1% |
情報技術 | 1.3% | 2.5% | 19.4% |
一般消費財・サービス | 1.2% | 1.8% | 17.6% |
S&P500 | 1.0% | 3.0% | 9.9% |
生活必需品 | 0.7% | 2.5% | -1.1% |
資本財・サービス | 0.6% | 2.6% | 10.1% |
金融 | -0.2% | 4.2% | 6.1% |
ヘルスケア | -0.8% | 1.7% | 1.2% |
不動産 | -1.8% | 0.5% | 0.5% |
公益事業 | -2.1% | 2.3% | -2.8% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ボーイング | 12.7% |
メタ・プラットフォームズ | 10.6% |
アルファベット | 10.6% |
インテル | 8.3% |
ユニオン・パシフィック | 7.4% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
RTX | -9.4% |
ハネウェルインターナショナル | -6.5% |
ブリストル マイヤーズ スクイブ | -5.1% |
フォード・モーター | -4.8% |
ギリアド・サイエンシズ | -4.7% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で1.0%、NYダウは0.6%、ナスダック指数は2.0%の上昇となりました。
経済指標の改善、物流大手UPSの大規模スト回避、堅調なテクノロジー決算、無風のFOMCなどを背景に上値を試す展開となりました。7/27(木)には日銀のYCC(イールドカーブコントロール)政策が変更の可能性との報道で動揺する場面がありましたが、実際に変更が発表されると持ち直しました。
経済指標の改善では、米国の4-6月期実質GDPが1-3月期から予想外に加速したほか、グローバルPMIが製造業・非製造業とも前月から改善、IMFが世界の2023年成長率見通しを前年比2.8%から3.0%に引き上げました。
FOMCでは、政策金利が予想通り0.25%引き上げられ、声明文は前回とほぼ変わらずの内容で、パウエル議長の会見では、「9月政策はデータ次第」「年内の利下げはない」「インフレ率が2%に戻るのは2025年とみられる」などの発言がありました。
業種指数では、上位に決算が好調となったテクノロジー株を多く含む業種と景気敏感業種が混在する一方、ディフェンシブ業種が劣後しました。個別銘柄では、航空宇宙&防衛の旧レイセオンテクノロジーズ、RTX(RTX)の下落が大きくなりました。4-6月期の決算は予想を上回りましたが、通期のキャッシュフロー見通しを48億ドルから43億ドルに引き下げたことが嫌気されました。
経済指標では、4-6月期実質GDPが前期年率2.4%増と1-3月期の同2.0%増から加速、市場予想の同1.8%増を大きく上回りました。個人消費が前期比年率1.6%増と堅調で、住宅投資は同4.2%減と減少が続いたものの、非住宅投資(設備投資)が同7.7%増と加速して、全体を支える構図です。
今週の米国株式
S&P500指数はもみ合いを上放れ、力強い上昇基調となっています。インフレの低下で長期金利が下がる一方、経済指標は堅調と、株価が上昇しやすい環境が背景と言えます。
予想PERは、7/28(金)に21.0倍まで上昇しました。テクノロジー大手の決算が予想を上回り、株価の反応も概ね良好となっていることから、「AIの普及が今後の経済成長、業績成長を従来考えられていた水準から押し上げる可能性がある」とのシナリオが強まりつつあるようです。ただ、AI普及による足もとの業績へのインパクトは限定的であることから、高値に対する警戒は必要と考えられます。
今週の株価材料として、4-6月期決算発表、雇用統計、米国の企業景況感、などが注目されます。
4-6月期の決算発表は4週目に入り、アップル、アマゾンドットコム、AMDなど重要企業の決算発表が続きます。AMDはエヌビディアとともにAIコンピュータを提供できる企業ですので、AI関連の物色へのインパクトが想定されます。
S&P500指数採用銘柄のEPS(既に発表された決算と今後発表される決算の混合)は、前年同期比7.3%減の予想で、先々週末の同9.0%減から上方修正となっています(FactSet社による集計)。マイクロソフト、アルファベット、メタプラットフォームズとも市場予想を上回ったことが効いたとみられます。
8/4(金)に発表予定の7月雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比17.5万人増の予想、平均時給は前年比4.2%増の予想(前月は同4.4%増)です。緩やかな雇用減速とインフレの沈静化を示すと予想されており、予想に近い値となれば、株式相場に支援的となる見込みです。
8/1(火)に発表予定の7月ISM製造業景気指数は前月の46.0から46.9に改善の予想、8/3(木)に発表予定の7月ISM非製造業景気指数は前月の53.9から53.0に悪化の予想です。景気の先行指数と言われるISM製造業景気指数は昨年11月に50を割り込んでからも悪化傾向が続いてきましたが、ハードデータの悪化は足もとまで限定的です。いずれハードデータも悪化するのか、企業景況感のほうが想定より良好なハードデータにサヤ寄せの方向となるのか、注目されています。
経済指標では上記のほか、7/31(月)にユーロ圏の4-6月期実質GDP(前年比0.5%増の予想、1-3月期は同1.0%増)、8/2(水)に米国の7月ADP雇用統計(前月比18.3万人増の予想)、8/3(木)に米国の6月製造業受注(前月比2.1%増の予想)、などが発表の予定です。
今週の5銘柄
今回も4-6月期決算から、好調なものをご紹介いたします。
7/21(金)~7/27(木)に決算発表を行ったS&P500指数の採用銘柄から、売上・EPSとも市場予想を上回り、決算発表を受けた株価の反応も良好だったものを図表3にリストアップしています。
これら銘柄から、アルファベット A(GOOGL)、メタ プラットフォームズ A(META)、ボーイング(BA)、インテル(INTC)、マイクロソフト(MSFT)を選んでご紹介いたします。
図表3 予想を上回る決算で株価の反応も良かった主要銘柄
(7/21(金)~7/27(木)に発表のS&P500指数採用銘柄が対象)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (7/28) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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買付 | アルファベット A(GOOGL) | 132.58ドル | 22.4 | 【ネット広告が回復、AIワークロードにも期待】 4-6月期実績は、図表3の通り増収・増益で売上・EPSとも市場予想を上回りました。売上はネット広告の回復により、1-3月期の同4%増から同8%増に加速しています。部門別には、ネット広告、クラウドサービスとも売上・営業利益とも市場予想を上回りました。営業利益率は市場予想の27.6%に対して29.3%と大きく上回りました。クラウドサービスの営業利益は4億ドルと年間で10億ドルを超えるペースに向上しています。生成AIによるワークロードの増加から恩恵が期待されます。好調な決算を受けてアナリストの目標株価は150ドル以上への引き上げが目立ちました。 | |
買付 | メタ プラットフォームズ A(META) | 325.48ドル | 25.3 | 【ネット広告の回復が続く見通し】 4-6月期決算は、図表3の通り増収・増益で売上・EPSとも市場予想を上回りました。売上はネット広告の回復により、1-3月期の同3%増から同11%増に加速しています。7-9月期の売上高見通し(320-345億ドル)は市場予想を上回り、中間値の売上高見通しは前年比で20%増となり売上高成長率が改善する見通しです。ザッカーバーグCEOは「ラマ2(大規模言語モデル)、スレッズ(テキスト共有アプリ)、リール(短編動画サービス)等は非常にエキサイティングなロードマップであり、今年の秋にはMeta Quest3(VR・MRヘッドセット)が発売予定」とコメントしました。 | |
買付 | ボーイング(BA) | 238.69ドル | - | 【赤字拡大は一時的要因と捉えられよう】 4-6月期実績は、図表3の通り増収・減益となりましたが、売上・EPSとも市場予想を上回りました。民間航空機部門の売上は前年同期比41%増で大きく回復しました。ただ、依然として営業赤字ではあります。全体の赤字拡大の主因は、防衛、航空&セキュリティ部門の収益性悪化にあります。これは過去に固定価格で請け負った開発プログラムの費用が増加したことによるもので、過去数年たびたびこのようなケースがありました。しかし、基本的に一過性の事象と考えられます。民間航空機市場の回復は継続が見込まれるため、収益回復の基調は続くと期待されます。 | |
買付 | インテル(INTC) | 36.83ドル | 72.2 | 【業績は前四半期比改善の見通し】 4-6月期は、大幅減収・減益ながら、図表3の通り売上・EPSとも市場予想を上回りました。部門売上は、クライアントコンピューティングが前年同期比12%減、データセンター&AIが同15%減ながら、いずれも市場予想を上回りました。7-9月期ガイダンスは、売上が129~139億ドル、調整後EPSを0.20ドルで、4-6月期の売上129億ドル、調整後EPS0.13ドルから改善の見通しで、市場予想を上回りました。同社の株価はファウンドリービジネスの説明会後に下落していましたが、決算を受けた7/28(金)には6.6%上昇しています。 | |
買付 | マイクロソフト(MSFT) | 338.37ドル | 30.7 | 【4-6月期決算は堅調だった】 4-6月期決算は、売上が前年同期比8%増、EPSが同21%増と堅調で、売上・EPSとも市場予想を上回りました。しかし、7-9月期の売上見通しは538億-548億ドルとし、中央値の543億ドル(前年同期比8%増)が市場予想の549億ドルを下回って嫌気されました。4-6月期の部門別売上は、プロダクティビティ・アンド・ビジネス・プロセスが同10%増、インテリジェント・クラウドが同15%増、モア・パーソナル・コンピューティングが同4%減です。決算を受けた株価の反応が今一つなのは、AI関連で注目を集めて株価の上昇が大きくなっていたことも一因とみられます。内容の悪い決算ではなかったと考えられるので、徐々に持ち直すと期待されます。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
31(月) | ・日本鉱工業生産(6月) ・中国製造業・非製造業PMI(7月) ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、速報値) ・シニア・ローン・オフィサー・オピニオン・サーベイ |
ズームインフォテクノロジーズ |
8月 1(火) |
・米建設支出(6月) ・米求人労働異動調査(6月) ・米ISM製造業景気指数(7月) ・米自動車販売台数(7月、2日までに発表) |
AMD、アルトリアグループ、ファイザー、メルク、スターバックス |
2(水) | ・米ADP雇用統計(7月) | ユニティソフトウェア、オキシデンタルペトロリアム ペイパルホールディングス |
3(木) | ・米チャレンジャー人員削減数(7月) ・米新規失業保険申請件数(7月29日に終わる週) ・米製造業受注(6月) ・米ISM非製造業景気指数(7月) |
アップル、アマゾンドットコム、コインベースグローバル バタフライネットワーク、ブラジル石油公社 ワーナーブラザーズディスカバリー |
4(金) | ・米雇用統計(7月) | |
7(月) | ・米消費者信用残高(6月) | パランティアテクノロジーズ |
8(火) | ・中国貿易統計(7月) ・米NFIB中小企業楽観指数(2月) ・米貿易統計(6月) |
リビアンオートモーティブ、イーライリリィ |
9(水) | ・日本工作機械受注(7月) | ウォルトディズニー、キャノピーグロース |
10(木) | ・米消費者物価指数(7月) ・米新規失業保険申請件数(8月5日に終わる週) |
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11(金) | ・米生産者物価指数(7月) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
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