アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~アマゾン、キャタピラー、パーカーハネフィンほか決算で注目の銘柄~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~アマゾン、キャタピラー、パーカーハネフィンほか決算で注目の銘柄~

投資情報部 榮 聡

2023/08/07

先週は米国債の発行枠拡大計画の発表やこれを意識したとみられるフィッチ・レーティングスの米国債格下げを受けて米10年国債利回りが4%台に乗せ、高値警戒感のあった株式は利食いが優勢となりました。今週の株価材料として、消費者物価指数、金融当局者の発言、終盤を迎える4-6月期決算発表、などが注目されます。

今回は7/28(金)~8/3(木)に発表された4-6月期決算で好調と考えられるものから、アマゾン ドットコム(AMZN)キャタピラー(CAT)パーカーハネフィン(PH)ブッキング ホールディングス(BKNG)マリオット インターナショナル A(MAR)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数のローソク足(日足、3ヵ月)

先週末時点で25日移動平均線を割り込んでいます。今週も調整が続く場合には、下値目途として50日移動平均線のある、4,400ポイント近辺が意識されやすいとみられます。


※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
エネルギー 1.1% 7.1% 7.5%
一般消費財・サービス -0.2% 1.9% 17.7%
金融 -0.8% 3.8% 8.0%
資本財・サービス -1.8% 1.8% 8.7%
生活必需品 -1.9% 1.6% -2.6%
素材 -2.0% 2.8% 4.9%
ヘルスケア -2.1% 2.5% -1.0%
不動産 -2.2% -1.9% -0.9%
S&P500 -2.3% 1.8% 8.3%
コミュニケーションサービス -2.9% 4.1% 15.6%
情報技術 -4.1% -0.3% 13.7%
公益事業 -4.7% -2.3% -7.4%
騰落率上位(5日) 騰落率
キャタピラー 6.1%
アマゾン・ドット・コム 5.6%
チャーター・コミュニケーションズ 5.6%
エマソン・エレクトリック 5.0%
エクソンモービル 3.1%
騰落率下位(5日) 騰落率
ペイパル・ホールディングス -15.2%
アップル -7.1%
サザン -6.2%
クアルコム -6.2%
3M -5.7%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で2.3%、NYダウは1.1%、ナスダック指数は2.8%の下落となりました。

格付会社のフィッチ・レーティングスが8/1(火)引け後に米国の長期債格付けを「AAA」から「AA+ 」に引き下げたことを契機に、高値警戒感のあった株式市場で利食いが優勢となって8/2(水)に大きく下落しました。

(1)S&P500指数の予想PERは20倍を超えており、市場には高値警戒感があったこと、(2)2011年のS&Pによる同様の格下げ前後に株価が大きく下落した連想が働いたことで株価下落が大きくなったとみられます。

さらに、8/2(水)引け後に公表された米国債発行枠の拡大計画も重要な材料になったとみられます。このような動きが見込まれていたため、8/1(火)から米10年国債利回りは4%台に上昇し、また、フィッチの格下げもこのタイミングを選んで発表したとみられます。

一方、8/4(金)には7月雇用統計の非農業部門雇用者数が前月比18.7万人増と雇用市場の鈍化を示したことから、米10年国債利回りが低下して、株式は前日比上昇して始まりました。しかし、利食い優勢の流れは変わらず、結局前日比マイナスで引けました。

業種指数では、原油価格が堅調となっている「エネルギー」が唯一上昇の一方、配当利回りが高い「公益事業」、テクノロジー企業を多く含む「情報技術」「コミュニケーションサービス」の下落が大きくなりました。個別で大幅な下落となったペイパル ホールディングス(PYPL)は、4-6月期決算が嫌気されました。同社の決済プラットフォームを採用する事業者に対して貸出を増やしていますが、貸倒引当金の拡大が続いて営業利益率が予想を下回りました。

経済指標では、米国の7月ISM製造業景気指数が46.4で前月から改善、同ISM非製造業景気指数は52.7で前月から悪化と、前月からの方向性は市場予想に一致しましたが、水準はいずれも予想を下回りました。

今週の米国株式

米株式市場の調整は、米国債の発行枠拡大およびフィッチ・レーティングスによる米国債の格付け引き下げを受けて米10年国債利回りが4%台に乗せる中、S&P500指数の予想PERが20倍を超えているというバリュエーションの高さが気にされているとみられます。

ただし、足もとの米国株式のファンダメンタルズは良好であり、米国債格付け引き下げの影響はバリュエーションの調整に限定されると考えられることから、「持続的な下落相場」への転換とはならないとみられます。

今週の株価材料として、消費者物価指数、金融当局者の発言、終盤を迎える4-6月期決算発表、などが注目されます。

8/10(木)に発表予定の米国の7月消費者物価指数は、総合指数が前年比3.3%増の予想(前月は同3.0%増)、コア指数は前年比4.8%増の予想(前月は同4.8%増)です。総合指数の伸びが前月から高まり、コア指数も前月並みの予想で、インフレの鈍化の動きが停滞の見込みです。8/4(金)に発表の7月雇用統計でも平均時給は前年比4.4%増と6月分の数字に並びました。相場にはややマイナスとなりやすいとみられます。

8/7(月)のアトランタ連銀ボスティック総裁など、複数の金融当局者の発言が予定されています。金融市場は年内の利上げなしをメインシナリオとしているのに対して、FOMCメンバーの多くはあと1回の利上げが必要と考えているとみられます。両者に乖離が生じているため、引き続き金融当局者の発言が相場にインパクトを与える可能性があります。

S&P500指数採用銘柄の決算は84%が発表済みで、今週は終盤を迎えます。S&P500指数採用銘柄のEPS(既に発表された決算と今後発表される決算の混合)は、前年同期比5.2%減の予想で、先々週末の同7.3%減から上方修正となっています(FactSet社による集計)。

減益のまま着地しそうですが、減益寄与が大きいのは、前年同期比で原油価格が下落しているエネルギー、新型コロナ関連薬売上の反動減が出ているヘルスケアなどのため、足もとの景況感悪化を示しているわけではありません。

一方、業種で増益寄与が大きいのは、アマゾンドットコムの増益が貢献する一般消費財・サービス、通信サービスやネットメディアの貢献が大きいコミュニケーションサービスなどです。

経済指標では上記のほか、8/8(火)に中国の7月貿易統計(輸出は前年比12.6%減の予想、前月は同12.4%減、輸入は前年比5.3%減の予想、前月は同6.8%減)、8/11(金)に米国の7月生産者物価指数(総合指数は前年比0.7%増の予想、前月は同0.1%増、コア指数は前年比2.4%増の予想、前月は同2.4%増)、米国の8月ミシガン大学消費者信頼感(前月の71.6から71に悪化の予想)、などが発表の予定です。

今週の5銘柄

今回も4-6月期決算から、好調なものをご紹介いたします。

7/28(金)~8/3(木)に決算発表を行ったS&P500指数の採用銘柄から、売上・EPSとも市場予想を上回り、決算発表を受けた株価の反応も良好だったものを図表3にリストアップしています。

これら銘柄から、アマゾン ドットコム(AMZN)、キャタピラー(CAT)、パーカーハネフィン(PH)、ブッキング ホールディングス(BKNG)、マリオット インターナショナル A(MAR)を選んでご紹介いたします。

図表3 予想を上回る決算で株価の反応も良かった主要銘柄 (7/28(金)~8/3(木)に発表のS&P500指数採用銘柄が対象)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(8/4)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートアマゾン ドットコム(AMZN)139.57ドル42.7

【売上モメンタム改善に加えコスト削減が効く】

4-6月期決算は、売上の前年同期比伸び率が1-3月期の9%増から11%増に加速、コスト削減によって北米部門の営業利益が1-3月期の9億ドルから32億ドルに大きく改善して、市場予想を上回る決算となりました。7-9月期の売上ガイダンスも、前年同期比9~13%増相当の1,380~1,430億ドルで、市場予想の1,383億ドルを上回りました。クラウドサービスのAWSの売上の伸びは前年同期比12%増で、1-3月期の同16%増から鈍化しましたが、会社ガイダンスの同11%増を上回りました。8/4(金)の株価は8%以上の上昇となりました。

買付チャートキャタピラー(CAT)276.44ドル14.2

【北米市場が好調】

4-6月期決算は、図表3の通り売上・EPSとも市場予想を大きく上回りました。売上は数量、価格ともプラスに寄与して前年同期比22%増でした。増収効果によって営業利益率が前年同期の13.6%から21.1%に大幅改善、EPSの大幅増につながりました。売上が市場予想比で好調だったのは、北米市場です。建設、資源、エネルギー&トランスポテーションの3部門とも予想を上回りました。欧州・中東・アフリカ、アジア太平洋も予想を上回りました。部門別では、建設とエネルギー&トランスポテーションが予想を上回り、資源は予想並みでした。

買付チャートパーカーハネフィン(PH)414.15ドル18.6

【米国内の製造業投資拡大から恩恵】

産業用動力制御システムメーカーで、同分野では世界最大企業です。4-6月期実績はMeggit社の買収で押し上げられていますが、買収効果を除くオーガニック売上成長も前年同期比6%増と堅調でした。バイデン政権下で成立した米国の製造業投資拡大策から恩恵を受けているとみられます。2024年6月期のオーガニック売上成長は前年比3~6%増と2023年6月期の同11%増から鈍化のガイダンスですが、調整後EPSガイダンスを21.9~22.9ドルとして、市場予想の21.84ドルを上回りました。

買付チャートブッキング ホールディングス(BKNG)3063.16ドル21.5

【記録的な旅行シーズンを迎える】

4-6月期は、図表3の通り売上・EPSとも市場予想を上回ったほか、予約総額の同15%増、宿泊予約の同9%増も市場予想を上回りました。会社は「予約総額、宿泊予約は想定を上回って推移しており、この強さは7月に入っても継続している。われわれは記録的な旅行シーズンを迎えている。」とレジャー需要の強さについてコメントしています。また、PricelineとBooking.comで生成AIによる支援機能の提供を発表している点も注目されます。現在、同支援機能によって顧客が価値を認める要素は何であるかを見極めています。

買付チャートマリオット インターナショナル A(MAR)202.98ドル23.7

【世界的な経済再開から恩恵】

4-6月期決算は、図表3の通り売上・EPSとも市場予想を上回りました。世界的な経済再開の恩恵を受けています。販売可能な客室当たり収入は、前年同期比13.5%増、うち米国・カナダが同6.0%増、海外が同39.1%増と、海外の回復がけん引しています。市場予想を上回ったのも海外でした。通期のガイダンスは、販売可能な客室当たり収入を前年比12~14%増へ、前回の同10~13%増から引き上げています。客室数の増加も同6.4~6.7%増へ、前回の同約5.5%増から引き上げられ、拡大投資も順調です。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、パーカーハネフィンが2024年6月期、その他は2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
7(月) ・アトランタ連銀ボスティック総裁講演
・ボウマンFRB理事講演
・米消費者信用残高(6月)
パランティアテクノロジーズ、ビヨンドミート
8(火) ・中国貿易統計(7月)
・フィラデルフィア連銀ハーカー総裁講演
・米NFIB中小企業楽観指数(2月)
・米貿易統計(6月)
リビアンオートモーティブ、イーライリリィ
9(水) ・日本工作機械受注(7月) ウォルトディズニーキャノピーグロース
10(木) ・アトランタ連銀ボスティック総裁
・フィラデルフィア連銀ハーカー総裁講演
・米消費者物価指数(7月)

・米新規失業保険申請件数(8月5日に終わる週)
 
11(金) ・米生産者物価指数(7月)
・米ミシガン大学消費者信頼感(8月、速報値)
 
14(月)    
15(火) ・日本実質GDP(4-6月期、速報値)
・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(7月)
・米小売売上高(7月)

・ニューヨーク連銀製造業景気指数(8月)
・NAHB住宅市場指数(8月)
ホームデポ
16(水) ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、改定値)
・ユーロ圏鉱工業生産(6月)
・米住宅着工・建設許可件数(7月)
・FOMC議事要旨(7月25日、26日開催分)
ジムインテグレーテッドシッピング、アプライドマテリアルズ
シスコシステムズ、ターゲット
17(木) ・日本機械受注(6月)
・米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(8月)
ウォルマート
18(金)   ディア

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成


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