アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~決算を踏まえてアナリストが目標株価を引き上げた銘柄~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~決算を踏まえてアナリストが目標株価を引き上げた銘柄~

投資情報部 榮 聡

2023/08/21

先週は中国経済に対する懸念が高まる一方、強い米国の経済指標が米10年国債利回り上昇につながって株式は続落となりました。今週の株価材料として、10年国債利回りの行方、エヌビディアの決算、ジャクソンホール会議、などが注目されます。

今回は4-6月期決算発表を踏まえてアナリストが目標株価を引き上げた銘柄から、メタ プラットフォームズ A(META)アマゾン ドットコム(AMZN)アルファベット A(GOOGL)ゼネラル エレクトリック(GE)ブッキング ホールディングス(BKNG)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

株式相場はファンダメンタルズの重要な変化(長期金利の上昇)をともなったために、「雲」の上限を一気に下抜けました。一方、相場下落を主導したナスダック指数の100日移動平均線が13,071ポイントに対して、8/18(金)終値が13,290.77ポイントで、かなり接近しています。一旦調整一巡になると期待できそうです。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
情報技術 -0.8% -6.5% 5.5%
ヘルスケア -1.6% -2.1% 1.7%
エネルギー -1.7% 4.7% 10.9%
公益事業 -2.0% -7.8% -4.0%
S&P500 -2.1% -3.7% 4.2%
素材 -2.4% -3.6% 2.7%
生活必需品 -2.4% -3.3% -3.1%
資本財・サービス -2.5% -3.2% 6.5%
コミュニケーションサービス -2.7% 1.3% 4.9%
金融 -2.8% -3.9% 4.2%
不動産 -3.2% -6.3% 0.0%
一般消費財・サービス -4.1% -4.1% 8.3%
騰落率上位(5日) 騰落率
エヌビディア 6.0%
イーライリリー 3.4%
オラクル 3.0%
シスコシステムズ 2.3%
ファイザー 1.7%
騰落率下位(5日) 騰落率
テスラ -11.2%
CVSヘルス -10.8%
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス -9.6%
バンク・オブ・アメリカ -7.0%
USバンコープ -6.6%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で2.1%の下落、NYダウは2.2%の上昇、ナスダック指数は2.6%の続落となりました。

中国経済への懸念が重石となる一方、米国では強い経済指標が、FRBによる利上げ期待を高め、米10年国債利回りは一時4.3%台へ上昇、S&P500指数は3週続落となりました。7/27(木)の高値4,607.07ポイントからの下落率は5.2%です。

中国については大手不動産会社カントリーガーデンの資金繰り悪化が伝えられたほか、7月鉱工業生産、小売売上高が市場予想を下回り、米大手証券各社が同国のGDP成長率見通しを引き下げました。

米国の経済指標は、7月の米小売売上高は前月比0.7%増と、市場予想の同0.4%増を大きく上回り、4ヵ月連続の増加となったほか、7月住宅着工が前月比3.9%増(市場予想は同1.7%増)、7月鉱工業生産が前月比1.0%増(市場予想は同0.3%増)、8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数が12(市場予想は-10)など、強いものが目立ちました。

FOMC議事要旨では、多くのメンバーがインフレの上振れリスクを意識しており、追加利上げが必要と考えていることが判明して、株価調整の一因となりました。

業種指数では、意外にも「情報技術」の下落が相対的に小幅となりました。アップル、マイクロソフトが下落を主導する一方、エヌビディア、シスコシステムズ、オラクルの上昇が支えました。個別銘柄ではテスラ(TSLA)の大幅続落が目立ちました。8/14(月)にSUVの「モデルY」2車種を中国で値下げすると発表しています。7/19(水)の直近高値299.29ドルから8/18(金)終値まで28%の下落となっています。

今週の米国株式

今週の米国株式は米10年債利回り次第と考えられますが、4.3%を超えてどんどん上昇するほど米経済の基調は強くないとみられます。バリュエーションの高さについても、S&P500指数の予想PERは2023年予想基準で20.1倍、2024年予想基準で18.0倍と許容範囲に収まってきたと言えそうです。一旦、底入れを探る展開が想定されます。

今週の株価材料として、10年国債利回りの行方、エヌビディアの決算、ジャクソンホール会議、などが注目されます。

米10年国債利回りが2022年11月の高値を超える勢いで、このまま上昇が続くなら株式相場の一段の下落は避けられないでしょう。しかし、先週の金利上昇に最も効いたとみられる7月小売売上高は、アマゾンのプライムデーやバックトゥスクールのセールなど、一時要因が押し上げた可能性が指摘されています。

また、大手小売企業の決算では、長引くインフレに「節約志向」が広がっていることがうかがえ、先行きに慎重な見方もできるでしょう。個人消費は堅調なものの、加速していくような状況にはないと考えられます。

8/23(水)にエヌビディアが5-7月期の決算を発表予定です。売上はAIコンピュータ向けチップ「H100」の需要拡大によって、前年同期比65%増、2-4月期比53%増相当の110億ドルに急増の予想です。8-10月期も5-7月期比で売上増が続くのか、ガイダンスが注目されます。

エヌビディアについては、6/14(水)付の外国株式特集レポート「【エヌビディアの決定版】 エヌビディアのAIを語り尽くす」、7/26(水)付の「生成AI関連、エヌビディアの次に注目すべきはソフトウェア株」などをご参考にしていただければと思います。

ジャクソンホール会議はカンザスシティ連銀が米国ワイオミング州のジャクソンホールで毎年8月に開催する経済政策シンポジウムです。今年は24日(木)~26日(土)に開催予定で、8/25(金)のオープニングあいさつとして、パウエルFRB議長が講演予定です。米10年国債利回りに影響を及ぼす可能性もあるため注目です。

経済指標では、8/22(火)に米国の7月中古住宅販売件数(前月比0.2%減の予想)、8/23(水)に米国の7月新築住宅販売件数(前月比1.0%増の予想)、8/24(木)に米国7月耐久財受注(前月比4.0%減の予想)、などが発表の予定です。

今週の5銘柄

今回は4-6月期決算発表を挟んで、アナリストの目標株価の上方修正が大きい銘柄(S&P100指数採用銘柄が対象)をご紹介いたします。

図表3は、過去4週のアナリストによる目標株価平均値の修正率が10%以上の銘柄を抽出しています。これらの銘柄から、目標株価乖離率(目標株価平均値÷8/17(木)終値)、過去4週の通期予想EPSの修正率なども勘案して、メタ プラットフォームズ A(META)、アマゾン ドットコム(AMZN)、アルファベット A(GOOGL)、ゼネラル エレクトリック(GE)、ブッキング ホールディングス(BKNG)を選んでご紹介いたします。

図表3 アナリストの目標株価が上方修正された銘柄(S&P100指数採用銘柄対象)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(8/18)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートメタ プラットフォームズ A(META)283.25ドル21.1

【ネット広告の回復が続く見通し】

・4-6月期決算は、売上が前年同期比11%増、EPSが同21%増で、それぞれ市場予想を3%、2%上回りました。売上はネット広告の回復により、1-3月期の同3%増から同11%増に加速しています。7-9月期の売上高見通し(320-345億ドル)は市場予想を上回り、中間値の売上見通しは前年比で20%増となり売上成長率が改善する見通しです。

・ザッカーバーグCEOは「ラマ2(大規模言語モデル)、スレッズ(テキスト共有アプリ)、リール(短編動画サービス)等は非常にエキサイティングなロードマップであり、今年の秋にはMeta Quest3(VR・MRヘッドセット)が発売予定」とコメントしました。7-9月期業績に関する市場コンセンサスは、売上が前年同期比21%増、EPSは同102%増と1-3月期からモメンタムが改善する予想です。

買付チャートアマゾン ドットコム(AMZN)133.22ドル40.1

【売上モメンタム改善に加えコスト削減が効く】

・4-6月期は、売上の前年同期比伸び率が1-3月期の9%増から11%増に加速、コスト削減によって北米部門の営業利益が1-3月期の9億ドルから32億ドルに大きく改善して、市場予想を上回る決算となりました。7-9月期の売上ガイダンスも、前年同期比9~13%増相当の1,380~1,430億ドルで、市場予想の1,383億ドルを上回りました。クラウドサービスのAWSの売上の伸びは前年同期比12%増で、1-3月期の同16%増から鈍化しましたが、会社ガイダンスの同11%増を上回りました。

・ネット通販ではスピード、利便性、バリューに磨きをかけるとともに、広告ビジネスの成長とAWSの成長率安定などを背景に、下半期に景気減速とインフレによる外部環境の圧力が高まったとしても堅調な業績拡大を実現できると期待されます。

買付チャートアルファベット A(GOOGL)127.46ドル21.9

【ネット広告が回復、AIワークロードにも期待】

・4-6月期実績は、売上が前年同期比8%増、EPSが同19%増、それぞれ市場予想を3%、9%上回って好調でした。売上はネット広告の回復により、1-3月期の同4%増から同8%増に加速しています。部門別には、ネット広告、クラウドサービスとも売上・営業利益とも市場予想を上回りました。営業利益率は市場予想の27.6%に対して29.3%と大きく上回りました。

・クラウドサービスの営業利益は4億ドルと年間で10億ドルを超えるペースに向上しています。同社はクラウドで生成AIのプラットフォームを提供していることから(「ChatGPT」も同社のプラットフォーム上で動作しているとされます)、今後は生成AIによるワークロードの増加から恩恵が期待されます。好調な決算を受けてアナリストの目標株価は151ドルまで引き上げられました。

買付チャートゼネラル エレクトリック(GE)111.79ドル47.8

【航空機エンジンが好調】

・4-6月期決算は売上が前年同期比18%増、調整後EPSは同89%増で、それぞれ市場予想を8%、47%上回りました。旅行市場の回復を受けて航空機エンジンを供給するGEエアロスペースが好調です。受注はGEエアロスペースが同37%増、再生エネルギーが同2.7倍、電力が同7%増で、合計で同59%増でした。通期ガイダンスは、調整後EPSを従来の1.70~2.00ドルから2.10~2.30ドルへ、フリーキャッシュフローは従来の36~42億ドルからから41~46億ドルへ引き上げました。

・同社は従来のコングロマリット体制から事業ごとの会社分離を進めており、コングロマリットディスカウント(コングロマリットであることにより株価評価が割り引かれる現象)が解消しつつあり、これを受けて株価が上昇基調を辿っています。今年初めにGEエルスケアを分離、2024年1-3月期にGEエアロスペースとGEベルノバ(現在の発電事業と再生エネルギー事業)も分離する見通しです。

買付チャートブッキング ホールディングス(BKNG)3058.43ドル21.2

【記録的な旅行シーズンを迎える】

・4-6月期は、売上が前年同期比27%増、EPSが同97%増、それぞれ市場予想を6%、32%と大幅に上回りました。さらに、予約総額の同15%増、宿泊予約数の同9%増も市場予想を上回りました。会社は「予約総額、宿泊予約数は想定を上回って推移しており、この強さは7月に入っても継続している。われわれは記録的な旅行シーズンを迎えている。」とレジャー需要の強さについてコメントしています。

・また、同社の主力サイト、PricelineとBooking.comで生成AIによる支援機能の提供を発表している点も注目されます。現在、同支援機能によって顧客が価値を認める要素は何であるかを見極めているとコメントしています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2023年12月期です。

※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
21(月)    
22(火) ・米中古住宅販売件数(7月) ロウズ
23(水) ・auじぶん銀行日本製造業PMI(8月)
・シカゴ連銀グールズビー総裁あいさつ
・S&Pグローバルユーロ圏製造業PMI(8月)
・S&Pグローバル米国製造業PMI(8月)
・米新築住宅販売件数(7月)
エヌビディア、アナログデバイセズ
24(木) ・ジャクソンホール会議(ワイオミング州、26日まで)
・米新規失業保険申請件数(8月19日に終わる週)
・米シカゴ連銀全米活動指数(7月)
・米耐久財受注(7月)
セールスフォース、アルタビューティ、ダラーツリー
25(金) ・ドイツIFO企業景況感(8月)
・米ミシガン大学消費者信頼感(8月、確報値)
 
28(月)    
29(火) ・米S&PコアロジックCS住宅価格(6月)
・米求人労働異動調査(7月)
・米コンファレンスボード消費者信頼感(8月)
 
30(水) ・EU27ヵ国新車登録台数(7月)
・ユーロ圏景況感(8月)
・米ADP雇用統計(8月)
・米実質GDP(4-6月期、改定値)

・米中古住宅販売成約(7月)
 
31(木) ・日本鉱工業生産(7月)
・中国製造業・非製造業PMI(8月)
・米チャレンジャー人員削減数(8月)
・米新規失業保険申請件数(8月26日に終わる週)
・米個人所得・個人支出(7月)
・米個人消費支出物価指数(7月)
 
9月
1(金)
・財新中国製造業PMI(8月)
・米雇用統計(8月)
・米建設支出(7月)
・ISM製造業景気指数(8月)
・米自動車販売台数(8月)
 

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。

※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

おすすめ記事(2023/08/21 更新)

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。