アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~52週高値を更新したエヌビディア、イーライリリィ、アルファベットほか~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~52週高値を更新したエヌビディア、イーライリリィ、アルファベットほか~

投資情報部 榮 聡

2023/08/28

先週は上昇が続いていた米10年国債利回りが反落したことで、テクノロジー株を中心に反発、株式相場は下落基調からもみ合いに転じました。今週の株価材料として、10年国債利回りの行方、7月個人消費支出物価指数、8月雇用統計、などが注目されます。

今回は過去2週間に52週高値を更新した株価が好調な銘柄から、エヌビディア(NVDA)イーライ リリィ(LLY)アルファベット A(GOOGL)シスコ システムズ(CSCO)ウォルマート インク(WMT)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

「雲」の中でのもみ合いとなっています。ファンダメンタルズに重要な変化が出るまでは、「雲」の中での推移になりやすいと考えられます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
情報技術 2.6% -5.3% 2.9%
一般消費財・サービス 1.1% -4.2% 9.1%
コミュニケーションサービス 1.0% -4.3% 4.7%
S&P500 0.8% -3.9% 4.8%
不動産 0.7% -3.9% 2.2%
資本財・サービス 0.3% -3.5% 8.3%
公益事業 0.3% -5.5% -1.4%
金融 0.1% -3.6% 5.8%
素材 0.0% -5.4% 6.0%
ヘルスケア -0.1% -1.4% 4.6%
生活必需品 -0.8% -4.7% -0.6%
エネルギー -1.4% 1.6% 10.6%
騰落率上位(5日) 騰落率
テスラ 10.7%
エヌビディア 6.3%
アクセンチュア 5.2%
アドビ 3.3%
ペイパル・ホールディングス 3.0%
騰落率下位(5日) 騰落率
キャピタル・ワン・ファイナンシャル -4.0%
サイモン・プロパティー・グループ -4.2%
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス -4.8%
ナイキ -5.7%
ターゲット -7.2%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.8%、ナスダック指数は2.3%の上昇、NYダウは0.4%の下落となりました。

株価調整の主因となっていた米10年国債利回り上昇が4.3%台で頭打ちとなったことから、テクノロジー株を中心に反発して、S&P500指数は4週ぶりの上昇となりました。

下落となった8/22(火)は、S&Pグローバル・レーティングによる複数の銀行の格下げや冴えない小売企業の決算が下落要因となりました。8/24(木)の大幅下落は、ジャクソンホールに集まっている金融当局者の発言が8/25(金)のパウエルFRB議長への警戒感を高めたことによります。

パウエルFRB議長の講演では、「経済が想定していたほど冷めない兆候に注視している」「トレンドを上回る成長が継続する証拠が出た場合には、インフレ進展のリスクを高め、さらなる金融引き締めの可能性を高める」とタカ派の発言でした。ただ、これを警戒して前日に下げていたため、8/25(金)はリスクイベントの通過で反発しました。

業種指数では、エヌビディアがけん引した「情報技術」、テスラがけん引した「一般消費財・サービス」、ネットフリックス、アルファベットがけん引した「コミュニケーションサービス」などが上昇しました。個別で上昇トップのテスラ(TSLA)は、4-6月期決算で市場予想以上の粗利率低下が嫌気されて7月下旬の高値から3割近く下落していましたが、見直し買いが入って大幅に反発しました。

経済指標では、中古住宅販売件数が低下基調の一方、新築住宅販売件数は増加基調、輸送機器を除く耐久財受注は改善基調などまちまちでした。週間の新規失業保険申請件数は減少トレンドで、市場予想より低い値が出ると米10年国債利回りが上昇しやすい状況が続いています。

今週の米国株式

今週の米国株式は引き続き米10年債利回り次第と考えられますが、4.3%を超えてどんどん上昇するほど米経済の基調は強くないとみられます。バリュエーションの高さについても、S&P500指数の予想PERは2023年予想基準で20.2倍、2024年予想基準で18.0倍と許容範囲に収まってきたと言えそうです。ファンダメンタルズに重要な変化が起きるまでもみ合いが想定されます。

今週の株価材料として、10年国債利回りの行方、7月個人消費支出物価指数、8月雇用統計、などが注目されます。

米10年国債利回りは先週一時4.35%を付けて2022年10月の高値を更新する場面がありましたが、その後は反落して株式の反発につながりました。今週の経済指標では、下記のように個人消費支出物価指数は金利上昇につながりやすく、雇用統計の非農業部門雇用者数は金利低下につながりやすいと考えられます。

8/31(木)に発表予定の7月個人消費支出物価指数は、総合指数が前年比3.3%増の予想(前月は同3.0%増)、コア指数が前年比4.2%増の予想(前月は同4.1%増)です。総合指数、コア指数とも前月からの上昇が予想されており、インフレ沈静化の動きが停滞する見込みです。金利上昇に繋がりやすく、株式にはネガティブ要因となりやすいと考えられます。

9/1(金)に発表予定の8月雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比16.8万人増の予想です。雇用統計の非農業部門雇用者数は鈍化傾向が見込まれており、株式のポジティブ材料として期待できそうです。

経済指標では上記のほか、8/29(火)に米国の8月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の117から116.2に悪化の予想)、8/30(水)に米国の8月ADP雇用統計(前月比19.8万人増の予想)、米国の4-6月期実質GDP(改定値)(前期比年率2.4%増の予想、速報値は同4.2%増)、8/31(木)に中国の8月製造業PMI(前月の49.3から49.1に悪化の予想)、同非製造業PMI(前月の51.5から51.1に悪化の予想)、9/1(金)に米国の8月ISM製造業景気指数(前月の46.4から47.0に改善の予想)、などが発表の予定です。

今週の5銘柄

今回は過去2週間に52週高値を更新した株価が好調な銘柄をご紹介いたします。

S&P100指数採用の主要銘柄について、8/14(月)~8/24(木)に52週高値を更新した銘柄を図表3にリストアップしています。ここから、エヌビディア(NVDA)イーライ リリィ(LLY)アルファベット A(GOOGL)シスコ システムズ(CSCO)ウォルマート インク(WMT)を選んでご紹介いたします。

このうち、エヌビディア、イーライリリィ、ウォルマートインクは上場来高値も更新しています。

図表3 過去2週間に52週高値を更新した主要銘柄(S&P100指数採用銘柄対象)

コード 銘柄名 株価
(8/24)
(ドル)
予想PER
(倍)
52週高値
(ドル)
52週高値日
CSCO シスコシステムズ 55.24 13.6 56.47 8月24日
NVDA エヌビディア 471.63 33.1 502.3 8月24日
GOOGL アルファベット 129.78 19.6 134.24 8月24日
LLY イーライリリー 548.00 48.8 557 8月23日
CMCSA コムキャスト 45.24 11.6 47.45 8月16日
WMT ウォルマート 156.89 23.4 162.76 8月14日

注:8/14(月)~8/24(木)に52週高値を更新した銘柄です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(8/25)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートエヌビディア(NVDA)460.18ドル45.1

【市場予想を大幅に上回る決算】

・5-7月期決算は、売上が前年同期比2倍、調整後EPSが同5.3倍、それぞれ市場予想を22%、30%上回る非常に好調な決算でした。8-10月期の売上ガイダンスも、160億ドル±2%で、市場予想の125億ドルを28%上回りました。AIの計算に使われるGPU(画像処理半導体)を中心としたモジュール「H100」が、生成AIへの対応を急ぐクラウドサービス大手向けに急拡大しています。

・同社はAIコンピューティングの市場の8割以上を支配しており、また、その強さはハードウェアではなく、過去10年にわたって積み上げてきたAI向けソフトウェアの蓄積にあるとみられることから、同社による市場支配は続きやすいと考えられます。株価は年初来3倍以上に上昇しているため、目先は利食いをこなす必要があるでしょうが、再び上昇基調を取り戻すと期待されます。アナリストの目標株価平均値は、8/25(金)に633.94ドルまで引き上げられています。

買付チャートイーライ リリィ(LLY)553.65ドル58.3

【新型の糖尿病治療薬が順調】

・4-6月期の売上は前年同期比28%増、調整後EPSは同38%増で、売上・EPSとも市場予想を上回りました。大幅な売上増には、薬の権利売却による約9%ポイントの寄与を含みます。主力の「トルリシティ」が同5%減で市場予想を下回った一方、新型の糖尿病治療薬「マンジャロ」が9.8億ドル(1-3月期は5.7億ドル)と順調で、同57%増となった乳がん治療薬の「ベージニオ」などがけん引しました。通期の調整後EPSガイダンスを9.70~9.90ドルへ1.05ドル引き上げました。

・今年中に肥満薬としても承認される可能性のある「マンジャロ」の売上が順調に伸びていることが好感されているとみられます。また、「マンジャロ」と同様の作用機序をもつ肥満治療薬「ウゴービ」を擁するノボノルディスクが、同薬は心血管疾患にも効果があるとの臨床試験結果を8/8(火)に発表したことも株価を刺激していると考えられます。

買付チャートアルファベット A(GOOGL)129.88ドル21.6

【ネット広告が回復、AIワークロードにも期待】

・4-6月期実績は、売上が前年同期比8%増、EPSが同19%増、それぞれ市場予想を3%、9%上回って好調でした。売上はネット広告の回復により、1-3月期の同4%増から同8%増に加速しています。部門別には、ネット広告、クラウドサービスとも売上・営業利益とも市場予想を上回りました。営業利益率は市場予想の27.6%に対して29.3%と大きく上回りました。

・クラウドサービスの営業利益は4億ドルと年間で10億ドルを超えるペースに向上しています。同社はクラウドで生成AIのプラットフォームを提供していることから(「ChatGPT」も同社のプラットフォーム上で動作しているとされます)、今後は生成AIによるワークロードの増加から恩恵が期待されます。好調な決算を受けてアナリストの目標株価は151.82ドルまで引き上げられました。

買付チャートシスコ システムズ(CSCO)55.70ドル13.7

【生成AI関連の投資に期待】

・5-7月期決算は売上・EPSとも市場予想を上回りました。サプライチェーン問題が改善に向かったことで、積みあがっていた受注をこなして、2023年5月期の売上は前年比11%伸びました。一方、2024年5月期については、企業のIT支出鈍化が見込まれており、売上ガイダンスは市場予想を下回りました。しかし、CEOは「市場シェア拡大と売上高の増加で成長鈍化を乗り切れる」と自信を示しました。

・ シスコシステムズはソフトウェアおよび経常的収入の比率を高めるビジネスモデルの変革を行ったことで、需要の鈍化に対する対応力を高めていると考えられます。エヌビディアのデータセンター向け売上に示唆されるように、クラウドサービス大手が生成AI向けの投資を拡大していることから、その恩恵を受けることが期待されます。

買付チャートウォルマート インク(WMT)157.82ドル24.1

【シェアの拡大が続く】

・5-7月期決算は、売上が前年同期比6%増、調整後EPSが同4%増で、市場予想を上回って好調でした。米国の既存店売上は同6.4%増(来店客数が同2.9%増、平均客単価が同3.4%増)で市場予想の同4.0%増を大きく上回りました。通期のガイダンスは、売上が前年比4.0~4.5%増、調整後EPSを従来の6.10~6.20ドルから6.36~6.46ドルに引き上げました。

・消費者はインフレの環境下でバリューと利便性を優先させており、同社はウォルマート店舗、サムズクラブ店舗、eコマースのいずれでも、これに応えることに成功しているとコメントしています。また、同社は食料品販売に強みをもちますが、一般消費財の販売も当初予想を上回って推移しているとコメント、市場シェアの拡大が続いているとみられます。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディアとウォルマートは2024年1月期、シスコシステムズは2024年7月期、その他は2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
28(月)    
29(火) ・米S&PコアロジックCS住宅価格(6月)
・米求人労働異動調査(7月)
・米コンファレンスボード消費者信頼感(8月)
ベストバイ、HP
30(水) ・EU27ヵ国新車登録台数(7月)
・ユーロ圏景況感(8月)
・米ADP雇用統計(8月)
・米実質GDP(4-6月期、改定値)

・米中古住宅販売成約(7月)
クラウドストライクホールディングス、セールスフォース
31(木) ・日本鉱工業生産(7月)
・中国製造業・非製造業PMI(8月)
・アトランタ連銀ボスティック総裁講演
・ボストン連銀コリンズ総裁講演
・米チャレンジャー人員削減数(8月)
・米新規失業保険申請件数(8月26日に終わる週)
・米個人所得・個人支出(7月)
・米個人消費支出物価指数(7月)
ブロードコム、ダラーゼネラル
9月
1(金)
・財新中国製造業PMI(8月)
・アトランタ連銀ボスティック総裁講演
・クリーブランド連銀メスター総裁講演
・米雇用統計(8月)

・米建設支出(7月)
・ISM製造業景気指数(8月)
・米自動車販売台数(8月)
 
4(月) ・米国市場休場(レーバーデー)  
5(火) ・米国製造業受注(7月)  
6(水) ・ユーロ圏小売売上高(7月)
・ボストン連銀コリンズ総裁講演
・ダラス連銀ローガン総裁講演

・米ISM非製造業景気指数(8月)
・米地区連銀経済報告(ベージュブック)
 
7(木) ・中国貿易統計(8月)
・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、確報値)
・米新規失業保険申請件数(9月2日に終わる週)
 
8(金) ・日本実質GDP(4-6月期、確報値)
・米家計純資産変化(4-6月期)
クローガー

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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