アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~10/6(金)からの反発局面で上昇した主要銘柄~
投資情報部 榮 聡
2023/10/16
先週は米10年国債利回りにピークアウト感が出たことから前半は上昇しましたが、後半は予想を上回った消費者物価指数、予想を下回った消費者信頼感、中東情勢の緊迫化などを受けて反落となりました。今週の株価材料として、9月小売売上高、7-9月期決算発表、中東情勢、などが注目されます。
今回は相場が反発に転じた10/6(金)から10/12(木)にかけて物色された主要銘柄から、イーライ リリィ(LLY)、ブロードコム(AVGO)、ゼネラル ダイナミックス(GD)、アドビ(ADBE)を、また、10/13(金)に好決算を発表したユナイテッドヘルス グループ(UNH)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数のローソク足(日足、6ヵ月)
200日移動平均線を下値支持として反発した一方、50日、100日移動平均線が上値抵抗となっています。抵抗帯を上抜けるためには、明確なファンダメンタルズの変化(例えば、消費が減速して長期金利のピークアウトが確実となるというような)が必要と考えられます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
エネルギー | 4.5% | -2.2% | 10.2% |
公益事業 | 3.6% | -8.0% | -11.4% |
不動産 | 2.3% | -6.2% | -11.5% |
資本財・サービス | 1.0% | -2.8% | -6.3% |
金融 | 0.5% | -4.4% | -3.1% |
S&P500 | 0.4% | -2.8% | -3.9% |
生活必需品 | 0.2% | -6.7% | -9.5% |
情報技術 | 0.2% | 0.3% | -4.2% |
ヘルスケア | 0.1% | -1.3% | -1.2% |
コミュニケーションサービス | -0.2% | -0.5% | 2.6% |
素材 | -0.4% | -4.7% | -6.8% |
一般消費財・サービス | -0.7% | -7.5% | -8.6% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ゼネラル・ダイナミクス | 10.5% |
ロッキード・マーチン | 10.1% |
ネクステラ・エナジー | 8.5% |
コノコフィリップス | 8.3% |
イーライリリー | 7.8% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
ネットフリックス | -6.8% |
アボットラボラトリーズ | -6.2% |
フェデックス | -5.8% |
メドトロニック | -5.5% |
ゼネラル・モーターズ | -4.0% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.4%、NYダウは0.8%の上昇、ナスダック指数は0.2%の下落でした。
米10年国債利回りは4.8%台を付けて一旦ピーク感が出たことから、株式は主要3指数とも10/6(金)から10/11(水)にかけて4連騰となりました。しかし、10/12(木)には9月消費者物価指数が市場予想を上回り、10/13(金)には10月のミシガン大学消費者信頼感が63と市場予想の67.2を大きく下回ったことに加え、パレスチナ情勢が緊迫化したことから週末にかけて反落となりました。
注目を集めた9月消費者物価指数は、コア指数は前年比4.1%増と市場予想と一致、8月の同4.3%増から鈍化を示したものの、総合指数は原油価格の上昇を受けて同3.7%増と市場予想の同3.6%増を上回り、8月の同3.7%増から横ばいとなりました。
パレスチナでの紛争は、イスラエル軍が空爆を経て地上作戦に移行していることが判明し、また、イスラエルはガザ地区北部で近く大規模な軍事作戦を実行するため、ガザ市民に南に避難するよう警告したことから、一段のエスカレートが懸念されています。
業種指数は、原油価格の上昇を受けた「エネルギー」、米長期金利の上昇一服を受けた「公益事業」「不動産」、防衛関連株が上昇した「資本財・サービス」などが上昇しました。個別では、ネットフリックス(NFLX)の下落が目立ちました。10/18(水)の決算発表を前にモルガンスタンレー、ウェルズファーゴなどの複数アナリストが目標株価を引き下げました。7-9月期決算については、ポジティブな話が出てきにくいとの判断とみられます。ただし、例えばウェルズファーゴは目標株価を500ドルから460ドルに引き下げましたが、10/13日(金)終値の355.68ドルを大きく上回る水準です。
今週の米国株式
米国市場は1年で株価が最も上昇しやすいとされる10月~12月の四半期を迎えています。10月~12月に株価が上昇しやすいのは、株価のPER(株価収益率)を計算するときに用いる予想EPS(1株当たり利益)の基準年が今年度から来年度に移行するため、株価評価の割高感が緩和、または、割安感が強まることによると考えられます。
S&P500指数のEPSは2023年予想の214ポイントに対して2024年予想の239ポイントへ12%増加する予想で、今年の10-12月も株価は上昇しやすいお膳立てになっていると言えそうです。
ただし、これがスムースに実現するための条件として、(1)米10年国債利回りが一段の上昇とならない、(2)7-9月期決算の発表と10-12月期の会社ガイダンスが2024年の増益に対する確信を高めるものとなる、の2点があげられ、これを満たす兆しがあらわれるか、今週は重要となりそうです。
今週の株価材料として、9月小売売上高、7-9月期決算発表、中東情勢、などが注目されます。
10/17(火)に米国の9月小売売上高が発表の予定で、前月比0.3%増の予想です(図表3)。4月~8月に前月比プラスが5ヵ月連続して、個人消費が強い印象を与え、米10年国債利回りが上昇してきた要因にもなってきたと考えられます。
一方、7月、8月の数字は一時的要因(アマゾンのセール、著名歌手のコンサートツアー、映画「バービー」のヒットなど)で押し上げられたと考えられ、9月にはその反動が出る可能性もあります。消費減速の兆しと捉えられる形になると、米10年国債利回りを抑える要因となり、株式にはプラスに働くと期待されます。
7-9月期決算発表では、ジョンソン&ジョンソン、バンクオブアメリカ、ゴールドマンサックス、ロッキードマーチン、プロクター&ギャンブル、テスラ、ネットフリックス、AT&T、台湾セミコンダクターなどの発表が予定されています。
中東情勢については、イスラム組織ハマスに対する周辺イスラム諸国の対応が注目されます。ハマスを支援する、あるいは共に闘う国や組織が出てくるのか、または、孤立するのか、紛争の広がりを考えるうえで重要でしょう。
経済指標では上記のほか、10/18(水)に中国の7-9月期実質GDP(前年比4.5%増の予想、4-6月期は6.3%増)、中国の9月鉱工業生産(前年比4.3%増の予想、前月は同4.5%増)、同小売売上高(前年比4.9%増の予想、前月は同4.6%増)、米国の9月住宅着工件数(前月比7.6%増の予想)、同住宅建設許可件数(前月比5.4%減の予想)、10/19(木)に米国の9月中古住宅販売件数(前月比4.0%減の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は相場が反発に転じた10/6(金)から10/12(木)にかけて物色された主要銘柄を中心にご紹介いたします。
10/5(木)終値から10/12(木)終値の株価騰落率が大きい銘柄を、S&P100指数採用銘柄を対象に図表4に抽出しました。ここから、予想PERの水準、過去3ヵ月のEPS修正率なども勘案して、イーライ リリィ(LLY)、ブロードコム(AVGO)、ゼネラル ダイナミックス(GD)、アドビ(ADBE)を選びました。
また、10/13(金)に好決算を発表したユナイテッドヘルス グループ(UNH)を選んでご紹介いたします。
図表3 9月小売売上高で消費鈍化の兆しが出るか注目
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 過去3ヵ月に株価騰落率が7%以上だった銘柄
コード | 銘柄名 | 株価騰落率 (3ヵ月) (%) |
株価騰落率 9/19-10/5 (%) |
EPS修正率 (3ヵ月) (%) |
AMGN | アムジェン | 18.9 | 0.3 | 2.2 |
LLY | イーライリリー | 16.9 | -5.8 | 11.6 |
CHTR | チャーター・コミュニケーションズ | 16.1 | -4.0 | -2.0 |
BKNG | ブッキング・ホールディングス | 14.7 | -3.0 | 6.2 |
COP | コノコフィリップス | 13.0 | -7.9 | -0.1 |
GOOGL | アルファベット | 12.5 | -2.2 | 4.7 |
INTC | インテル | 12.3 | -1.2 | 65.8 |
UNH | ユナイテッドヘルス・グループ | 10.0 | 7.4 | 0.3 |
CAT | キャタピラー | 8.4 | -6.7 | 10.4 |
ABBV | アッヴィ | 7.4 | -3.9 | 1.2 |
ADBE | アドビ | 7.3 | -4.7 | 1.3 |
CVX | シェブロン | 7.2 | -2.0 | 3.7 |
IBM | IBM | 7.1 | -3.4 | 1.3 |
注:スクリーニングに使用したデータは10/12(木)時点です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (10/13) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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買付 | イーライ リリィ(LLY) | 609.20ドル | 48.4 | 【新型の糖尿病治療薬が順調】 ・先週はノボノルディスク(NVO)が同社の糖尿病治療薬「オゼンピック」の腎臓疾患に関する臨床試験で、結果が良好なため早期に中止すると発表したことが好感されました。「オゼンピック」と同様の作用機序をもつ糖尿病治療薬を擁するイーライリリィの株価も連れ高となりました。米国ではノボノルディスクの肥満治療薬「ウェゴビー」(主成分は「オゼンピック」と同じ)の利用が広がっており、他のヘルスケア関連株や食品株への影響が懸念されるほどになっています。 ・ 4-6月期の売上は前年同期比28%増、調整後EPSは同38%増で、売上・EPSとも市場予想を上回りました。大幅な売上増には、薬の権利売却による約9%ポイントの寄与を含みます。主力の「トルリシティ」が同5%減で市場予想を下回った一方、新型の糖尿病治療薬「マンジャロ」が9.8億ドル(1-3月期は5.7億ドル)と順調で、同57%増となった乳がん治療薬の「ベージニオ」などがけん引しました。通期の調整後EPSガイダンスを9.70~9.90ドルへ1.05ドル引き上げました。 | |
買付 | ブロードコム(AVGO) | 883.18ドル | 36.6 | 【通信向け半導体大手】 ・通信向け半導体の大手です。2019年にシマンテックの法人事業を買収してソフトウェア部門の売上が22%を占めますが、2022年5月にクラウド大手VMウェアを610億ドルで買収すると発表、ソフトウェアの強化を目指しています(2022年12月期)。10/12(木)に同買収について中国当局が承認の意向と伝えられたことから株価は上昇しました。 ・スマホ向け半導体は厳しいと考えられるものの、データセンター向けネットワーク半導体が生成AIの投資に絡んで伸びており、5-7月期の売上は前年同期比5%増、8-10月期売上は同4%増のガイダンスで、堅調となる見通しです。会社は2024年度のAI関連の売上は25%まで高まる見通しとしています。ソフトウェア部門の5-7月期売上は前年同期比5%増と堅調で、VMウェアの買収が完了できれば、ポジティブに効いてくると期待されています。 | |
買付 | ゼネラル ダイナミックス(GD) | 243.04ドル | 16.3 | 【防衛大手、中東情勢が株価を刺激】 ・防衛大手で、戦車、原子力潜水艦、航空機、通信システムなどに幅広く展開します。イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事紛争が株価を刺激しているとみられます。ビジネスジェットのガルフストリームがけん引して、売上は2023年12月期が前年比7%増、2024年12月期が同6%増と堅調な業績拡大が見込まれています。中期的にはマリン部門が売上増をもたらすと期待されます。 ・4-6月期は全4部門とも増収で売上は前年同期比11%増、受注は戦車や潜水艦がけん引して売上に対して1.2倍の119億ドル、受注残は前年同期比4%増の914億ドルに増加と事業環境は堅調です。EPSは前年同期比2%減となりましたが、テクノロジー部門の新規案件の立ち上がりなどが足を引っ張ったもので、特に問題となるようなものではないとみられます。 | |
買付 | アドビ(ADBE) | 548.76ドル | 30.7 | 【新機能追加を背景に11月から値上げへ】 ・ソフトウェアの世界的大手です。画像編集の「Photoshop」、グラフィックデザインの「Illustrator」等のクリエイター向けサービスや、総合PDFソリューションの「Adobe Acrobat」など世界標準のサービスを多数擁します。2016年にAIテクノロジー基盤の「Adbe Sensei」を投入し、AI技術の利用に早くから注力してきた会社です。2023年3月、商用利用に特化した画像生成AI、「Adobe Firefly」のベータ版を公開し、利用が始まっています。 ・6-8月期は、売上?が前年同期?10.3%増、EPSが4.09ドルといずれも市場予想を上振れました。デジタルメディア部門では、「Acrobat(PDF)」等のドキュメント・クラウドが成?を牽引、デジタル・エクスペリエンス部門ではサブスクリプションが同13%と好調でした。また、「Firefly」等のAI関連の新機能追加を背景に、11月からの全面的な値上げを発表しています。 | |
買付 | ユナイテッドヘルス グループ(UNH) | 539.40ドル | 19.4 | 【好決算を発表】 ・医療保険の大手です。年初来の株価上昇率は、大手テクノロジーがけん引したS&P500指数を下回りますが、同社は1-3月期、4-6月期、7-9月期とも市場予想を上回る決算を発表して、業績は堅調に推移しています。 ・10/13(金)に発表した7-9月期決算は、売上・営業利益とも前年同期比14%増で、いずれも市場予想を上回って好調でした。医療保険のユナイテッドヘルス部門の売上が同13%増、医療サービスのオプタム部門が同22%増と良好です。会社では、両部門ともサービスを提供する人数の増加に加え、サービスの範囲を広げていることがこのような好調につながっているとコメントしています。通期のEPSガイダンスを24.75~25.00ドルから24.85~25.00ドルへ下限を引き上げています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、ブロードコムは2024年10月期、アドビは2024年11月期、その他は2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
16(月) | ・米ニューヨーク連銀製造業景気指数(10月) | チャールズシュワブ |
17(火) | ・ドイツZEW景気指数(10月) ・米小売売上高(9月) ・米鉱工業生産(9月) ・米NAHB住宅市場指数(10月) |
ジョンソン&ジョンソン、バンクオブアメリカ、ゴールドマンサックス ロッキードマーチン |
18(水) | ・中国実質GDP(7-9月期) ・中国鉱工業生産・小売売上高(9月) ・米住宅着工件数・建設許可件数(9月) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック) |
プロクター&ギャンブル、テスラ、ネットフリックス ASMLホールディングス、モルガンスタンレー |
19(木) | ・新規失業保険申請件数(10月14日に終わる週) ・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(10月) ・米中古住宅販売件数(9月) |
AT&T、台湾セミコンダクター、インチュイティブサージカル フィリップモリスインターナショナル、アメリカン航空グループ |
20(金) | ・EU27ヵ国新車登録台数(9月) | |
23(月) | ・シカゴ連銀全米活動指数(9月) | |
24(火) | ・auじぶん銀行日本製造業PMI(10月) ・HCOBユーロ圏製造業PMI(10月) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(10月) |
ビザ、コカコーラ、ベライゾンコミュニケーションズ ゼネラルエレクトリック、ダナハー、ダウ |
25(水) | ・ドイツIFO企業景況感(10月) ・米新築住宅販売件数(9月) |
マイクロソフト、アルファベット、メタプラットフォームズ ボーイング、IBM |
26(木) | ・ECB主要政策金利 ・米実質GDP(7-9月期、速報値) ・米耐久財受注(9月) ・米新規失業保険申請件数(10月21日に終わる週) ・米中古住宅販売成約(9月) |
アマゾンドットコム、インテル、ボーイング、メルク |
27(金) | ・米個人所得・個人支出(9月) ・米個人消費支出物価指数(9月) ・ミシガン大学消費者信頼感(10月、確報値) |
エクソンモービル、アルトリアグループ、アッヴィ |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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