アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~米国株は調整十分!?決算中盤の好決算銘柄をご紹介~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~米国株は調整十分!?決算中盤の好決算銘柄をご紹介~

投資情報部 榮 聡

2023/10/30

先週は米10年国債利回りが高止まりする中、大手IT決算への反応がまちまちとなる一方、中東情勢は緊迫の度合いを増し、2週連続の大幅安となりました。今週の株価材料として、FOMC(連邦公開市場委員会)、雇用統計、7-9月期決算発表、などが注目されます。

今回は10/20(金)から10/26(木)に7-9月期決算を発表した主要銘柄から、マイクロソフト(MSFT)アマゾン ドットコム(AMZN)インテル(INTC)コカ-コーラ(KO)ベライゾン コミュニケーションズ(VZ)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数のローソク足(週足、2年)

S&P500指数は4,240ポイント近辺の200日移動平均線を大幅に割り込みましたが、下げ止まりの気配がありません。そこで長いチャートを確認すると、2022年10月に3,600ポイントで底入れ、2023年7月に4,600ポイントまで反発、4,100ポイントは半値押しの水準にあることが分かります。調整十分と考えられるのではないでしょうか。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
公益事業 1.2% -0.3% -12.4%
素材 -0.4% -4.6% -12.1%
生活必需品 -1.0% -3.2% -11.8%
一般消費財・サービス -1.1% -6.4% -12.7%
不動産 -1.2% -5.2% -14.7%
情報技術 -1.7% -1.8% -9.8%
資本財・サービス -2.3% -4.9% -12.5%
金融 -2.4% -5.3% -10.6%
S&P500 -2.5% -4.0% -10.1%
ヘルスケア -3.9% -4.5% -8.9%
エネルギー -6.2% -6.6% -1.1%
コミュニケーションサービス -6.3% -4.2% -7.7%
騰落率上位(5日) 騰落率
RTX 9.1%
キャピタル・ワン・ファイナンシャル 8.3%
ネクステラ・エナジー 8.2%
アメリカン・タワー 7.4%
ベライゾン・コミュニケーションズ 5.9%
騰落率下位(5日) 騰落率
フォード・モーター -14.4%
シェブロン -13.5%
チャーター・コミュニケーションズ -13.4%
ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS) -11.3%
アルファベット -9.9%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で2.5%、NYダウは2.1%、ナスダック指数は2.6%の下落と、2週連続の大幅安でした。

米10年国債利回りが高止まりする中、注目された大手IT銘柄の決算に対する市場の反応はまちまちで、相場下落を止めることができませんでした。また、中東ではイスラエル軍がガザ地区に対する大規模な空爆に続いて地上作戦を敢行したことから、紛争が拡大する懸念が強まりました。

米10年国債利回りは、10/24(火)に著名投資家のビル・アックマン氏が、債券のショート・ポジション(債券価格の下落、金利の上昇に賭けるポジション)を手じまったことを明かして低下する局面がありましたが、翌日には反発しました。ただ、10/26(木)には7-9月期GDPの速報値が前期比年率4.9%増と市場予想の同4.3%増を上回っても低下したことは注目に値するでしょう。

大手IT企業の決算は、7-9月期実績は概ね市場予想を上回りましたが、重要指標の動向や先行きに関するコメントから市場の反応はまちまちです。マイクロソフト、アマゾンが好感された一方、アルファベット、メタは失望されました。また、幅広い産業の景況を示唆することで注目されるアナログ半導体大手のテキサスインスツルメンツが、10-12月期売上ガイダンス中央値を前年同期比12%減として、7-9月期の同14%減からさほど改善しない見通しを示したことも相場にマイナスに寄与したとみられます。

業種指数は、事業内容がディフェンシブで金利動向に敏感な「公益事業」が唯一上昇しました。テクノロジー銘柄下落の影響が大きい「コミュニケーションサービス」、原油価格の反落を受けた「エネルギー」の下落率が大きくなっています。

個別では、決算を発表したアルファベット A(GOOGL)の下落が目立ちました。7-9月期決算は、検索連動広告、YouTube広告とも堅調で、市場予想を上回る増収増益でした。しかし、クラウドサービスの売上が前年同期比22%増と4-6月期の同28%増から鈍化、市場予想も2%下回って嫌気されました。会社は一部顧客のコスト削減の影響を受けたとコメントしています。

今週の米国株式

10-12月期の米国市場は反発が期待できると考えられます。(1)10-12月期は予想PERの計算基準が2023年予想EPS(S&P500指数は214ポイント)から2024年予想EPS(同244ポイント)に切り替わるタイミングであること、(2)7-9月期の決算発表は市場予想を上回って推移しており、(1)の移行はスムーズに行われると期待されること、(3)米国の景況感は年末にかけてピークアウトが見込まれ、これに沿って米10年国債利回りもピークアウトが想定される、ことが背景と考えられます。

先週はS&P500指数に続いてナスダック指数も下値支持ラインと期待された上向きの200日移動平均線を下回り、中期的トレンドが変化したのではとの見方が台頭しやすいタイミングと考えられます。ただ、より長いチャートを確認すると、S&P500指数は2022年10月に3,600ポイントで底入れ、2023年7月に4,600ポイントまで反発、現在値に近い4,100ポイントは半値押しの水準にあることが分かります。中期的なトレンドが変わっていないことを前提とすると、調整十分と考えられるのではないでしょうか。

今週の株価材料として、FOMC、雇用統計、7-9月期決算発表、などが注目されます。

今回のFOMCでは、政策金利は据え置きの見込みで、12月についてもFedWatchでは据え置きの確率が79%、利上げの確率が20%と据え置き予想が優勢となっています(日本時間30日(月)午前8時)。パウエルFRB議長の会見から、年内の利上げの可能性、来年に利下げに転じる時期と幅を探ることになるでしょう。

11/3(金)に発表予定の10月雇用統計で、非農業部門は前月比19.0万人増と、雇用市場の緩やかな鈍化を示す予想です。先週の7-9月期GDP速報値の発表で市場が感じる景況感がピークを付けた可能性に注目できるでしょう。同指標の発表を受けて米10年国債利回りにピークアウト感が強まるようなら、株式の反発につながる可能性が注目できます。

7-9月期の決算発表は、10/27(金)までにS&P500指数採用銘柄のうち246社が発表を終え、発表済企業を集計したEPSは前年同期比5.9%増、市場予想に対して7.4%上回って堅調です(Bloomberg集計)。今週の主な決算発表企業は、アップル、AMD、マクドナルド、ファイザー、イーライリリィ、パランティアテクノロジーズ、コインベースグローバルなどがあります。

経済指標では上記のほか、10/31(火)に中国の10月製造業PMI(前月の50.2から横ばいの予想)、同非製造業PMI(前月の51.7から52.0に改善の予想)、ユーロ圏の7-9月期実質GDP(前年比0.2%増の予想、4-6月期は同0.5%増)、米国の10月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の103から100に悪化の予想)。

11/1(水)に米国の10月ADP雇用統計(前月比15.0万人増の予想)、10月ISM製造業景気指数(前月の49.0から横ばいの予想)、11/2(木)に米国の9月製造業受注(前月比1.9%増の予想)、11/3(金)に米国の10月ISM非製造業景気指数(前月の53.6から53.0に悪化の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は10/20(金)から10/26(木)に7-9月期決算を発表した主要銘柄で、好決算で株価の反応も相対的に悪くなかったものから、マイクロソフト(MSFT)、アマゾン ドットコム(AMZN)、インテル(INTC)、コカ-コーラ(KO)、ベライゾン コミュニケーションズ(VZ)を選んでご紹介いたします。

図表3 7-9月期の好決算銘柄(10/20(金)~10/26(木)に発表したS&P500指数採用銘柄より)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(10/27)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートマイクロソフト(MSFT)329.81ドル29.4

【企業向けクラウドの伸びが加速】

7-9月期決算は、売上・EPSとも市場予想を上回る増収増益でした。企業向けクラウドの「アジュール」の売上伸び率(為替の影響を含む)が4-6月期の前年同期比26%増から同29%増へ上昇、これまでの低下トレンドから脱したことが好感されています。また、PCの出荷台数にリンクする「Windows OEM」の売上が前年同期比プラスに回復したこともポジティブに捉えられます。11月1日から投入するAI機能を利用する「Microsoft 365 Copilot」への期待も高くなっています。

買付チャートアマゾン ドットコム(AMZN)127.74ドル29.7

【クラウドサービスが堅調】

7-9月期は、市場予想を上回る増収増益でした。利益はコスト削減が効いて大幅な改善となっています。売上は、ネット通販、サブスクリプション、広告などが市場予想を上回りました。クラウドサービスのAWS売上は市場予想を下回って懸念されました。しかし、投資家向け説明会でCEOは「AWS事業は安定している、同社が合意に達した多くの取引が10-12月の早い時期に実施に移された」と指摘、10-12月期の売上に懸念がないことを示唆したことで安心感が広がりました。

買付チャートインテル(INTC)35.54ドル36.6

【10-12月期は増収に転換】

7-9月期は、前年同期比減収減益ながら、売上・EPSとも市場予想を大きく上回りました。10-12月期の売上ガイダンスは、レンジ中央値で前年同期比8%の増収への転換を示したことが好感されました。売上モメンタムの改善は、PC市場の改善に加えて、同社の競争力を増した製品の投入が背景になっているとみられます。主力のCPU市場で、AMDに対して市場シェアを失ってきた流れが変わる可能性に期待が高まっているようです。

買付チャートコカ-コーラ(KO)55.24ドル19.7

【値上げで予想以上の業績】

7-9月期決算は、値上げ効果で市場予想を上回る増収増益でした。オーガニック売上成長は前年同期比11%増で、価格および製品ミックスが同9%増、数量も同2%増の構成です。地域別には南米が同20%増とけん引しています。株価は7月から値下がりが顕著となっていますが、食欲を抑える効果がある肥満治療薬の影響がでるのではとの思惑も含まれているようです。ただ、足もとの業績が堅調であることから、戻りを試す可能性が高いでしょう。通期のオーガニック売上成長を同8~9%増から同10-~11%増へ引き上げました。

買付チャートベライゾン コミュニケーションズ(VZ)33.44ドル7.2

【フリーキャッシュフロー見通しを上方修正】

7-9月期決算は引き続き低調なものの、ワイヤレス・サービス収入や携帯電話の後払い契約の純増など、重要指標には改善の兆しが見られます。ブロードバンドの契約純増(家庭+企業)は4四半期連続で40万以上と好調です。通期ガイダンスでは、フリーキャッシュフローを従来の170億ドルから180億ドルに引き上げて好感されました。古い通信ケーブルの鉛による環境汚染が懸念材料となって株価が下落、10/27(金)の配当利回りは8.0%まで上昇しています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、マイクロソフトが2024年6月期、その他は2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
30(月) ・ユーロ圏景況感(10月) マクドナルド、コムストック
31(火) ・日本鉱工業生産(9月)
・日銀政策金利
・中国製造業・非製造業PMI(10月)
・ユーロ圏実質GDP(7-9月期、速報値)
・米S&PコアロジックCS住宅価格(8月)
・コンファレンスボード消費者信頼感(10月)
アドバンストマイクロデバイセズファイザー
キャタピラー、アムジェン
11月
1(水)
・中国財新製造業PMI(10月)
・米ADP雇用統計(10月)
・米求人労働異動調査(9月)
・米ISM製造業景気指数(10月)
・米FOMC政策金利
ペイパルホールディングスクラフトハインツ
スーパーマイクロコンピューター、エアビーアンドビー
2(木) ・米チャレンジャー人員削減(10月)
・米新規失業保険申請件数(10月28日に終わる週)
・米製造業受注(9月)
アップルパランティアテクノロジーズ
コインベースグローバルブロック、イーライリリィ
3(金) ・米雇用統計(10月)
・ISM非製造業景気指数(10月)
ブッキングホールディングス
6(月)    
7(火) ・中国貿易統計(10月)
・米貿易統計(9月)
・米消費者信用残高(9月)
リビアンオートモーティブマルケタ
アップスタートホールディングス、DRホートン
8(水)   アームホールディングスウォルトディズニー
ワーナーブラザーズディスカバリー
ロイヤルティファーマ
ヴァージン ギャラクティック、マラソンデジタルホールディングスIonQ
9(木) ・中国生産者・消費者物価指数(10月)
・米新規失業保険申請件数(11月4日に終わる週)
ユニティソフトウェアビヨンドミート
10(金) ・米ミシガン大学消費者信頼感(11月、速報値) ニオ

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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