好決算または上方修正期待の中小型株〈後編〉

好決算または上方修正期待の中小型株〈後編〉

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2023/10/25

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好決算または上方修正期待の中小型株〈後編〉

日本株は、米10年国債利回りの動きに振り回されています。10/23(月)には一時、同利回りが07年7月以来、5%を超える水準まで上昇しました。

それを受け、特に金利上昇に弱いとされる東証グロース市場指数は10/23(月)に817ポイント(終値)まで下げ、年初来安値を更新しました。指数の公表が始まった2022年4月以降、同年6/20の781.30が最安値であり、それが意識される水準になってきました。東証スタンダード市場指数も下落傾向ですが、今年1/5(木)の年初来安値からは上昇を維持しています。

米国の長期金利上昇をもたらす要因はいくつか指摘されます。(1)予想外に米国経済が強いこと、(2)原油価格の再上昇とインフレ懸念の継続、(3)米下院議長が空席状態、米財政への不安、(4)投機的な動きの拡大等が考えられます。ただ、これだけ長期金利上昇要因が多いということは、将来逆に動く可能性のある要素が多いということでしょう。

そうした中、東京市場ではいよいよ、今週から決算発表が本格化してきます。中小型株に関しては11月中旬発表の企業が多くなっていますが、株安局面は好業績銘柄の買い場になるかもしれません。

今回の「新興株ウィークリー」では、10月下旬以降11月中旬までに、決算発表が予定される銘柄の中から、好業績銘柄を抽出すべく、以下のようなスクリーニングを行なってみました。

(1)東証スタンダード市場、またはグロース市場に上場

(2)10/20(金)までの20営業日で1日当たり平均出来高が2万株超

(3)12月決算銘柄

(4)時価総額100億円以上1,000億円未満

(5)23.1-6期(12月決算銘柄の2Q累計)営業利益が1億円以上で、前年同期比30%超の営業増益、または黒字転換

(6)同四半期累計営業増益率が今期会社予想営業増益率を10%上回る(ただし黒字転換は優先)

(7)同四半期営業利益の通期会社予想営業利益に対する進捗率が50%超

図表の銘柄は、上記のすべての条件を満たしています。掲載の順番は(5)の営業増益率順となっています。

【参考】 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移

【参考】 10/17(火)~24(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

■図表 好決算または上方修正期待の中小型株〈後編〉

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株価
(10/24・終値)
23.1-6期営業増益率 進捗率※ 今期会社予想営業増益率
4772 4772 4772 4772 ストリームメディアコーポレーション(11/2) 209 黒転 328.9% 黒転
4404 4404 4404 4404 ミヨシ油脂(11/6) 1,213 黒転 69.5% 黒転
3001 3001 3001 3001 片倉工業(11/9) 1,707 14928.6% 73.8% 108.2%
7342 7342 7342 7342 ウェルスナビ(11/10) 1,092 523.5% 87.4% 2.9%
9522 9522 9522 9522 リニューアブル・ジャパン(11/14) 846 401.0% 53.9% 155.9%
6149 6149 6149 6149 小田原エンジニアリング(11/13) 2,256 305.6% 82.1% 65.4%
2986 2986 2986 2986 LAホールディングス(11/9) 4,480 208.9% 52.4% 30.1%
3299 3299 3299 3299 ムゲンエステート(11/14) 1,000 202.2% 71.3% 55.6%
3452 3452 3452 3452 ビーロット(11/14) 799 137.7% 62.3% 53.8%
5816 5816 5816 5816 オーナンバ(11/2) 790 69.0% 64.0% -9.0%
4107 4107 4107 4107 伊勢化学工業(10/26) 8,450 63.6% 54.6% 19.8%
5184 5184 5184 5184 ニチリン(11/10) 2,815 63.1% 53.6% 6.8%
5139 5139 5139 5139 オープンワーク(11/13) 3,455 57.8% 62.1% 34.1%
4377 4377 4377 4377 ワンキャリア(11/14) 3,370 50.9% 91.1% 31.5%
4235 4235 4235 4235 ウルトラファブリックス・ホールディングス(11/14) 1,294 44.7% 51.5% 9.5%
9164 9164 9164 9164 トライト(11/17) 693 37.8% 95.7% 22.1%
  • ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成
  • ※銘柄名右横カッコ内の日付は決算発表予定日です。決算発表予定日は予告なく変更されることがあります。
  • ※「進捗率」は23.1-6期の営業利益を通期会社予想営業利益で割って計算された比率になっています。
  • ※片倉工業(3001)の23.1-6期営業利益は2,014百万円で、前年同期の同利益が14百万円と小さい利益額であったことから、増益率が極端に大きくなっています。
  • ※オープンワーク(5139)は前年同期に四半期決算短信を作成していないため、会社公表の決算説明資料から、増益率や進捗率を計算しています。

一部掲載銘柄を詳細に解説!

■ミヨシ油脂(4404)~油脂素材メーカー。前期赤字で、今期2Qから黒字転換

★日足チャート(6ヵ月)

  • ※データは2023/10/24(日足)15:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■老舗油脂素材メーカー

創立101年の食品・化学の油脂素材メーカーです。

下記2事業を主軸に展開しています。

▹ 食品事業

(売上高構成比:68%、22.12期)

マーガリンやショートニングなど、数多くの油脂素材を食品業界に提供。食品加工油脂の生産量は国内トップクラスです。

山崎製パン(2212)に代理店を経由し製品を販売しています。また、日清オイリオグループ(2602)より、代理店を経由し原料を購入しています。2社は、同社株を10%保有する主要株主です(23.6時点)。

▹ 油化事業

(売上高構成比:31%、22.12期)

天然油脂原料や石油化学原料を応用した製品を企業向けに提供。石鹸、医療用シップ材、香粧品、飼料...etc、多様な用途・産業分野で使用されています。

SNSや2023年グッドデザイン賞で話題の『すぐに使える かける本バター』は同社製品です。

*マーガリンに含まれるトランス脂肪酸が健康に害を及ぼすという心配が世間を賑わせてきました。しかし、企業努力の結果、06年から14年にかけ、同社はマーガリン100gに含まれるトランス脂肪酸を10分の1以下へと低減することに成功。現在の含有量は天然バターの半分程で、もはやマーガリンは低トランス脂肪酸食品のひとつです。(同社HPより)

■4-6月期から、怒涛の黒字転換

油脂原料の高騰やコスト増が重しとなり、前期(22.12期)は2.7億円の最終赤字でした。

以降、販売価格の改定などが奏功し、今期上期(23.1-6期)時点での業績は堅調です。1Qは赤字であったものの、2Qから黒字転換。累計の売上高は従来予想をわずかに下振れたものの、営業利益は予想の2.8倍以上となりました。

黒字転換となった2Q決算発表時である8月以降、株価は右肩上がりです。10/24(火)時点で、年初来高値水準に位置しています。

営業利益の通期計画に対する進捗率は69%であり、期中での業績予想の上昇修正に期待感が持てるでしょう。また、PBRも0.5倍未満と低水準であり、今後の改善施策が求められる可能性もありそうです。

3Q決算発表予定日は、11/6(月)です。

■小田原エンジニアリング(6149)~テスラの躍進を支えた黒子企業

★日足チャート(6ヵ月)

  • ※データは2023/10/24(日足)15:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★四半期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■巻線システムで世界トップ級

モーターは、鉄心のような棒に導線をコイル状に巻き付けて作られ、電気を動力に変える働きをしています。自動車、家電製品、産業・医療機器、OA・AV機器など、電気で動くほとんどすべての製品に使われています。

小田原エンジニアリングは、モーターを作る際にコイルを形成する巻線機や、前後の工程の機器と組み合わせた一連の生産設備を生産・販売している企業で、世界トップ級のシェアを有しています。

売上構成比(23.12期上半期)は巻線機事業が69%で、残りが送風機・住設関連事業です。世界約30ヵ国の企業と取引をしているグローバル企業で国別売上構成比(22.12期)は日本43%、北米28%、中国15%他となっています。営業利益については、上半期はほとんど全てが巻線機事業からでした。

業績は急回復中です。8/10(木)発表の2023.12期上半期業績は売上高79億円(前年同期比54%増)、営業利益13億円(同305%増)と増収増益。EV用巻線機向けで大幅増収となりました。また、利益率の高い消耗品・予備品等の好調が増益に寄与しました。

これを受け、会社側は通期会社予想業績について、売上高は変えないものの、営業利益は12億円から16億円に上方修正しました。

■自動車のEV化・電装化が追い風

巻線機事業の主戦場は自動車向けとなっているようです。EV化や電装化の流れを受け、自動車を動かすのが内燃機関からモーターに変わり、モーター用巻線市場の規模は急拡大しつつあるようです。2017年頃は400億円程度の市場規模でしたが、現在ではその数倍程度に拡大しているとみられます。

自動車向け巻線機は、数年先販売の自動車に関係するものが多いようです。同社はEV量販で世界をリードするテスラにも納入実績があり、同社の成長を陰で支えた黒子的存在といえそうです。21.12期は日立系自動車製品関連企業が、22.12期はフォード向け売上高が主要販売先となっていました。

自動車がEV中心となり、さらに自動運転への対応が進む中、モーターの需要や巻線機の需要も増えそうです。ただ、同社製品・システムのすべてが、完全受注生産方式であり、会社側は品質保持のためにも、いたずらな規模拡大は追い求めない方針です。

予想PER10.9倍、PBR0.84倍(10/24・Quickベース)であり、市場拡大による成長余地は十分織り込まれていない印象です。ただ、ROEが5.8%と低めなため、純利益のさらなる拡大や、資本政策の吟味、IRの積極化等が必要かもしれません。

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