「米長期金利5%」と「1ドル150円」の後に来る未来予想図は?

「米長期金利5%」と「1ドル150円」の後に来る未来予想図は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/10/24

米長期金利の上昇・中東情勢の懸念などにより、日経平均は大幅反落

10月第3週(10/16-20)末の日経平均は、前週末比1,056円63銭安(▲3.27%)安と週足ベースで反落。週明け23日(月)には、心理的節目となる31,000円を終値ベースで割り込みました。同期間は米国市場も軟調で、市場の全体像を表すS&P500は200日移動平均線を下回って終え、市場の不安感を示唆するVIX(恐怖)指数は現地時間20日(金)に3ヵ月ぶりの高い水準まで上昇しました。

株安の背景には、米長期金利(10年債利回り)の上昇と、イスラエルとイスラム組織ハマスとの衝突による中東情勢に対する懸念があります。中東での地政学リスクの高まりは、世界主要市場にリスクオフムードをもたらしました。

米政府が財政赤字を補うために債券を増発するとの観測や、FRB(米連邦準備制度理事会)による金融引締め長期化懸念が市場に広がり、米長期金利は現地時間23日(月)に一時、16年ぶり高水準である5%台まで上昇。株式市場にとっての大きな逆風となった格好です。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(10/13~20・図表7)の首位はINPEX(1605)でした。中東情勢に対しての懸念から原油価格が上昇し、連れ高となりました。2位の京成電鉄(9009)は、英ファンドが筆頭株主であるオリエンタルランド(4661)株の一部を売却要求していたことが明らかとなり、資本効率の改善や株主還元への期待感から買い入ったもようです。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(10/13~20・図表8)の首位は、米長期金利の上昇などから軟調気味であった半導体関連株やハイテク株から複数ランクインしています。

10月第4週(10/23-27)は米大型テック企業や日本の主力企業の決算発表が予定されており、それらの動向が注目されます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(10/13~20)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(10/13~20)

「米長期金利5%」と「1ドル150円」の後に来る未来予想図は?

株式市場の動きを見る上で注目されている米10年国債利回りは、このところ急ピッチに上昇し、10/23(月)の夕方に遂に5%の大台に到達しました。その後、達成感が意識されて買い戻しが入ったため、利回りは低下へ転じましたが、今後も利回りの上昇傾向は続くのか、改めて注目されるところだと思います。

また、これも日本の株式市場の動きを見る上で重要視されているドル・円相場ですが、こちらは10/3(火)と10/23(月)の早朝に1ドル150円台の大台を付けました。その後は149円台に揺り戻されましたが、為替介入(円買い介入)が警戒される中での大台到達となりました。

大きな節目に到達した米10年国債と円相場ですが、今後の動向はどうなるのでしょうか?本稿では、目先の材料に注目しつつ、今後の方向性について考察します。

まず、米国10年国債利回りについて考えてみましょう。図表9は米国の長短金利(10年国債利回り、2年国債利回り)と、利回り差、政策金利の推移を示したグラフです。10年国債利回りは今年の春先以降、上昇トレンドを辿る一方、2年国債利回りは7月頃より上昇が頭打ちになっています。一般的に2年国債など(比較的に)短い金利は、金融政策の見通しを反映すると言われています。FRBの金融政策について、利上げ局面が終盤(もしくは既に打ち止め)との見方があるなか、2年国債利回りの上昇余地は限定的と考えられます。

図表9 米10年・2年国債利回りと長短金利差

  • ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成

一方、10年国債利回りのように、長めの金利は景気見通しを反映すると言われています。そうした中、10/26(木)に米国では7-9月期GDP統計が発表されます。現状、実質GDP成長率の市場予想(ブルームバーグ集計)は、前期比年率+4.5%であり、1-3月期(同+2.2%)、4-6月期(同+2.1%)から大きく加速することが見込まれています。一方、アトランタ連銀がGDP統計の算出に関連する月次統計から推計しているGDP Nowによると、直近の実質GDP成長率は同5.4%と市場予想を上回る高成長となっています。こうした高い経済成長率は、10年国債利回りなどの長期金利の上昇を促す可能性が高いと考えられます。

また、一郎の投資戦略「10月相場見通し 米国長期金利の低下は一時的?金利上昇を想定した投資戦略が有効と考える理由は?」でも指摘していますが、景況感の改善以外も長期金利の上昇要因が存在する中、10年国債利回りの上昇は継続中と考えられます。再度、図表9に注目すると、10年国債利回りから2年国債利回りを引いた金利差は、長らく異常事態ともいえる逆転現象が発生していました。現状は10年国債利回りの上昇によって、マイナスの金利差が縮小傾向にあり、中期的には逆転現象が解消へ向かうことが予想されます。

日本株については、金利上昇に弱いとされる成長株(グロース株)を中心に、当面は上値の重い展開が想定されるでしょう。

図表10   米7-9月期実質GDP成長率(前期比年率)の推計値

  • ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成

もう1つ節目を迎えたのがドル・円相場です。これまでの円安進行の背景にあったのは日米金利差の拡大でした。前述したように今後も米国長期金利の上昇が続く可能性が考えられる一方、日本長期金利についても、脱金融緩和への思惑もあり、米金利に歩調を合わせて上昇しています。したがって、日米金利差の観点から言えば、円安・ドル高が進む余地は大きくないと言えそうです。

そうした中、円相場を占う上で注目したいのがユーロ(対ドル)の動きでしょう。昨年10月にドル・円相場が150円台に到達した時もそうなのですが、円安・ドル高が進む裏にあるのが、ユーロ安の動きでした。今年のユーロ相場についても、7月半ばの1ユーロ=1.12ドル水準から、10月初旬には1.05ドル割れへユーロ安が進みました。足元でユーロ安の動きは一旦、収まっていますが、今後の展開が気になるところでしょう。

そうした中、10/26(木)にはECB理事会が開催されます。政策金利(リファイナンス金利)については前理事会において過去最高水準の4.50%へ引き上げられており、更にラガルドECB総裁は政策金利がピークに達したとは「言えない」と述べており、利上げ打ち止めが示唆された訳ではありません。それでも市場では、ECBが利上げを打ち止めるとの見方が強まっており、今回のECB理事会でも政策金利は据え置きが予想されています。市場予想通り政策金利が据え置きとなれば、これまでにユーロ安・ドル高が大きく進んでいただけにユーロ買い戻しの動きが継続しそうです。その場合、円相場についても円安・ドル高が一旦、頭打ちになるため、円安を追い風に堅調に推移してきた輸出株は上昇が一服する可能性が考えられます。

図表11 主要3通貨(円、ドル、ユーロ)の推移

  • ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成

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