アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~米国株は想定通りの反発!!決算終盤の好決算銘柄をご紹介~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~米国株は想定通りの反発!!決算終盤の好決算銘柄をご紹介~

投資情報部 榮 聡

2023/11/06

先週は米10年国債利回りがハト派と捉えられたFOMCの結果発表や米国政府の資金調達計画を受けて反落する中、企業決算は全体として堅調とみなされたことから、株式は大幅に反発しました。今週の株価材料として、7-9月期決算発表、金融当局者の発言、中東情勢、などが注目されます。

今回は10/27(金)から11/2(木)に7-9月期決算を発表した主要銘柄から、マクドナルド(MCD)アリスタ ネットワークス(ANET)イーライ リリィ(LLY) アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)トレイン テクノロジー(TT)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

S&P500指数は2022年10月の安値3,600ポイントから2023年7月の高値4,600ポイントまでの上昇に対する半値押しの4,100ポイントから反発、200日移動平均線を回復しました。一方、上値では一目均衡表の「雲」が抵抗帯として意識されます。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
不動産 8.5% 4.6% -5.4%
金融 7.4% 2.2% -3.2%
一般消費財・サービス 7.2% 0.6% -6.1%
情報技術 6.8% 1.9% 0.5%
コミュニケーションサービス 6.5% -0.9% 1.2%
S&P500 5.9% 1.2% -2.7%
資本財・サービス 5.3% 0.8% -6.1%
公益事業 5.2% 8.0% -3.3%
素材 5.1% 1.0% -5.7%
ヘルスケア 3.5% -2.1% -3.7%
生活必需品 3.2% 3.1% -7.2%
エネルギー 2.3% 1.0% 0.0%
騰落率上位(5日) 騰落率
USバンコープ 15.8%
ゴールドマン・サックス・グループ 13.0%
チャーター・コミュニケーションズ 12.9%
バンク・オブ・アメリカ 12.9%
サイモン・プロパティー・グループ 12.8%
騰落率下位(5日) 騰落率
デュポン・ド・ヌムール -3.4%
メルク 0.5%
キャタピラー 0.9%
ユナイテッドヘルス・グループ 1.2%
イーライリリー 1.4%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で5.9%、NYダウは5.1%、ナスダック指数は6.6%の大幅反発となりました。

米10年国債利回りがハト派と捉えられたFOMCの結果発表や米国政府の資金調達計画を受けて反落する中、企業決算は全体として堅調とみなされたことから、株式は売られ過ぎているとの認識が広がったとみられます。

FOMCでは、次回12月FOMCでの利上げの可能性や来年の利下げについては言質を与えませんでしたが、最近金融当局者が口にしていた「最近の長期金利の上昇は金融引き締めの効果をもつ」ことが声明文に記載されて、FRBの公式な考え方と認められたことがハト派と捉えられました。

また、10/31(火)に米財務省が公表した資金調達計画で、10-12月期の国債による市場からの調達額が7月末見込みの8,520億ドルから7,760億ドルに下方修正されたことも長期金利の低下に寄与したとみられます。10月雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比15万人増と市場予想の同18万人増を下回り、失業率が3.9%に上昇したことも景気の鈍化を示して長期金利の低下に寄与しました。

業種指数は、米10年国債利回りの低下を受けて「不動産」がトップです。一方、金利低下が通常マイナスに捉えられる「金融」が上昇しているのは、堅調な決算でも金利低下を想定していたため買いにくいと考えていた向きが、金利の反落をみて買いに動いたということと考えられます。そういう意味では、バリューを買いにいったということだと思われます。

個別株では、化学企業デュポンドヌムール(DD)がS&P100指数採用銘柄で唯一の下落となりました。11/1(水)に発表した7-9月期決算で売上が市場予想を3%下回り、通期の売上ガイダンスも市場予想を下回りました。顧客企業での在庫調整の影響を受けているとみられます。

今週の米国株式

10-12月期の米国市場は反発が期待できると考えられます。(1)10-12月期は予想PERの計算基準が2023年予想EPS(S&P500指数は216ポイント)から2024年予想EPS(同244ポイント)に切り替わるタイミングであること、(2)7-9月期の決算発表は市場予想を上回って推移しており、(1)の移行はスムーズに行われると期待されること、(3)米国の景況感は年末にかけてピークアウトが見込まれ、これに沿って米10年国債利回りもピークアウトが想定される、ことが背景と考えられます。

今週の株価材料として、7-9月期決算発表、金融当局者の発言、中東情勢、などが注目されます。

7-9月期の決算発表は、11/3(金)までにS&P500指数採用銘柄のうち406社が発表を終え、発表済企業を集計したEPSは前年同期比2.9%増、市場予想に対して7.6%上回って堅調です(Bloomberg集計)。今後の決算発表企業を含めた予想では同3.7%増と、前四半期から改善の予想です(図表3、FactSet社集計)。今週の主な決算発表企業は、リビアンオートモーティブ、アームホールディングス、ウォルトディズニー、ワーナーブラザーズディスカバリー、ユニティソフトウェアなどがあります。

先週に11月FOMCが終わったことで、今週は金融当局者の発言が増えます。11/9(木)にパウエルFRB議長がIMF(国際通貨基金)のコンファレンスでパネルを務めるほか、アトランタ連銀のボスティック総裁、アトランタ連銀のローガン総裁、リッチモンド連銀のバーキン総裁などの発言が注目を集める可能性があります。

今週は相場全体に影響をもたらすような重要な経済イベントが少ないため、市場の目が再び中東情勢に向かう可能性がありそうです。イスラエルがガザ北部の難民キャンプを空爆して、民間人に多数の巻き添えが出たことで米欧諸国のイスラエルに対する支持が後退する可能性は懸念材料です。

一方、今回の紛争のきっかけを作ったイスラム組織ハマスにも、先制攻撃に自身の存在感を示す以外に大義が見当たらないことから、周辺の中東諸国からの支持は限定的となっています。このため局地的な紛争に収まる可能性のほうが高まっているとみられ、相場を揺るがすイベントにはならない見込みです。

経済指標では、11/6(月)に中国の10月貿易統計(輸出は前年比3.8%減の予想、前月は同6.2%減、輸入は同5.0%減の予想、前月は同6.2%減)、11/10(金)に米国の11月ミシガン大学消費者信頼感(前月の63.8から63.5に悪化の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は10/27(金)から11/2(木)に7-9月期決算を発表した主要銘柄で、好決算で株価の反応も相対的に悪くなかったものから、マクドナルド(MCD)アリスタ ネットワークス(ANET)イーライ リリィ(LLY)アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)トレイン テクノロジー(TT)を選んでご紹介いたします。

図表3 S&P500指数の四半期EPS(前年同期比、%)

※FactSet社の公表データをもとにSBI証券が作成

図表4 7-9月期の好決算銘柄(10/27(金)~11/2(木)に発表したS&P500指数採用銘柄より)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(11/3)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートマクドナルド(MCD)267.87ドル21.5

【既存店売上が前年比8.8%増と好調】

7-9月期決算は、世界の既存店売上が前年同期比8.8%増と市場予想の同7.8%増を上回り、売上は前年同期比14%増、EPSは同18%増と好調でした。CEOは、「マクロ経済の環境は私たちが想定した線で展開しており、顧客には引き続き利便性とバリューを提供する」として自信を示しています。同社の株価は9月半ばより調整が大きくなっていますが、肥満治療薬の利用の広がりが影響を与えるとの見方で売っている向きがあると言われていますが、行き過ぎとみられます。

買付チャートアリスタ ネットワークス(ANET)212.49ドル29.7

【製品のアップグレードサイクルで売上好調】

データセンターのネットワーク機器大手。現在広く普及している100ギガ品から200ギガ品、400ギガ品へのアップグレードが進んでいることを背景に2021年頃から売上成長が高まっています。このような高い売上成長が永遠に続くわけではありませんが、2023年12月期の前年比32%増に続いて、2024年12月期、2025年12月期も10%以上の増収が予想されています。7-9月期の売上は前年同期比28%増、前四半期比4%増で、市場予想も上回りました。需要動向に加え、サプライチェーン問題の緩和も好影響となっています。

買付チャートイーライ リリィ(LLY)567.81ドル46.2

【肥満治療薬への期待が維持された】

7-9月期決算は好悪まちまちの内容でしたが、同日に決算を発表したノボノルディスクの肥満治療薬「ウェゴビー」の売上が7-9月期に前年同期比8.3倍となり、同じ作用機序をもつ肥満治療薬の承認が期待されているイーライリリィへの期待も維持された形です。7-9月期の売上は前年同期比37%増で、医薬品権利の売却など一時要因を除くベースでも同24%増と伸びました。売上をけん引しているのは、糖尿病治療薬の「マンジャロ」(4-6月期の9.8億ドルから14.1億ドルに増加)、前年同期比68%増となったがん治療薬の「ベージニオ」などです。調整後EPSは市場予想を大幅に下回りましたが、買収企業の研究開発資産を費用計上したことが主因で、同じ要因で通期の調整後EPSガイダンスが6.50~3.70ドルに引き下げられました。なお、開発中のアルツハイマー治療薬の承認は10-12月期から来年1-3月期に先送りの見込みと発表されました。

買付チャートアドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)112.25ドル29.2

【AI計算向けGPU「MI300」に注目高まる】

7-9月期はPC向け、データセンター向けCPUの改善によって前年同期比増収増益に転換、市場予想も上回りました。一方、10-12月期のガイダンスは売上が前年同期比4~14%増に相当する58~64億ドルとモメンタムの改善を見込みますが、市場予想は下回りました。一方、市場が注目したのは、AI計算向けのGPU「MI300」シリーズです。会社は10-12月期中の量産開始と、2024年12月期の売上として20億ドルを掲げています。エヌビディアが支配している市場を侵食することができるか注目が集まっています。

買付チャートトレイン テクノロジー(TT)218.00ドル21.7

【3四半期連続で売上見通しを引き上げ】

暖房・換気・空調(HVAC)で北米首位級の会社です。7-9月期決算は、売上が前年同期比12%増、EPSが同23%増、受注が同10%増で、いずれも市場予想を上回って好調でした。業績好調をけん引しているのは米州市場です。住宅向けの落ち込みが落ち着く一方で商業向けの需要が好調で、オーガニック売上成長は同11%に達しています。受注のオーガニック成長率は、米州が同7%、欧州・中東・アフリカが同12%、アジア太平洋が同12%増と揃って好調です。通期売上は前年比約10~11%増へ、3四半期連続での引き上げとなっています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
6(月) ・中国貿易統計(10月)  
7(火) ・米貿易統計(9月)
・米消費者信用残高(9月)
リビアンオートモーティブマルケタ
アップスタートホールディングス、DRホートン
8(水) ・ユーロ圏小売売上高(9月)  アームホールディングスウォルトディズニー
ワーナーブラザーズディスカバリーロイヤルティファーマ
ヴァージン ギャラクティック、マラソンデジタルホールディングス
IonQ
9(木) ・中国生産者・消費者物価指数(10月)
・米新規失業保険申請件数(11月4日に終わる週)
ユニティソフトウェアビヨンドミート
10(金) ・米ミシガン大学消費者信頼感(11月、速報値) ニオ
13(月) ・日本工作機械受注(10月)  
14(火) ・ドイツZEW景気指数(11月)
・ユーロ圏実質GDP(7-9月期、改定値)
・米NFIB中小企業楽観指数(10月)
・米消費者物価指数(10月)
ホームデポ
15(水) ・日本実質GDP(7-9月期、改定値)
・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(10月)
・米小売売上高(10月)
・米生産者物価指数(10月)

・ニューヨーク連銀製造業景気指数(11月)
シスコシステムズ
16(木) ・日本機械受注(9月)
・米新規失業保険申請件数(11月11日に終わる週)
・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(11月)
・米鉱工業生産(10月)
・米NAHB住宅市場指数(11月)
ウォルマート、ターゲット、アプライドマテリアルズ
17(金) ・米住宅着工件数・建設許可件数(10月) パロアルトネットワークス、ロスストアーズ

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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