アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~相場上昇をけん引する52週高値銘柄~
投資情報部 榮 聡
2023/11/20
先週は予想を下回る消費者物価指数を受けて米10年国債利回りが4.4%台まで低下したことから株式は続伸となりました。今週の株価材料として、FOMC議事要旨(10月31日、11月1日開催分)、小売企業決算とブラックフライデー、エヌビディアの決算、などが注目されます。
今回は最近52週高値を更新した株価好調銘柄から、サービスナウ(NOW)、マイクロソフト(MSFT)、アドビ(ADBE)、インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)、ウーバー テクノロジーズ(UBER)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
米10年国債利回りの低下持続を受けて、上値抵抗帯の「雲」を勢いよく上抜けました。11/17(金)終値は7/27(木)に付けた年初来高値4,607.07ポイントまで2.1%に迫っています。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
不動産 | 4.5% | 9.6% | -0.8% |
素材 | 3.7% | 6.5% | -0.7% |
一般消費財・サービス | 3.4% | 10.7% | 3.1% |
金融 | 3.3% | 8.5% | 3.1% |
公益事業 | 3.0% | 6.8% | -1.9% |
資本財・サービス | 2.9% | 6.7% | -0.7% |
コミュニケーションサービス | 2.3% | 4.4% | 8.5% |
S&P500 | 2.2% | 6.9% | 3.3% |
情報技術 | 1.7% | 11.9% | 11.2% |
ヘルスケア | 1.5% | 0.0% | -4.0% |
エネルギー | 0.9% | -6.9% | -4.7% |
生活必需品 | 0.6% | 3.0% | -4.4% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ターゲット | 19.9% |
インテル | 12.7% |
USバンコープ | 10.1% |
テスラ | 9.2% |
バンク・オブ・アメリカ | 8.3% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
シスコシステムズ | -9.2% |
ウォルマート | -6.5% |
RTX | -3.1% |
エクセロン | -1.2% |
イーライリリー | -1.0% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で2.2%、NYダウは1.9%、ナスダック指数は2.4%と3週続伸でした。
10月消費者物価指数の伸び率が、総合、コアとも前月から鈍化、市場予想も下回ったことで米10年国債利回りが低下、株式相場を押し上げました。また、「つなぎ予算」が11/14(火)に成立して当面の政府閉鎖リスクが回避できたこともプラスに寄与したとみられます。米10年国債利回りは先々週末の4.6%台から4.4%台まで低下しました。
10月小売売上高は前月比0.3%減の市場予想を上回ったものの、前月比0.1%減と7ヵ月ぶりのマイナスとなりました。これも長期金利を抑える要因となったとみられます。また、8-10月期決算を発表したウォルマートからは、先行きの売上について「10月後半から不安定(uneven)となっている」と慎重なコメントが出ました。総合すると、個人消費が鈍化する可能性が高まったと捉えられます。
業種指数では、長期金利の低下を受けた「不動産」、リンデなど化学メーカーがけん引した「素材」、テスラがけん引した「一般消費財・サービス」、バリューの高さが買われているとみられる「金融」などの上昇が大きくなっています。
個別株では、小売のターゲット(TGT)が2割近く上昇してトップでした。同社は新型コロナ禍による物流混乱の中で商品戦略、在庫戦略を間違えて過剰な在庫に苦しんできました。しかし、8-10月期決算は既存店売上が前年同期比4.9%減ながら市場予想の同5.2%減を上回り、粗利率が前年同期から改善、期末在庫は同14%減となり、最悪期脱出への期待が高まりました。
今週の米国株式
S&P500指数は10/27(金)終値4,117.37ポイントから11/17(金)終値4,514.02ポイントまで10%近い反発となっており、目先は戻り一巡となりやすいでしょう。さらに上値追いとなるかは、引き続き米10年国債利回りの動向が重要でしょう。
米10国債利回りの一目均衡表によると、図表3の通り下値支持帯となる「雲」の中に入っています。一般にテクニカル指標では、重要ポイントはファンダメンタルズの変化がないと超えないと考えます。市場予想を下回る10月消費者物価指数で「雲」の中に入り、7ヵ月ぶりの前月比マイナスとなった10月小売売上高で「雲」の中にとどまったと解釈できます。
「雲」を下抜けるためには、ファンダメンタルズの変化が必要と考えられます。これらに当たるものとして、小売企業による慎重な売上見通しが重なる、週末のブラックフライデーなど年末商戦が予想よりも低調となる、などが実現すると長期金利は低下しやすく、株価を支える要因になると期待されます。
今週の株価材料として、FOMC議事要旨(10月31日、11月1日開催分)、小売企業決算とブラックフライデー、エヌビディアの決算、などが注目されます。
前回FOMCでは、会見で12月FOMCでの利上げの可能性や来年の利下げについて言質を与えませんでしたが、「最近の長期金利の上昇は金融引き締めの効果をもつ」と声明文に記載されたことがハト派と捉えられました。長期金利を動かす可能性のあるイベントとして注目です。
先週のターゲット、ウォルマートに続き、今週もベストバイ、ロウズ、ダラーツリー、クローガーなど、小売企業の8-10月期決算発表が続きます。各社の見通しコメントで消費減速に関する証拠に厚みがでてくると、長期金利のピークアウトがより確固なものとなりそうです。また、今週後半から年末商戦に突入します。全米小売業協会は11月、12月の合計売上を前年比3~4%増と予想、例年に比べ低めの伸びが見込まれています。
エヌビディアの8-10月期決算発表が11/21(火)に予定されています。同社はAIコンピュータ市場をほぼ独占していることから、その売上動向はAI市場の広がりを象徴するものとして市場の注目を集めています。前回の決算発表以降に、(1)中国向けに開発したAI向け半導体が新たに米国政府によって規制対象となった、(2)AMDがAI向け半導体で対抗製品の「MI300」シリーズ量産を開始する、(3)米国政府の規制を再び回避するための中国向け製品を新たに開発したと伝えられる、などの展開がありました。
経済指標では、11/21(火)に米国の10月中古住宅販売件数(前月比1.5%減の予想)、11/22(水)に米国の10月耐久財受注(前月比3.1%減の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は当社サイトの「米国株スクリーナー」を使って、52週高値更新銘柄をご紹介いたします。
【スクリーニング条件】
(1)過去5営業日に52週高値を更新(11/16時点)
(2)11/16(木)の株価が前日比プラス
(3)時価総額1,000億ドル以上
この条件を満たす10銘柄を図表4に抽出しました。(2)の条件は、大幅な相場上昇を経て利食いが活発化したとみられる日で、同日にもプラスを維持した銘柄は、腰の入った買いが続いている銘柄の可能性があると考えて付加しました。
半導体のインテル、化学メーカーのリンデ以外は規模は様々ながらソフトウェア企業が占めています。生成AIを生かすことで業績を伸ばせる可能性が高い企業が物色されている可能性があるでしょう。生成AI関連で、特に関わりが強いものとしては、アドビ、IBM、マイクソフト、サービスナウ、エス・エー・ピーなどがあります。11月1日掲載の「生成AIの長期市場見通しと注目銘柄の状況をチェック」もご参照ください。
インテルは、先週号で取り上げましたが、7-9月期決算を受けて通期のEPS修正率が64%と主要銘柄の中では最も大きくなっていました。アナリストによる投資判断の引き上げが続いており、最近更新された目標株価は40~50ドルのレンジに引き上げられています。
リンデの2023年12月期は景気減速の中で2%の減収見込みですが、EPSは同14%増と値上げの効果で伸ばせる見通しです。顧客サイトに設備をもってサービスするビジネスモデルの強さが表面化していると考えられます。7-9月期決算は、市場予想に対して売上が3%、EPSが9%上回って好調でした。
このリストで意外に思ったのは、ウーバー テクノロジーズでした。日本でもライドシェア(一般ドライバーによるタクシーサービスの提供)が解禁される可能性があるため、注目できるでしょう。
ここから、サービスナウ(NOW)、マイクロソフト(MSFT)、アドビ(ADBE)、インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)、ウーバー テクノロジーズ(UBER)を選んでご紹介いたします。
図表3 米10年国債利回りの一目均衡表(日足、3ヵ月)
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 52週高値更新銘柄(当社サイト「米国株スクリーナー」より)
コード | 銘柄名 | 現在値 (ドル) |
52週高値更新 (5営業日前) |
株価騰落率 (前日比) (%) |
時価総額 (億ドル) |
ADBE | アドビ | 602.1 | ◯ | 1.1 | 2,710 |
IBM | インターナショナル・ビジネス・マシーンズ | 153.1 | ◯ | 0.3 | 1,393 |
INTC | インテル | 43.4 | ◯ | 6.8 | 1,712 |
INTU | インテュイット | 557 | ◯ | 0.3 | 1,557 |
LIN | リンデ | 408.4 | ◯ | 1.4 | 1,953 |
META | メタ・プラットフォームズ | 334.2 | ◯ | 0.4 | 8,550 |
MSFT | マイクロソフト | 376.2 | ◯ | 1.8 | 27,475 |
NOW | サービスナウ | 652.3 | ◯ | 0.2 | 1,334 |
SAP | エス・エー・ピー | 148.6 | ◯ | 0.1 | 1,834 |
UBER | ウーバー・テクノロジーズ | 54.4 | ◯ | 1.2 | 1,106 |
注:データは11/16(木)時点で、銘柄コード順です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (11/20) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | サービスナウ(NOW) | 654.36ドル | 51.7 | 【企業の生成AI活用で活躍へ】 企業向けソフトウェアの会社。エヌビディアによって企業向けサービスの分野でパートナーとして選ばれたほか、アクセンチュア、デロイトと提携、企業が生成AIの機能を業務執行に生かしていく上で、頼れる存在になりつつあると考えられます。生成AI関連のソフトウェア企業で最も注目できる1社とみられます。7-9月期決算は、売上が前年同期比25%増、調整後EPSが同49%増で市場予想を上回り、通期サブスクリプション収入見通しを引き上げて好調です。 | |
買付 | マイクロソフト(MSFT) | 369.85ドル | 28.5 | 【企業向けクラウドの伸びが加速】 7-9月期決算は、売上・EPSとも市場予想を上回る増収増益でした。企業向けクラウドの「アジュール」の売上伸び率(為替の影響を含む)が4-6月期の前年同期比26%増から同29%増へ上昇、これまでの低下トレンドから脱したことが好感されています。また、PCの出荷台数にリンクする「Windows OEM」の売上が前年同期比プラスに回復したこともポジティブに捉えられます。11月1日から投入したAI機能を利用する「Microsoft 365 Copilot」への期待も高くなっています。 | |
買付 | アドビ(ADBE) | 602.66ドル | 33.7 | 【AI機能の付加に合わせて値上げ】 画像処理、文書処理などソフトウェアの世界的大手です。2016年にAIテクノロジー基盤の「Adobe Sensei」を投入し、AI技術の利用に早くから注力しています。生成AIでは画像を作れる「Adobe Firefly」を投入しています。「Firefly」はほしい画像のイメージをテキストで入力することによって画像を作成できるものです。6-8月期決算は、市場予想を上回る増収増益で好調です。「Firefly」等のAI関連の新機能追加を背景に11月からの全面的な値上げを発表しました。9-11月期決算は12/13(水)に発表予定です。 | |
買付 | インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM) | 152.89ドル | 15.4 | 【業績回復に安定感】 7-9月期決算は売上が前年同期比5%増、調整後EPSが同22%増、それぞれ市場予想を0.5%、4%上回りました。部門別の増収率は、ソフトウェアが同8%増、コンサルティングが同6%増、インフラが同2%減です。業績拡大のトレンドが安定しつつあるとみられます。決算リリースでCEOは「 顧客は生産性と業務効率化のために、われわれのワトソンAIとデータプラットフォームをクラウドソリューションとともに採用することが増えつつある」と事業への自信を示しています。 | |
買付 | ウーバー テクノロジーズ(UBER) | 54.44ドル | 36.8 | 【ライドシェアが好調】 7-9月期決算は売上が前年同期比11%増で、EPSは0.10ドルへ黒字転換(前年同期は0.61ドルの赤字)、それぞれ市場予想を3%、10%下回りました。デリバリー部門がビジネスモデルの変更で売上が市場予想を下回り、フレイト部門は市場の変化を受けて減収減益でした。しかし、主力のモビリティ部門の売上は同33%増、調整後EBITDA(利払い、税金、償却前利益)は同43%増と順調でした。同部門では競合のリフトに対する優位性が高まり、利益率も前年同期から改善しています。2024年12月期は売上が前年比16%増、EPSは同83%増と業績の拡大が続く見込みです。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、マイクロソフトが2024年6月期、アドビは2024年11月期、その他は2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
20(月) | ズームビデオコミュニケーションズ | |
21(火) | ・EU27ヵ国新車登録台数(10月) ・シカゴ連銀全米活動指数(10月) ・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(11月) ・米中古住宅販売件数(10月) ・FOMC議事要旨(10月31日、11月1日開催分) |
エヌビディア、アナログデバイセズ、ロウズ、ベストバイ、HP |
22(水) | ・米耐久財受注(10月) ・米新規失業保険申請件数(11月18日に終わる週) ・ミシガン大学消費者信頼感(11月、確報値) |
|
23(木) | ・米国市場休場(感謝祭) ・auじぶん銀行日本製造業PMI(11月) ・HCOBユーロ圏製造業PMI(11月) |
|
24(金) | ・ブラックフライデー(小売店でセールが行われる) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(11月) |
|
27(月) | ・中国工業企業利益(10月) ・米新築住宅販売件数(10月) |
ニオ |
28(火) | ・S&PコアロジックCS住宅価格(9月) ・コンファレンスボード消費者信頼感(11月) ・米リッチモンド連銀製造業景気指数(11月) |
クラウドストライクホールディングス |
29(水) | ・米実質GDP(10-12月期) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック) |
ダラーツリー |
30(木) | ・日本鉱工業生産(10月) ・中国製造業・非製造業PMI(11月) ・米個人所得・個人支出(10月) ・米個人消費支出物価指数(10月) ・米新規失業保険申請件数(11月25日に終わる週) ・米中古住宅販売成約(10月) |
セールスフォース、クローガー、アルタビューティ |
12月 1(金) |
・米ISM製造業景気指数(11月) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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