アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~物色は小型株の「ラッセル2000」にも広がる!?~

投資情報部 榮 聡
2023/12/11
先週は利食い売りと金利低下による下支えでもみ合う中、週後半にAI市場に関するポジティブ材料が出てテクノロジー株が主導して上昇、主要3指数とも6週連続の上昇となりました。今週の株価材料として、12月FOMC、11月小売売上高、11月物価統計、などが注目されます。
今回は最近小型株指数の「ラッセル2000」に動意がみられることから、これに関連するバンガード ラッセル2000 ETF(VTWO)、バンガード ラッセル2000グロース株 ETF(VTWG)、デュオリンゴ(DUOL)、e.l.f.ビューティー(ELF)、ストーン A(STNE)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数のローソク足(日足、1年)

上昇しつつあり、現在値に近づきつつある25日移動平均線に注目できるでしょう。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
コミュニケーションサービス | 1.4% | 2.4% | 2.8% |
一般消費財・サービス | 1.1% | 6.9% | 0.2% |
情報技術 | 0.7% | 3.4% | 7.6% |
S&P500 | 0.2% | 4.3% | 2.6% |
資本財・サービス | 0.2% | 6.1% | 3.2% |
ヘルスケア | 0.2% | 4.5% | -0.7% |
金融 | -0.1% | 6.4% | 4.8% |
公益事業 | -0.3% | 4.5% | -0.1% |
不動産 | -0.4% | 10.0% | 3.4% |
生活必需品 | -1.2% | 1.3% | -2.9% |
素材 | -1.7% | 5.6% | -0.3% |
エネルギー | -3.3% | -2.3% | -9.9% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス | 11.4% |
CVSヘルス | 9.7% |
ボーイング | 4.6% |
ゼネラル・モーターズ | 4.3% |
アッヴィ | 4.1% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
チャーター・コミュニケーションズ | -8.5% |
SLB | -6.9% |
プロクター・アンド・ギャンブル | -4.9% |
セールスフォース | -3.5% |
エクソンモービル | -3.3% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.2%、NYダウは0.0%、ナスダック指数は0.7%の上昇でした。S&P500指数は終値、ザラ場とも年初来高値を更新しました。
12/6(水)までは11月の相場上昇に対する利食いと長期金利低下による下支えによってもみ合いが続いていました。
一方、12/7(木)にはAMDのAI向け半導体「MI300」に関する追加情報、アルファベットの新たなAI技術基盤「ジェミニ」の発表を受けてAI市場の成長を評価する動きが出てテクノロジー株主導で上昇しました。
12/8(金)には11月雇用統計の非農業部門が前月比19.9万人増と市場予想の同18.0万人増を上回り、12月ミシガン大学消費者信頼感が69.4と前月の61.3から大きく改善する一方、インフレ期待は1年後が前年比+3.1%、5年後が同+2.8%と低下する中、米10年国債利回り、株価ともに上昇しました。
業種指数では、アルファベット、メタプラットフォームズがけん引した「コミュニケーションサービス」、ホームデポ、アマゾンドットコム、テスラがけん引した「一般消費財・サービス」が1%以上の上昇となりました。個別株では、ボーイング(BA)の続伸が目立ちました。航空機の納入機数が加速し始めていることを背景に、アナリストによる投資判断の引き上げが続いています。
今週の米国株式
米国の株式市場には10-12月期に上昇しやすいという経験則がありますが、これは予想PERを計算する基準年が今年から来年に切り替わることで、予想PERが低下するケースが多いことが背景と考えられます。S&P500指数の予想PERは2023年予想では21.3倍ですが、2024年予想では18.9倍に低下する計算です(予想EPSはFactSet社の集計値によります)。先週に年初来高値を更新した後、年内はジリ高となる可能性が高そうです。
今週の株価材料として、12月FOMC、11月小売売上高、11月物価統計、などが注目されます。
12月FOMCの政策金利は、据え置きの見込みです。市場の注目は来年のどのタイミングで利下げに転じるか、また、どの程度利下げされるかになりそうです。FedWatchによる政策金利の見通しによれば、来年3月または5月に利下げに転じ、12月までに2~4回の利下げが見込まれています。
FOMCメンバーによる9月時点の見通しでは、2024年に1回の利下げが見込まれており、現時点では市場とFOMCの見通しに大きな乖離が生じています。この乖離が縮小するか注目されます。
12/14(木)に発表の11月小売売上高は、前月比-0.1%が予想されています。予想通りなら波乱はなさそうです。一方、予想以上に強いようだと金利上昇につながり、株価にマイナスとなる可能性もありそうです。
11月物価統計については、インフレの鈍化を示唆すると見込まれています。12/12(火)に発表の11月消費者物価指数は総合指数が前年比+3.1%の予想(前月は同+3.2%)、コア指数は前年比+4.0%の予想(前月は同+4.0%)、同生産者物価指数は総合指数が前年比+1.1%の予想(前月は同+1.3%)、コア指数は前年比+2.2%の予想(前月は同+2.4%)です。
経済指標では上記のほか、12/13(水)に日本の10-12月期日銀短観(大企業製造業DIは前回の9から10に改善の予想)、12/15(金)に中国の11月鉱工業生産(前年比+5.7%の予想、前月は同+4.6%)、同じく小売売上高(前年比+12.5%の予想、前月は同+7.6%)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は米国の小型株からなるラッセル2000指数を取り上げます。
ラッセル2000指数は、年初来S&P500指数にアンダーパフォームが続いていましたが、ここ2週間ほどS&P500指数を上回って上昇する日が目立っています(図表3)。
ラッセル2000指数に動意がみられる理由としては、(1)大型株の戻りがかなり良いところまできたとの判断から、市場に物色を広げる機運がある、(2)市場のメインシナリオ通りに米国経済がソフトランディングなら、小型株のリスクは限定される、が考えられるでしょう。
ラッセル2000に注目する場合の投資手段としては、やはりリスクが高いため、指数に投資するのが最も適切な投資手段となるでしょう。バンガード ラッセル2000 ETF(VTWO)、バンガード ラッセル2000グロース株 ETF(VTWG)をご紹介いたします。
個別銘柄に投資する場合は、銘柄を絞って行う必要があるでしょう。そこで今回は、12/4(月)までの過去1ヵ月の指数上昇寄与上位20銘柄に、以下の条件を課して図表4の銘柄を抽出しました。
【スクリーニング条件と結果】
① 今期予想営業利益率がプラス
② 来期予想EPSが黒字
③ 来期予想増収率が10%以上
④ アナリストのレーティング付与数が10以上
⑤ BUY比率が30%以上
ここから、デュオリンゴ(DUOL)、e.l.f.ビューティー(ELF)、ストーン A(STNE)選んでをご紹介いたします。
図表3 小型株指数のラッセル2000に動意

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 ラッセル2000構成銘柄を対象としたスクリーニング
コード | 銘柄名 | 営業利益率 (今期予想) (%) |
予想EPS (今期予想) (ドル) |
予想EPS (来期予想) (ドル) |
来期 増収率 (%) |
レーティング付与数 | BUY比率 |
DUOL | デュオリンゴ | 1.6 | 0.22 | 0.75 | 31.0 | 13 | 46.2 |
ELF | e.l.f.ビューティー | 17.4 | 2.65 | 3.08 | 21.2 | 14 | 78.6 |
STNE | ストーンコー | 35.8 | 4.42 | 6.03 | 10.5 | 17 | 41.2 |
BRBR | ベルリング・ブランズ | 20.2 | 1.59 | 1.86 | 10.9 | 15 | 93.3 |
BE | ブルーム・エナジー | 5.7 | -0.37 | 0.22 | 26.0 | 26 | 61.5 |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (12/8) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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買付 | バンガード ラッセル2000 ETF(VTWO) | 75.51ドル | - | 【小型株へのエクスポージャーを提供】 小型株のラッセル2000指数のパフォーマンスへの連動を目指すETFです。グロースおよびバリュースタイルに分散した米国小型株へのエクスポージャーを提供します。11月末の純資産総額は65.3億ドル、分配利回りは1.6%、経費率は0.1%です。 | |
買付 | バンガード ラッセル2000グロース株 ETF(VTWG) | 170.24ドル | - | 【小型グロース株へのエクスポージャーを提供】 ラッセル2000グロース株指数のパフォーマンスへの連動を目指すETFです。同指数はラッセル2000インデックス構成銘柄のうち株価純資産倍率が高く、成長率の予想値・実績値がともに高い企業からなります。11月末の純資産総額は7.5億ドル、分配利回りは0.88%、経費率は0.15%です。 | |
買付 | デュオリンゴ(DUOL) | 214.75ドル | 286.3 | 【語学学習アプリの会社】 2012年創業の語学学習アプリの会社で、語学学習をゲーム化することで人気を博しています。基本的に無料で学習できますが、有料会員になって広告を無くするなどの特典を受けることもできます。2023年7-9月期のデイリー・アクティブ・ユーザーは24.2百万人で、うち5.8百万人が有料会員です。売上の77%が有料会員のサブスクリプション収入からなり、残りは広告収入、テストの受験料などからなります(2023年7-9月期)。7-9月期業績は、売上が前年同期比43%増で、EPSは前年同期の0.46ドルの赤字から0.07ドルの黒字に転換しています。 | |
買付 | e.l.f.ビューティー(ELF) | 127.27ドル | 48.0 | 【カリフォルニアの化粧品会社】 2004年にカリフォルニアで創業した化粧品会社。製品の開発に動物を用いた実験がなされていないことなどを指す「Cruelty-free(クルエルティフリー)」を売りとしています。2024年3月期業績の市場コンセンサスは、売上が前年比57%増、EPSは2.4倍に拡大すると見込まれています。Bloombergアナリストは、低価格と数年来にわたる販売促進が効いており、売上拡大は2024年3月期下半期も続きそうだとコメントしています。 | |
買付 | ストーン A(STNE) | 15.84ドル | 12.9 | 【ブラジルのフィンテックの会社】 ブラジルのフィンテックの会社。主に中小事業者向けに実店舗やオンラインショップで決済のデジタル化を進めるためのソリューションを提供しています。2021年、2022年は金利上昇による資金調達コストの増加を主な理由に純利益が赤字化しましたが、経営陣の交代を経て今期は黒字転換の見込みです。7-9月期決算は、売上が前年同期比25%増、調整後純利益が同35%増、調整後純利益率は13.9%と好調です。2024~2027年の年平均成長率の目標として、取り扱い総額は13%、純利益は31%を掲げています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、e.l.f.ビューティは2024年3月期、その他は2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
11(月) | ・日本工作機械受注(11月) ・NY連銀1年インフレ期待(11月) ・米10年国債入札 |
|
12(火) | ・ドイツZEW景気指数(12月) ・NFIB中小企業楽観指数(11月) ・米消費者物価指数(11月) ・米30年国債入札 |
オラクル |
13(水) | ・日銀短観(10-12月期) ・ユーロ圏鉱工業生産(10月) ・米生産者物価指数(11月) ・米FOMC政策金利 |
アドビ |
14(木) | ・日本機械受注(10月) ・ECB主要政策金利 ・米小売売上高(11月) |
コストコホールセール、レナー |
15(金) | ・中国鉱工業生産・小売売上高(11月) ・HCOBユーロ圏製造業PMI(12月) ・ニューヨーク連銀製造業景気指数(12月) ・米鉱工業生産(11月) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(12月) ・トリプルウィッチング (株価指数先物・オプションの取引期限満了日) |
ダーデンレストラン |
18(月) | ・ドイツIFO企業景況感(12月) ・米NAHB住宅市場指数(12月) |
|
19(火) | ・日銀政策金利 ・米住宅着工件数・建設許可件数(11月) |
フェデックス |
20(水) | ・EU27ヵ国新車登録台数(11月) ・米中古住宅販売件数(11月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感(12月) |
マイクロンテクノロジー |
21(木) | ・米実質GDP(7-9月期、確報値) ・米新規失業保険申請件数(12月16日に終わる週) ・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(12月) |
カーニバル、ナイキ |
22(金) | ・米個人所得・個人支出(11月) ・米個人消費支出物価指数(11月) ・米耐久財受注(11月) ・米新築住宅販売件数(11月) ・米ミシガン大学消費者信頼感(12月、確報値) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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