アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~2024年の注目銘柄5選、エヌビディア、サービスナウ、イーライリリィほか~
投資情報部 榮 聡
2024/01/09
先週は年末にかけて市場で高まったFRBによる早期利下げ期待に行き過ぎがあったと考えられ、その反動による株価下落とみられます。今週の株価材料として、12月消費者物価指数、金融当局者発言、米国家電見本市(CES)、などが注目されます。
今回は2024年の注目銘柄として、エヌビディア(NVDA)、サービスナウ(NOW)、クラウドストライクホールディングス(CRWD)、イーライ リリィ(LLY)、ネットフリックス(NFLX)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数のローソク足(日足、3ヵ月)
25日移動平均線まで調整したことで、上昇過熱感はかなり解消したとみられます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は12/29(金)終値~1/8(月)終値によります)
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
ヘルスケア | 2.9% | 6.6% | 8.0% |
公益事業 | 2.6% | 3.3% | 13.7% |
金融 | 0.9% | 5.6% | 15.1% |
生活必需品 | 0.7% | 4.1% | 9.0% |
コミュニケーションサービス | 0.6% | 4.2% | 8.0% |
エネルギー | -0.1% | 2.6% | -2.6% |
S&P500 | -0.1% | 3.5% | 10.6% |
不動産 | -0.5% | 5.6% | 18.9% |
素材 | -1.0% | 3.9% | 8.8% |
情報技術 | -1.4% | 1.4% | 12.0% |
資本財・サービス | -1.6% | 3.3% | 11.4% |
一般消費財・サービス | -1.7% | 1.7% | 10.5% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
アムジェン | 7.9% |
メルク | 7.7% |
イーライリリー | 7.4% |
ベライゾン・コミュニケーションズ | 6.4% |
エヌビディア | 5.5% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
ボーイング | -12.1% |
ナイキ | -4.6% |
クアルコム | -3.9% |
ブロードコム | -3.7% |
アップル | -3.6% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で1.5%、NYダウは0.6%、ナスダック指数は3.2%の下落でした。
年末年始に株価が上昇する傾向がある「サンタクロース・ラリー」は実現しませんでした。年末にかけて市場で高まったFRBによる早期利下げ期待に行き過ぎがあったと考えられ、その反動による株価下落とみられます。
1/3(水)に公表された12月FOMC議事要旨では、利上げ局面は終了したことが示唆されたものの、利下げのタイミングについては手がかりを与えませんでした。市場の早期利下げ期待は後退して、米10年国債利回りは昨年末に3.8%前後で底入れして反発基調で、1/5(金)には4%台に乗せています。
経済指標では、12月ISM製造業景気指数、12月ADP雇用統計が予想以上となり、12月雇用統計の非農業部門雇用者数も市場予想の前月比17.5万人増を上回る同21.6万人増となり、景気指標は全般的に上振れ気味です。これも金利上昇に寄与したと考えられます。一方、12月ISM非製造業景気指数は前月から低下して、サービス業は景況感の沈静を示唆しました。
業種指数ではディフェンシブな性格をもつ「ヘルスケア」「公益事業」の上昇が目立ちました。特に「ヘルスケア」については、2023年を通じて市場平均を下回って推移していましたが、出遅れ物色の矛先が向かっている可能性に注目できるでしょう。
個別株では大手医薬品が上昇上位を占め、下落ではボーイング(BA)が目立ちました。ボーイングは1/5(金)にアラスカ航空が運航する「737MAX9」(「737MAX」の改良型)で機体の一部が吹き飛ぶ事故が発生しました。米連邦航空局(FAA)は同型の航空機171機を検査のために一時的に運航停止にしています。
今週の米国株式
S&P500指数は25日移動平均線まで調整して短期的な株価の上昇過熱感を解消したとみられることから、再び史上最高値4,818.62ポイントに向けて出直すことが想定できるでしょう。1/8(月)のS&P500指数は、25日移動平均線まで調整したことで株価の上昇過熱感が解消され、押し目買いが優勢になったとみられます。
今週の株価材料として、12月消費者物価指数、金融当局者発言、米国家電見本市(CES)、などが注目されます。
1/11(木)に発表予定の12月消費者物価指数は、総合指数が前年比+3.3%の予想(前月は同+3.1%)、コア指数は前年比+3.8%の予想(前月は同+4.0%)です。インフレ低下スピードの鈍化が意識されそうです。コア指数は低下予想ながら、足もとで住宅価格上昇の勢いが強まっているため、コアサービスのプラス寄与が大きくなる可能性に注意が必要でしょう。
昨日のアトランタ連銀ボステック総裁の講演のほか、1/10(水)にニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁の講演、1/12(金)にミネアポリス連銀カシュカリ総裁の講演が予定されています。FOMC議事要旨の公表後に利下げ開始時期に関する市場の見方が流動的になっているとみられることから、発言への注目が高まりそうです。
米国家電見本市(CES)は、1/9(火)から1/12(金)までラスベガスで開催される世界最大のエレクトロニクスショーです。AI技術の最前線が提示されると見込まれ、注目が集まりそうです。基調講演では、インテルのほか、ウォルマート、ベストバイ、ロレアル、シーメンス、ヒュンダイなどのCEO(最高経営責任者)が登壇の予定で、テクノロジー応用の広がりが印象付けられそうです。
経済指標では上記のほか、1/12(金)に中国の12月貿易統計(輸出は前年比+1.5%の予想、前月は同+0.5%、輸入は前年比0.0%の予想、前月は同-0.6%)、米国の12月生産者物価指数(総合指数は前年比+1.4%の予想、前月は同+0.9%、コア指数は前年比+2.0%の予想、前月は同+2.0%)、などが発表の予定です。
今週の5銘柄
今回は年初のため、2024年の注目銘柄をご紹介いたします。
2024年の投資環境として、「世界景気の鈍化」(OECDの経済成長率見通しでは前年比2.7%増に鈍化)、「米経済の低成長」(Bloombergコンセンサスでは前年比1.3%増に鈍化)、「FRBによる利下げへの転換」、「比較的高い企業業績の伸び」(FactSet社の集計では前年比11.2%増)が、市場コンセンサスと考えられます。
このような投資環境下では成長株が優位になる可能性が高いと考えられ、注目の成長分野として、生成AI、サイバーセキュリティ、肥満治療薬などがあげられるでしょう。
以下の外国株式特集レポートを踏まえて、エヌビディア(NVDA)、サービスナウ(NOW)、クラウドストライクホールディングス(CRWD)、イーライ リリィ(LLY)、ネットフリックス(NFLX)の5銘柄を注目銘柄としてご紹介いたします。
12月13日掲載「来年に向けても期待大!?2四半期連続の好決算で物色強まるサイバーセキュリティ業界」
11月29日掲載「個人的にも知りたい!?世間で良く効くと話題の「肥満治療薬」を整理」
11月15日掲載「年末から来年の相場をけん引!?7-9月期決算を踏まえた注目銘柄(サービスナウ、マイクロソフト、AMDほか)」
11月1日掲載「生成AIの長期市場見通しと注目銘柄の状況をチェック」
図表3 2024年の米国GDP・企業利益成長率見通し
23年 見込み |
24年 予想 |
23年 3Q 実績 |
23年 4Q 予想 |
24年 1Q 予想 |
24年 2Q 予想 |
24年 3Q 予想 |
24年 4Q 予想 |
|
GDP成長率(前年比、%) | 2.2 | 1.3 | 2.9 | 2.6 | 2.2 | 1.7 | 0.7 | 0.8 |
S&P500指数EPS増加率(前年比、%) | 0.7 | 11.2 | 4.9 | 2.4 | 6.2 | 10.5 | 8.7 | 18.1 |
※Bloombergデータ、FactSet社公表資料をもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (1/8) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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買付 | エヌビディア(NVDA) | 522.53ドル | 25.6 | 【AI向けGPUが伸びる】 人工知能チャットボット「ChatGPT」のブレークスルーによって生成AI市場の拡大が見込まれ、AIのトレーニングに欠かせないGPU(画像処理半導体)の需要が急拡大しています。現在GPUを量産する会社は、同社とAMDしかなく、AI向けGPU市場の8割以上を同社が支配していると言われています。今年はAMDが同市場に本腰を入れて、ある程度の市場シェアを獲得すると想定されますが、引き続き同市場の大部分はエヌビディアが占めると期待されます。 | |
買付 | サービスナウ(NOW) | 696.26ドル | 54.9 | 【企業のAI対応で活躍が期待される】 企業向けに各種ソフトウェアを提供して、業務の自動化を促進するサービスを提供しています。この仕事はAIとの親和性が高く、生成AIが売上増につながりやすい企業として注目されます。生成AIを業務執行に取り込むためのバーチャル・エージェント「Now Assist」を投入、エヌビディアが企業向けの分野で同社を提携先として選んだほか、コンサルティング大手のアクセンチュア、デロイトなど企業向けサービスで重要な企業と提携を進めています。企業が生成AIの機能を業務執行に生かしていく上で、頼れる存在になりつつあると考えられます。 | |
買付 | クラウドストライクホールディングス(CRWD) | 261.28ドル | 70.2 | 【サイバーセキュリティ市場が好調】 サイバー攻撃に対する防御として、ネットワークへの侵入を防ぐやり方と、エンドポイントで不正な動きを検知する やり方がありますが、標的型の攻撃が増えたことでネットワークへの侵入を完全に防ぐのは現実的ではなくなり、侵入後の不正な動きを検知するエンドポイント保護の重要性が増してきました。そのエンドポイント検知分野でのリーダーの地位を確立したことから、安定的に高い売上成長を実現しています。 | |
買付 | イーライ リリィ(LLY) | 626.03ドル | 50.4 | 【肥満治療薬市場が巨大に】 肥満治療薬は2030年に770億ドル(約11兆円)の巨大市場になるとの予想もでており(日本経済新聞記事、モルガンスタンレーの予想)、この市場をデンマークのノボノルディスクとイーライリリーが2分すると見込まれています。期待されている肥満治療薬「ゼプバウンド」は23年11月8日にFDAから承認が下りました。ノボノルディスクの肥満治療薬「ウゴービ」は既に2022年に投入されていますが、臨床試験のときの平均体重の減少は、「ウゴービ」が約15%、「ゼプバウンド」が約21%でした。 | |
買付 | ネットフリックス(NFLX) | 485.03ドル | 30.3 | 【新規加入者数の増加が期待される】 昨年初から進めている共有アカウント対策の成果が出ていることから、加入者純増が好調に推移する可能性が注目されます。2023年7-9月期の加入者純増は876万人と市場予想の620万人を上回りました。業績は四半期の売上が、4-6月期に前年同期比3%増、7-9月期に同8%増、10-12月期に同11%増(会社ガイダンス)と伸びが加速するトレンドです。米、英、仏での一部プランの値上げも業績にポジティブで、アメリカではベーシックプランで2ドル、プレミアムプランで3ドルを引き上げています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディアとクラウドストライクホールディングスが2025年1月期、その他はいずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
8(月) | ・ユーロ圏小売売上高(11月) ・ユーロ圏景況感(12月) ・アトランタ連銀ボスティック総裁講演 ・NY連銀1年インフレ期待(12月) ・米消費者信用残高(11月) |
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9(火) | ・米NFIB中小企業楽観指数(12月) ・米貿易統計(11月) |
・米国家電見本市(CES 2024、ラスベガス、12日まで) |
10(水) | ・ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁講演 | |
11(木) | ・米消費者物価指数(12月) ・米新規失業保険申請件数(1月6日に終わる週) |
|
12(金) | ・中国貿易統計(12月) ・ミネアポリス連銀カシュカリ総裁の講演 ・米生産者物価指数(12月) |
バンクオブアメリカ、JPモルガンチェース ユナイテッドヘルスグループ、シティグループ、ウェルズファーゴ デルタ航空 |
15(月) | ・日本工作機械受注(12月) ・米国市場休場(マーチンルーサーキングデー) ・世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議、19日まで) ・アイオワ州党員集会(共和党) |
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16(火) | ・ドイツZEW景気指数(1月) ・米ニューヨーク連銀製造業景気指数(1月) |
ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー |
17(水) | ・中国実質GDP(10-12月期) ・中国鉱工業生産・小売売上高(12月) ・米小売売上高(12月) ・米鉱工業生産(12月) ・米NAHB住宅市場指数(1月) ・地区連銀経済報告(ベージュブック) |
USバンコープ |
18(木) | ・日本機械受注(11月) ・EU27ヵ国新車販売台数(12月) ・米住宅着工・建設許可件数(12月) ・米新規失業保険申請件数(1月13日に終わる週) ・フィラデルフィア製造業景気指数(1月) |
台湾セミコンダクター |
19(金) | ・ミシガン大学消費者信頼感(1月、速報値) ・米中古住宅販売件数(12月) |
トラベラーズ |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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