アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~決算注目銘柄!イーライリリィ、ウォルトディズニー、リンデ、 アーム、パランティア~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~決算注目銘柄!イーライリリィ、ウォルトディズニー、リンデ、 アーム、パランティア~

投資情報部 榮 聡

2024/02/13

先週は強い経済指標を受けて長期金利は上昇したものの、企業決算の好調が目立ったことから、S&P500指数は再び史上最高値を更新しました。今週の株価材料として、1月の物価指標、1月の小売売上高、金融当局者発言、などが注目されます。

今回は2/2(金)から2/8(木)までに10-12月期決算を発表した銘柄から、イーライ リリィ(LLY)ウォルト ディズニー(DIS)リンデ(LIN)アーム ホールディングス ADR(ARM)パランティア テクノロジーズ A(PLTR)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

5,000ポイントの大台に到達して、短期的には一旦達成感が出やすいとみられます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は2/5(月)終値~2/12(月)終値によります。)

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
素材 3.4% 0.3% 8.5%
一般消費財・サービス 2.5% 4.0% 12.9%
不動産 1.9% -3.2% 11.6%
資本財・サービス 1.8% 4.4% 14.4%
情報技術 1.8% 8.6% 16.3%
コミュニケーションサービス 1.7% 9.2% 18.4%
S&P500 1.6% 5.0% 13.7%
金融 1.2% 4.3% 15.8%
ヘルスケア 1.2% 2.6% 14.3%
公益事業 1.1% -3.9% 1.2%
エネルギー 1.0% 1.7% 0.7%
生活必需品 -0.1% 1.2% 7.2%
騰落率上位(5日) 騰落率
ウォルト・ディズニー・カンパニー 13.1%
フォード・モーター 12.0%
エマソン・エレクトリック 11.6%
ナイキ 7.5%
CVSヘルス 6.7%
騰落率下位(5日) 騰落率
アムジェン -8.6%
コムキャスト -5.0%
AT&T -4.0%
ベライゾン・コミュニケーションズ -3.1%
アドビ -3.0%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で1.4%、NYダウは0.04%、ナスダック指数は2.3%の上昇でした。年初からのドル高円安による押し上げもあって、円建てのS&P500指数は年初来で11.5%の上昇となっています(図表3)。

2/5(月)、2/6(火)は強いISM非製造業景気指数に加え、パウエルFRB議長を含む金融当局者の発言によって米10年国債利回りが4.0%台でさらに上昇する気配を見せたことから、株式は軟調となりました。

一方、2/7(水)はビッグデータ分析のパランティアテクノロジーズ、イーライリリィなどの好決算を背景に最高値を更新、2/8(木)はウォルトディズニーの決算内容が好感されたほか、半導体設計のアームホールディングスの株価大幅上昇がテクノロジー株を刺激して続伸、2/9(金)もこの流れが継続、S&P500指数は5,000ポイントの大台に乗せてひけました。

経済指標では、1月ISM非製造業景気指数が53.4と、12月の50.5から大幅に上昇、市場予想の52.0も上回りました。昨年夏場から低下トレンドにありましたが、低下が止まって景気拡大縮小の分岐点の50を上回って推移しそうな気配です。強い数字となった1月非農業部門雇用者数とともに、長期金利が上昇しやすい環境をつくったと考えられます。

業種指数では、産業ガスのリンデ(LIN)の上昇が寄与した素材が上昇トップでした。ただし、同業のエアープロダクツアンド ケミカルズ(APD)は2/5(月)に発表の10-12月期決算が中国やヘリウム事業を要因に予想を下回って株価が大幅に下落しており、企業によって明暗が分かれました。

今週の米国株式

先週までの相場上昇をけん引した企業決算の発表は、相場全体にインパクトを及ぼす可能性があるものとしては、来週2/21(水)に発表予定のエヌビディアまで小休止となります。

このため相場の注目はマクロ環境に向かいやすく、1月小売売上高、1月消費者物価指数などで市場予想より強いものが出ると反発基調にある米10年国債利回りを押し上げて、株価を抑える要因になりやすいと想定されます。

中期的な観点からも、(1)S&P500指数の予想PERは20.7倍と高い水準に達している、(2)昨年10月安値を起点とする上昇相場は4ヵ月にわたっている、(3)筆者の経験則から当面のターゲットとしてきた4,960~5,010ポイント(2022年1月の高値の3~4%上)に到達した、などから上値は重くなってくることが想定できるでしょう。

一方、このような見方に対するリスクシナリオとして、「AIバブル」の発生で予想PERが22倍、23倍と上昇し続けるケースが考えられます。先週からのアームホールディングスの株価の反応を見ていると、その可能性も頭をよぎります。しかし、いまのとろ、AIバブルは局地的なものにとどまり、相場全体を押し上げるほどではないとみられます。

今週の株価材料として、1月の物価指標、1月の小売売上高、金融当局者発言、などが注目されます。

2/13(火)に発表予定の1月消費者物価指数は総合指数が前年比+2.9%の予想(前月は同+3.4%)、コア指数が前年比3.7%増の予想(前月は同+3.9%)、2/16(金)に発表予定の1月生産者物価指数は総合指数が前年比+0.6%の予想(前月は同+1.0%)、コア指数が前年比+1.7%の予想(前月は同1.8%増)です。市場には高値警戒感もくすぶる中、インフレの落ち着きが確認されることで株価を支える要因になると期待されます。

米小売売上高は11月が前月比0.3%増、12月が同0.6%増と強いトレンドが続いています。2/15(木)発表される1月分は前月比-0.2%の予想で、セールが活発化した12月からの反動が織り込まれているようです。あまりに強いと金利上昇につながる怖れがあり、市場予想並みに鈍化するのが株式市場にとってはよいでしょう。

引き続き、多くの金融当局者の発言が予定されています。ミネアポリス連銀カシュカリ総裁、シカゴ連銀グールズビー総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁などです。

経済指標では上記のほか、2/16(金)に米国の1月住宅着工件数(前月比-0.3%の予想)、同住宅建設許可件数(前月比+1.4%の予想)、米国の2月ミシガン大学消費者信頼感(速報値)(前月の79.0から80.0に改善の予想)、などが発表予定です。

今週の5銘柄

今回は2/2(金)から2/8(木)までに10-12月期決算を発表した銘柄から、決算の実績が市場予想を上回った銘柄を中心に、市場予想を上回った要因が今後も続くと期待される銘柄として、イーライ リリィ(LLY)ウォルト ディズニー(DIS)リンデ(LIN)アーム ホールディングス ADR(ARM)パランティア テクノロジーズ A(PLTR)を選んでご紹介いたします。

なお、通常はS&P500指数採用銘柄をスクリーニングの対象としていますが、「米国株式One Pager」を作成してフォローしており、好決算を受けて株価の上昇が目立った、アームホールディングスとパランティアテクノロジーズは特例として採用しました。

図表3 円建てS&P500指数の推移

注:最後のデータは2/9(金)です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 10-12月期決算発表、中盤の注目銘柄(対象はS&P500指数採用銘柄および「米国株式One Pager」採用銘柄)

銘柄(コード) 売上
予想比
(%)
EPS
予想比
(%)
売上
前年同期比
(%)
EPS
前年同期比
(%)
イーライ リリィ(LLY) 4.4 14.4 28.1 19.1
ウォルト ディズニー(DIS) -1.0 23.1 0.2 23.2
リンデ(LIN) 2.9 3.7 5.1 13.6
アーム ホールディングス ADR(ARM) 8.4 -10.6 13.8 31.8
リジェネロン ファーマシューティカルズ(REGN) 5.2 11.7 0.6 -5.6
パランティア テクノロジーズ A(PLTR) 0.9 5.9 17.2 100.0
フォード モーター(F) 14.0 117.8 10.1 -43.1
GE ヘルスケア テクノロジーズ(GEHC) 2.5 11.0 5.5 -9.9
ザイレム(XYL) 3.1 3.5 40.6 7.6
ジェイコブス ソリューションズ(J) 9.9 29.9 9.5 21.0
アシュラント(AIZ) 7.1 24.6 12.5 41.8

注:2/2(金)から2/8(木)までに10-12月期決算を発表した銘柄を対象としています。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(2/12)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートイーライ リリィ(LLY)737.26ドル58.7

【肥満治療薬に期待】

・糖尿病治療薬のマンジャロや肥満治療薬のゼップバウンドが売上拡大をけん引して業績好調です。生産能力が売上の制約になっていることから、アメリカではインディアナ州など二拠点の生産能力拡大、ヨーロッパではドイツで製造拠点の建設を行います。

・新型の糖尿病治療薬、肥満治療薬として需要が拡大している「GLP-1受容体作動薬」は2030年に1,000億ドル(約15兆円)の市場になるとの予想があり、同社はデンマークのノボノルディスクとともに市場を2分すると期待されています。

買付チャートウォルト ディズニー(DIS)109.29ドル23.8

【コスト削減が順調】

・10-12月期はテレビ広告の収入減をパーク事業の増収で相殺して売上が前年同期比横ばい、調整後EPSは動画配信サービスの営業赤字縮小が効いて同23%増で、市場予想を上回りました。年間75億ドルのコスト削減目標に向け順調とコメントして好感されました。

・スポーツチャンネルのESPNは、競合するFOXやワーナー・ブラザース・ディスカバリーとスポーツ配信事業を立ち上げることで合意、また、ゲーム大手エピックゲームズに15億ドルを出資して新作ゲームやエンターテインメントを共同開発する複数年のプロジェクトにも取り組むなど戦略的な動きが活発化しています。

買付チャートリンデ(LIN)419.61ドル27.2

【業界には安定成長の企業が多い】

・産業ガス大手の1社で、世界的大手には仏エア・リキード、米エアープロダクツ アンド ケミカルズなどがあります。直近のエアープロダクツ アンド ケミカルズの決算は市場予想を下回るネガティブサプライズとなって株価は大きく調整しましたが、基本的には安定成長を達成しやすい業界として注目されます。

・同業界はガスの取り扱いに専門性があることに加え、顧客企業の工場内に設備を建設してサービスを行うことが多いため顧客企業との関係が安定して、堅調な業績拡大を遂げる傾向があります。顧客先が半導体業界やヘルスケアなど幅広い産業に分散されていることも、安定成長に寄与する要因と考えられます。

買付チャートアーム ホールディングス ADR(ARM)148.97ドル98.7

【スマホ以外への展開に期待】

・10-12月期の売上は前年比14%増の8.2億ドルで過去最高となりました。ライセンス・その他収入は企業のAI投資拡大に伴う好調な需要から同18%増の3.5億ドル、ロイヤルティー収入は半導体市場回復とロイヤルティー料率が従来の2倍あるアームv9ベースのチップの急速な浸透を背景に同11%増の4.7億ドルでいずれも市場予想を上回りました。

・1-3月期の見通しは売上高、EPSいずれも市場予想を上回り、会社側は24/3期の売上高とEPSの見通しを上方修正、AIブームはまだ初期段階との見方を示しました。アナリストの目標株価平均は90.37ドル(日本時間2/13(火)午前9時)で株価は行き過ぎとなっている可能性もあるため十分ご注意ください。

買付チャートパランティア テクノロジーズ A(PLTR)25.05ドル75.9

【AI関連需要に拡大の兆し】

・ビッグデータ分析などのソフトウェアを提供する企業。10-12月期は民間企業向けの売上がけん引して業績が市場予想を上回りました。人工知能のトレーニングにはビッグデータが用いられることから、AIに適応しようとする企業から同社プラットフォームに対する需要が急拡大しているとみられます。

・2023年12月期は通期で初めてGAAP黒字を達成しました。顧客基盤も米国を中心に拡大。新たに提供するAIを活用したサービス、Palantir AIP(Artificial Intelligence Platform)が好調で「需要は爆発的でどう対応してよいかわからないほどだ」と経営陣はコメントしています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、ウォルトディズニーが2024年9月期、アームホールディングスは2025年3月期、その他はいずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
12(月) ・NY連銀1年インフレ期待(1月)
・ミネアポリス連銀カシュカリ総裁が会議の司会
 
13(火) ・日本工作機械受注(1月)
・ドイツZEW景気指数(2月)
・米NFIB中小企業楽観指数(1月)
・米消費者物価指数(1月)
コカコーラ、エアビーアンドビー、アップスタートホールディングス
マリオットインターナショナル
14(水) ・ユーロ圏実質GDP(10-12月期、改定値)
・シカゴ連銀グールズビー総裁が発言
・バーFRB副議長が講演
クラフトハインツ
15(木) ・日本実質GDP(10-12月期、改定値)
・NY連銀製造業景気指数(2月)
・米小売売上高(1月)
・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(2月)
・米新規失業保険申請件数(2月3日に終わる週)
・米鉱工業生産(1月)
・米NAHB住宅市場指数(2月)
・サンフランシスコ連銀デイリー総裁の講演
・アトランタ連銀ボスティック総裁の講演
コインベースグローバルロイヤルティファーマ
アプライドマテリアルズ、マーチンマリエッタマテリアルズ
16(金) ・住宅着工・建設許可件数(1月)
・米生産者物価指数(1月)
・ミシガン大学消費者信頼感(2月、速報値)
 
19(月) ・米国市場休場(ワシントン誕生日)
・日本機械受注(12月)
 
20(火) ・EU27ヵ国新車登録台数(1月) ウォルマート、ホームデポ、メドトロニック
21(水) ・FOMC議事要旨(1月30日、1月31日開催分) エヌビディアリビアンオートモーティブ
22(木) ・HCOBユーロ圏製造業PMI(2月)
・シカゴ連銀全米活動指数(1月)
・新規失業保険申請件数(2月17日に終わる週)
・S&Pグローバル米国製造業PMI(2月)
・米中古住宅販売件数(1月)
・クックFRB理事が講演
・ミネアポリス連銀カシュカリ総裁が討論に参加
・5年国債入札
ブロック、ブッキングホールディングス
23(金) ・ドイツIFO企業景況感(2月) ワーナーブラザーズディスカバリービヨンドミート

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

おすすめ記事(2024/02/13 更新)

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。