アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~エヌビディア、ウォルマートほか、過去2週間の好決算銘柄~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~エヌビディア、ウォルマートほか、過去2週間の好決算銘柄~

投資情報部 榮 聡

2024/03/04

先週の米国株式市場は市場予想より弱い経済指標に加え、上振れが警戒されていた個人消費支出物価指数が市場予想並みにとどまったことから米10年国債利回りが低下、テクノロジー株を中心に物色され、S&P500指数は再び最高値を更新しました。今週の株価材料として、3/8(金)の2月雇用統計、3/6(水)と3/7(木)のパウエルFRB議長の議会証言、3/5(火)のスーパーチューズデー、などが注目されます。

今回は過去2週間で好決算と考えられる銘柄から、エヌビディア(NVDA)ウォルマート インク(WMT)バークシャー ハサウェイ B(BRKB)セールスフォース(CRM)クアンタ サービシーズ(PWR)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数のローソク足(週足、2年)

2022年10月の底入れから「N字波形」を形成、2023年7月~10月の押し幅に対する「倍返し」を達成しました。テクニカル的には一旦上昇波が出尽くした可能性がうかがえます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
情報技術 2.5% 5.2% 17.9%
不動産 2.1% 3.1% 3.7%
一般消費財・サービス 2.0% 4.3% 10.6%
エネルギー 1.3% 3.7% 3.0%
素材 1.2% 5.5% 7.0%
資本財・サービス 1.0% 4.9% 11.7%
S&P500 0.9% 3.6% 12.4%
金融 -0.1% 3.2% 11.5%
コミュニケーションサービス -0.3% 0.6% 18.6%
生活必需品 -0.5% 0.4% 5.5%
公益事業 -0.6% -0.2% -2.4%
ヘルスケア -1.0% 2.9% 10.9%
騰落率上位(5日) 騰落率
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ 14.8%
セールスフォース 8.2%
ブロードコム 7.9%
アメリカン・タワー 6.2%
ネットフリックス 6.1%
騰落率下位(5日) 騰落率
ユナイテッドヘルス・グループ -7.2%
アルファベット -4.7%
CVSヘルス -4.4%
ファイザー -4.2%
ナイキ -3.6%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.9%、ナスダック指数は1.7%の上昇、NYダウは0.1%の下落でした。S&P500指数とナスダック指数は史上最高値を更新しました。

週初は利食い優勢で軟調となったものの、2/29(木)の1月個人消費支出物価指数が予想と一致、1月の消費者物価指数、生産者物価指数が強かったことから上振れが警戒されていたため、予想一致でも金利抑制の方向に働き、株式は力強く反発しました。さらに、3/1(金)のISM製造業景気指数が弱く、これも金利低下を促したことから、エヌビディアを中心とするテクノロジー株への物色が再燃、ナスダック指数が史上最高値を更新、S&P500指数も連日の史上最高値更新となりました。

経済指標では、2月のコンファレンスボード消費者信頼感が前月から大きく低下、10-12月期実質GDP改定値が速報値からやや下方修正され、2月ISM製造業景気指数も47.5と前月の49.1、市場予想の49.5を下回って、いずれも金利抑制の方向に働きました。1月個人消費支出物価指数は、総合指数が前年比+2.4%と前月の同+2.6%から低下、コア指数も同+2.8%と前月の同+2.9%から低下しました。

業種指数では、「情報技術」が上昇率トップでした。先々週のエヌビディアの決算発表を契機に、エヌビディア、ブロードコム、アドバンストマイクロデバイセズなど半導体株の上昇がけん引しました。個別株では、アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)の上昇が目立ちました。エヌビディアの好決算と株価上昇が刺激しているとみられます。同社は昨年10-12月期からエヌビディアが支配しているAIコンピューティング市場へ本格参入を試みており、今年一定の成果をあげると期待されています。

今週の米国株式市場

S&P500指数の予想PERが21.3倍まで上昇していることから、上昇一服となる可能性が高いとみられます。予想PERがさらに上昇するケースとして、「AIバブル」の発生が考えられますが、いまのところエヌビディアを例外としてAIで収益が様変わりしたという大手企業はなく、AIバブルとなる可能性は低いとみています。

2000年のITバブルのときは、インターネットの普及によって世の中が大きく変わることが容易に想像できたため、その後5年、10年で起こりうることを一気に相場に織り込みにいき、結果的に「ITバブル」となりました。このときと比べて、現在のAIの普及による全産業へのインプリケーションはまだはっきりしていないと言えるのではないでしょうか。

今週の株価材料として、3/8(金)の2月雇用統計、3/6(水)と3/7(木)のパウエルFRB議長の議会証言、3/5(火)のスーパーチューズデー、などが注目されます。

2月雇用統計の非農業部門雇用者数は前月比20万人増の予想で、12月、1月の30万人を超える強い数字から落ち着きを示す見込みです。予想並みの数字なら、金利低下に作用しそうです。

パウエルFRB議長の議会証言は、前回のFOMC、その後に公表された議事要旨が市場の早期利下げ期待を抑える方向でしたので、今回の議会証言もその方向に作用すると想定されます。

「スーパーチューズデー」は米大統領選挙の予備選挙集中日で、共和党の候補がトランプ氏にほぼ決まる可能性があります。これはトランプ氏の経済政策の予測不可能性から相場のマイナス要因と考えられますが、市場には概ね織り込まれているとみられます。

経済指標では上記のほか、3/5(火)に米国の1月製造業受注(前月比-2.9%の予想)、米国の2月ISM非製造業景気指数(前月の53.4から53.0に悪化の予想)、3/6(水)の米国の2月ADP雇用統計(前月比15万人増の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は2/16(金)~2/29(木)に決算を発表したS&P500指数採用銘柄から好決算と考えられる銘柄を図表4に抽出、ここからエヌビディア(NVDA)ウォルマート インク(WMT)バークシャー ハサウェイ B(BRKB)セールスフォース(CRM)クアンタ サービシーズ(PWR)を選んでご紹介いたします。

図表3 AI計算の「訓練(トレーニング)と「推論(インファレンス」

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 好決算銘柄(S&P500指数採用銘柄、2/16(金)~2/29(木)発表分、時価総額順)

銘柄(コード) 売上
予想比
(%)
EPS
予想比
(%)
売上
前年同期比
(%)
EPS
前年同期比
(%)
エヌビディア(NVDA) 8.3 12.1 265.3 486.4
バークシャー ハサウェイ B(BRKB) 6.9 10.8 19.5 32.6
ウォルマート インク(WMT) 1.6 9.2 5.7 5.3
セールスフォース(CRM) 0.7 1.1 10.8 36.3
メドトロニック(MDT) 1.7 3.2 4.7 0.0
リパブリック サービシーズ(RSG) 2.6 9.2 8.6 24.8
オートデスク(ADSK) 2.6 7.3 11.5 12.4
クアンタ サービシーズ(PWR) 11.7 2.2 31.0 21.4
ガーミン(GRMN) 5.6 25.1 13.5 27.4
アクソン エンタープライズ(AXON) 2.7 31.9 28.6 60.0

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(3/1)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートエヌビディア(NVDA)822.79ドル33.7

【再び市場を驚かせる好決算】

・今回の決算発表で最も注目できる点は、「昨年のデータセンター向け売上の約40%は『推論』で利用されたと推定している」と述べた点です。AIの計算には、AIモデルを使えるようにする「訓練(トレーニング)」と、それを実際に利用する際の「推論(インファレンス)」の2つの種類がありますが、エヌビディアのAIコンピュータは主に「訓練」で使われ、「推論」はCPUで行われていると考えられていました(図表3)。

・このため、AIモデルを訓練するための設備投資が一服するとAIコンピュータの売上が急減してしまう心配がありました。しかし、同社が推定するように「推論」でも使われている場合には、そのリスクはかなり小さくなると解釈されます。そうなると、予想PERが上昇する(または、PER低下の度合いが小さくなる)可能性が指摘できます。AIコンピュータが「推論」でも使われるようになったとすれば、それは生成AIや大規模言語モデルの登場と関係しているとみられますが、このあたりの仕組みについては、調査の必要がありそうです。

買付チャートウォルマート インク(WMT)58.76ドル24.8

【引き続き市場シェアの拡大が期待される】

・消費者が物価上昇の圧力にさらされていることから、同社のバリュー提供は市場シェア拡大につながりやすいと考えられます。持続的なeコマースの拡大とオムニチャンネルの推進によって中期的な成長が期待されます。決算時に発表のスマートTVのVizio買収(230億ドル)は、広告ビジネス拡大につながると見込まれます。

・10-12月期の米国ウォルマートの既存店売上は前年同期比4.0%増と好調でした。2025年1月期のガイダンス(為替の影響を除くベース)は、売上が前年比3~4%増、営業利益が同4~6%増と堅調を見込みます。

買付チャートバークシャー ハサウェイ B(BRKB) 407.11ドル22.6

【幅広い産業への分散が奏功】

・保険、製造業、小売り、鉄道、エネルギーなど幅広い産業に分散して展開していることが安定的な収益拡大に寄与しているとみられます。一方、決算に合わせて公表された「株主への手紙」では、現在の市場に目を見張るような成果が期待できる投資機会は見当たらないとして、実際に手元資金が過去最高の1,670億ドルに達するなど、今後の成長に懸念をもたらすようなコメントもありました。

・10-12月期の純利益は株式相場の上昇を反映して375億ドルで前年同期比2.1倍でした。うち事業利益は84.8億ドルで同28%増、投資利益が290.9億ドルで同3.5倍でした。

買付チャートセールスフォース(CRM)316.88ドル32.5

【収益性の改善に十分な成果をあげた】

・経営の重点を収益性の改善に舵をきって、実際にその成果を挙げてきたことから、経営陣は比較的低調なIT支出環境の影響を受けてきた売上に対して成長を再加速させる余地を得たと考えられます。売上成長の回復に加え、雇用とマーケティング費用に対するコントロールによって20%以上の利益成長が期待されます。

・2025年1月期のガイダンスは売上が前年比9%増相当の377~380億ドル、調整後EPSは9.68~9.76ドルとして、売上は市場予想を下回ったものの、調整後EPSは市場予想を上回りました。GAAPベースの営業利益率は20.4%程度、調整後営業利益率は32.5%程度を見込みます。

買付チャートクアンタ サービシーズ(PWR)240.89ドル28.8

【収益の安定性が増していると期待】

・電力・通信向け送配電ネットワーク設備工事請負の最大手。石油・天然ガスのパイプライン敷設工事と2本柱。過去に大規模インフラプロジェクトを重視していたときに比べて、運営および維持管理の仕事の比率が高まっているため、収益の安定性が増しているとみられます。米国での送電網、通信ネットワーク、再生可能エネルギーに対する米国での投資から恩恵が期待されます。

・2024年12月期のガイダンス(レンジ中央値)は、売上が前年比8%増の225億ドル、調整後EPSは同15%増の8.25ドルと堅調な増加が見込まれています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期はエヌビディア、ウォルマート インク、セールスフォースが2025年1月期、その他はいずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
4(月) ・フィラデルフィア地区連銀ハーカー総裁講演  
5(火) ・中国全国人民代表大会(全人代)(5日~)
・スーパーチューズデー(予備選挙集中日)
・米製造業受注(1月)
・米ISM非製造業景気指数(2月)
クラウドストライクホールディングスニオ
ターゲット、ロスストアーズ
6(水) ・米ADP雇用統計(2月)
・米求人労働異動調査(1月)
・地区連銀経済報告(ベージュブック)
・パウエルFRB議長の議会証言(下院金融委員会)

・サンフランシスコ連銀デイリー総裁の講演
 
7(木) ・中国貿易統計(2月)
・ECB主要政策金利
・パウエルFRB議長の議会証言(上院銀行委員会)
・クリーブランド連銀メスター総裁の講演
・ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁が討論に参加

・米チャレンジャー人員削減(2月)
・米貿易統計(1月)
・米家計純資産変化(10-12月期)
ブロードコム、コストコホールセール
8(金) ・ユーロ圏実質GDP(10-12月期、確報値)
・米雇用統計(2月)
オラクル
11(月) ・日本実質GDP(10-12月期、確報値)
・日本工作機械受注(2月、速報値)
・NY連銀1年インフレ期待(2月)
・米3年国債入札
 
12(火) ・米NFIB中小企業楽観指数(2月)
・米消費者物価指数(2月)
・米10年国債入札
 
13(水) ・米30年国債入札  
14(木) ・米小売売上高(2月)
・米生産者物価指数(2月)

・米新規失業保険申請件数(3月9日に終わる週)
アドビ、レナー、アルタビューティ
15(金) ・ニューヨーク連銀製造業景気指数(3月)
・米鉱工業生産(2月)
・米ミシガン大学消費者信頼感(3月、速報値)
 

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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