アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~エヌビディアの好決算に賭けるAI関連5銘柄~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~エヌビディアの好決算に賭けるAI関連5銘柄~

投資情報部 榮 聡

2024/08/26

先週はジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の発言が注目されましたが、市場が期待した通り「政策を調整すべき時がきた」と宣言したことから、主要3指数とも上昇となりました。

今週の株価材料として、エヌビディアの決算、7月個人消費支出物価指数、4-6月期実質GDPの改定値、などが注目されます。

今週はエヌビディアの5-7月期決算がポジティブになると想定してAI関連の半導体銘柄から、エヌビディア(NVDA)アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)ブロードコム(AVGO)マイクロン テクノロジー(MU)台湾セミコンダクター ADR(TSM)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

「雲」の上限を下値支持ラインとして推移しているように見えますが、この先その上限は下がっています。7月半ばの高値と「ダブルトップ」になってしまう可能性に注意が必要でしょう。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
不動産 3.6% 6.4% 16.3%
素材 2.4% 1.5% 1.6%
一般消費財・サービス 2.1% 1.8% 5.3%
資本財・サービス 1.8% 2.3% 3.9%
ヘルスケア 1.7% 3.7% 7.7%
生活必需品 1.6% 4.1% 6.3%
金融 1.5% 2.2% 6.8%
S&P500 1.4% 3.2% 6.2%
公益事業 1.2% 5.6% 5.5%
コミュニケーションサービス 1.2% 4.3% 1.7%
情報技術 1.1% 4.0% 8.2%
エネルギー -0.5% -2.3% -0.8%
騰落率上位(5日) 騰落率
ターゲット 10.0%
フォード・モーター 7.2%
ゼネラル・モーターズ 7.2%
サイモン・プロパティー・グループ 6.3%
ブッキング・ホールディングス 5.9%
騰落率下位(5日) 騰落率
ボーイング -2.8%
ブリストル マイヤーズ スクイブ -2.5%
チャールズ・シュワブ -1.8%
ゼネラル・ダイナミクス -1.7%
インテル -1.6%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で1.4%、ダウ平均は1.3%、ナスダック指数は1.4%の上昇でした。

先々週にかけて米国経済のリセッション懸念が後退したことに加え、パウエルFRB議長の発言が9月に利下げが始まることを示唆、3週連続の陽線をつけました。また、FOMC議事要旨では、メンバーの多くが9月利下げが妥当となる可能性が高いとみていることが判明しました。

パウエルFRB議長はジャクソンホール会議で「インフレが2%に向かいつつある中、雇用の下振れリスクが高まった」とし、「政策を調整すべき時がきた」と宣言しました。FedWatchによる9月FOMCでの政策金利予想は、0.25%の利下げが63%、0.50%の利下げが37%の確率となっています(日本時間8/26(月)午前8時)。

大手小売企業の決算は好悪まちまち(ターゲットはポジティブ、ロウズはネガティブなど)ですが、全体として個人消費が急減するような状況ではないとの印象です。アナログ半導体のアナログデバイセズの決算では、AI関連以外の幅広い半導体市場が底入れしつつあるとの見方が示されました。

業種指数では、金利低下が恩恵となる不動産、景気敏感の素材、一般消費財・サービス、資本財・サービスなどが上昇上位でした。個別銘柄で上昇トップのターゲット(TGT)は、5-7月期の既存店売上が前年同期比2%増と5四半期ぶりにプラスに転換しました。生活必需品の値下げが奏功したようです。通期の売上見通しは維持しましたが、調整後EPSを上方修正して好感されました。

今週の米国株式市場

エヌビディアの決算は相場にポジティブと想定していますが、S&P500指数のバリュエーションが高く、上値は限定的となりやすいとみられます。S&P500指数の予想PER(2025年予想EPS基準)は再び20倍超まで上昇しており、さらなる上値に対してはバリュエーションの高さが抑制要因になると考えられます。テクニカル的には、7月半ばの高値とともに「ダブルトップ」になりそうな気配もあるため注意が必要でしょう。

今週の株価材料として、エヌビディアの決算、7月個人消費支出物価指数、4-6月期実質GDPの改定値、などが注目されます。

エヌビディアの5-7月期決算は、8/28(水)の引け後に発表予定です。同社のAIコンピュータを用いてサーバーを供給するスーパーマイクロコンピュータの売上ガイダンスからは、再び売上見通しが引き上げられる期待があります。なお、「今週の5銘柄」の項もご参照ください。

7月消費支出物価指数は、総合指数は前年比+2.6%の予想(前月は同+2.5%)、コア指数は前年比+2.7%の予想(前月は同+2.6%)と、総合指数、コア指数とも前月から伸び率が高まる予想です。消費者物価指数、生産者物価指数の動きからするとやや意外な見通しになっています。

米国の4-6月期実質GDP改定値は前期比年率+2.8%と速報値から変化なしの予想です。米国経済の減速懸念は一旦収まっているものの、週次の新規失業保険申請件数とともに主要な景気指標は引き続き注視していく必要があると思われます。

経済指標では、8/26(月)に米国の7月耐久財受注(前月比+4.9%の予想、前月は同-6.7%)、8/27(火)に米国の8月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の100.3から100.6に改善の予想)、などが発表予定です。

今週の5銘柄

今週はエヌビディアの5-7月期決算発表が好感されると想定して、AI関連の半導体銘柄から、エヌビディア(NVDA)、アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)、ブロードコム(AVGO)、マイクロン テクノロジー(MU)、台湾セミコンダクター ADR(TSM)を選んでご紹介いたします。

エヌビディアのAIコンピュータを用いてサーバーシステムを供給するスーパーマイクロコンピュータの売上は、2024年6月期実績から2025年6月期にかけて前年比87%の増加見通しです。これにほぼ時期が対応するエヌビディアのデータセンター向け売上予想(市場のコンセンサス予想)は前年比58%増の予想です。(図表3)。

スーパーマイクロコンピュータの売上見通しを基準とすれば、エヌビディアの売上見通しはさらに上方修正される余地が残っていると考えられます。エヌビディアの決算が再び好調となれば、AI関連半導体株の物色が再燃すると期待されます。

詳しくは、8/21(水)に掲載した外国株式特集レポート「どうなる!?来週のエヌビディア決算、半導体株の今後を占う!」をご参照ください。

図表3 スーパーマイクロコンピュータとエヌビディアの売上見通し比較

注:データは8/16(金)時点です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(8/23)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートエヌビディア(NVDA)129.37ドル47.7

【8/28(水)に決算発表】

・同社の5-7月期決算は売上が1,212億ドルで前年同期比99%増、EPSが2.68ドルで同125%増、8-10月期売上は1,691億ドルで前年同期比40%増の予想です。

・データセンター向けのAIコンピュータ需要の伸びに市場が驚いたのが2023年2-4月期決算の発表で、そこから1年以上ポジティブサプライズが続いたため、そろそろ市場予想を下回る可能性があるのではないかとの警戒が市場にあるのも確かでしょう。しかし、同社のAIコンピュータをサーバーシステムに組んで納入しているスーパーマイクロコンピュータの売上ガイダンスからは、さらに売上見通しが上方修正される余地があると考えられます。アナリストの目標株価平均は142.20ドルで、現在の株価が高すぎるという判断にはなっていません。

買付チャートアドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)154.98ドル45.7

【AIコンピュータ市場への参入が順調】

・4-6月期決算は1-3月期から伸びが拡大、市場予想も上回りました。AI関連がけん引するデータセンターが前年同期比2.1倍、クライアント(PC)が同49%増と大幅に伸び、ゲームとエンベデッドの減少を相殺しました。

・7-9月期の売上ガイダンス中央値は67億ドル(前年同期比16%増相当)で市場予想を上回りました。AI向け半導体「MI300」の通期売上見通しを40億ドルから45億ドルに引き上げています。CEOは「AI関連事業は加速しつつあり、年後半に売上を大きく伸ばせるポジションにある」とコメントしています。

買付チャートブロードコム(AVGO)166.36ドル34.4

【AI関連売上が好調】

・AI関連売上は、 2-4月期に31億ドルで、前年同期比3.8倍となり、11-1月期の23億ドルからも増加しました。AI関連売上の中身は、特定顧客向けAIアクセラレーター(エヌビディアのGPUと同様の働きをする半導体)およびデータセンターで使用されるネットワーキング半導体からなります。アップル向け売上は2024年10月期に15%程度と推定され、iPhoneの回復から恩恵を受けます。

・AIアクセラレーターは、グーグル、メタプラットフォームズなど特定顧客のAI計算に用いられています。AIネットワーキング半導体は、イーサネット・スイッチ、PCLeスイッチ、NIC(ネットワーク・インターフェース・カード)向け半導体です。5-7月期決算は9/5(木)に発表予定です。

買付チャートマイクロン テクノロジー(MU)102.85ドル83.6

【AI関連が業績をけん引】

・半導体メモリ-の米大手です。テクノロジー別の売上構成比は、DRAMが71%、NAND27%、その他2%です。大規模言語モデルのAI計算を処理するためにデータ量が拡大して、これに対応するたに高性能のDRAMに対する需要が拡大しています。

・3-5月期は売上高が前年比82%増の68億ドル、EPSは同黒字転換の0.62ドルで市場予想を共に上回りました。同社CEOは「好採算のHBM(データをやり取りする速度が早いDRAM)で市場シェアが拡大している」とコメント。HBMについては24年と25年分は完売しており、25年8月期に売上高が数十億ドルに達するとの見方を示しました。6-8月期決算は9/27(金)発表の予定です。

買付チャート台湾セミコンダクター ADR(TSM)171.28ドル26.1

【最先端の半導体製造技術でリード】

・同社はAI半導体市場を支配するエヌビディア、参入を進めているAMDとも受託生産の主要顧客としていることから、AI半導体市場拡大から直接的な恩恵を受けています。4-6月期決算は、売上が前年同期比40%増、EPSが同36%増で、市場予想をそれぞれ3%、6%上回って好調でした。

・月次売上高も、5月前年比+30.1%、6月同+32.9%、7月同+44.7%と好調に推移しています。中期的には、2ナノメートル技術(「N2」)を2025年後半、1.6ナノメートル技術(「A16」)を2026年に実現する見込みであり、最先端の半導体製造技術でリードが続くと見込まれています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディアは2025年1月期、ブロードコムは2025年10月期、マイクロンテクノロジーは2025年8月期、その他は2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
26(月) ・米耐久財受注(7月)  
27(火) ・S&PコアロジックCS住宅価格(6月)
・コンファレンスボード消費者信頼感(8月)
・2年国債入札
 
28(水) ・アトランタ連銀のボスティック総裁が講演
・5年国債入札
エヌビディア、セールスフォース
クラウドストライクホールディングス
29(木) ・EU27ヵ国新車登録台数(7月)
・ユーロ圏景況感(8月)
・米実質GDP(4-6月期、改定値)
・米新規失業保険申請件数(8月24日に終わる週)
・米中古住宅販売制約(7月)
・7年国債入札
・アトランタ連銀のボスティック総裁が講演
 
30(金) ・日本鉱工業生産(7月)
・米個人所得・個人支出(7月)
・米個人消費支出物価指数(7月)
・米ミシガン大学消費者信頼感(8月、確報値)
 
9月
2(月)
・米国市場休場(レイバーデー)  
3(火) ・米ISM製造業景気指数(8月)  
4(水) ・米貿易統計(7月)
・米求人労働異動調査(7月)
・米製造業受注(7月)
・地区連銀経済報告(ベージュブック)
シースリーエーアイ
5(木) ・ユーロ圏小売売上高(7月)
・米ADP雇用統計(8月)
・米ISM非製造業景気指数(8月)
・米新規失業保険申請件数(3月9日に終わる週)
ブロードコムニオ
6(金) ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、確報値)
・米雇用統計(8月)
 

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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