中国株 ココがPOINT!  ~10/16から始まる共産党大会、注目点と相場への影響~

中国株 ココがPOINT!  ~10/16から始まる共産党大会、注目点と相場への影響~

投資情報部 李 燕

2022/10/06

9/29-10/05の香港市場は反発しました。米10年債利回りとドル指数の反落や、世界主要中央銀行の「ハト派」転換に対する期待を背景に、投資家は「リスク回避」から一転して「リスクオン」へ傾きました。前週まで急落したこともあり、今回の反発はテクニカル要因とショートスクイーズによるものとも指摘されています。

今回は、共産党大会を取り上げたいと思います。

図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

注:10/06(木)前場までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(10/05(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09988 アリババ・グループ 12.7% -5.3% -27.3% EC・フィンテック大手。相場地合いの好転で買われた。(詳細は本文をご参照願います)
09888 百度 [バイドゥ] 7.8% -10.2% -19.0% 検索エンジン大手。相場地合いの好転で買われた。(詳細は本文をご参照願います)
01177 中国生物製薬 [シノ・バイオファーマ] 7.7% -3.3% -26.2% 大手医薬品メーカー。大手証券会社の買い推奨が手掛かりとなったもよう。
01109 華潤置地 [チャイナ・リソーシズランド] 7.3% 5.3% -10.6% 中国不動産大手。大手証券会社が不動産株のなかで、同社をトップ推奨銘柄に挙げた。
01997 九龍倉置業 [ワーフ・リアルエステート] 7.2% 1.5% 2.8% 香港地場の不動産会社。大手証券会社が投資判断「買い」で新規カバレッジを開始した。(SBI証券取り扱いなし)
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00762 中国聯通[チャイナ・ユニコム] -0.3% -2.2% -4.8% 通信キャリア。投資家の「リスクオン」姿勢を受け、ディフェンシブ銘柄が利益確定売りに押された。
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] -0.7% -7.4% -20.3% パソコン大手。大手証券会社が目標株価を引き下げた。
00960 龍湖集団 [ロンフォー・グループ] -0.8% 0.0% -31.1% 中国不動産大手。需給要因のもよう。9月末(四半期末)を挟んだポジション調整がみられた。
06098 CG SERVICES -1.1% -9.0% -62.5% 不動産大手カントリーガーデン(02007)傘下の不動産サービス会社。親会社の資産売却をめぐり、買収側が買収を断念したと報じられた。(SBI証券取り扱いなし)
00017 新世界発展[ニューワールト] -2.7% -13.8% -21.9% 香港の不動産会社。2022.6期(6月末決算)の決算内容が市場予想を大きく下回り、売られた。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09988 アリババ・グループ 12.7% -4.9% -26.9% EC・フィンテック大手。相場地合いの好転で買われた。(詳細は本文をご参照願います)
06618 京東健康(JD Health) 8.6% -6.6% -24.3% JDドットコム(09618)傘下のインターネットヘルス大手。相場地合いの好転で買われた。(詳細は本文をご参照願います)
09888 百度 [バイドゥ] 7.8% -10.2% -19.0% 検索エンジン大手。相場地合いの好転で買われた。(詳細は本文をご参照願います)
09961 携程旅行網 [トリップドットコム゚] 7.7% 17.9% 4.9% オンライン旅行サービス大手。国慶節連休期間中に、大都市で近場旅行が好調と報じられ、好材料となった。(SBI証券取り扱いなし。リンク先は米国上場のTCOMとなっています。)
09626 ビリビリ 6.7% -30.2% -39.1% 動画プラットフォーム大手。相場地合いの好転で買われた。(詳細は本文をご参照願います)(SBI証券取り扱いなし。リンク先は米国上場のBILIとなっています。)
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00909 Ming Yuan Cloud Group -1.1% -13.2% -56.0% 不動産会社向けソフトウェア大手。需給要因のもよう。(SBI証券取り扱いなし)
01833 平安健康医療 [ピンアン・ヘルスケア] -1.7% -27.8% -34.9% 平安保険(02318)傘下のインターネットヘルス大手。大手証券会社が「アンダーパフォーム」の投資判断を再確認した。
00772 閲文集団(China Literature) -4.4% -25.1% -38.1% オンライン文学プラットフォームを運営。一部業務のサービス提供を停止すると報じられた。
02018 瑞声科技 [AACテクノロジーズ] -5.0% -11.6% -26.1% 音響部品メーカー。アップルの増産計画断念の報道を受け、アップル関連銘柄が売られた。
09868 小鵬汽車[シャオペン] -10.3% -29.1% -62.7% 新興EVメーカー。大手投資ファンドが同社のポジションを5%以下に減らしたと報じられた。保有比率5%以下となった場合、追加売却の際は届出が不要になる。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

9/29-10/05の香港市場では、ハンセン指数が4.9%上昇、ハンセンテック指数は4.5%上昇しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は、6.2%上昇しました。

前週の世界的な「リスク回避」から一転して「リスクオン」へ傾きました。主な要因は、以下の3つです。

1)米10年債利回りとドル指数の反落
米10年債利回りとドル指数は9/27まで高値更新が続きましたが、9/28に一転して反落しました。きっかけは、イングランド銀行(英国の中央銀行)による国債市場への介入です。

英国では前週まで、新政権による大規模な減税策と国債の増発計画を受け、国債の下落とポンド安が顕著でした。英国金融市場の混乱が世界にも波及するとの懸念から、米利上げを背景に上昇が続いた米10年債利回りとドル指数は一段高となりました。市場安定を図るため、イングランド銀行は9/28に英国の国債を緊急で購入すると発表しました。それを受け、英国の国債利回りが下落し、ポンドは対ドルで上昇し、米10年債利回りとドル指数は反落しました。

2)世界主要中央銀行の「ハト派」転換に対する期待
米国をはじめとする世界主要中央銀行がインフレ退治のために「タカ派」姿勢を示しているなか、オーストラリアの中央銀行は10/4に市場予想(0.5%)を下回る利上げ(0.25%)を発表しました。これは市場にとって「ハト派サプライズ」となり、他の中央銀行も追随する可能性が意識されました。

そうしたなか、10/4に発表された8月の米国求人件数は、予想以上に減少し、2021年6月以来の低水準となりました。景気見通しの悪化を反映するものとして捉えられ、米連邦準備制度理事会(FRB)が「タカ派」姿勢を緩める可能性があると期待されました。

3)テクニカル要因とショートスクイーズ(踏み上げ)
ほとんどの世界主要株価指数は前週までの急落で、RSIが売られ過ぎサインとされる30%を下回る水準に達しました。そのため、テクニカル面からみた場合、短期的な反発を狙った買いが入りやすいタイミングにありました。突然の反発はショートスクイーズ(※)を招きやすく、今回の急反発も「踏み上げ」が要因であるとも指摘されています。(※空売り解消による買い上げで急騰する状況、「踏み上げ」ともいう)

上記の1)-3)が重なったことで、世界株式市場は持ち直し、香港市場も急反発(特に休み明けの10/4)しました。今後、反発が続くかどうかは、まず上記のうち、最も重要な2)世界主要中央銀行(特に米国)の「ハト派」転換があるかどうかが注目されます。次に、企業収益に影響を与える世界経済の見通し(景気後退が軟着陸となるか、それともハードランディングとなるか)にも留意する必要があります。中国側の要素としては、10/16から始まる中国共産党大会で発表される予定の人事や政策方針がより重要になってくると思われます。この点については、「今回のトピックス」部分で取り上げます。

なお、9/29-10/05の香港市場は全業種が買われました。上昇率トップ3業種は素材、情報テクノロジー、エネルギーでした。

素材は、主にドル安を背景とした商品価格の上昇によるものです。特に金相場の反発を受け、産金関連のツージンマイニン(02899)や招金砿業(01818)が大幅高となりました。

情報テクノロジーは、アリババ(09988)やJDドットコム(09618)、百度(09888)などが上昇をけん引しました。売られ過ぎ銘柄が買われる「リターン・リバーサル」の展開となりました。

エネルギーは、ペトロチャイナ(00857)やCNOOC(00883)など石油メジャーが買い戻されました。原油先物価格がドル安に加え、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の主要な産油国で構成する「OPECプラス」の減産見通しで急反発したためです。OPECプラスは10/5(香港市場引け後)に、全体で日量200万バレルの生産枠削減(減産規模は2020年以降で最大)で合意しました。

消費関連では、リオープン関連のトリップドットコム(09961)(SBI証券取扱なし、トリップドットコムADR(TCOM)は取扱銘柄)やエアチャイナ(00753)、華潤ビール(00291)などが買われました。新エネルギー車最大手のBYD(01211)は、10/5に急反発しました。9月の新エネルギー車販売台数が月次ベースで初めて20万台を突破(前年同月比で183%増加)し、市場予想を上回りました。

スポーツウェア用品大手のリーニン(李寧)(02331)と安踏体育用品(02020)も、10/5に大幅高となりました。「北京市マラソン大会」の再開が好材料となりました。新型コロナの感染拡大による影響で、「北京市マラソン大会」は昨年まで2年連続で休止となりましたが、今年は11/6に開催することが明らかになりました。首都である北京市の動きは、遅ればせながら中国もリオープンに向けて動き出していることを示しています。

今回のトピックス

今回は、共産党大会を取り上げたいと思います。

【共産党大会とは】
共産党大会は、中国共産党全国代表大会の略称で、中国共産党の最高指導部や政策方針を決める最高意思決定機関です。5年に1度秋に、首都北京で開催されます。開催期間はおよそ1週間です。

これまでの慣例ですと、開催初日に共産党総書記による活動報告が行われます。過去5年間の活動を振り返るとともに、今後の政策方針が示されます。そして、開催最終日には中央委員会委員(約200人)が選出されます。この中央委員会による第1回全体会議が共産党大会終了の翌日に開催されます。同会議では、次期の共産党総書記をはじめ、最高指導部の中央政治局委員や中央政治局常務委員のメンバーが選出されます。

図表4 共産党大会の日程等

  第18回(2012年) 第19回(2017年) 第20回(2022年)
共産党大会の開催期間 11/8(木)- 11/14(水) 10/18(水)- 10/24(火) 10/16(日)- 終了日は未公表(※)
(※過去と同様に7日間の場合は、10/22(土)に当たる)
活動報告(政策方針が示される) 開催初日 開催初日 開催初日
中央委員会メンバー(約200人)を選出 開催最終日 開催最終日 開催最終日
中央委員会第1回全体会議
共産党総書記、中央政治局委員、および中央政治局常務委員を選出
11/15に開催 10/25に開催 慣例だと、共産党大会終了の翌日に開催される予定
共産党総書記(1名) 習近平 習近平  
中央政治局常務委員(5-9人、過去2期は7人) 習近平、李国強、張徳江、兪正声、劉雲山、王岐山、張高麗 習近平、李国強、栗戦書、汪洋、王滬寧、趙楽際、韓正  
中央政治局委員(25名) 上記の7人に加え、汪洋や韓正など計25名 上記の7人に加え、劉鶴や胡春華など計25名  

※各種資料もとにSBI証券が作成。

【共産党大会の注目点は】

1)最高指導部の人事

共産党大会では中央委員会メンバー(約200人)が選出され、そのメンバーで行われる会議で、次期の最高指導部が選出されます。特に注目されるのは、総書記ですが、習近平氏の続投が市場のコンセンサスとなっています。そのため、今回より注目されるのは、中央政治局常務委員の顔ぶれです。中国の最高指導部に入った人が各中枢部門のトップになるため、それにより中国の政策運営が変わる可能性があります。

たとえば、最高指導部では改革派メンバーが多いのか、それとも成長重視派が多数を占めるのか、あるいはバランス型となるかで、今後数年の中国経済運営方針に影響を与えます。成長重視派となれば、株式市場にとってはプラス材料です。

2)政策方針

最高指導部の人事とともに、共産党大会開催初日に行われる習近平氏の活動報告では、過去5年間を振り返るとともに、今後の政策方針が示される予定です。たとえば、前回2017年に行われた第19回共産党大会で習近平氏は、2012年の第18回共産党大会で提起された「二つの百年奮闘目標」(※)に踏まえ、「2035年の長期目標」を提示しました。

(※一つ目の奮闘目標:中国共産党の結党 100 年となる 2021 年に全面的な小康社会を建設する、二つ目の奮闘目標:中国建国 100 年の 2049 年に富強・民主・文明・調和の社会主義現代化国家を建設する)

「2035年の長期目標」では、二つ目の奮闘目標の達成に向け、2035年までと2035年以降の2段階を設定しました。第1段階の具体的な目標は、1)経済力、科学技術力、総合国力を大幅に引き上げる;2)経済規模と1人当たり所得を新たなレベルに引き上げる;3)コア技術において大きなブレークスルーを実現する;4)イノベーション型国家の上位に入る;5)炭素排出量をピークアウト後、安定的に引き下げるなどが含まれています。

「強い中国」、「イノベーション重視」、「脱炭素」といった目標が目立ちます。これらは、その後の政策運営でも重視している要素となっています。2035年までの目標として提示されているため、これらの重要要素は今回も引き継がれることになると思われます。他方、足元の複雑な世界情勢や経済環境を踏まえ、今後数年という短いスパンで中国当局が何をより重視するのか、それを占う材料が今回提示されるかどうかが注目されます。

【株式市場市場への影響】

過去5回の共産党大会イベント前後のハンセン指数騰落率を確認してみると、開催1週間前が小幅高、開催期間中は小幅安、開催後1週間および2週間は小幅反発となりました。株価指数のパフォーマンスは、共産党大会だけでなく、その年の相場環境にも影響されるため、まったく同じ傾向をたどるとは限りません。ただし、過去の経験から総じて言えるのは、イベント期間中は「様子見」姿勢が強くなりそうです。イベント通過後(1-2週間)は、共産党指導部の人事や政策方針を確認しながらの動きとなる思われますが、過去5回ではいずれも不透明感の払拭で反発しました。

図表5 過去5回の共産党大会イベント前後のハンセン指数騰落率

※BloombergをもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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