中国株 ココがPOINT!  ~予想利益成長率に対して割安感のある銘柄~

中国株 ココがPOINT!  ~予想利益成長率に対して割安感のある銘柄~

投資情報部 李 燕

2022/10/13

10/6-10/12の香港市場は反落しました。米FRB当局者のタカ派発言を受け、米10年債利回りとドル指数が再び上昇し、投資家はリスク回避姿勢を強めました。共産党大会を前に、中国での新型コロナの感染拡大やロックダウンに対する懸念も、ポジションを圧縮する動きを加速させました。

今回は、足元で投げ売りの様相を呈しているなか、予想利益成長率に対して割安感のある銘柄を確認してみたいと思います。

図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

注:10/12(水)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(10/12(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00941 中国移動 [チャイナモバイル] -0.8% -2.3% 1.1% 中国通信キャリア最大手。投資家のリスク回避姿勢が強まるなか、ディフェンシブ銘柄の通信は下げ幅が限定的だった。
00857 中国石油天然気 [ペトロチャイナ] -0.9% -4.6% -5.9% 中国石油・天然ガス最大手。大手証券会社が買い推奨した。世界経済は鈍化するものの、OPECプラスの減産は原油価格を支えるだろうとの見通しを示した。
00762 中国聯通[チャイナ・ユニコム] -1.4% -4.6% -5.4% 通信キャリア。投資家のリスク回避姿勢が強まるなか、ディフェンシブ銘柄の通信は下げ幅が限定的だった。
01088 中国神華能源 [チャイナ・シェンファ・エナシ] -1.5% -8.8% 7.3% 石炭大手。気温低下で冬に向けた石炭の備蓄が早まっていると、中国港協会が指摘。石炭輸送に関わる港湾の取扱量が9月下旬に前年同期比で2割増加したもよう。
01997 九龍倉置業 [ワーフ・リアルエステート] -1.9% -1.6% 2.2% 香港地場の不動産会社。特段材料はなく、需給要因のもよう。(SBI証券取り扱いなし)
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
06098 CG SERVICES -15.0% -34.3% -61.3% 不動産大手カントリーガーデン(02007)傘下の不動産サービス会社。国慶節連休中に新築住宅販売面積が前年同期比37.7%減となり、不動産関連株が売られた。(SBI証券取り扱いなし)
06862 海底撈(Haidilao) -16.6% -19.3% -16.0% 火鍋チェーン中国最大手。国慶節連休中に新型コロナの感染者数が増加し、ロックダウンに対する懸念で売られた。
03968 招商銀行(CMB) -17.4% -20.9% -33.3% 大手商業銀行。元頭取が共産党の規律違反で党籍剥奪と公職解任となり、売り材料となった。
00960 龍湖集団 [ロンフォー・グループ] -18.7% -29.6% -39.3% 中国不動産大手。国慶節連休中に新築住宅販売面積が前年同期比37.7%減となり、不動産株が売られた。
02007 碧桂園 [カントリー・ガーデン] -21.9% -40.5% -61.9% 中国不動産大手。国慶節連休中に新築住宅販売面積が前年同期比37.7%減となり、不動産株が売られた。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] -3.7% -9.7% -22.0% パソコン大手。世界パソコン市場は軟調が続いているものの、同社の市場シェアは今年上期に22.7%に上昇し、2位のHP(17.1%)を大きく上回っている。リスクオフで全面安となったなか、下落率は限定的だった。
06690 海爾智家 [ハイアールスマートホーム] -6.6% -6.7% -11.4% 大手家電メーカー。不動産市場の軟調は悪材料となったが、大手証券会社が消費関連銘柄として10-12月期の回復を見込み、売り買いが交錯した。
01810 小米集団 [シャオミ] -7.7% -19.6% -31.6% スマートフォン・IoT家電大手。リスクオフで全面安となったなか、同社は10/11に自社株買いを実施した。
01347 華虹半導体 [フアホン・セミコンダクター] -7.7% -23.0% -28.9% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。半導体をめぐる米国の新たな対中規制が売り材料となった。ただし、押し目買いもみられ、他のハイテク株が10%以上下落するなか、下落率はやや小さかった。
00981 中芯国際 [SMIC] -7.9% -2.1% -5.6% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。半導体をめぐる米国の新たな対中規制が売り材料となった。ただし、押し目買いもみられ、他のハイテク株が10%以上下落するなか、下落率はやや小さかった。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09961 携程旅行網 [トリップドットコム゚] -17.2% -5.3% 1.5% オンライン旅行サービス大手。国慶節連休中の旅行者数の減少や新型コロナの感染拡大が売り材料となった。同社は、コロナ政策(移動制限)により国慶節連休中は地場での旅行が全体の65%を占めたと発表。地場での1人当たり観光支出は前年比30%増加した。(SBI証券取り扱いなし。リンク先は米国上場のTCOMとなっています。)
09698 万国数拠服務 -19.1% -33.9% -46.0% データセンターを運営。米FRBの大幅な利上げ継続に対する懸念や米10年債利回りの上昇で、金利上昇に弱いとされる赤字企業が大幅に売られた。中国の新型コロナの感染拡大も嫌気された。
09626 ビリビリ -22.0% -33.3% -45.9% 動画プラットフォーム大手。米FRBの大幅な利上げ継続に対する懸念や米10年債利回りの上昇で、金利上昇に弱いとされる赤字企業が大幅に売られた。中国の新型コロナの感染拡大も嫌気された。(SBI証券取り扱いなし。リンク先は米国上場のBILIとなっています。)
09866 蔚来汽車 [ニオ] -23.1% -28.5% -35.0% 新興EVメーカー。米FRBの大幅な利上げ継続に対する懸念や米10年債利回りの上昇で、金利上昇に弱いとされる赤字企業が大幅に売られた。中国の新型コロナの感染拡大も嫌気された。
00020 SenseTime Group Inc -25.6% -43.9% -47.3% AIソフトウェア大手。米FRBの大幅な利上げ継続に対する懸念や米10年債利回りの上昇で、金利上昇に弱いとされる赤字企業が大幅に売られた。中国の新型コロナの感染拡大も嫌気された。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

10/6-10/12の香港市場では、ハンセン指数が7.7%下落、ハンセンテック指数は11.3%下落しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は、14.6%下落しました。

前週の「リスクオン」の急反発から一転して「リスクオフ」による大幅反落となりました。主な要因は、以下の3つです。

1)FRB当局者のタカ派発言

前週はイングランド銀行(英国の中央銀行)の市場介入やオーストラリア中央銀行による予想外の利上げペース鈍化により、米連邦準備制度理事会(FRB)のハト派転換が期待されましたが、FRB当局者はそれをけん制し、タカ派発言が相次ぎました。FRBは大幅な利上げを継続するとの見方が再び強まり、リスク回避につながりました。

2)10年債利回りとドル指数が再び上昇

米FRB当局者のタカ派発言を受け、米10年債利回りとドル指数は再び上昇しました。米イエレン財務長官が11/11に、「市場によって決まるドルの価値は米国の利益に合致する」と発言したことも、ドル高の勢いは続くとの予想を強めました。一段のドル高を警戒し、リスク資産を圧縮する(ドルに資金を引き揚げる)動きが加速しました。

3)共産党大会を前に、中国での新型コロナの感染拡大とゼロコロナ政策

国慶節連休中に中国本土では新型コロナの感染者数が増加しました。10/16から重要な政治イベントである共産党大会を控え、市場では大規模なロックダウンの実施に対する警戒が強まりました。国慶節連休中に一部地域の行動制限により、不動産販売や消費がさえなかったことも、売りを助長しました。また、最高指導部の人事や政策方針を決定する共産党大会の結果を見極めたいとの思惑も強く、共産党大会の前にポジションを縮小する動きがみられました。

上記を受け、香港市場はすべての業種が調整しました。特に、米FRBの大幅な利上げ継続に対する懸念で、情報テクノロジーやヘルスケアなどハイテク株の下落が顕著でした。

半導体株は、米国の新たな対中規制も響きました。米バイデン政権は10/7に、米国の半導体技術への中国のアクセスを制限する措置を発表しました。ただし、ロイター通信は10/11に、米政府は同措置が「半導体サプライチェーン(供給網)に混乱を生じるといった意図せざる結果を招かないよう、対応を急いでいる」と報じました。それを受け、半導体株は10/12は売り買いが交錯し、結果的にその他の多くのハイテク株ほどは下げませんでした。米国の措置により大幅に下落した中国本土の半導体株ETFは、押し目買いによる資金純流入がみられました。

不動産と消費関連は、国慶節連休中の低調さを嫌気し、売られました。国慶節連休中は新築住宅販売面積が前年同期比で37.7%減となり、旅行者数は4.2億人と、前年同期比18.2%減少しました。いずれもゼロコロナ政策による行動制限の影響が続きました。国慶節連休中に新型コロナの感染者数が増加したこともあり、売りを助長しました。10/16から始まる共産党大会を前に、再び大規模なロックダウンが導入されることを警戒しました。

しかしながら、それに対する警戒はやや行き過ぎの可能性があります。筆者は10/11に深セン在住の元同僚に現地の情報を聞きました。同氏によると、自宅の隣のマンションがクラスターの発生で「プチロックダウン」状態にありますが、自分が住んでいるマンションはまったく行動規制をしていないとのことです。今年3月の深センロックダウン時の対応に比べると、ずいぶん規制が緩んできた印象です。

また、上海市の一部地区が10/10に娯楽施設の一時閉鎖を発表したことで、上海市の再ロックダウンに対する懸念で10/11の香港市場は大幅に調整しました。それに対し、10/11にブルームバーグTVに出演された上海在住の金融関係者は、全般的に経済活動は続いているとし、今回はロックダウンの可能性は低いとの見方を示しました。

過去の経験からすると、重要な政治イベントである共産党大会の「前」は、共産党大会の結果を見極めたいとの思惑が強く、ポジション調整が行われやすいです。特に今年は米国の大幅利上げ懸念や中国のゼロコロナ政策を受けた経済見通しの悪化も重なり、一段と警戒が高まりやすくなっています。一方、過去5回の共産党大会を確認してみると、その「後」はいずれも政治イベントの不透明感の払拭で相場は反発しました。

共産党大会の「前」と「後」については、10/12付けのレポート「共産党大会の「前」と「後」、コロナ政策や株式市場」でまとめてありますので、詳細は同レポートご参照願います。

今回のトピックス

今回は、足元で投げ売りの様相を呈しているなか、予想利益成長率に対して割安感のある銘柄を確認してみたいと思います。

個別銘柄の株価水準(バリュエーション)を図る指標として、株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)がよく使われます。PERは「株価/EPS(1株当たり利益)」となっており、EPS(業績)に対する評価となっています。先行きの見通しを加味したものは、予想PER(=株価/予想EPS)です。EPSがマイナスな赤字企業の場合はPERが算出できないため、PBR(=株価/1株当たり純資産)が良く使用されます。また、大規模な設備が必要な重厚長大産業もPBRがより適切だと言われています。

そして、利益の成長率も加味した指標としては、PEGレシオ(Price Earnings Growth Ratio)があります。PERから派生したもので、「PER/1株当たりの予想EPS成長率」で算出されます。単純に言うと、EPSだけでなく、EPSの成長率も考慮したものです。機関投資家の中ではPERよりもPEGレシオを重視する人も多いです。というのは、PERは成長率を加味していないため、安易的に5倍や10倍以下なら割安だと判断した場合、「PERの罠」にはまりかねません。業績の伸びが低いゆえに、低PERのまま放置される銘柄も多いからです。

そこで今回は、PEGレシオを基準にスクリーニングをかけることにしました。抽出基準は、下記の通りです。

1)ハンセン指数とハンセンテック指数の構成銘柄

2)来年度予想PEGレシオが1倍を下回る(一般的に1倍を下回った場合、割安と判断される)

3)SBI証券の取扱銘柄

図表4 来年度予想PEGレシオが1倍を下回る銘柄

銘柄コード Bloomberg銘柄名 来年度予想PEGレシオ 関連分野 中国の不動産市場に対するエクスポージャー(〇:ある、△:多少ある)
02318 中国平安保険 0.37 保険
00005 HSBC 0.38 銀行 △(英銀行大手、多国で事業を展開)
00688 中国海外発展 0.40 不動産
00288 万洲国際 0.42 食肉事業  
01658 中国郵政儲蓄銀行 0.42 銀行
03968 招商銀行 0.44 銀行
03328 交通銀行 0.44 銀行
01288 中国農業銀行 0.47 銀行
03988 中国銀行 0.47 銀行
09618 JDドットコム 0.48 EC  
00939 中国建設銀行 0.49 銀行
00881 中升控股 0.53 自動車ディーラー  
01398 中国工商銀行 0.53 銀行
02313 申洲国際集団 0.61 アパレル  
00175 吉利汽車 0.63 自動車  
00762 中国聯通 0.66 電気通信  
02388 中国銀行(香港) 0.68 銀行 主に香港で事業を展開
01211 比亜迪 [BYD] 0.70 新エネルギー車  
09888 百度 0.74 検索エンジン  
02382 舜宇光学科技 0.76 光学部品  
02628 中国人寿保険 0.79 保険
01929 周大福珠宝集団 0.84 ジュエリー販売  
01109 華潤置地 0.87 不動産
00011 恒生銀行(中国) 0.96 銀行 主に香港で事業を展開

注Bloomberg銘柄名はカタカナの部分を省略しました。SBI証券の銘柄名と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

上記のリストを確認してみると、業種別では銀行や保険、不動産が多いです。これらの業種の特徴は、中国の不動産市場に対するエクスポージャーがあることです。したがって、予想PEGレシオから割安と判断されたとしても、不動産市場に対する見通しの悪化が続いている限り、見直し買いは入りづらい可能性が高いです。他方、もし中国当局が共産党大会で、もしくは共産党大会の後に強力な不動産支援措置を打ち出した場合、不動産市場の持ち直し期待で見直し買いが入るかもしれません。

その他では、EC大手のJDドットコム(09618)やBYD(01211)、百度(09888)などといった中国株の主要銘柄がリスト入りとなりました。これらの銘柄は、中国で最も軟調とされている不動産市場との関連性が低く、予想利益成長率に対して割安感もあるため、見直し買いが入りやすいかもしれません。他方、BYDについては、主要株主であるバークシャー・ハサウェイの追加売却があるかどうかには引き続き、留意が必要です(※)。

(※香港証券取引所の情報開示ページは、https://di.hkex.com.hk/di/NSSrchCorp.aspx?src=MAIN&lang=EN&g_lang=en です。「Stock code」に銘柄コードを入れ、「Search」をクリックすると、「Report Type」の「List of notices filed by substantial shareholders」で大株主による届け出の開示情報が確認できます。注:中国本土と香港市場に同時上場している場合、香港上場株は「Name of listed corporation」の部分に「H shares」が付けられます。)

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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