中国株 ココがPOINT!  ~習近平氏の演説、GDP発表の見送り、底値拾いの動き~

中国株 ココがPOINT!  ~習近平氏の演説、GDP発表の見送り、底値拾いの動き~

投資情報部 李 燕

2022/10/20

10/13-10/19の香港市場は小幅続落しました。共産党大会が開催されている北京で新型コロナの感染者数が4カ月ぶりの高水準になり、北京のロックダウンが強く警戒されました。

今回は、習近平・国家主席の演説やGDP発表の見送り、および相場の底値拾いの動きを確認してみたいと思います。

図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

注:10/19(水)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(10/19(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
03692 Hansoh Pharmaceutical 17.5% 7.9% -16.5% 医薬品大手。売られ過ぎた銘柄が買われる「リターン・リバーサル」の動きがヘルスケア・セクターでみられた。同社については大手証券会社が買い推奨した。(SBI証券取り扱いなし)
00881 中升集団 11.3% 4.9% -32.4% 自動車販売会社。自社株買いを実施した。S&Pグローバル・レーティングが同社の格付けを「BBB-」から「BBB」へ引き上げたことも、買い手掛かりとなった。
01177 中国生物製薬 [シノ・バイオファーマ] 10.8% 11.8% -15.2% 大手医薬品メーカー。売られ過ぎた銘柄が買われる「リターン・リバーサル」の動きがヘルスケア・セクターでみられた。
00005 HSBC (匯豊控股) 7.6% -12.7% -14.7% 英金融大手。英国政府が大型減税の大部分を撤回。英長期国債の利回りが低下し、ポンドも対ドルで反発したことを好感した。
01093 石薬集団 [CSPCファーマシュ-ティカル] 7.3% 10.9% 0.0% 医薬品大手。ヘルスケア・センターに対する見直し買いがみられるなか、同社子会社が中国バイオ医薬品メーカーのHarbour BioMedと提携し、買い材料となった。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
06098 CG SERVICES -8.9% -35.0% -58.1% 不動産大手カントリーガーデン(02007)傘下の不動産サービス会社。不動産会社・旭輝が社債の利払いを履行していないことが判明し、不動産関連株が売られた。(SBI証券取り扱いなし)
09618 JDドットコム -9.1% -22.5% -30.1% EC大手。ゼロコロナ政策をめぐる不透明感があるなか、北京で新型コロナの感染者数が4カ月ぶりに増加し、ロックダウン懸念が再び浮上した。消費の回復が一段と遅れることが懸念された。
02007 碧桂園 [カントリー・ガーデン] -9.8% -41.0% -59.4% 中国不動産大手。不動産会社・旭輝が社債の利払いを履行していないことが判明し、不動産関連株が売られた。
02331 李寧 [リー・ニン] -10.4% -17.7% -20.7% 中国国産ブランドのスポーツウエア大手。新製品のデザインが「旧日本軍の軍服」に似ていると指摘され、売り材料となった。「国潮」の代表格である同社にとって大きなイメージダウンにつながった。
01928 金沙中国 [サンズ・チャイナ] -15.5% -14.5% -11.5% カジノ大手。ゼロコロナ政策をめぐる不透明感があるなか、北京で新型コロナの感染者数が4カ月ぶりに増加し、ロックダウン懸念が再び浮上した。レジャー(カジノを含む)の回復が一段と遅れることが懸念された。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
03888 金山軟件 [キングソフト] 13.1% -6.3% -23.9% ゲーム・ソフトウェア大手。売られすぎの反動を狙った買いが入ったもよう。大手投資ファンドによる売り買いは交錯した。
00268 金蝶国際軟件 [キングディー・ソフトウエア] 12.2% -15.7% -39.4% ソフトウェア会社。大手証券会社が買い推奨した。
00285 比亜迪電子 [BYDエレクトロニック] 8.5% -15.7% -8.4% BYD(01211)傘下のスマートフォン部品・受託製造メーカー。親会社BYDが7-9月期は純利益が前年同期の4倍以上になる見通しだと発表し、買われた。
02018 瑞声科技 [AACテクノロジーズ] 8.0% -7.6% -19.6% 音響部品メーカー。大手投資ファンドが持ち株比率を引き上げた。
00772 閲文集団(China Literature) 5.8% -23.0% -37.3% オンライン文学プラットフォームを運営。自社株買いを実施した。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09618 JDドットコム -9.1% -22.5% -30.1% EC大手。ゼロコロナ政策をめぐる不透明感があるなか、北京で新型コロナの感染者数が4カ月ぶりに増加し、ロックダウン懸念が再び浮上した。消費の回復が一段と遅れることが懸念された。
09626 ビリビリ -9.7% -30.1% -51.6% 動画プラットフォーム大手。大手証券会社が同社ADRの投資判断を「ホールド」から「売り」に引き下げた。(SBI証券取り扱いなし。リンク先は米国上場のBILIとなっています。)
09866 蔚来汽車 [ニオ] -10.1% -40.4% -42.3% 新興EVメーカー。ゼロコロナ政策をめぐる不透明感があるなか、北京で新型コロナの感染者数が4カ月ぶりに増加し、ロックダウン懸念が再び浮上した。消費の回復が一段と遅れることが懸念された。
02015 理想汽車[リーオート] -11.6% -23.7% -53.0% 新興EVメーカー。ゼロコロナ政策をめぐる不透明感があるなか、北京で新型コロナの感染者数が4カ月ぶりに増加し、ロックダウン懸念が再び浮上した。消費の回復が一段と遅れることが懸念された。(SBI証券取り扱いなし。リンク先は米国上場のLIとなっています。)
09868 小鵬汽車[シャオペン] -17.3% -44.2% -70.4% 新興EVメーカー。ゼロコロナ政策をめぐる不透明感があるなか、北京で新型コロナの感染者数が4カ月ぶりに増加し、ロックダウン懸念が再び浮上した。消費の回復が一段と遅れることが懸念された。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

10/13-10/19の香港市場では、ハンセン指数が1.1%下落、ハンセンテック指数は2.2%下落しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は、8.1%下落しました。HXC指数の下落率が大きいのは、主に10/19の下落によるものです(要因は下記の反落要因を参照願います)。

香港市場は前週の急落から反発を試す場面もありましたが、主要指数は小幅続落となりました。それぞれの要因は、以下の通りです。

反発要因:10/16に開幕した共産党大会で習近平・国家主席は、党の統治において「発展が最も重要な任務」だと表明しました。習氏の演説をめぐっては、新型コロナの感染拡大や米中対立、台湾問題などを踏まえ、同氏が「発展」よりも「安全」をより重視すると表明することが懸念されていました。しかし、習氏の演説はその懸念を払しょくし、投資家に安心感を与えました。

一方、市場で注目された「ゼロコロナ政策」について習氏は、「過去5年の振り返り」部分でその成果を強調しました。他方、「今後の政策」部分では言及しなかったため、「ゼロコロナ政策」の行方をめぐっては「手掛かりなし」(堅持か、それとも方向転換かは不明)となりました。

主要指数の反発が限定的だったもう一つの要因は、習氏が「科学技術の自立自強」を強調し、台湾問題をめぐっては外部の干渉を強くけん制したためです。それを受け、米中対立の激化は続くことが予想されます。

反落要因(10/19:ゼロコロナ政策の動向をめぐる不透明感があるなか、首都北京では新型コロナの感染者数が4カ月ぶりの高水準になりました。北京で共産党大会が開催されているため、北京のロックダウンが強く警戒されました。

なお、中国当局は10/17夕方に7-9月期のGDP成長率と9月の主要経済指標の発表を延期すると公表しました。翌取引日(10/18)に主要指数がいずれも上昇したことをみると、投資家の反応は限定的であったと考えられます。経済指標発表の延期は過去にもあったため、市場にとって大きなネガティブ・サプライズにはなっていないようです。

一方、発表直前の延期はいろいろな憶測を呼んでいます。たとえば、経済指標がさえないため、共産党開催中の発表を避けたいためだ、あるいはそもそも経済指標の発表は共産党大会という政治イベントに比べると、二の次だという見方もありました。いずれにしても、今回の共産党大会が何よりも重要だと中国当局はみているようです。

なお、過去の経験からすると、共産党大会の開催期間中の株式市場は、軟調に推移する傾向があります。いろいろな不透明要因が意識されやすい時期だからです。特に今回は習近平氏の続投が確実視されるなか、最高指導部のメンバーがどう変わるかも注目されています。それがはっきりしてくるのが共産党大会閉幕の翌日(10/23の予定)となるため、それまでは神経質な展開が続きそうです。

業種別では、情報テクノロジーと一般消費財が軟調でした。いずれもゼロコロナ政策をめぐる不透明感があるなか、北京で新型コロナの感染者数が4カ月ぶりの高水準となり、ロックダウン懸念が再び浮上したためです。景気回復、特に消費の回復が一段と遅れることを警戒し、Eコマース関連や自動車(除くBYD(01211))などが幅広く売られました。

消費関連の代表格の一つであるスポーツ用品大手のリーニン(李寧)(02331)が大幅に下落したことも、投資家センチメントに影を落としました。李寧は、中国伝統文化の要素を重視する「国潮」ブランドとして有名ですが、新製品のデザインが「旧日本軍の軍服」に似ていると指摘されました。ブランド毀損につながる出来事として警戒され、株価は急落しました。

ネット上の批判を受け、同社は困惑をもたらしたことに対して謝罪文を公表しました。ただし、販売中止などといった対応には言及しなかったため、売りが膨らみました。消費者にとってブランドイメージは重要かつ敏感な要素となっているため、今後は同社の対応次第で株価が大きく変動する可能性がありそうです。

一方、新エネルギー車最大手のBYDは反発しました。会社側が7-9月期の純利益は前年同期の4倍以上になる見通しだと発表し、好材料となりました。ただし、株価が心理的節目である200香港ドルを超えた後はすぐに押し戻されました。ロックダウン懸念やバークシャー・ハサウェイの追加売却懸念がまだ残っていることが示唆されました。当面、節目の200香港ドルの回復が実現できるかどうかが注目されます。

業種別では、ヘルスケアと工業が堅調でした。両業種については、特段ポジティブ材料があったわけではありませんでした。両業種が年初からの下落率で上位1位や2位にあることからすると、これまで最も売られた業種が買われる「リターンリバーサル」が背景と考えられます。つまり、株価指数が底値を模索するなか、一部の業種に底値拾いの動きがみられています。

今回のトピックス

今回は、底値拾いの動きが鮮明になってきているヘルスケア指数の動きを確認してみます。

業種別の年初来推移を確認してみると(図表2)、ヘルスケア指数は今年最も下げが顕著な指数の一つでした。しかし、足元では10/11を底に反発しています。

より長期の2013年以降の推移(図表4)を確認してみると、ヘルスケア指数は2021年6月に史上最高値を付けた後、下落傾向が続き、直近は歴史的な低水準まで下落しました。ヘルスケアの主な調整要因は、相場全体のセンチメントの悪化(米国の大幅利上げ懸念や中国の景気減速懸念)に加え、ここ数年続いている中国当局による薬価改革(薬価の引き下げ改革)も影響しています。

図表4 ヘルスケア指数の推移(2013年から)

※BloombergをもとにSBI証券が作成。

ただし、中国当局による薬価改革などによる影響は、株価に十分反映されている可能性が高いと、現地の大手証券会社数社が指摘しています。つまり、足元の反発は、日柄調整と値幅調整を経て、ヘルスケア指数のバリュエーション面での割安さが意識されたことは主な要因です。

ヘルスケア関連の個別銘柄を確認してみると、バイオ医薬品関連の中国生物製薬(01177)やベイジーン(06160)(SBI証券取扱なし、米国上場のベイジーンADR(BGNE)は取扱銘柄)、医薬品大手の翰森製薬(03692)(SBI証券取扱なし)や石薬集団(01093)などが上昇をけん引しました。

なお、過去の経験からすると(特にセンチメントが全般的に弱い時)、底値形成は1日や2日で終わるものではなく、急反発後の利益確定売りをこなしながら、上昇トレンドを形成していく傾向が強いです。したがって、短期間にはボラティリティ(株価変動)に留意が必要です。特に個別銘柄はよりボラティリティが大きくなる可能性があります。その際は、比較的に銘柄分散が効くETFへの投資が一つの投資手段となり得ます。

SBI証券で取り扱っているヘルスケア関連のETF(チャイナバイオ(02820))に関する情報は、下記の通りです。

図表5 チャイナバイオ(02820)のETF情報

注:基準日は10/19です。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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