中国株 ココがPOINT!  ~「ブラックマンデー」後に反発、その要因と買われた銘柄~

中国株 ココがPOINT!  ~「ブラックマンデー」後に反発、その要因と買われた銘柄~

投資情報部 李 燕

2022/10/27

10/20-10/26の香港市場は大幅に続落しました。「3期目の習政権の政策」をめぐる不安、人民元安、新型コロナの感染拡大を受けた一部都市の行動制限が投資家センチメントを悪化させました。

今回は、「ブラックマンデー」の後の動向を確認してみたいと思います。

図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

注:10/26(水)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(10/26(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
01093 石薬集団 [CSPCファーマシュ-ティカル] 6.8% 21.7% 3.2% 医薬品大手。今年最も売られていた医薬品セクターに対する見直し買いが続いた。子会社の新薬をめぐる進展も好感された。
00968 信義光能 [シンイー・ソーラー] 5.5% -8.4% -37.5% 太陽光発電ガラスメーカー。中国本土の深セン証券取引所にA株を発行する計画を発表し、買われた。
00669 創科実業 [テクトロニック・インダストリーズ] 5.1% -6.7% -11.2% 大手電動工具メーカー。52週安値を付けた後、コールオプションが倍に増加した。反転を狙った買いが入ったもよう。
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] 4.9% 1.5% -20.5% パソコン大手。中国本土の投資家による買いが連日続いた。自動運転用エッジ・コンピューティング製品の開発を発表したことが買い手掛かりとなった。
03692 Hansoh Pharmaceutical 4.5% 14.4% -10.8% 医薬品大手。今年最も売られていた医薬品セクターに対する見直し買いが続いた。中国の大手証券会社が投資判断「買い」でカバレッジを開始し、中国本土の投資家による買いがみられた。(SBI証券取り扱いなし)
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00688 中国海外発展 [チャイナオ-バ-シ-ズランド] -17.0% -22.1% -26.5% 中国不動産大手。1-9月の全国の不動産投資が前年同期比8.0%減となり、1-8月の7.4%減より悪化し、不動産株が売られた。
00960 龍湖集団 [ロンフォー・グループ] -17.1% -40.3% -47.1% 中国不動産大手。1-9月の全国の不動産投資が前年同期比8.0%減となり、1-8月の7.4%減より悪化し、不動産株が売られた。
09999 網易 [ネットイース] -17.2% -26.5% -40.4% ゲーム大手。大手証券会社が米国上場の同社ADRの目標株価を引き下げた。ゲーム市場の成長鈍化見通しや為替による影響を理由に挙げた。
00101 恒隆地産 [ハンルン・プロパティーズ] -18.6% -18.8% -25.9% 香港の不動産会社。1-9月の中国全土の不動産投資が前年同期比8.0%減となり、1-8月の7.4%減より悪化したことを嫌気した。同社は中国本土でも事業を展開している。
09888 百度 [バイドゥ] -19.1% -31.3% -42.6% 検索エンジン大手。大手証券会社が米国上場の同社ADRの投資判断を「アウトパフォーム」から「中立」へ引き下げた。大手投資ファンドによる売り買いが交錯した。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00268 金蝶国際軟件 [キングディー・ソフトウエア] 16.3% 4.0% -32.6% ソフトウェア会社。中国本土の投資家による買いが連日続いた。中国本土の大手証券会社が2023年1-3月期に業績の好転が見込まれるとし、買い推奨した。
03888 金山軟件 [キングソフト] 12.0% 6.1% -14.6% ゲーム・ソフトウェア大手。テクニカル要因のもよう。RSIが売られ過ぎサインとされる30まで低下した後、反発した。中国本土の投資ファンドによる保有株比率の引き上げがみられた。
01347 華虹半導体 [フアホン・セミコンダクター] 11.6% -4.2% -24.2% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。競合のTSMCが中国の有力スタートアップ会社向けの先端半導体の生産を停止したと報じられ、買い材料となった。中国本土のファウンドリーが恩恵を受けると期待された。
00285 比亜迪電子 [BYDエレクトロニック] 10.2% -1.6% 3.7% BYD(01211)傘下のスマートフォン部品・受託製造メーカー。電子タバコをめぐる徴税基準が明確になり、買い材料となった。タバコと同様な徴税基準となり、中長期的に業界の発展を促すと専門家が指摘した。同社は今年8月に電子タバコの生産許可を取得した。
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] 4.9% 1.5% -20.5% パソコン大手。中国本土の投資家による買いが連日続いた。自動運転用エッジ・コンピューティング製品の開発を発表したことが買い手掛かりとなった。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09626 ビリビリ -17.2% -40.7% -63.1% 動画プラットフォーム大手。大手証券会社が米国上場の同社ADRの目標株価を大幅に引き下げた。(SBI証券取り扱いなし。リンク先は米国上場のBILIとなっています。)
09999 網易 [ネットイース] -17.2% -26.5% -40.4% ゲーム大手。大手証券会社が米国上場の同社ADRの目標株価を引き下げた。ゲーム市場の成長鈍化見通しや為替による影響を理由に挙げた。
09698 万国数拠服務 -18.9% -40.9% -57.1% データセンターを運営。軟調地合いを受け、海外投資家によるポジションの圧縮がみられた。
09888 百度 [バイドゥ] -19.1% -31.3% -42.6% 検索エンジン大手。大手証券会社が米国上場の同社ADRの投資判断を「アウトパフォーム」から「中立」へ引き下げた。大手投資ファンドによる売り買いが交錯した。
01024 快手(Kuaishou Technology) -20.6% -31.9% -55.3% ショート動画大手。大手証券会社が目標株価を引き下げた。「ゼロコロナ政策」によるマクロ経済(消費)への影響を考慮し、同社の10-12月期の業績見通しを引き下げた。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

10/20-10/26の香港市場では、ハンセン指数が7.2%下落、ハンセンテック指数は7.5%下落しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は、2.2%下落しました。

10/25のレポート中国株フラッシュ中国株の「ブラックマンデー」でご紹介しましたように、1)中国の新指導部に対する海外投資家の「手荒い歓迎」、2)予想外の人民元安“容認”姿勢と経済指標の発表、3)「ゼロコロナ政策」継続に対する警戒が投資家センチメントの悪化につながりました。

そのうち、最も重要な要因は、1)と考えられます。「3期目の習政権」をめぐっては、ほとんどが“習氏に近い”人物で固められたことが市場にとってややサプライズとなりました。投資家(特に海外投資家)は「ゼロコロナ政策」や「科学技術の自立自強」、共同富裕などが、今後も維持される可能性が高いと警戒しました。これらの政策は中国当局がある程度の成長鈍化を容認し、米中対立の激化も辞さない政策として捉えられているためです。

業種では、全面安の展開となりました。うち下落率上位3業種は、情報テクノロジー、不動産、金融でした。

情報テクノロジーは、海外投資家の保有比率が比較的高く、上記1)-3)を受けた海外投資家によるポジションの圧縮が見られました。同時に、大手証券会社が情報テクノロジー関連株の目標株価を引き下げたことも、嫌気されました。

不動産と金融は、1-9月の全国の不動産投資が前年同期比8.0%減となり、1-8月の7.4%減より悪化したことも響きました。不動産支援措置が効果を表すには時間がかかり、「ゼロコロナ政策」による行動制限下ではさらに時間がかかることが示されました。

一方、ヘルスケアは、下げ幅が限定的でした。医薬品大手の石薬集団(01093)や翰森製薬(03692)(SBI証券取扱なし)、バイオ医薬品関連の中国生物製薬(01177)ベイジーン(06160)(SBI証券取扱なし、米国上場のベイジーンADR(BGNE)は取扱銘柄)などが堅調で、ヘルスケア指数を下支えしました。

前週のレポート(中国株 ココがPOINT!~習近平氏の演説、GDP発表の見送り、底値拾いの動き~)でご紹介しましたように、年初から最も売り込まれてきたヘルスケアセクターに対し、押し目買いの動きがみられています。軟調地合いのなかでも、見直し買いが続いたということは、ヘルスケアセクターをめぐるセンチメントが明らかに改善していることが示唆されています。

今回のトピックス

今回は、「ブラックマンデー」の後の動向を確認してみたいと思います。

「ブラックマンデー」後に反発、その要因は

10/24(月)にハンセン指数が6.4%下落、ハンセンテック指数は9.7%下落し、香港市場は「ブラックマンデー」となりました。ほぼ全業種が下落し、投げ売りの状態となっていたため、市場では3月中旬のような連日大幅安を警戒しました。

しかし、10/25にハンセン指数は横ばい(0.1%下落)、ハンセンテック指数は1.0上昇し、翌10/26も続伸(ハンセン指数が3.0%上昇、ハンセンテック指数が4.0%上昇しました。

10/25に香港市場がやや持ち直した理由は、10/26の外国株式特集レポート(中国株:「ブラックマンデー」の翌日に反発、米国市場で買われた銘柄は)でご紹介しましたように、「3期目の習政権の政策めぐる不安」と「割安感」の綱引きの結果で、割安感がより意識されたためです。「3期目の習政権の政策」に関しては、「マーケットフレンドリー」(市場に友好的)であるか否かを判断するには時期尚早で、これからの「3期目の習政権」の発言や行動をもって確認する必要があるためです。

そして、10/26に上昇したのは、中国当局が人民元および金融市場の安定を重視する声明を発表したためです。同声明では、人民元の安定化と、株式市場・債券市場・住宅市場の健全な発展を維持すると表明しました。足元の相場急落を受け、中国当局が初めて相場支援を「表明」した格好です。

それを受け、投資家のセンチメントは、少なくとも「極度の悲観」から持ち直すことになりそうです。今後、反発がさらに続くかどうかは、中国当局が具体的な相場および経済策を打ち出すかどうかが注目されます。他方、今回の中国当局の「意思表明」からすると、少なくとも中国当局は人民元や株式市場の動向を注視していると言えます。

「ブラックマンデー」後の反発時に買われた銘柄

ハンセン指数とハンセンテック指数の構成銘柄のうち、10/25-10/26に4%を超える上昇率となった銘柄は、図表4の通りです。

そのうち、24日に大幅に下落した銘柄が目立ちました。下げた銘柄が上がるという典型的な「リターンリバーサル」の展開です。「今週の中国株市況」の部分で確認したように、24日の売りは過度な懸念による部分も大きかったため、売られすぎ銘柄を中心に見直し買いが進みました。

図表4 10/25-10/26の上昇率が4%を超えた銘柄

銘柄コード Bloomberg銘柄名 25-26日の騰落率 24日の騰落率
00241 阿里健康信息技術 [アリババ・ヘルス] 17.76% -14.85%
09868 小鵬汽車[シャオペン] 15.36% -12.76%
00268 金蝶国際軟件 [キングディー・ソフトウエア] 13.02% -0.19%
03888 金山軟件 [キングソフト] 12.53% -4.38%
00285 比亜迪電子 [BYDエレクトロニック] 11.52% -5.40%
06618 京東健康(JD Health) 11.03% -14.87%
00909 Ming Yuan Cloud Group 10.77% -10.76%
00020 SenseTime Group Inc 10.26% -7.14%
09866 蔚来汽車 [ニオ] 9.00% -9.12%
01024 快手(Kuaishou Technology) 8.30% -12.62%
01347 華虹半導体 [フアホン・セミコンダクター] 8.26% -3.37%
00968 信義光能 [シンイー・ソーラー] 8.18% -4.41%
01810 小米集団 [シャオミ] 8.17% -8.65%
02018 瑞声科技 [AACテクノロジーズ] 8.02% -7.28%
03692 Hansoh Pharmaceutical 7.68% -7.53%
03690 美団(Meituan) 7.55% -14.83%
00772 閲文集団(China Literature) 7.25% -8.72%
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] 6.63% -3.29%
06862 海底撈(Haidilao) 6.26% -8.38%
09961 携程旅行網 [トリップドットコム゚] 6.00% -8.79%
01093 石薬集団 [CSPCファーマシュ-ティカル] 5.21% -3.17%
09618 JDドットコム 4.65% -13.17%
09633 Nongfu Spring Co Ltd 4.35% -3.58%
00981 中芯国際 [SMIC] 4.29% -3.63%
00669 創科実業 [テクトロニック・インダストリーズ] 4.27% 2.29%
00316 東方海外国際 [オリエント・オーバーシース 4.05% -2.48%

注:銘柄コード00909、03692、09961はSBI証券で取り扱っておりません。トリップドットコム(09961)の米国上場銘柄 TCOMは取り扱い銘柄です。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

他方、24日の下落率が相対的に小さかったにもかかわらず、買われた銘柄もありました。たとえば、金蝶国際軟件(00268)、金山軟件(03888)、BYD電子(00285)、華虹半導体(01347)、聯想集団(00992)、石薬集団(01093)、SMIC(00981)などです。

これらの銘柄は、それぞれ個別に上昇要因(図表3を参照)があったものの、相場のセンチメントが極端に悲観的な状況下でも買われたのは、一つ共通の要因が大きく影響したと考えられます。それはつまり、これらの銘柄は「ハイテク製造業」に関連する銘柄(医薬品メーカーの石薬集団(01093)を除く)であることです。

習近平・国家主席が共産党大会初日の演説で、「科学技術の自立自強」を目指すと表明したためです。今後、「ハイテク製造業」分野でさらなる政策支援が打ち出される可能性が高いことに加え、米中のハイテク戦争は結果的に中国の「国産化」を促すことになるとの期待が背景と考えられます。「ハイテク製造業」に関連する銘柄は、「3期目の習政権」の発足とともに今後、さらに注目を集める可能性がありそうです。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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