中国株 ココがPOINT!  ~行き過ぎた悲観は後退、次の注目点は~

中国株 ココがPOINT!  ~行き過ぎた悲観は後退、次の注目点は~

投資情報部 李 燕

2022/11/10

11/2-11/9の香港市場は大幅続伸しました。「ゼロコロナ政策」の解除に対する期待が続いたほか、不動産市場に対する中国当局の支援措置も好材料となりました。

今回は、反発後の見通しを考察するに当たり、次の注目点を確認してみたいと思います。

図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

注:11/9(水)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(11/1(火)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
02007 碧桂園 [カントリー・ガーデン] 56.2% -6.8% -34.7% 中国不動産大手。「リオープン観測」に加え、中国当局による不動産市場に対する支援を好感し、大幅に持ち直した。
06098 CG SERVICES 48.0% -8.0% -26.4% 不動産大手カントリーガーデン(02007)傘下の不動産サービス会社。「リオープン観測」に加え、中国当局による不動産市場に対する支援を好感し、大幅に持ち直した。(SBI証券取り扱いなし)
00960 龍湖集団 [ロンフォー・グループ] 28.8% -36.2% -44.2% 中国不動産大手。「リオープン観測」に加え、中国当局による不動産市場に対する支援を好感し、大幅に持ち直した。
02269 薬明生物 [ウーシー・バイオロジクス] 17.5% -7.5% -40.1% バイオ医薬品開発受託大手。同社CEOが傘下子会社が米国の「未検証者リスト(UVL)」に入った件について、「数ヶ月の対応を経て基本的に解決した」とコメントし、好材料となった。
00868 信義玻璃控股 [信義ガラス] 15.7% 5.9% -18.6% 大手ガラスメーカー。「リオープン観測」に加え、中国当局による不動産市場に対する支援を好感した。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] 1.0% 15.6% -9.7% パソコン大手。PC市場の鈍化を受け、決算発表前は警戒売りが広がったが、予想を上回った決算を発表した後は、買い優勢となった。
09988 アリババ・グループ -0.2% -18.9% -26.3% EC・フィンテック大手。「リオープン観測」で急騰した後、中国国内の新型コロナの感染拡大が伝わると、利益確定売りに押された。大手投資ファンドによる売り買いが交錯した。
09888 百度 [バイドゥ] -0.6% -32.9% -40.3% 検索エンジン大手。「リオープン観測」で急騰した後、中国国内の新型コロナの感染拡大が伝わると、利益確定売りに押された。大手投資ファンドによる売り買いが交錯した。
00006 電能実業 [パワー・アセッツ] -0.8% -2.5% -23.6% 電力会社。需給要因のもよう。
00016 新鴻基地産[サンフンカイ・プロパティーズ] -1.2% -6.6% -11.3% 不動産会社。香港の不動産価格指数が週間ベースで2016年以来の大幅な下落となり、売り材料となった。ドルペッグ制を導入している香港は米国に追随して利上げを実施しており、それに伴い住宅ローン金利が上昇し、不動産市場を圧迫している。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00020 SenseTime Group Inc 32.0% 6.3% -22.8% AIソフトウェア大手。中国当局が仮想現実(VR)に関する政策(「行動計画」)を発表し、好材料となった。同計画では、2026年までに産業規模を3,500億元にする目標が掲げられた。
01347 華虹半導体 [フアホン・セミコンダクター] 23.7% 32.7% -9.1% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。中国本土市場へのA株IPOの申請が正式に受理され、買い材料となった。同社はA株の発行により調達した資金で、生産能力を拡大する予定。
02015 理想汽車[リーオート] 21.7% -14.5% -45.6% 新興EVメーカー。10月の納車台数が1万台超え(前年同月比31%増)となり、買い戻された。これまでは販売懸念で大幅に売り込まれてきた。(SBI証券取り扱いなし。リンク先は米国上場のLIとなっています。)
01024 快手(Kuaishou Technology) 19.8% -17.4% -42.1% ショート動画大手。アリババのECサイト「タオバオ」への接続が10月末に再開された。EC大手との相互接続により、EC関連ビジネスが拡大される見通しだとし、大手証券会社2社が買い推奨した。
02382 舜宇光学 [サニーオプチカル] 14.2% 8.5% -26.1% 大手光学機器メーカー。中国当局による仮想現実(VR)に関する政策(「行動計画」)が買い手掛かりとなった。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09988 アリババ・グループ -0.2% -18.9% -26.3% EC・フィンテック大手。「リオープン観測」で急騰した後、中国国内の新型コロナの感染拡大が伝わると、利益確定売りに押された。大手投資ファンドによる売り買いが交錯した。
09888 百度 [バイドゥ] -0.6% -32.9% -40.3% 検索エンジン大手。「リオープン観測」で急騰した後、中国国内の新型コロナの感染拡大が伝わると、利益確定売りに押された。大手投資ファンドによる売り買いが交錯した。
09866 蔚来汽車 [ニオ] -0.7% -27.6% -48.7% 新興EVメーカー。「リオープン観測」で急騰した後、中国国内の新型コロナの感染拡大が伝わると、利益確定売りに押された。大手投資ファンドによる売り買いが交錯した。
00285 比亜迪電子 [BYDエレクトロニック] -4.4% 18.7% 3.9% BYD(01211)傘下のスマートフォン部品・受託製造メーカー。アップルが「iPhone14 Pro」、「iPhone14 Pro Max」の出荷が従来予想を下回る見通しだと発表し、売り材料となった。
03888 金山軟件 [キングソフト] -4.9% 31.6% -4.9% ゲーム・ソフトウェア大手。10月初めから上昇傾向が続いたが、200日移動平均線の突破に失敗し、利益確定売りに押された。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

11/2-11/9の香港市場では、ハンセン指数が5.8%上昇、ハンセンテック指数は6.7%上昇しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は、1.9%上昇しました。

11/1からの「ゼロコロナ政策」の解除に対する期待が続いたほか、不動産市場に対する中国当局の支援措置も好材料となりました。中国当局は11/8に、不動産開発会社など民間企業による約2500億元の起債を支援するプログラムを発表しました。

業種別上昇率上位3位は、素材、工業、ヘルスケアでした。素材は、「ゼロコロナ政策」の解除と不動産市場の持ち直しに対する期待を背景に、需要回復を織り込む買いが膨らみました。アルミ大手の中国アルミ(02600)や銅大手の江西銅業(00358)など景気敏感株が上昇をけん引しました。

産金大手の紫金砿業(02899)は、金先物価格の上昇と事業拡大に向けたM&Aも好材料となりました。金先物価格は、米国の中間選挙の先行き不透明を警戒した買いに支えられ、10月以来の1,700ドル台を回復しました。紫金砿業は事業拡大に向け、同業の招金砿業(01818)の株式を20%取得する予定だと発表しました。

リチウム大手のガンフォンリチウム(01772)や天斉リチウム(09696)も、上昇しました。中国国内のリン酸リチウム価格が史上最高値を更新し、買い材料となりました。リチウム資源をめぐる争奪戦が繰り広げられるなか、各資源国政府は関与を強めています(たとえば外国企業の出資規制の強化など)。それが世界的なリチウム開発を遅らせる可能性があると指摘され、リン酸リチウム価格の上昇につながりました。

工業は、ヘルスケアや情報テクノロジーと並んで、9月末までは年初来パフォーマンスで騰落率下位にありました。ヘルスケアが10月初めから持ち直し、その後情報テクノロジーが10月中旬から買い戻されると、工業はそれに追随する形で11月初めに上昇しました(図表2の右側を参照)。

主に海運・港湾(中遠海運(01199)や招商局港口(00144))、建設機械(中聯重科(01157)や三一重装(00631))、ガラス製造関連(信義ガラス(00868)や信義光能(00968))が買われました。「リオープン観測」に加え、不動産市場への支援を好感し、景気敏感株が買われたことが背景です。

海運大手の中遠海運は、事業拡大に向けたM&Aも好感されました。同社は中国の上海港と広州港へ出資したほか、ドイツ最大の港湾であるハンブルク港への出資(24.5%取得)も、ドイツ政府により正式に認可されました。

不動産も、「リオープン観測」と中国当局による不動産市場への支援で、持ち直しました。不動産大手の碧桂園(02007)や龍湖集団(00960)、中国海外発展(00688)が大幅に買い戻されました。

個別銘柄では、新エネルギー車最大手のBYD(01211)が急反発後、調整しました。BYDは10月の販売台数が21万台超えと、好調でしたが、大株主であるバークシャー・ハサウェイが11/1に、同社株を追加売却したことが明らかになりました。売却後、バークシャー・ハサウェイの保有株比率(香港上場株)は17.92%に低下しました。今後、BYDの株価が多少持ち直すと、バークシャー・ハサウェイが追加売却する可能性があり、引き続き、バークシャー・ハサウェイの動向には留意が必要です。

今回のトピックス

今回は、反発後の見通しを考察するに当たり、次の注目点を確認してみたいと思います。

10月中旬からの相場動向を振り返ってみると、ハンセン指数は「3期目の習政権」発足後の初取引日(10/24)に、「ブラックマンデー」となり、急落しました。中国最高指導部のメンバーがほとんど「習氏に近い」人物で固められたことで、「ゼロコロナ政策」などが維持されることを警戒しました。その後、一旦持ち直す場面もありましたが、10月末まで軟調が続きました。

しかし、11/1にハンセン指数は急反発しました。きっかけは、「リオープン観測」に関するソーシャルメディアの投稿です。同投稿は中国の著名エコノミストによるものです。内容は「“再開委員会”が設置されたと聞いた。同委員会は、2023 年 3 月の再開を目標に、さまざまな再開シナリオを評価するために米国や香港、シンガポールの新型コロナに関するデータを調べている。」となっています。

その後、中国当局が「ゼロコロナ政策」の堅持を表明しましたが、相場への影響は限定的でした。11/9付の外国株式特集レポート“ゼロコロナ」 VS 「リオープン」 ~ 中国株急反発の真相”で触れましたように、中国共産党の機関紙である人民日報が「ゼロコロナ政策」をめぐる論調で変化が見られたことに加え、中国当局が「ゼロコロナ政策」の解除に向けて動き出しているためです。

図表4 共産党大会終了後、「リオープン」をめぐる動き

※BloombergをもとにSBI証券が作成。

上記の動きからすると、中国当局が「ゼロコロナ政策」の解除に向けて動き出していることは、「確度が高い」と言えそうです。

しかし、11/8-11/9のハンセン指数はやや調整しました(図表1)。「リオープン観測」は根強いものの、中国国内で新型コロナの新規感染者数が半年ぶりに増加したことが利益確定売りを誘いました。

11/7のハンセン指数の終値を確認してみると、16,595ポイントで、10/24(「ブラックマンデー」)の急落前の16,211ポイントを小幅に上回る水準となっています。11/1-7の反発は、いわば「3期目の習政権」に対する行き過ぎた悲観の修正と解釈できそうです。

今後、「行き過ぎた悲観」が修正された後は、ポジィティブ評価へつながる材料が出てくるどうかにかかっていると思われます。具体的には、「ゼロコロナ政策」の行方や、金融・経済政策と考えられます。

「ゼロコロナ政策」の行方については、新型コロナの感染状況によって変動する可能性はありますが、中国本土も香港と同様に、次第に解除へ向かうと予想されます。図表4のように、解除に向けた動きが増えれば、相場にとってポジィティブ材料となります。一方、解除の時期が大幅にずれ込む(たとえば、来年中は解除しない)場合は、ネガティブ材料として意識されそうです。

金融政策については、目先は11/21に発表される予定のローンプライムレート(LPR)の引き下げがあるかどうかが注目されます。経済政策については、12月に開催される中央政治局会議と中央経済工作会議に注目です。「3期目の習政権」が正式に発足したことで、中国当局はこれから政策の策定(政治より経済政策の策定)に着手していくと思われます。足元の経済情勢を考えると、中国当局は何らかの景気支援策を打ち出す可能性があります。

その兆候はすでに表れ始めています。たとえば、中国当局は11/2に仮想現実(VR)産業に関する「行動計画」を発表し、11/8には不動産開発会社など民間企業の起債を支援するプログラムを発表しました。いずれも特定分野に対する措置となっていますが、12月の政策策定会議ではより包括的な措置が示される可能性があります。

一段と明確なメッセージが出るまで、相場はやや神経質になりやすく、特に個別銘柄は変動が大きくなる可能性があります。その際、比較的分散が効くETFが一つの投資手段となり得ます。主要中国株ETFについては、図表5をご参照願います。

図表5 主要中国株ETF

銘柄名 連動する指数 組入銘柄の上場先 組入上位銘柄
iS MSCIチャイナ(02801) MSCI中国指数 香港、中国本土、米国 テンセント(00700)、アリババ(09988)、美団(03690)、中国建設銀行(00939)、JDドットコム(09618)
ウィズダムツリー 中国株ニューエコノミーF(CXSE) ウィズダムツリー 中国企業(除く国有企業)指数 香港、中国本土、米国 テンセント(00700)、アリババ(09988)、CATL(300750)、JDドットコム(09618)、中国平安保険(601318)
Tracker Fund香港(02800) ハンセン指数 香港 AIA(01299)、HSBC(00005)、テンセント(00700)、美団(03690)、中国建設銀行(00939)
iシェアーズ 中国大型株 ETF(FXI) FTSE中国50指数 香港 アリババ(09988)、テンセント(00700)、美団(03690)、JDドットコム(09618)、中国建設銀行(00939)
iS CSI300(02846) CSI300(上海・深セン300)指数 中国本土 貴州茅台酒(600519)、CATL(300750)、中国平安保険(601318)、招商銀行(600036)、隆基緑能科技(601012)
iS FTSE A50(02823) FTSE A50中国指数 中国本土 貴州茅台酒(600519)、CATL(300750)、招商銀行(600036)、宜賓五糧液(000858)、中国長江電力(600900)
ヴァンエック チャイネクスト ETF(CNXT) ChiNext指数 中国本土(深セン創業板) CATL(300750)、東方財富(300059)、邁瑞生物医療(300760)、陽光電源(300274)、匯川技術(300124)

※Bloombergおよび各種資料をもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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