日本株は"年末ラリー"に突入??注目は『○○』!

日本株は

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2022/11/15

インフレ鈍化期待を背景に米国株が急騰!日経平均も大幅高

11月第2週(11/7-11)の日経平均株価は、前週末比1,063円83銭高(+3.9%)と週足ベースで3週続伸しました。
米10月消費者物価指数の発表で、インフレ鈍化の兆しが示され大幅高となった米国株に、連れ高した形です。

同期間の米国株式市場はNYダウが+4.1%、構成銘柄にグロース株の多いナスダックは+8.1%と、かなりのハイパフォーマンスでした。FRBによる積極的利上げ観測が弱まり、米10年国債利回が急低下したことが、株式市場にとって追い風となったようです。

11月第1週末、現地時間11/4(金)に発表された米10月雇用統計の結果は、市場参加者にとって善し悪しの判断がつきづらく方向感が定まりづらい数値でした。そのため、11月第2週に予定されていた11/8(火)に投開票日を迎える中間選挙の行方と、11/10(木)に発表予定の10月CPI(消費者物価指数)に、市場の注目が集まっていました。

11/7(月)-8(火)には、中間選挙にて共和党の優勢が伝わり、株式市場では「ねじれ議会」への期待が入る形で主要株価指数は2営業日続伸となりました。バイデン大統領率いる民主党は、増税や規制強化等の株式市場にとって痛手となり得る政策を推進するとみられています。そのため、共和党優勢の議会となった場合、現政権の政策推進について機動的な動きが取れなくなるとの見方が広がっていたことが株高の背景にあったと想定されます。他には、中間選挙後には株高となるアノマリー(経験則)が相場を下支えていると指摘する声も見受けられました。

選挙結果の判明が長引き、接戦が続く中、11/9(水)に上院選で劣勢と予想されていた民主党の想定以上の善戦が明らかとなりました。「ねじれ議会」への期待感が後退する形で、11/9(水)の米国株式市場は反落しています。

次に大きな転換点となったのは、11/10(木)における米10月消費者価指数(CPI)の発表でした。依然としてインフレ高進を示す数値で推移していた同指数は、市場予想を下回り、伸び率鈍化が好感されました。内容としては、10月CPI(前年同月比)が予想8.0%に対し7.7%と前回値8.2%を下回り4ヵ月連続での低下。また、世界的な景気悪化懸念が広がり需要低迷観測が生じていた原油価格は既に下落基調にありました。よって、エネルギーや食品を除いたコアCPI(同)が、前回値6.6%に対し結果は6.3%と3ヶ月ぶりの伸び率鈍化が確認され、市場予想6.5%に対しても下振れたことが市場でより好感された模様です。

金利先物市場では、12月FOMC(米連邦公開市場委員会)での政策金利実現確率について、10月CPI発表前は、0.5%利上げが57%、0.75%利上げが43%でしたが、同指数発表後は、0.5%利上げが90%まで増加となりました。また、11月FOMCを経て論議が過熱したターミナルレート(利上げの最高到達水準)も5%を割り込むとの予想が大勢へと動きました。
FRB(米連邦準備制度理事会)による積極的利上げ見通しが弱まったことで、2年国債利回りは4.3%、10年国債利回りは3.8%まで急低下しています。結果として、金利低下が追い風となりやすいグロース銘柄の上昇が目立ち、大手IT株や半導体関連株が強く買われる展開となり、NASDAQの上昇が顕著な週となりました。

インフレ鈍化の兆しを受け、米国株が大幅高したことは日本にも影響し、11/11(金)の日経平均株価は前日比+3%(817円47銭高)の大幅高となっています。

なお、同期間は日本企業の7-9月期の決算発表シーズンが佳境に入っていました。そのため、東京市場は全体的には米国市場に連れる値動きでしたが、銘柄ごとにフォーカスを当てると、決算内容で株価が左右される場面も多々ありました。

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(11/7~14)では、11/10(木)に決算発表を行った資生堂(4911)がトップです。1-9月期の純利益が工場売却による減損損失で前年同期比▲38%となりましたが、本業の利益を表す「コア営業利益」が同22%増となり改善傾向を示しました。増益の要因としては、水際対策の緩和や海外事業が堅調に推移したことを挙げています。一方で、資生堂と同日に決算発表を行った東京エレクトロン(8035)は通期業績見通しを大きく下方修正したにも関わらず、大幅高となっています。米国市場で半導体関連銘柄が選好された影響が日本にも波及したとみられます。

図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位(11/7~14)では、ニコン(7731)やDOWAホールディングス(5714)、ユニチカ(3103)がワースト3となりました。これら銘柄は7-9月期決算が失望決算となり、売り込まれた形です。他には、現地時間11/10(木)の米10月CPI発表を受け、FRBによる積極的金融引き締めが、米ドルが主要通貨に対し全面安となっています。ドルに対して円高が急速に進み、11/11(金)には一時1ドル138円台をつけています。これを受け、三菱自動車工業(7211)やSUBARU(7270)等、円安による恩恵を受けやすい銘柄が売り込まれています。

週明け11/14(月)の日経平均株価は、指数への寄与度が高いソフトバンクG(9984)が約13%下落したのを受け、反落スタートとなっています。同社は、11/11(金)大引け後に行った決算発表にて、4-9月期累計で1290億円もの最終赤字と、8459億円の巨額の投資損失を示しています。加えて、同社の孫正義(ソン マサヨシ)代表が当面の間、決算説明会に出席しない意向を示し、投資家心理を悪化させました。また、決算発表とともに自社株買いの発表を期待していた向きも多いようで、自社株買いの発表がなく、肩透かしを食ったと考えた投資家も多かったようです。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(11/7~14)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(11/7~11/14)

日本株は”年末ラリー”に突入??注目は『○○』!

今年も残すところあと1ヵ月半となりました。毎年、この頃になると市場参加者の間では、年末に向けて株式市場が堅調に推移する”年末ラリー”に入っていくのかが関心事の1つとして浮上します。

”年末ラリー”は、いわゆる投資のアノマリー(経験則)の1つです。日経平均について過去20年程度(2002年1月~22年10月)の月毎の騰落率を見ると(図表9)、11月の平均騰落率が+2.4%、12月が+2.5%と良好なパフォーマンスとなっております。特に12月は、過去20年間で勝ち(上昇)が15回、負け(下落)が5回と、各月の中で最も高い勝率(75%)となっています。年末ラリーを期待したくなりますよね。

もっとも、12月相場でも過去に5敗している点には注意が必要です(図表10)。この5回(02年、07年、14年、15年、18年)で株価が下落した背景には、米国の金融政策や経済見通しの変化が影響したとみられます。

例えば、過去20年の12月相場で最も下落が大きかった18年(▲10.5%)は、米国の前回の利上げサイクルにおいて、景気がピークアウトしたとの見方が強まる中で利上げが打ち止められたタイミングでした。また、15年(▲3.6%)は、前回の利上げサイクルにおいて利上げが開始されたタイミングでした。まだ米国経済の回復が本格化していない中、利上げが景気の腰を折るのでは?との懸念が強まりました。02年(▲6.9%)は、ドットコムバブル崩壊後の利下げ局面の終盤(03年6月に利下げ打ち止め)、07年(▲2.4%)は同年9月から利下げが開始され、翌年のリーマン・ショックに象徴される金融不安と景気後退の入り口となるタイミングでした。つまり、米国経済の先行き不透明感が強まると、年末ラリーが発生し難くなるとみられます。

今年は米国において積極的な利上げが敢行されたことで景気不透明感が強まったことを背景に、米国株(ひいては日本株)は夏場から秋口にかけて重い値動きとなりました。しかし、現地時間11/10(木)に発表された米10月消費者物価の伸びが市場予想を下回ると、インフレへの懸念が後退し、金融引き締めペースが鈍化するとの思惑が強まりました。米国経済の先行き不透明感が緩和される中、この日の米国株式市場は、NYダウが前日比+3.7%、ナスダック総合指数は+7.4%と大幅上昇しました。一部では、この消費者物価統計が、これまで上値の重い展開だった米国株式市場において、ゲームチェンジャーになると指摘する声も聞かれました。

”年末ラリー”の発生は、米国の利上げペースの鈍化や、景気不透明感の払拭期待が続くかにかかっているということです。米国では、12月13~14日に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)において利上げ幅が前回の利上げ幅(0.75%pt)より小幅になるなど、金融引き締めペースが減速するとの期待が維持されれば、年末に向けて株式市場の好地合いが続くことも期待されます。日経平均は今年の最高値(2万9,332円16銭)の更新や、3万円台の大台回復が視野に入ることも考えられます。

図表9  日経平均の月毎の平均騰落率

  • ブルームバーグをもとにSBI証券が作成。
  • ※2002年1月から2022年10月の月間騰落率を各月毎に平均

図表10  各年12月の日経平均騰落率(過去20年間)

  • ブルームバーグをもとにSBI証券が作成。

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