中国株 ココがPOINT!  ~復調のカギを握る「コロナ政策」、凸凹道ながらトンネルの先は光~

中国株 ココがPOINT!  ~復調のカギを握る「コロナ政策」、凸凹道ながらトンネルの先は光~

投資情報部 李 燕

2022/11/24

11/17-11/23の香港市場は反落しました。中国本土の一部都市で行動制限が導入され、「ゼロコロナ政策」をめぐる不透明感が警戒されました。10月末からの上昇をけん引した業種やリオープン関連銘柄が利益確定売りに押されました。

今回は、中国経済および中国株の復調のカギを握る「コロナ政策」について、今後の行方を考察してみたいと思います。

図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

注:11/23(水)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(11/23(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00762 中国聯通[チャイナ・ユニコム] 6.7% 14.4% 2.1% 通信キャリア。投資家のリスク回避姿勢を受け、ディフェンシブの通信が買われた。同社は10月の「ビッグコネクト」(5Gと工業のインターネット化)の顧客数が8.5億に達したことも、好材料となった。
00941 中国移動 [チャイナモバイル] 3.2% 2.9% -2.6% 中国通信キャリア最大手。投資家のリスク回避姿勢を受け、ディフェンシブの通信が買われた。
02628 中国人寿保険 [チャイナ・ライフ] 3.0% 11.9% -2.3% 大手保険会社。中国当局が保険会社による個人年金事業の展開に関する通知を発表。個人年金保険の普及を促す施策として捉えられ、買い材料となった。
00005 HSBC (匯豊控股) 1.9% 8.8% -7.9% 英金融大手。英ポンドが対ドルで上昇し、買い優勢となった。大手証券会社はポンド高を理由に、目標株価を引き上げた。
00386 中国石油化工 [シノペック] 1.7% 1.5% -4.1% 石油・石油化学製品大手。カタール国営石油会社と液化天然ガス(LNG)の長期売買契約を締結し、買い材料となった。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
01928 金沙中国 [サンズ・チャイナ] -11.4% 19.3% 7.7% カジノ大手。「ゼロコロナ政策」をめぐる不透明感が警戒され、リオープン関連銘柄が利益確定売りに押された。
02313 申洲国際 [シェンジョウインター] -12.2% 12.9% -22.5% ニット衣料メーカー。ナイキやアディダス、ユニクロのサプライヤー。同社の主要顧客である海外アパレルメーカーの在庫問題は依然として厳しく、同社に対する発注も慎重になる可能性があると、大手証券会社が指摘した。
06862 海底撈(Haidilao) -13.3% 5.9% -15.9% 火鍋チェーン中国最大手。「ゼロコロナ政策」をめぐる不透明感が警戒され、リオープン関連銘柄が利益確定売りに押された。
02007 碧桂園 [カントリー・ガーデン] -13.3% 64.3% -8.9% 中国不動産大手。「ゼロコロナ政策」をめぐる不透明感や住宅販売の先行きに対する懸念で、売られた。
03690 美団(Meituan) -14.7% -2.3% -18.0% 中国フードデリバリー最大手。「ゼロコロナ政策」をめぐる不透明感が警戒され、リオープン関連銘柄が利益確定売りに押された。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
01024 快手(Kuaishou Technology) 0.6% 32.8% -29.3% ショート動画大手。3Qの決算内容が予想を上回り、大手証券会社が目標株価を引き上げた。軟調地合いのなか、買い優勢で小幅高となった。
06690 海爾智家 [ハイアールスマートホーム] -1.8% 9.0% 2.8% 大手家電メーカー。自社株買いを実施。軟調地合いのなか、下落率は限定的だった。
01347 華虹半導体 [フアホン・セミコンダクター] -2.0% 52.0% 14.4% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。軟調地合いのなか、大手証券会社が目標株価を引き上げ、下落率は限定的だった。同証券会社は、同社はIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)の需要増加の恩恵が期待できると分析した。
02018 瑞声科技 [AACテクノロジーズ] -2.2% 31.7% 20.2% 音響部品メーカー。RSIが短期的買われ過ぎサインとされる70%を超え、利益確定売りに押された。ただ、200日移動平均線近辺で下げ渋り、下落率は限定的だった。
09888 百度 [バイドゥ] -3.8% 3.6% -28.9% 検索エンジン大手。軟調地合いのなか、利益確定売りが優勢だった。11/22(引け後)に市場予想を上回る決算を発表した後、11/23は小幅に買い戻された。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
03690 美団(Meituan) -14.7% -2.3% -18.0% 中国フードデリバリー最大手。「ゼロコロナ政策」をめぐる不透明感が警戒され、リオープン関連銘柄が利益確定売りに押された。
00909 Ming Yuan Cloud Group -16.8% 19.0% -10.0% 不動産会社向けソフトウェア大手。「ゼロコロナ政策」をめぐる不透明感や住宅販売の先行きに対する懸念で、売られた。(SBI証券取り扱いなし)
09626 ビリビリ -17.4% 21.2% -44.0% 動画プラットフォーム大手。「ゼロコロナ政策」をめぐる不透明感が警戒され、これまで大幅に上昇した銘柄が利益確定売りに押された。(SBI証券取り扱いなし。リンク先は米国上場のBILIとなっています。)
09868 小鵬汽車[シャオペン] -20.8% -11.2% -66.4% 新興EVメーカー。「ゼロコロナ政策」をめぐる不透明感や自動車販売の先行きに対する懸念で、売られた。
09698 万国数拠服務 -26.6% -18.9% -54.6% データセンターを運営。「ゼロコロナ政策」をめぐる不透明感が警戒され、これまで大幅に上昇した銘柄が利益確定売りに押された。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

11/17-11/23の香港市場では、ハンセン指数が4.0%下落、ハンセンテック指数は6.6%下落しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は、2.2%下落しました。

中国本土の一部都市で新型コロナの感染拡大で行動制限が導入されたことを受け、「ゼロコロナ政策」をめぐる不透明感が警戒されました。

HXC指数の下落率がハンセン指数やハンセンテック指数より小幅だったのは、主に11/23(米国取引時間)の反発によるものです。11/23の上昇要因は、米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が「ハト派」だったほか、中国当局が11/23夜に金融緩和を示唆したためです。

なお、11/17-11/23の香港市場では、業種別でヘルスケアや情報テクノロジー、一般消費財が軟調でした。

ヘルスケアと情報テクノロジーは、10月末からの上昇をけん引しましたが、「ゼロコロナ政策」をめぐる不透明感で売り優勢に転じました。もっとも、両業種は10月末から2割以上上昇したこともあり、短期的に利益確定売りに押されやすい局面にありました。

一般消費財は、主に飲食関連や自動車が下げを主導しました。「ゼロコロナ政策」をめぐる不透明感により、リオープン関連銘柄が売られました。自動車は、中国新エネルギー車最大手のBYD(01211)について、主要株主であるバークシャー・ハサウェイが11/17に追加売却したことも、重石となりました。

一方、電気通信は、逆行高となりました。投資家のリスク回避姿勢を受け、ディフェンシブ銘柄が買われました。

今回のトピックス

今回は、中国経済および中国株の復調のカギを握る「コロナ政策」について、今後の行方を考察してみたいと思います。

中国本土の一部都市で行動制限が導入されたことを受け、市場では厳格な「ゼロコロナ政策」への逆戻りが警戒されています。しかしながら、以下の動きからすると、11/10に「3期目の習政権」が示したように、「ゼロコロナ政策」の見直しは続くと予想されます。

1)中国当局は11/21に、新型コロナの感染が確認されていない地域ではPCR検査を実施してはならず、省都や人口1,000万人以上の都市で感染拡大リスクある場合、1日1回の全域PCR検査を実施することができると発表しました。むやみな大規模PCR検査をけん制した格好です。現地報道によると、一部都市では過去のような大規模PCR検査を実施してないようです。

2)コロナ対策を指揮する孫春蘭・副首相は11/21に、感染拡大地域の重慶市を訪れました。その際、経済や日常生活への影響を最小限に抑える措置を求めました。「経済への影響を最小限に抑える」は、「3期目の習政権」が11/10に示した「コロナ政策」に含まれいるもので、従来の「ゼロコロナ政策」には含まれていないものです。

3)11/23夜、中国国営テレビCCTVの報道によると、国務院は預金準備率(RRR)などの金融政策ツールを「タイムリーかつ適切に」使用し、潤沢な流動性を維持する考えを示しました。近々のRRR引き下げを示唆しました。これは、「3期目の習政権」が示した「コロナ政策」の方針である「経済への影響を考慮しつつ、的を絞った措置を取る」と一致しています。つまり、中国当局は厳格な「ゼロコロナ政策」を維持することよりも、より経済成長を重視するようになっています。

総合的にみると、リオープンへの道は平たんではなく、凸凹道となるかもしれませんが、中国当局は経済への影響を考慮しながら「コロナ政策」を実施していくと想定されます。

【香港の事例】

先行事例として、中国本土より先にリオープンに向けて進んでいる香港のケースを確認してみたいと思います。

振り返ってみると、香港政府が本格的にリオープンに向けて動き出したのは、必ずしも感染拡大が収まってからではありませんでした。むしろ、新型コロナの感染による死亡者数が急増し、香港全域でのロックダウン懸念が強まっていた時期でした(図表4)。

図表4 香港の新型コロナの新規感染者数と新規死亡者数、およびコロナ政策をめぐる動き

※Bloombergおよび各種資料をもとにSBI証券が作成。

当時、香港では新型コロナに対する恐怖とともに、「ゼロコロナ政策」が厳しく導入されました。香港在住の筆者の友人は、もはや香港は永遠に「ゼロコロナ政策」を実施するかもしれないと嘆きました。

しかし、大方の予想に反して、香港政府は新型コロナの感染による死亡者数がやや減少し始めると、リオープンに向けて動き出しました。3/21に入境者の隔離期間を短縮するとともに、全住民へのPCR検査も見送ると発表しました。足元で、中国当局が入境者の隔離期間を短縮し、むやみな大規模PCR検査をけん制していることと似ています。

当時、香港政府はワクチン接種、特に高齢者のワクチン接種を強化しました。その効果もあり、新型コロナの感染による死亡者数は減少しました。その後、数カ月を経て、香港政府は8/8に入境者の隔離期間をさらに短縮し、9/23には隔離措置を廃止すると発表しました。

振り返ってみると、香港は「ゼロコロナ政策」を調整しつつ、経済への影響を考慮し、徐々に緩和していきました。11/10に「3期目の習政権」が「ゼロコロナ政策」の見直しを発表する1-2週間前、中国当局は「コロナ政策」の策定において、香港や米国、シンガポールの事例を研究したと報じられています。その後、中国が「ゼロコロナ政策」の見直しを発表したことからすると、中国当局はある程度、香港の事例も参考にしているかもしれません。

中国本土にとっての課題は、当時の香港と同様に、ワクチン接種(特に高齢者のワクチン接種)を強化することと言えます。一部都市(たとえば上海市)では、すでに実施されています。また、外国製ワクチンの採用についても、小さな進展がみられました。

独ショルツ首相が11/4に中国を訪問した際、「独ビオンテックが開発した新型コロナウイルスワクチンについて、中国が国内居住の外国人を対象に接種できるようにすると述べ、中国内での広範な同ワクチン活用に向けた“最初の一歩になり得る”と指摘しました」(Bloomberg 報道より)。

これまでの動きを確認してみると、中国本土はリオープンに向け、香港と似たような措置を取っています。中国本土の広さからすると、リオープンへの道は平たんではなく、そのペースも香港より緩やかになるかもしれません。ただ、凸凹道ながらもリオープンに向けて進み、中国当局がより成長を重視していくなら、中国経済と中国株にとって「トンネルの先は光」となるでしょう。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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